(目的)
第一条 この法律は、農業法人に対する投資の円滑化を図るための特別の措置を講ずることにより、農業法人の自己資本の充実を促進し、その健全な成長発展を図り、もって農業の持続的な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「農業法人」とは、農事組合法人、合資会社、株式会社又は有限会社であって、農業を営むものをいう。
2 この法律において「農業法人投資育成事業」とは、次に掲げる事業をいう。
一 農業法人の持分、株式、新株予約権(商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百八十条ノ十九第一項に規定する新株予約権をいう。以下同じ。)又は新株予約権付社債等(同法第三百四十一条ノ二第一項に規定する新株予約権付社債及びこれに準ずる社債として農林水産省令で定めるものをいう。以下同じ。)の取得及び保有
二 前号の規定によりその持分、株式、新株予約権又は新株予約権付社債等を保有している農業法人に対して経営又は技術の指導を行う事業
(事業計画の承認)
第三条 農業法人投資育成事業を営もうとする株式会社(農業法人投資育成事業を営む株式会社を設立しようとする者を含む。)は、当該農業法人投資育成事業に関する計画(以下「事業計画」という。)を作成し、これを農林水産大臣に提出して、その事業計画が適当である旨の承認を受けることができる。
2 事業計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 持分又は株式の取得の対象とする農業法人の選定の基準、持分又は株式の取得の際の評価の基準、持分又は株式の取得の限度、持分又は株式の保有期間及び持分又は株式の処分の方法
二 新株予約権の取得の対象とする農業法人の選定の基準、新株予約権の内容に関する基準、新株予約権の取得の限度及び新株予約権の行使の時期
三 新株予約権付社債等の取得の対象とする農業法人の選定の基準、新株予約権付社債等の取得の限度及び新株予約権付社債等の償還期限に関する基準並びに新株予約権付社債にあっては、当該社債に付された新株予約権の内容に関する基準及び新株予約権の行使の時期
3 農林水産大臣は、第一項の承認の申請があった場合において、その事業計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その承認をするものとする。
一 その事業計画に係る農業法人投資育成事業が農業法人の自己資本の充実を図る上で有効かつ適切なものであること。
二 その事業計画に係る農業法人投資育成事業が農業法人の健全な成長発展に資するものであること。
三 その事業計画が当該農業法人投資育成事業を円滑かつ確実に遂行するために適切なものであること。
(事業計画の変更)
第四条 前条第一項の承認を受けた者(その者の設立に係る同項の株式会社を含む。)は、当該承認に係る事業計画を変更しようとするときは、農林水産大臣の承認を受けなければならない。
2 前条第三項の規定は、前項の承認について準用する。
(報告の徴収)
第五条 農林水産大臣は、第三条第一項の承認を受けた株式会社(同項の承認を受けた者の設立に係る同項の株式会社を含む。以下「承認会社」という。)に対し、農業法人投資育成事業の実施状況について報告を求めることができる。
(改善命令)
第六条 農林水産大臣は、承認会社が第三条第一項の承認に係る事業計画(第四条第一項の規定による変更の承認があったときは、その変更後のもの。以下「承認事業計画」という。)に従って農業法人投資育成事業を営んでいないと認めるときは、当該承認会社に対し、相当の期限を定めて、その改善に必要な措置を執るべきことを命ずることができる。
(事業計画の承認の取消し)
第七条 農林水産大臣は、承認会社が前条の規定による命令に違反したときは、第三条第一項の承認を取り消すことができる。
(農林漁業金融公庫法の特例)
第八条 農林漁業金融公庫は、農林漁業金融公庫法(昭和二十七年法律第三百五十五号)第十八条第一項及び第四項、第十八条の二第一項並びに第十八条の三第一項に規定する業務のほか、農業法人に対する民間の投資を補完するため、承認会社が承認事業計画に従って農業法人投資育成事業を営むのに必要な資金の出資の業務を行うことができる。
2 前項に規定する資金の出資は、当該出資に係る農業法人投資育成事業からの配当の支払を可能とする利益の発生が確実であると認められる場合に限り、農林水産大臣及び財務大臣の認可を受けて行うことができるものとする。
3 第一項の規定により農林漁業金融公庫が行う同項に規定する資金の出資についての農林漁業金融公庫法第十二条の二第二項第一号、第二十九条、第三十条第一項及び第三十五条第三号の規定の適用については、同法第十二条の二第二項第一号中「又はこの法律」とあるのは「若しくは農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法又はこれらの法律」と、同法第二十九条及び第三十条第一項中「この法律」とあるのは「この法律又は農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法」と、同法第三十五条第三号中「第十八条の三まで」とあるのは「第十八条の三まで及び農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法第八条第一項」とする。
(農業協同組合法の特例)
第九条 承認会社が承認事業計画に従って農業法人投資育成事業を営む場合における当該承認会社についての農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第七十二条の十第一項の規定の適用については、同項中「次に掲げる者」とあるのは、「次に掲げる者及び当該農事組合法人に農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法第六条に規定する承認事業計画に従つて同法第二条第二項に規定する農業法人投資育成事業に係る投資を行つた同法第五条に規定する承認会社」とする。
(農地法の特例)
第十条 承認会社であって、地方公共団体、農業協同組合、農業協同組合連合会又は農林中央金庫がその総株主の議決権の過半数を有しているものが、承認事業計画に従って農業法人投資育成事業を営む場合における当該承認会社についての農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)第二条第七項第二号の規定の適用については、同号中「次に掲げる者」とあるのは、「次に掲げる者及びその法人に農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法第六条に規定する承認事業計画に従つて同法第二条第二項に規定する農業法人投資育成事業に係る投資を行つた同法第五条に規定する承認会社」とする。
(罰則)
第十一条 第五条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした場合には、その違反行為をした承認会社の役員又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。
2 承認会社の代表者又は承認会社の代理人、使用人その他の従業員が、その承認会社の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その承認会社に対して同項の刑を科する。