中小企業技術開発促進臨時措置法
法令番号: 法律第五十五号
公布年月日: 昭和60年6月7日
法令の形式: 法律
中小企業技術開発促進臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和六十年六月七日
内閣総理大臣 中曽根康弘
法律第五十五号
中小企業技術開発促進臨時措置法
(目的)
第一条 この法律は、最近における技術革新の急速な進展及び需要構造の著しい変化に対処して中小企業が行う技術開発を促進するための措置を講ずることにより、中小企業の技術の向上を通じて、中小企業の振興と我が国産業技術の調和ある発達とを図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「中小企業者」とは、次に掲げる者をいう。
一 資本の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人で、工業、鉱業、運送業その他の業種(次号に掲げる業種及び第三号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本の額又は出資の総額が千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人で、小売業又はサービス業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの並びに資本の額又は出資の総額が三千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人で、卸売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人で、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
四 企業組合
五 協業組合
六 事業協同組合、協同組合連合会その他の特別の法律により設立された組合及びその連合会で、政令で定めるもの
2 この法律において「組合等」とは、前項第六号に掲げる者及び民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された社団法人で中小企業者を直接又は間接の構成員(以下単に「構成員」という。)とするもの(政令で定める要件に該当するものに限る。)をいう。
3 この法律において「技術開発」とは、次に掲げる行為をいう。
一 中小企業者(第一項第六号に掲げる者を除く。次条第二項及び第四項、第四条第一項、第五条第一項及び第二項、第六条第一号並びに第十一条において同じ。)が技術(生産、販売又は役務の提供の技術で、技術革新の進展に即応し、かつ、著しい新規性を有するものに限る。以下同じ。)に関する研究開発が行うこと(当該中小企業者が当該研究開発の成果の利用を行うことを含む。)。
二 組合等が技術に関する研究開発を行うこと(当該組合等又はその構成員が当該研究開発の成果の利用を行うことを含む。)。
(中小企業技術開発指針)
第三条 通商産業大臣は、技術開発に関する指針(以下「技術開発指針」という。)を定めなければならない。
2 技術開発指針には、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 技術開発の対象とすべき技術の内容に関する事項
二 中小企業者及び組合等が採るべき技術開発の実施方法に関する事項
三 その他技術開発を行うに当たつて配慮すべき重要事項
3 通商産業大臣は、技術革新の進展その他経済事情の変化のため必要があると認めるときは、技術開発指針を変更するものとする。
4 通商産業大臣は、技術開発指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、中小企業者の事業を所管する大臣に協議するとともに、中小企業近代化審議会の意見を聴かなければならない。
5 通商産業大臣は、技術開発指針を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(技術開発計画の認定)
第四条 中小企業者及び組合等は、技術に関する研究開発を行おうとするときは、技術開発に関する事業(以下「技術開発事業」という。)についての計画を作成し、これをその住所地を管轄する都道府県知事に提出して、その計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 前項の計画には、通商産業省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 技術開発事業の目標
二 技術開発の対象とする技術の内容、技術開発の実施方法、技術開発に必要な施設その他技術開発事業の内容
三 技術開発事業の実施時期
四 技術開発事業を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
五 組合等が技術開発事業に係る試験研究のための費用に充てるためその構成員に対し負担金の賦課をしようとする場合にあつては、その賦課の基準
3 都道府県知事は、第一項の認定の申請があつた場合において、当該申請に係る同項の計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。
一 前項第一号から第三号までに掲げる事項が技術開発指針に照らして適切なものであること。
二 前項第四号に掲げる事項が技術開発事業を確実に遂行するため適切なものであること。
三 前項第五号に規定する負担金の賦課をしようとする場合にあつては、その賦課の基準が適切なものであること。
(技術開発計画の変更等)
第五条 前条第一項の認定を受けた中小企業者及び組合等は、当該認定に係る計画を変更しようとするときは、その住所地を管轄する都道府県知事の認定を受けなければならない。これを変更するときも、同様とする。
2 都道府県知事は、前条第一項の認定に係る同項の計画(前項の規定による変更の認定があつたときは、その変更後のもの。以下「技術開発計画」という。)が同条第三項各号に掲げる要件に適合しなくなつたと認めるとき、又は同条第一項の認定を受けた中小企業者若しくは組合等が技術開発計画に従つた技術開発事業の実施をしていないと認めるときは、当該認定を取り消すことができる。
3 前条第三項の規定は、第一項の認定に準用する。
(資金の確保)
第六条 国は、次に掲げる者による技術開発計画(第二号に掲げる者にあつては、その者を構成員とする同号の組合等に係る技術開発計画)に従う技術開発事業の実施に必要な資金(以下「技術開発事業資金」という。)の確保に努めるものとする。
一 第四条第一項の認定を受けた中小企業者及び組合等
二 前号に規定する組合等(以下「認定組合等」という。)の構成員たる中小企業者
(中小企業投資育成株式会社法の特例)
第七条 中小企業投資育成株式会社は、中小企業投資育成株式会社法(昭和三十八年法律第百一号)第八条第一項各号に掲げる事業のほか、前条各号に掲げる者(以下「認定中小企業者等」という。)のうち資本の額が一億円を超える株式会社で同項第一号の政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むものが技術開発計画(認定組合等の構成員たる中小企業者にあつては、当該認定組合等に係る技術開発計画。以下同じ。)に従つて技術開発事業を実施するために必要な資金の調達を図るために発行する新株又は転換社債の引受け及び当該引受けに係る株式又は転換社債(その転換により発行された株式を含む。)の保有を行うことができる。
2 前項の規定による新株又は転換社債の引受け及び当該引受けに係る株式又は転換社債(その転換により発行された株式を含む。)の保有は、中小企業投資育成株式会社法の適用については、同法第八条第一項第一号の事業とみなす。
(中小企業信用保険法の特例)
第八条 中小企業信用保険法(昭和二十五年法律第二百六十四号)第三条の六第一項に規定する新技術企業化保険(以下単に「新技術企業化保険」という。)の保険関係で、技術開発関係保証(同項に規定する債務の保証で技術開発事業資金に係るものをいう。以下同じ。)を受けた中小企業者に係るものについての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項中「一億円」とあるのは「一億三千万円(中小企業技術開発促進臨時措置法第六条に規定する技術開発事業資金(以下単に「技術開発事業資金」という。)以外の資金に係る債務の保証に係る保険関係については、一億円)」と、「二億円」とあるのは「二億六千万円(技術開発事業資金以外の資金に係る債務の保証に係る保険関係については、二億円)」と、同条第二項中「一億円」とあるのは「一億三千万円(技術開発事業資金以外の資金に係る債務の保証に係る保険関係については、一億円)」とする。
2 信用保証協会が中小企業者について一の無担保保証(技術開発関係保証でその保証について担保(保証人の保証を除く。)を提供させないものをいう。以下同じ。)をした場合における当該一の無担保保証に係る無担保保証保険関係(新技術企業化保険の保険関係で無担保保証に係るものをいう。以下同じ。)の保険料の額は、中小企業信用保険法第四条の規定にかかわらず、保険金額に年百分の二以内において政令で定める率を乗じて得た額とする。ただし、当該中小企業者についての無担保保証保険関係の保険価額の合計額が三千万円を超える場合における当該一の無担保保証に係る無担保保証保険関係の保険料の額については、この限りでない。
(課税の特例)
第九条 認定組合等が、技術開発計画で定める賦課の基準に基づいて、その構成員たる中小企業者に対し、当該技術開発計画に従つて実施する技術開発事業に係る試験研究(以下「技術開発計画に係る試験研究」という。)に必要な機械装置(工具、器具及び備品を含む。)を取得し、又は製作するための費用に充てるための負担金を賦課した場合で、当該中小企業者が当該負担金を納付したときは、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、当該負担金について特別償却を行うことができる。
2 認定組合等が技術開発計画で定める賦課の基準に基づいてその構成員に対し技術開発計画に係る試験研究のための費用に充てるための負担金を賦課した場合で、その構成員が当該負担金を納付したときは、租税特別措置法で定めるところにより、当該負担金について試験研究費の額が増加した場合等の課税の特例の適用があるものとする。
3 認定組合等が、技術開発計画で定める賦課の基準に基づいてその構成員に対し賦課した負担金の全部又は一部をもつて、技術開発計画に係る試験研究の用に直接供する固定資産を取得し、又は製作したときは、租税特別措置法で定めるところにより、所得の金額の計算について特別の措置を講ずる。
4 認定組合等の構成員たる中小企業者が技術開発計画に従つて新たに取得し、又は製作し、若しくは建設した機械及び装置並びに建物及びその附属設備については、租税特別措置法で定めるところにより、特別償却を行うことができる。
(技術開発の促進のための措置)
第十条 国及び地方公共団体は、技術開発を促進するため、情報の提供及び人材の養成その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 国及び都道府県は、認定中小企業者等に対し、技術開発計画に係る技術開発事業の適確な実施に必要な指導及び助言を行うものとする。
(報告の徴収)
第十一条 都道府県知事は、第四条第一項の認定を受けた中小企業者及び組合等に対し、技術開発計画に係る技術開発事業の実施状況について報告を求めることができる。
(罰則)
第十二条 前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(この法律の廃止)
第二条 この法律は、施行の日から十年以内に廃止するものとする。
(地方税法の一部改正)
第三条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第五百八十六条第二項第十三号の三の次に次の一号を加える。
十三の四 中小企業技術開発促進臨時措置法(昭和六十年法律第五十五号)第四条第一項の規定による認定を受けた同法第二条第二項に規定する組合等が当該認定に係る同法第四条第一項の計画に従つて実施する同項の技術開発事業(これに係るものとして政令で定める事業を含む。)の用に供する土地
附則第三十二条の三第三項中「次条第一項及び第二項」を「次条第一項から第三項まで」に、「第五項まで」を「第六項まで」に、「及び第五項」を「から第六項まで」に改め、同条第七項中「第五項」を「第六項」に改め、同項を同条第八項とし、同条第六項の表の下欄中「附則第三十二条の三第三項から第五項まで」を「附則第三十二条の三第三項から第六項まで」に改め、同項を同条第七項とし、同条第五項の次に次の一項を加える。
6 指定都市等は、事業所用家屋で中小企業技術開発促進臨時措置法の施行の日から昭和六十二年三月三十一日までの間に同法第四条第一項の規定による認定を受けた同法第二条第二項に規定する組合等(以下本項及び次条第三項において「組合等」という。)が当該認定に係る同法第四条第一項の計画に従つて実施する同項の技術開発事業の用に供する施設(政令で定めるものに限る。)に係るものの新築又は増築で当該組合等が建築主であるものに係る新増設事業所床面積に対しては、当該新築又は増築が当該計画の認定を受けた日から同日後政令で定める期間を経過する日までの間に行われたときに限り、第七百一条の三十二第一項の規定にかかわらず、新増設に係る事業所税を課することができない。この場合においては、第七百一条の三十四第十項の規定を準用する。
附則第三十二条の三の二第二項中「本項」の下に「及び次項」を加え、同条第三項中「前二項」を「前三項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 前条第六項に規定する施設に係る事業所等において組合等が行う事業に対して課する事業に係る事業所税のうち資産割の課税標準となるべき事業所床面積の算定については、当該事業に係る同項に規定する政令で定める期間を経過する日以後に最初に終了する事業年度分までに限り、当該施設に係る事業所等に係る事業所床面積から当該施設に係る事業所床面積の二分の一に相当する面積を控除するものとする。この場合においては、第七百一条の四十一第八項の規定を準用する。
(中小企業庁設置法の一部改正)
第四条 中小企業庁設置法(昭和二十三年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第六号の三の次に次の一号を加える。
六の四 中小企業技術開発促進臨時措置法(昭和六十年法律第五十五号)の施行に関すること。
大蔵大臣 竹下登
通商産業大臣 村田敬次郎
自治大臣 古屋亨
内閣総理大臣 中曽根康弘