特定不況地域中小企業対策臨時措置法
法令番号: 法律第百六号
公布年月日: 昭和53年11月18日
法令の形式: 法律
特定不況地域中小企業対策臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和五十三年十一月十八日
内閣総理大臣 福田赳夫
法律第百六号
特定不況地域中小企業対策臨時措置法
(目的)
第一条 この法律は、最近における内外の経済的事情の著しい変化により、特定の地域において、中小企業者の経営が著しく不安定になり、かつ、雇用事情が著しく悪化している状況にかんがみ、これらの中小企業者の経営の安定を図るための措置を講ずることにより、別に講じられる失業の予防、再就職の促進等の措置と相まつて、これらの地域における経済の安定等に寄与することを目的とする。
(定義等)
第二条 この法律において「中小企業者」とは、次の各号の一に該当する者をいう。
一 資本の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、工業、鉱業、運送業その他の業種(次号に掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本の額又は出資の総額が千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であつて、小売業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営むもの並びに資本の額又は出資の総額が三千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、卸売業に属する事業を主たる事業として営むもの
三 企業組合
四 協業組合
五 事業協同組合又は協同組合連合会その他の特別の法律により設立された組合又はその連合会であつて、政令で定めるもの
2 この法律において「特定不況業種」とは、最近における内外の経済的事情の著しい変化により、その業種に属する事業の目的物たる物品又はその業種に属する事業の目的たる役務の供給能力が著しく過剰となり、かつ、その状態が長期にわたり継続することが見込まれるため、その業種に属する事業を行う事業所の相当部分において事業の廃止又は事業規模の縮小(以下「事業の廃止等」という。)を余儀なくされている業種であつて、政令で定めるものをいう。
3 この法律において「特定不況地域」とは、次の各号に掲げる要件に該当する市町村(特別区を含む。以下同じ。)であつて政令で定めるものの区域をいう。
一 特定不況業種に属する事業を主たる事業として行う事業所(以下「特定事業所」という。)であつてその市町村の区域内に所在するものにおいて、事業の廃止等が相当の規模で行われていること。
二 その市町村の区域内に所在する事業所(特定事業所を除く。)の事業活動がその市町村の区域内に所在する特定事業所の事業活動に相当程度依存しているため、前号に規定する事態の発生に起因して、その市町村の区域内に事業所を有する相当数の中小企業者の事業活動に著しい支障が生じていること。
4 前項の政令は、この法律に基づく中小企業者の経営の安定を図るための措置と別に講じられる失業の予防、再就職の促進等の措置とが総合的かつ効果的に実施されることを確保するため、その定めようとする市町村の区域及びその近隣の地域における離職者の発生の状況、雇用の機会の水準その他の雇用に関する状況を考慮して定めるものとする。
(認定)
第三条 特定不況地域内に事業所を有する中小企業者であつて、その事業所における主たる事業の目的物たる物品又はその事業所における主たる事業の目的たる役務に係る取引額が減少し、又は減少する見通しが生じたため、その事業活動に支障を生じているものは、その特定不況地域を管轄する市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の認定を受けることができる。ただし、当該取引額の減少又はその減少の見通しがその特定不況地域内に所在する特定事業所における事業の廃止等に起因するものでないと認められるときは、この限りでない。
2 特定不況地域内に所在する特定事業所の行う事業と密接な関連を有する事業を行う事業所が相当数所在する等特定不況地域と密接な経済的関連を有するその周辺の市町村で特定不況地域ごとに政令で定めるもの(以下「関連市町村」という。)の区域内に事業所を有する中小企業者であつて、その特定不況地域内に所在する特定事業所における事業の廃止等に起因して、その事業所における主たる事業の目的物たる物品又はその事業所における主たる事業の目的たる役務に係る取引額が減少し、又は減少する見通しが生じたため、その事業活動に支障を生じているものは、その事業所の所在地を管轄する市町村長の認定を受けることができる。
(資金の確保)
第四条 国は、前条第一項又は第二項の認定を受けた中小企業者(以下「認定中小企業者」という。)がその経営の安定を図るのに必要な資金及び事業の転換を行うのに必要な資金の確保に努めるものとする。
(中小企業近代化資金等助成法による貸付金の償還期間の延長)
第五条 都道府県は、中小企業近代化資金等助成法(昭和三十一年法律第百十五号)第三条第一項に規定する貸付けに係る貸付金であつて、特定不況地域内又は関連市町村の区域内に事業所を有する中小企業者で当該特定不況地域を指定する第二条第三項の政令の施行の日又は当該関連市町村を指定する第三条第二項の政令の施行の日(以下「指定日」という。)の前にその貸付けを受けたものが同条第一項又は第二項の認定を受けた場合における当該中小企業者に対するもの(特定不況地域内又は関連市町村の区域内に事業所を有する中小企業者で同法第三条第一項第二号の貸与機関から指定日の前にその事業の用に供する設備の譲渡し又は貸付けを受けたものが第三条第一項又は第二項の認定を受けた場合における当該設備の譲渡し又は貸付けに充てるため貸与機関に貸し付けたものを含む。)については、同法第五条の規定にかかわらず、その償還期間を三年を超えない範囲内において延長することができる。
(中小企業信用保険法による特定不況地域関係保証の特例)
第六条 中小企業信用保険法(昭和二十五年法律第二百六十四号)第三条第一項に規定する普通保険(以下「普通保険」という。)、同法第三条の二第一項に規定する無担保保険(以下「無担保保険」という。)又は同法第三条の三第一項に規定する特別小口保険(以下「特別小口保険」という。)の保険関係であつて、特定不況地域関係保証(同法第三条第一項、第三条の二第一項又は第三条の三第一項に規定する債務の保証であつて、認定中小企業者がその経営の安定を図るのに必要な資金(第三条第一項又は第二項の認定に係る事業所において事業を継続することが困難となつたためその事業所を移転する場合における当該移転に必要な資金を含む。以下この項において同じ。)に係るもの又は第二条第一項第五号に掲げる者(認定中小企業者であるもの又はその構成員の三分の二以上が認定中小企業者であるものに限る。)がその構成員たる認定中小企業者に対してその経営の安定を図るのに必要な資金を貸し付けるために必要な資金に係るもので、特定不況地域及び関連市町村の区域ごとに政令で定める日までに受けたものをいう。以下同じ。)を受けた中小企業者に係るものについての同法第三条第一項、第三条の二第一項及び第三項並びに第三条の三第一項及び第二項の規定の適用については、同法第三条第一項中「保険価額の合計額が」とあるのは「特定不況地域中小企業対策臨時措置法第六条第一項に規定する特定不況地域関係保証(以下「特定不況地域関係保証」という。)に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ」と、同法第三条の二第一項中「保険価額の合計額が八百万円」とあるのは「特定不況地域関係保証に係る保険関係の保険価額の合計額及びその他の保険関係の保険価額の合計額がそれぞれ千万円及び八百万円」と、同条第三項中「当該保証をした借入金の額が八百万円(当該債務者」とあるのは「特定不況地域関係保証及びその他の保証ごとに、当該保証をした借入金の額がそれぞれ千万円及び八百万円(特定不況地域関係保証及びその他の保証ごとに、当該債務者」と、「八百万円から」とあるのは「それぞれ千万円及び八百万円から」と、同法第三条の三第一項中「保険価額の合計額が」とあるのは「特定不況地域関係保証に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ」と、同条第二項中「当該保証をした」とあるのは「特定不況地域関係保証及びその他の保証ごとに、それぞれ当該保証をした」と、「当該債務者」とあるのは「特定不況地域関係保証及びその他の保証ごとに、当該債務者」とする。
2 普通保険の保険関係であつて、特定不況地域関係保証に係るものについての中小企業信用保険法第三条第二項及び同法第五条の規定の適用については、同法第三条第二項中「百分の七十」とあり、同法第五条中「百分の七十(無担保保険、特別小口保険及び公害防止保険にあつては、百分の八十)」とあるのは、「百分の八十」とする。
3 普通保険、無担保保険又は特別小口保険の保険関係であつて、特定不況地域関係保証に係るものについての保険料の額は、中小企業信用保険法第四条の規定にかかわらず、保険金額に年百分の二以内において政令で定める率を乗じて得た額とする。
4 特定不況地域内に所在する特定事業所における事業の廃止等に起因して事業活動に支障を生じていると認められる中小企業者が特定不況地域及び関連市町村の区域ごとに政令で定める日から第一項の政令で定める日までの間に、その経営の安定を図るのに必要な資金につき中小企業信用保険法第三条第一項、第三条の二第一項又は第三条の三第一項に規定する債務の保証を受けた場合において、その中小企業者が第三条第一項又は第二項の認定を受けたときは、その債務の保証を特定不況地域関係保証とみなして、前三項の規定を適用する。
(認定中小企業者についての課税の特例)
第七条 認定中小企業者について純損失又は欠損金を生じた場合は、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、所得税又は法人税の還付について特別の措置を講ずる。
2 前項に規定する所得税又は法人税の還付についての特別の措置の適用を受ける認定中小企業者については、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)で定めるところにより、道府県民税、事業税及び市町村民税に係る純損失又は欠損金の繰越しについて特別の措置を講ずる。
(特定不況地域における工場の新増設の促進等)
第八条 国は、特定不況地域における工場の新増設を促進することにより認定中小企業者の経営の安定に資するため、特定不況地域における工場の新増設の円滑な推進のための財政上の措置その他必要な措置を講ずるとともに、必要な資金の確保に努めるものとする。
第九条 特定不況地域以外の地域内に所在する事業用資産を譲渡して特定不況地域内において製造の事業の用に供する事業用資産を取得した場合には、租税特別措置法の定めるところにより、特定の事業用資産の買換えの場合の課税の特例の適用があるものとする。
2 特定不況地域内において製造の事業の用に供する設備を新設し、又は増設した者がある場合には、当該新設又は増設に伴い新たに取得し、又は製作し、若しくは建設した機械及び装置並びに工場用の建物及びその附属設備については、租税特別措置法の定めるところにより、特別償却を行うことができる。
(関連施策についての配慮等)
第十条 国は、認定中小企業者のための下請取引の広域的あつせんの実施のための助成を強化する等、中小企業に関連する施策の実施に際し認定中小企業者の経営の安定に特に配慮するとともに、公共事業の実施に関し特定不況地域における経済の安定の見地から必要な配慮を加えるものとする。
(関係地方公共団体の施策)
第十一条 関係地方公共団体は、国の施策と相まつて、中小企業の経営の安定その他の特定不況地域における経済の安定を図るための施策を総合的に実施するよう努めなければならない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(この法律の廃止)
2 この法律は、昭和五十八年六月三十日までに廃止するものとする。
(中小企業庁設置法の一部改正)
3 中小企業庁設置法(昭和二十三年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第七号の六の次に次の一号を加える。
七の七 特定不況地域中小企業対策臨時措置法(昭和五十三年法律第百六号)の施行に関すること。
第四条第三項中「、第七号の五及び第七号の六」を「及び第七号の五から第七号の七まで」に改める。
大蔵大臣 村山達雄
農林水産大臣 中川一郎
通商産業大臣 河本敏夫
運輸大臣 福永健司
内閣総理大臣 福田赳夫