社会保障研究所法
法令番号: 法律第156号
公布年月日: 昭和39年7月7日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

社会保障制度は経済成長に伴い整備されてきたが、制度間のアンバランスなど課題が残されている。また、経済成長や地域開発の進展、人口構造の変化に伴い、社会保障への期待と要請が高まっている。これらの諸問題に対応するため、社会保障制度審議会の答申・勧告も踏まえ、基礎的・総合的な調査研究機関として社会保障研究所を特殊法人として設立する。本法案では、研究所の目的・業務範囲、組織、会計方法、監督等について規定し、公正中立な立場から調査研究活動が行われるよう配慮する。

参照した発言:
第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号

審議経過

第46回国会

衆議院
(昭和39年2月20日)
参議院
(昭和39年2月20日)
(昭和39年3月10日)
衆議院
(昭和39年5月14日)
(昭和39年5月20日)
(昭和39年5月21日)
(昭和39年5月26日)
(昭和39年5月26日)
参議院
(昭和39年5月28日)
(昭和39年6月16日)
(昭和39年6月25日)
衆議院
(昭和39年6月26日)
参議院
(昭和39年6月26日)
(昭和39年6月26日)
社会保障研究所法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十九年七月七日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百五十六号
社会保障研究所法
目次
第一章
総則(第一条―第七条)
第二章
役員等(第八条―第十六条)
第三章
業務(第十七条・第十八条)
第四章
財務及び会計(第十九条―第二十六条)
第五章
監督(第二十七条・第二十八条)
第六章
雑則(第二十九条・第三十条)
第七章
罰則(第三十一条―第三十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 社会保障研究所は、社会保障に関する基礎的かつ総合的な調査研究を行ない、及びその成果を普及し、もつて国民の福祉の向上に寄与することを目的とする。
(法人格)
第二条 社会保障研究所(以下「研究所」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 研究所の事務所は、東京都に置く。
(定款)
第四条 研究所は、定款をもつて次の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 役員に関する事項
五 業務及びその執行に関する事項
六 資産に関する事項
七 会計に関する事項
八 定款の変更に関する事項
2 定款の変更は、厚生大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(登記)
第五条 研究所は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第六条 研究所でない者は、社会保障研究所という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第七条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、研究所に準用する。
第二章 役員等
(役員)
第八条 研究所に、役員として、所長一人、理事二人及び監事一人を置く。
(役員の職務及び権限)
第九条 所長は、研究所を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、定款で定めるところにより、所長を補佐して研究所の業務を掌理し、所長に事故があるときはその職務を代理し、所長が欠員のときはその職務を行なう。
3 監事は、研究所の業務を監査する。
4 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、所長又は厚生大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第十条 所長及び監事は、厚生大臣が任命する。
2 理事は、厚生大臣の認可を受けて、所長が任命する。
(役員の任期)
第十一条 所長及び理事の任期は、四年とし、監事の任期は、二年とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十二条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。
一 国務大臣、国会議員、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長
二 政府又は地方公共団体の職員(教育公務員で政令で定める者及び非常勤の者を除く。)
(役員の解任)
第十三条 厚生大臣又は所長は、それぞれの任命に係る役員が前条各号の一に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 厚生大臣又は所長は、それぞれの任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 所長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、厚生大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第十四条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、厚生大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第十五条 研究所と所長との利益が相反する事項については、所長は、代表権を有しない。この場合には、監事が研究所を代表する。
(職員の任命)
第十六条 研究所の職員は、所長が任命する。
第三章 業務
(業務)
第十七条 研究所は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 社会保障に関する基礎的かつ総合的な調査研究を行なうこと。
二 社会保障に関する情報及び資料を収集すること。
三 前各号に掲げる業務に係る成果を普及すること。
四 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するために必要な業務
2 研究所は、前項第四号に掲げる業務を行なおうとするときは、厚生大臣の認可を受けなければならない。
第十八条 研究所は、委託に基づいて前条第一項各号に掲げる業務を行なうことができる。この場合においては、あらかじめ厚生大臣の認可を受けなければならない。
第四章 財務及び会計
(事業年度)
第十九条 研究所の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(予算等の認可)
第二十条 研究所は、毎事業年度、予算及び事業計画を作成し、当該事業年度の開始前に、厚生大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第二十一条 研究所は、毎事業年度、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後二月以内に厚生大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
2 研究所は、前項の規定により財務諸表を厚生大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添附しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第二十二条 研究所は、毎事業年度、経営上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 研究所は、毎事業年度、経営上損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第二十三条 研究所は、厚生大臣の認可を受けて、一時借入金をすることができる。
2 前項の規定による一時借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第二十四条 研究所は、業務上の余裕金については、銀行への預金又は郵便貯金にするほか、これを他に運用してはならない。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第二十五条 研究所は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、厚生大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(厚生省令への委任)
第二十六条 この法律に規定するもののほか、研究所の財務及び会計に関し必要な事項は、厚生省令で定める。
第五章 監督
(監督)
第二十七条 研究所は、厚生大臣が監督する。
2 厚生大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、研究所に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第二十八条 厚生大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、研究所に対して報告を求め、又はその職員に研究所の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六章 雑則
(解散)
第二十九条 研究所の解散については、別に法律で定める。
(協議)
第三十条 厚生大臣は、次の場合には、あらかじめ大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第四条第二項、第十七条第二項、第二十条又は第二十三条第一項の規定による認可をしようとするとき。
二 第二十一条第一項又は第二十五条の規定による承認をしようとするとき。
三 第二十六条の厚生省令を定めようとするとき。
2 厚生大臣は、第二十条の認可をしようとする場合において、必要があると認めるときは、関係行政機関の長の意見を聞くものとする。
第七章 罰則
(罰則)
第三十一条 研究所の役員又は職員が、その職務に関して、わいろを収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役に処する。よつて不正の行為をし、又は相当の行為をしなかつたときは、五年以下の懲役に処する。
2 研究所の役員又は職員であつた者が、その在職中に請託を受けて、職務上不正の行為をし、又は相当の行為をしなかつたことに関し、わいろを収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役に処する。
3 犯人の収受したわいろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第三十二条 前条第一項又は第二項に規定する者に対してわいろを供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第三十三条 第二十八条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした研究所の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。
第三十四条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした研究所の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律により厚生大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第五条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第十七条第一項に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第二十四条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第二十七条第二項の規定による厚生大臣の命令に違反したとき。
第三十五条 第六条の規定に違反して社会保障研究所という名称を用いた者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(研究所の設立)
第二条 厚生大臣は、研究所の所長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された所長又は監事となるべき者は、研究所の成立の時において、この法律の規定によりそれぞれ所長又は監事に任命されたものとする。
第三条 厚生大臣は、設立委員を命じて、研究所の設立に関する事務を処理させる。
2 設立委員は、定款を作成して、厚生大臣の認可を受けなければならない。
3 厚生大臣は、前項の規定による認可をしようとするときは、あらかじめ大蔵大臣に協議しなければならない。
4 設立委員は、第二項の認可を受けたときは、遅滞なく、その事務を前条第一項の規定により指名された所長となるべき者に引き継がなければならない。
第四条 附則第二条第一項の規定により指名された所長となるべき者は、前条第四項の事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第五条 研究所は、設立の登記をすることによつて成立する。
(経過規定)
第六条 この法律の施行の際現に社会保障研究所という名称を使用している者は、この法律施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。
2 第六条の規定は、前項に規定する期間内は、同項に規定する者には、適用しない。
第七条 研究所の最初の事業年度は、第十九条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和四十年三月三十一日に終わるものとする。
第八条 研究所の最初の事業年度の予算及び事業計画については、第二十条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「研究所の成立後遅滞なく」とする。
(登録税法の一部改正)
第九条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「国民生活研究所」の下に「、社会保障研究所」を、「国民生活研究所法」の下に「、社会保障研究所法」を加える。
(所得税法の一部改正)
第十条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「国民生活研究所」の下に「、社会保障研究所」を加える。
(法人税法の一部改正)
第十一条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第五条第一項第六号中「国民生活研究所」の下に「、社会保障研究所」を加える。
(厚生省設置法の一部改正)
第十二条 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第十三号の次に次の一号を加える。
十三の二 社会保障研究所を監督すること。
第八条第一項第十二号の次に次の一号を加える。
十二の二 社会保障研究所に関すること。
(地方税法の一部改正)
第十三条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第六号中「国民生活研究所」の下に「、社会保障研究所」を加える。
法務大臣 賀屋興宣
大蔵大臣 田中角栄
厚生大臣 小林武治
自治大臣 赤沢正道
内閣総理大臣 池田勇人