海外技術協力事業団法
法令番号: 法律第百二十号
公布年月日: 昭和37年5月10日
法令の形式: 法律
海外技術協力事業団法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十七年五月十日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百二十号
海外技術協力事業団法
目次
第一章
総則(第一条―第七条)
第二章
役員及び職員(第八条―第十七条)
第三章
運営審議会(第十八条・第十九条)
第四章
業務(第二十条・第二十一条)
第五章
財務及び会計(第二十二条―第三十条)
第六章
監督(第三十一条・第三十二条)
第七章
雑則(第三十三条―第三十五条)
第八章
罰則(第三十六条―第三十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 海外技術協力事業団は、アジア地域その他の開発途上にある海外の地域(以下「アジア等の地域」という。)に対する条約その他の国際約束に基づく技術協力の実施に必要な業務を効率的に行なうことを目的とする。
(法人格)
第二条 海外技術協力事業団(以下「事業団」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 事業団は、事務所を東京都に置く。
(資本金)
第四条 事業団の資本金は、二億円とし、政府がその全額を出資する。
2 政府は、必要があると認めるときは、予算で定める金額の範囲内において、事業団に追加して出資することができる。
3 事業団は、前項の規定による政府の出資があつたときは、その出資額により資本金を増額するものとする。
(登記)
第五条 事業団は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第六条 事業団でない者は、海外技術協力事業団という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第七条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、事業団について準用する。
第二章 役員及び職員
(役員)
第八条 事業団に、役員として、会長一人、理事長一人、理事四人以内及び監事二人以内を置く。
2 事業団に、役員として、前項の理事のほか、非常勤の理事四人以内を置くことができる。
(役員の職務及び権限)
第九条 会長は、事業団を代表し、その業務を総理する。
2 理事長は、事業団を代表し、会長の定めるところにより、会長を補佐して事業団の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行なう。
3 理事は、会長の定めるところにより、会長及び理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、会長及び理事長に事故があるときはその職務を代理し、会長及び理事長が欠員のときはその職務を行なう。
4 監事は、事業団の業務を監査する。
(役員の任命)
第十条 会長、理事長及び監事は、外務大臣が任命する。
2 理事は、会長が外務大臣の認可を受けて任命する。
(役員の任期)
第十一条 会長、理事長及び理事の任期は、四年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十二条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。
一 国務大臣、国会議員、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長
二 政府又は地方公共団体の職員(審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者であつて、非常勤のものを除く。)
(役員の解任)
第十三条 外務大臣又は会長は、それぞれその任命に係る役員が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 外務大臣又は会長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 会長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、外務大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第十四条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、外務大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第十五条 事業団と会長又は理事長との利益が相反する事項については、会長及び理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事が事業団を代表する。
(職員の任命)
第十六条 事業団の職員は、会長が任命する。
(役員及び職員の地位)
第十七条 事業団の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 運営審議会
(運営審議会)
第十八条 事業団に、運営審議会を置く。
2 運営審議会は、会長の諮問に応じ、事業団の業務の運営に関する重要事項を審議する。
3 運営審議会は、事業団の業務の運営につき、会長に対して意見を述べることができる。
4 運営審議会は、委員十五人以内で組織する。
(委員)
第十九条 委員は、事業団の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、外務大臣の認可を受けて、会長が任命する。
2 委員の任期は、二年とする。
3 委員は、再任されることができる。
4 第十三条第二項及び第三項の規定は、委員について準用する。
第四章 業務
(業務の範囲)
第二十条 事業団は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 国の委託を受けて、次の業務を行なうこと。
イ アジア等の地域からの技術研修員に対し技術の研修を行なうこと。
ロ アジア等の地域に人員を派遣して技術協力を行なうこと。
ハ アジア等の地域に設置される技術協力センターに必要な人員の派遣、機械設備の調達等その設置及び運営に必要な業務を行なうこと。
ニ アジア等の地域における公共的な開発計画に関し基礎的調査を行なうこと。
二 前号イの技術研修員のための研修施設及び宿泊施設を設置し、及び運営すること。
三 前二号の業務に附帯する業務を行なうこと。
四 前三号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務を行なうこと。
2 事業団は、前項第四号に掲げる業務を行なおうとするときは、外務大臣の認可を受けなければならない。
(業務方法書)
第二十一条 事業団は、業務の開始の際、業務方法書を作成し、外務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、外務省令で定める。
第五章 財務及び会計
(事業年度)
第二十二条 事業団の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(事業計画、資金計画及び収支予算)
第二十三条 事業団は、毎事業年度開始前に、その事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算を作成し、外務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第二十四条 事業団は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後四月以内に外務大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 事業団は、前項の規定により財務諸表を外務大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書を添附し、並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見をつけなければならない。
(利益及び損失の処理)
第二十五条 事業団は、毎事業年度、経営上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 事業団は、毎事業年度、経営上損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(短期借入金)
第二十六条 事業団は、外務大臣の認可を受けて、短期借入金をすることができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができない金額に限り、外務大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第二十七条 事業団は、次の方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他外務大臣の指定する有価証券の取得
二 資金運用部への預託
三 銀行への預金又は郵便貯金
四 信託業務を営む銀行又は信託会社への金銭信託
(財産の処分等の制限)
第二十八条 事業団は、外務省令で定める重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、外務大臣の認可を受けなければならない。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第二十九条 事業団は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、外務大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(外務省令への委任)
第三十条 この法律に規定するもののほか、事業団の財務及び会計に関し必要な事項は、外務省令で定める。
第六章 監督
(監督)
第三十一条 事業団は、外務大臣が監督する。
2 外務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第三十二条 外務大臣は、必要があると認めるときは、事業団に対して業務及び資産の状況に関し報告をさせ、又はその職員に事業団の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第七章 雑則
(解散)
第三十三条 事業団の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議等)
第三十四条 外務大臣は、次の場合には大蔵大臣と協議しなければならない。
一 第二十条第二項、第二十一条第一項、第二十三条、第二十六条第一項若しくは第二項ただし書又は第二十八条の規定による認可をしようとするとき。
二 第二十一条第二項、第二十八条又は第三十条の規定により外務省令を定めようとするとき。
三 第二十四条第一項又は第二十九条の規定による承認をしようとするとき。
四 第二十七条第一号の規定による指定をしようとするとき。
2 外務大臣は、第二十条第一項第一号の委託をしようとするときは、あらかじめ当該委託業務の対象となる事業を所管する大臣と協議しなければならない。
(交付金の交付)
第三十五条 国は、事業団に対し、予算の範囲内で、事業団の業務の運営のために必要な経費の一部に相当する金額を交付することができる。
第八章 罰則
(罰則)
第三十六条 第三十二条第一項の規定による報告を求められて、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合においては、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。
第三十七条 次の各号の一に該当する場合においては、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律により外務大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第五条第一項の政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十条第一項に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第二十七条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十一条第二項の命令に違反したとき。
第三十八条 第六条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(事業団の設立)
第二条 外務大臣は、事業団の会長、理事長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された会長、理事長又は監事となるべき者は、事業団の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ会長、理事長又は監事に任命されたものとする。
第三条 外務大臣は、設立委員を命じて、事業団の設立に関する事務を処理させる。
第四条 設立委員は、設立の準備を完了したときは、遅滞なく、政府に対し、出資金の払込みの請求をしなければならない。
2 設立委員は、出資金の払込みがあつた日において、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。
第五条 附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者は、前条の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第六条 事業団は、設立の登記をすることによつて成立する。
(社団法人アジア協会からの引継ぎ)
第七条 昭和二十九年六月三十日に設立された社団法人アジア協会(以下この条において「社団法人アジア協会」という。)は、定款で定めるところにより、設立委員に対して、事業団においてその一切の権利及び義務を承継すべき旨を申し出ることができる。
2 設立委員は、前項の規定による申出があつたときは、遅滞なく、外務大臣の認可を申請しなければならない。
3 前項の認可があつたときは、社団法人アジア協会の一切の権利及び義務は、事業団の成立の時において事業団に承継されるものとし、社団法人アジア協会は、その時において解散するものとする。この場合においては、他の法令中法人の解散及び清算に関する規定は、適用しない。
4 事業団は、前項の規定により社団法人アジア協会の権利及び義務を承継した場合において、その資産の価額から負債の価額を控除した残額に相当する金額は、第二十五条第一項の積立金と区別して、積み立てなければならない。
5 第三項の規定により社団法人アジア協会が解散した場合における解散の登記については、政令で定める。
(非課税)
第八条 附則第七条第三項の規定により事業団が権利を承継する場合において、当該承継に係る不動産の取得については、不動産取得税を課することができない。
(経過規定)
第九条 この法律の施行の際現に海外技術協力事業団という名称を使用している者は、この法律の施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。
2 第六条の規定は、前項に規定する期間内は、同項に規定する者には、適用しない。
第十条 事業団の最初の事業年度は、第二十二条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十八年三月三十一日に終わるものとする。
第十一条 事業団の最初の事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算については、第二十三条中「毎事業年度開始前に」とあるのは、「事業団の成立後遅滞なく」とする。
(登録税法の一部改正)
第十二条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「新技術開発事業団」の下に「、海外技術協力事業団」を、「新技術開発事業団法」の下に「、海外技術協力事業団法」を加え、同条第十八号中「日本開発銀行」の下に「、海外技術協力事業団」を加え、同条第二十七号の三の次に次の一号を加える。
二十七ノ四 海外技術協力事業団ガ海外技術協力事業団法第二十条第一項第二号ノ業務ノ為ニスル土地、建物又ハ船舶(水産業ノ研修ノ為ニ直接使用スルモノニ限ル)ノ権利ノ取得又ハ所有権ノ保存ノ登記
(印紙税法の一部改正)
第十三条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五条第九号ノ五ノ二の次に次の一号を加える。
九ノ五ノ三 海外技術協力事業団ノ発スル証書、帳簿
(所得税法の一部改正)
第十四条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「新技術開発事業団」の下に「、海外技術協力事業団」を加える。
(法人税法の一部改正)
第十五条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第四条第三号中「新技術開発事業団」の下に「、海外技術協力事業団」を加える。
(地方税法の一部改正)
第十六条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の四第一項第三号中「新技術開発事業団」の下に「、海外技術協力事業団」を加える。
(行政管理庁設置法の一部改正)
第十七条 行政管理庁設置法(昭和二十三年法律第七十七号)の一部を次のように改正する。
第二条第十二号中「労働福祉事業団」の下に「、海外技術協力事業団」を加える。
(外務省設置法の一部改正)
第十八条 外務省設置法(昭和二十六年法律第二百八十三号)の一部を次のように改正する。
第十条の二中第五号を第六号とし、第四号の次に次の一号を加える。
五 海外技術協力事業団を監督すること。
法務大臣 植木庚子郎
外務大臣 小坂善太郎
大蔵大臣 水田三喜男
通商産業大臣 佐藤榮作
自治大臣 安井謙
内閣総理大臣 池田勇人
海外技術協力事業団法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十七年五月十日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百二十号
海外技術協力事業団法
目次
第一章
総則(第一条―第七条)
第二章
役員及び職員(第八条―第十七条)
第三章
運営審議会(第十八条・第十九条)
第四章
業務(第二十条・第二十一条)
第五章
財務及び会計(第二十二条―第三十条)
第六章
監督(第三十一条・第三十二条)
第七章
雑則(第三十三条―第三十五条)
第八章
罰則(第三十六条―第三十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 海外技術協力事業団は、アジア地域その他の開発途上にある海外の地域(以下「アジア等の地域」という。)に対する条約その他の国際約束に基づく技術協力の実施に必要な業務を効率的に行なうことを目的とする。
(法人格)
第二条 海外技術協力事業団(以下「事業団」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 事業団は、事務所を東京都に置く。
(資本金)
第四条 事業団の資本金は、二億円とし、政府がその全額を出資する。
2 政府は、必要があると認めるときは、予算で定める金額の範囲内において、事業団に追加して出資することができる。
3 事業団は、前項の規定による政府の出資があつたときは、その出資額により資本金を増額するものとする。
(登記)
第五条 事業団は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第六条 事業団でない者は、海外技術協力事業団という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第七条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、事業団について準用する。
第二章 役員及び職員
(役員)
第八条 事業団に、役員として、会長一人、理事長一人、理事四人以内及び監事二人以内を置く。
2 事業団に、役員として、前項の理事のほか、非常勤の理事四人以内を置くことができる。
(役員の職務及び権限)
第九条 会長は、事業団を代表し、その業務を総理する。
2 理事長は、事業団を代表し、会長の定めるところにより、会長を補佐して事業団の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行なう。
3 理事は、会長の定めるところにより、会長及び理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、会長及び理事長に事故があるときはその職務を代理し、会長及び理事長が欠員のときはその職務を行なう。
4 監事は、事業団の業務を監査する。
(役員の任命)
第十条 会長、理事長及び監事は、外務大臣が任命する。
2 理事は、会長が外務大臣の認可を受けて任命する。
(役員の任期)
第十一条 会長、理事長及び理事の任期は、四年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十二条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。
一 国務大臣、国会議員、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長
二 政府又は地方公共団体の職員(審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者であつて、非常勤のものを除く。)
(役員の解任)
第十三条 外務大臣又は会長は、それぞれその任命に係る役員が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 外務大臣又は会長は、それぞれその任命に係る役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
3 会長は、前項の規定により理事を解任しようとするときは、外務大臣の認可を受けなければならない。
(役員の兼職禁止)
第十四条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、外務大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第十五条 事業団と会長又は理事長との利益が相反する事項については、会長及び理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事が事業団を代表する。
(職員の任命)
第十六条 事業団の職員は、会長が任命する。
(役員及び職員の地位)
第十七条 事業団の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 運営審議会
(運営審議会)
第十八条 事業団に、運営審議会を置く。
2 運営審議会は、会長の諮問に応じ、事業団の業務の運営に関する重要事項を審議する。
3 運営審議会は、事業団の業務の運営につき、会長に対して意見を述べることができる。
4 運営審議会は、委員十五人以内で組織する。
(委員)
第十九条 委員は、事業団の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、外務大臣の認可を受けて、会長が任命する。
2 委員の任期は、二年とする。
3 委員は、再任されることができる。
4 第十三条第二項及び第三項の規定は、委員について準用する。
第四章 業務
(業務の範囲)
第二十条 事業団は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 国の委託を受けて、次の業務を行なうこと。
イ アジア等の地域からの技術研修員に対し技術の研修を行なうこと。
ロ アジア等の地域に人員を派遣して技術協力を行なうこと。
ハ アジア等の地域に設置される技術協力センターに必要な人員の派遣、機械設備の調達等その設置及び運営に必要な業務を行なうこと。
ニ アジア等の地域における公共的な開発計画に関し基礎的調査を行なうこと。
二 前号イの技術研修員のための研修施設及び宿泊施設を設置し、及び運営すること。
三 前二号の業務に附帯する業務を行なうこと。
四 前三号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務を行なうこと。
2 事業団は、前項第四号に掲げる業務を行なおうとするときは、外務大臣の認可を受けなければならない。
(業務方法書)
第二十一条 事業団は、業務の開始の際、業務方法書を作成し、外務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、外務省令で定める。
第五章 財務及び会計
(事業年度)
第二十二条 事業団の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(事業計画、資金計画及び収支予算)
第二十三条 事業団は、毎事業年度開始前に、その事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算を作成し、外務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(財務諸表)
第二十四条 事業団は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後四月以内に外務大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 事業団は、前項の規定により財務諸表を外務大臣に提出するときは、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書を添附し、並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見をつけなければならない。
(利益及び損失の処理)
第二十五条 事業団は、毎事業年度、経営上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 事業団は、毎事業年度、経営上損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(短期借入金)
第二十六条 事業団は、外務大臣の認可を受けて、短期借入金をすることができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができない金額に限り、外務大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第二十七条 事業団は、次の方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他外務大臣の指定する有価証券の取得
二 資金運用部への預託
三 銀行への預金又は郵便貯金
四 信託業務を営む銀行又は信託会社への金銭信託
(財産の処分等の制限)
第二十八条 事業団は、外務省令で定める重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、外務大臣の認可を受けなければならない。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第二十九条 事業団は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、外務大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(外務省令への委任)
第三十条 この法律に規定するもののほか、事業団の財務及び会計に関し必要な事項は、外務省令で定める。
第六章 監督
(監督)
第三十一条 事業団は、外務大臣が監督する。
2 外務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第三十二条 外務大臣は、必要があると認めるときは、事業団に対して業務及び資産の状況に関し報告をさせ、又はその職員に事業団の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第七章 雑則
(解散)
第三十三条 事業団の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議等)
第三十四条 外務大臣は、次の場合には大蔵大臣と協議しなければならない。
一 第二十条第二項、第二十一条第一項、第二十三条、第二十六条第一項若しくは第二項ただし書又は第二十八条の規定による認可をしようとするとき。
二 第二十一条第二項、第二十八条又は第三十条の規定により外務省令を定めようとするとき。
三 第二十四条第一項又は第二十九条の規定による承認をしようとするとき。
四 第二十七条第一号の規定による指定をしようとするとき。
2 外務大臣は、第二十条第一項第一号の委託をしようとするときは、あらかじめ当該委託業務の対象となる事業を所管する大臣と協議しなければならない。
(交付金の交付)
第三十五条 国は、事業団に対し、予算の範囲内で、事業団の業務の運営のために必要な経費の一部に相当する金額を交付することができる。
第八章 罰則
(罰則)
第三十六条 第三十二条第一項の規定による報告を求められて、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合においては、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。
第三十七条 次の各号の一に該当する場合においては、その違反行為をした事業団の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律により外務大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第五条第一項の政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十条第一項に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第二十七条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十一条第二項の命令に違反したとき。
第三十八条 第六条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(事業団の設立)
第二条 外務大臣は、事業団の会長、理事長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された会長、理事長又は監事となるべき者は、事業団の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ会長、理事長又は監事に任命されたものとする。
第三条 外務大臣は、設立委員を命じて、事業団の設立に関する事務を処理させる。
第四条 設立委員は、設立の準備を完了したときは、遅滞なく、政府に対し、出資金の払込みの請求をしなければならない。
2 設立委員は、出資金の払込みがあつた日において、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。
第五条 附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者は、前条の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第六条 事業団は、設立の登記をすることによつて成立する。
(社団法人アジア協会からの引継ぎ)
第七条 昭和二十九年六月三十日に設立された社団法人アジア協会(以下この条において「社団法人アジア協会」という。)は、定款で定めるところにより、設立委員に対して、事業団においてその一切の権利及び義務を承継すべき旨を申し出ることができる。
2 設立委員は、前項の規定による申出があつたときは、遅滞なく、外務大臣の認可を申請しなければならない。
3 前項の認可があつたときは、社団法人アジア協会の一切の権利及び義務は、事業団の成立の時において事業団に承継されるものとし、社団法人アジア協会は、その時において解散するものとする。この場合においては、他の法令中法人の解散及び清算に関する規定は、適用しない。
4 事業団は、前項の規定により社団法人アジア協会の権利及び義務を承継した場合において、その資産の価額から負債の価額を控除した残額に相当する金額は、第二十五条第一項の積立金と区別して、積み立てなければならない。
5 第三項の規定により社団法人アジア協会が解散した場合における解散の登記については、政令で定める。
(非課税)
第八条 附則第七条第三項の規定により事業団が権利を承継する場合において、当該承継に係る不動産の取得については、不動産取得税を課することができない。
(経過規定)
第九条 この法律の施行の際現に海外技術協力事業団という名称を使用している者は、この法律の施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。
2 第六条の規定は、前項に規定する期間内は、同項に規定する者には、適用しない。
第十条 事業団の最初の事業年度は、第二十二条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十八年三月三十一日に終わるものとする。
第十一条 事業団の最初の事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算については、第二十三条中「毎事業年度開始前に」とあるのは、「事業団の成立後遅滞なく」とする。
(登録税法の一部改正)
第十二条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「新技術開発事業団」の下に「、海外技術協力事業団」を、「新技術開発事業団法」の下に「、海外技術協力事業団法」を加え、同条第十八号中「日本開発銀行」の下に「、海外技術協力事業団」を加え、同条第二十七号の三の次に次の一号を加える。
二十七ノ四 海外技術協力事業団ガ海外技術協力事業団法第二十条第一項第二号ノ業務ノ為ニスル土地、建物又ハ船舶(水産業ノ研修ノ為ニ直接使用スルモノニ限ル)ノ権利ノ取得又ハ所有権ノ保存ノ登記
(印紙税法の一部改正)
第十三条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五条第九号ノ五ノ二の次に次の一号を加える。
九ノ五ノ三 海外技術協力事業団ノ発スル証書、帳簿
(所得税法の一部改正)
第十四条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「新技術開発事業団」の下に「、海外技術協力事業団」を加える。
(法人税法の一部改正)
第十五条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第四条第三号中「新技術開発事業団」の下に「、海外技術協力事業団」を加える。
(地方税法の一部改正)
第十六条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の四第一項第三号中「新技術開発事業団」の下に「、海外技術協力事業団」を加える。
(行政管理庁設置法の一部改正)
第十七条 行政管理庁設置法(昭和二十三年法律第七十七号)の一部を次のように改正する。
第二条第十二号中「労働福祉事業団」の下に「、海外技術協力事業団」を加える。
(外務省設置法の一部改正)
第十八条 外務省設置法(昭和二十六年法律第二百八十三号)の一部を次のように改正する。
第十条の二中第五号を第六号とし、第四号の次に次の一号を加える。
五 海外技術協力事業団を監督すること。
法務大臣 植木庚子郎
外務大臣 小坂善太郎
大蔵大臣 水田三喜男
通商産業大臣 佐藤栄作
自治大臣 安井謙
内閣総理大臣 池田勇人