アジア経済研究所法
法令番号: 法律第五十一号
公布年月日: 昭和35年4月1日
法令の形式: 法律
アジア経済研究所法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十五年四月一日
内閣総理大臣 岸信介
法律第五十一号
アジア経済研究所法
目次
第一章
総則(第一条―第十条)
第二章
役員等(第十一条―第二十一条)
第三章
業務(第二十二条)
第四章
財務及び会計(第二十三条―第三十三条)
第五章
監督(第三十四条・第三十五条)
第六章
雑則(第三十六条―第三十八条)
第七章
罰則(第三十九条―第四十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 アジア経済研究所は、アジア地域等の経済及びこれに関連する諸事情について基礎的かつ総合的な調査研究を行ない、並びにその成果を普及し、もつてこれらの地域との貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与することを目的とする。
(法人格)
第二条 アジア経済研究所(以下「研究所」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 研究所の事務所は、東京都に置く。
(資本金)
第四条 研究所の資本金は、一億円と研究所の設立に際し政府以外の者が出資する額の合計額とする。
2 政府は、研究所の設立に際し前項の一億円を出資するものとする。
3 研究所は、必要があるときは、通商産業大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
4 政府は、前項の規定により研究所がその資本金を増加するときは、予算の範囲内において、研究所に出資することができる。
(持分の払戻し等の禁止)
第五条 研究所は、出資者に対し、その持分を払い戻すことができない。
2 研究所は、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。
(持分の譲渡等)
第六条 政府以外の出資者(第三十六条第二項並びに第三十七条第一項及び第二項の規定を除き、以下単に「出資者」という。)は、その持分を譲渡することができる。
2 出資者の持分の移転は、取得者の氏名又は名称及びその住所を出資者原簿に記載した後でなければ、研究所その他の第三者に対抗することができない。
(定款)
第七条 研究所は、定款をもつて次の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金、出資及び資産に関する事項
五 役員、参与及び会議に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 会計に関する事項
八 公告に関する事項
九 定款の変更に関する事項
2 定款の変更は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(登記)
第八条 研究所は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第九条 研究所でない者は、アジア経済研究所という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第十条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、研究所に準用する。
第二章 役員等
(役員)
第十一条 研究所に、役員として、会長一人、所長一人、理事二人以内及び監事二人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第十二条 会長は、研究所を代表し、その業務を総理する。
2 所長は、研究所を代表し、定款で定めるところにより、会長を補佐して研究所の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行なう。
3 理事は、定款で定めるところにより、会長及び所長を補佐して研究所の業務を掌理し、会長及び所長に事故があるときはその職務を代理し、会長及び所長が欠員のときはその職務を行なう。
4 監事は、研究所の業務を監査する。
(役員の任命)
第十三条 会長、所長及び監事は、通商産業大臣が任命する。
2 理事は、会長が任命する。
(役員の任期)
第十四条 会長、所長及び理事の任期は、四年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十五条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。
一 国務大臣、国会議員、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長
二 政府又は地方公共団体の職員(教育公務員で政令で定める者及び非常勤の者を除く。)
(役員の解任)
第十六条 通商産業大臣は、会長、所長又は監事が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 会長は、理事が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
3 通商産業大臣は、会長、所長若しくは監事が心身の故障のため職務の執行に堪えないと認めるとき、又は会長、所長若しくは監事に職務上の義務違反その他会長、所長若しくは監事たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。
4 会長は、理事が心身の故障のため職務の執行に堪えないと認めるとき、又は理事に職務上の義務違反その他理事たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。
(役員の兼職禁止)
第十七条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、通商産業大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第十八条 研究所と会長又は所長との利益が相反する事項については、会長及び所長は、代表権を有しない。この場合には、監事が研究所を代表する。
(参与会)
第十九条 研究所に、参与会を置く。
2 参与会は、会長の諮問に応じ、研究所の業務の運営に関する重要事項を審議する。
3 参与会は、前項の事項に関し、会長に意見を述べることができる。
4 参与会は、参与十五人以内で組織する。
5 参与は、研究所の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、通商産業大臣の認可を受けて、会長が任命する。
6 参与の任期は、二年とする。
7 参与は、再任されることができる。
(職員の任命)
第二十条 研究所の職員は、会長が任命する。
(役員及び職員の地位)
第二十一条 研究所の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 業務
(業務)
第二十二条 研究所は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 アジア地域の経済及びこれに関連する諸事情に関する資料を収集すること。
二 アジア地域の経済及びこれに関連する諸事情に関し、文献その他の資料により調査研究を行ない、又は現地調査を行なうこと。
三 前二号に掲げる業務に係る成果を定期的に、若しくは時宜に応じて、又は依頼に応じて、提供すること。
四 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務
2 研究所は、前項第四号に掲げる業務を行なおうとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
3 研究所は、第一項の業務を妨げない範囲内において、アジア地域以外の地域の経済及びこれに関連する諸事情について調査研究を行ない、並びにその成果を普及することができる。
第四章 財務及び会計
(事業年度)
第二十三条 研究所の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(事業計画、資金計画及び収支予算)
第二十四条 研究所は、毎事業年度開始前に、その事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算を作成し、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(決算)
第二十五条 研究所は、毎事業年度の決算を翌年度の六月三十日までに完結しなければならない。
(貸借対照表、損益計算書及び決算報告書)
第二十六条 研究所は、毎事業年度、貸借対照表、損益計算書及び決算報告書を作成し、監事の意見を附して、決算完結後二月以内に通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
(書類の送付)
第二十七条 研究所は、第二十四条又は前条に規定する認可又は承認を受けたときは、当該認可又は承認に係る事業計画、資金計画及び収支予算に関する書類又は貸借対照表、損益計算書及び決算報告書を出資者に送付しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第二十八条 研究所は、毎事業年度、経営上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 研究所は、毎事業年度、経営上損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第二十九条 研究所は、通商産業大臣の認可を受けて、短期借入金をすることができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、通商産業大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第三十条 研究所は、業務上の余裕金については、銀行への預金若しくは郵便貯金又は信託会社若しくは信託業務を行なう銀行への金銭信託にするほか、これを他に運用してはならない。
(財産の処分等の制限)
第三十一条 研究所は、通商産業省令で定める重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(役員の給与及び退職手当の支給の基準)
第三十二条 研究所は、その役員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、通商産業大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(通商産業省令への委任)
第三十三条 この法律及びこれに基づく命令に規定するもののほか、研究所の財務及び会計に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。
第五章 監督
(監督)
第三十四条 研究所は、通商産業大臣が監督する。
2 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、研究所に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第三十五条 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、研究所に対して、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、研究所の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六章 雑則
(出資者原簿)
第三十六条 研究所は、出資者原簿を備えて置かなければならない。
2 出資者原薄には、各出資者について次の事項を記載しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 出資の引受け及び払込みの年月日
三 出資額
3 出資者は、出資者原簿の閲覧を求めることができる。
(解散)
第三十七条 研究所は、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各出資者に対し、その出資額に応じて分配しなければならない。
2 前項の規定により各出資者に分配することができる額は、その出資額を限度とする。
3 前二項に規定するもののほか、研究所の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第三十八条 通商産業大臣は、次の場合には、あらかじめ大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第二十四条、第二十九条第一項若しくは第二項又は第三十一条の認可をしようとするとき。
二 第二十六条又は第三十二条の承認をしようとするとき。
三 第三十一条又は第三十三条の通商産業省令を定めようとするとき。
第七章 罰則
(罰則)
第三十九条 第三十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした研究所の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。
第四十条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした研究所の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律により通商産業大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第八条第一項の政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十二条第一項及び第三項に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第三十条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十四条第二項の命令に違反したとき。
第四十一条 第九条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(研究所の設立)
第二条 通商産業大臣は、研究所の会長、所長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された会長、所長又は監事となるべき者は、研究所の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ会長、所長又は監事に任命されたものとする。
第三条 通商産業大臣は、設立委員を命じて、研究所の設立に関する事務を処理させる。
2 設立委員は、定款を作成して、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
第四条 設立委員は、前条第二項の認可を受けたときは、政府以外の者に対し研究所に対する出資を募集しなければならない。
2 設立委員は、前項の募集が終わつたときは、通商産業大臣に対し設立の認可を申請しなければならない。
第五条 設立委員は、前条第二項の認可を受けたときは、政府及び出資の募集に応じた政府以外の者に対し、出資金の払込みを求めなければならない。
2 設立委員は、出資金の払込みがあつた日において、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。
第六条 附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者は、前条第二項の事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第七条 研究所は、設立の登記をすることによつて成立する。
(財団法人アジア経済研究所からの引継ぎ)
第八条 昭和三十三年十二月十九日に設立された財団法人アジア経済研究所(以下この条において「財団法人アジア経済研究所」という。)は、寄附行為で定めるところにより、設立委員に対して、研究所においてその一切の権利及び義務を承継すべき旨を申し出ることができる。
2 設立委員は、前項の規定による申出があつたときは、遅滞なく、通商産業大臣の認可を申請しなければならない。
3 前項の認可があつたときは、財団法人アジア経済研究所の一切の権利及び義務は、研究所の成立の時において研究所に承継されるものとし、財団法人アジア経済研究所は、その時において解散するものとする。この場合においては、他の法令中法人の解散及び清算に関する規定は、適用しない。
4 前項の規定により財団法人アジア経済研究所が解散した場合における解散の登記については、政令で定める。
(経過規定)
第九条 この法律の施行の際現にアジア経済研究所という名称を使用している者は、この法律の施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。
2 第九条の規定は、前項に規定する期間内は、同項に規定する者には、適用しない。
第十条 研究所の最初の事業年度は、第二十三条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十六年三月三十一日に終わるものとする。
第十一条 研究所の最初の事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算については、第二十四条中「毎事業年度開始前に」とあるのは、「研究所の成立後遅滞なく」とする。
(登録税法の一部改正)
第十二条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「理化学研究所」の下に「、アジア経済研究所」を、「理化学研究所法」の下に「、アジア経済研究所法」を加える。
(所得税法の一部改正)
第十三条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「日本観光協会」の下に「、アジア経済研究所」を加える。
(法人税法の一部改正)
第十四条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第五条第一項第六号中「及び日本観光協会」を「、日本観光協会及びアジア経済研究所」に改める。
(地方税法の一部改正)
第十五条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第六号中「及び日本観光協会」を「、日本観光協会及びアジア経済研究所」に改める。
(通商産業省設置法の一部改正)
第十六条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第八条第一項第十号の次に次の一号を加える。
十の二 アジア経済研究所に関すること。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 井野碩哉
大蔵大臣 佐藤榮作
通商産業大臣 池田勇人
アジア経済研究所法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十五年四月一日
内閣総理大臣 岸信介
法律第五十一号
アジア経済研究所法
目次
第一章
総則(第一条―第十条)
第二章
役員等(第十一条―第二十一条)
第三章
業務(第二十二条)
第四章
財務及び会計(第二十三条―第三十三条)
第五章
監督(第三十四条・第三十五条)
第六章
雑則(第三十六条―第三十八条)
第七章
罰則(第三十九条―第四十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 アジア経済研究所は、アジア地域等の経済及びこれに関連する諸事情について基礎的かつ総合的な調査研究を行ない、並びにその成果を普及し、もつてこれらの地域との貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与することを目的とする。
(法人格)
第二条 アジア経済研究所(以下「研究所」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 研究所の事務所は、東京都に置く。
(資本金)
第四条 研究所の資本金は、一億円と研究所の設立に際し政府以外の者が出資する額の合計額とする。
2 政府は、研究所の設立に際し前項の一億円を出資するものとする。
3 研究所は、必要があるときは、通商産業大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。
4 政府は、前項の規定により研究所がその資本金を増加するときは、予算の範囲内において、研究所に出資することができる。
(持分の払戻し等の禁止)
第五条 研究所は、出資者に対し、その持分を払い戻すことができない。
2 研究所は、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。
(持分の譲渡等)
第六条 政府以外の出資者(第三十六条第二項並びに第三十七条第一項及び第二項の規定を除き、以下単に「出資者」という。)は、その持分を譲渡することができる。
2 出資者の持分の移転は、取得者の氏名又は名称及びその住所を出資者原簿に記載した後でなければ、研究所その他の第三者に対抗することができない。
(定款)
第七条 研究所は、定款をもつて次の事項を規定しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金、出資及び資産に関する事項
五 役員、参与及び会議に関する事項
六 業務及びその執行に関する事項
七 会計に関する事項
八 公告に関する事項
九 定款の変更に関する事項
2 定款の変更は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(登記)
第八条 研究所は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第九条 研究所でない者は、アジア経済研究所という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第十条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、研究所に準用する。
第二章 役員等
(役員)
第十一条 研究所に、役員として、会長一人、所長一人、理事二人以内及び監事二人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第十二条 会長は、研究所を代表し、その業務を総理する。
2 所長は、研究所を代表し、定款で定めるところにより、会長を補佐して研究所の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行なう。
3 理事は、定款で定めるところにより、会長及び所長を補佐して研究所の業務を掌理し、会長及び所長に事故があるときはその職務を代理し、会長及び所長が欠員のときはその職務を行なう。
4 監事は、研究所の業務を監査する。
(役員の任命)
第十三条 会長、所長及び監事は、通商産業大臣が任命する。
2 理事は、会長が任命する。
(役員の任期)
第十四条 会長、所長及び理事の任期は、四年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十五条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。
一 国務大臣、国会議員、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長
二 政府又は地方公共団体の職員(教育公務員で政令で定める者及び非常勤の者を除く。)
(役員の解任)
第十六条 通商産業大臣は、会長、所長又は監事が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 会長は、理事が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
3 通商産業大臣は、会長、所長若しくは監事が心身の故障のため職務の執行に堪えないと認めるとき、又は会長、所長若しくは監事に職務上の義務違反その他会長、所長若しくは監事たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。
4 会長は、理事が心身の故障のため職務の執行に堪えないと認めるとき、又は理事に職務上の義務違反その他理事たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。
(役員の兼職禁止)
第十七条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、通商産業大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第十八条 研究所と会長又は所長との利益が相反する事項については、会長及び所長は、代表権を有しない。この場合には、監事が研究所を代表する。
(参与会)
第十九条 研究所に、参与会を置く。
2 参与会は、会長の諮問に応じ、研究所の業務の運営に関する重要事項を審議する。
3 参与会は、前項の事項に関し、会長に意見を述べることができる。
4 参与会は、参与十五人以内で組織する。
5 参与は、研究所の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、通商産業大臣の認可を受けて、会長が任命する。
6 参与の任期は、二年とする。
7 参与は、再任されることができる。
(職員の任命)
第二十条 研究所の職員は、会長が任命する。
(役員及び職員の地位)
第二十一条 研究所の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 業務
(業務)
第二十二条 研究所は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 アジア地域の経済及びこれに関連する諸事情に関する資料を収集すること。
二 アジア地域の経済及びこれに関連する諸事情に関し、文献その他の資料により調査研究を行ない、又は現地調査を行なうこと。
三 前二号に掲げる業務に係る成果を定期的に、若しくは時宜に応じて、又は依頼に応じて、提供すること。
四 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務
2 研究所は、前項第四号に掲げる業務を行なおうとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
3 研究所は、第一項の業務を妨げない範囲内において、アジア地域以外の地域の経済及びこれに関連する諸事情について調査研究を行ない、並びにその成果を普及することができる。
第四章 財務及び会計
(事業年度)
第二十三条 研究所の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(事業計画、資金計画及び収支予算)
第二十四条 研究所は、毎事業年度開始前に、その事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算を作成し、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(決算)
第二十五条 研究所は、毎事業年度の決算を翌年度の六月三十日までに完結しなければならない。
(貸借対照表、損益計算書及び決算報告書)
第二十六条 研究所は、毎事業年度、貸借対照表、損益計算書及び決算報告書を作成し、監事の意見を附して、決算完結後二月以内に通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
(書類の送付)
第二十七条 研究所は、第二十四条又は前条に規定する認可又は承認を受けたときは、当該認可又は承認に係る事業計画、資金計画及び収支予算に関する書類又は貸借対照表、損益計算書及び決算報告書を出資者に送付しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第二十八条 研究所は、毎事業年度、経営上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 研究所は、毎事業年度、経営上損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金)
第二十九条 研究所は、通商産業大臣の認可を受けて、短期借入金をすることができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、通商産業大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第三十条 研究所は、業務上の余裕金については、銀行への預金若しくは郵便貯金又は信託会社若しくは信託業務を行なう銀行への金銭信託にするほか、これを他に運用してはならない。
(財産の処分等の制限)
第三十一条 研究所は、通商産業省令で定める重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(役員の給与及び退職手当の支給の基準)
第三十二条 研究所は、その役員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、通商産業大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(通商産業省令への委任)
第三十三条 この法律及びこれに基づく命令に規定するもののほか、研究所の財務及び会計に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。
第五章 監督
(監督)
第三十四条 研究所は、通商産業大臣が監督する。
2 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、研究所に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第三十五条 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、研究所に対して、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、研究所の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六章 雑則
(出資者原簿)
第三十六条 研究所は、出資者原簿を備えて置かなければならない。
2 出資者原薄には、各出資者について次の事項を記載しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 出資の引受け及び払込みの年月日
三 出資額
3 出資者は、出資者原簿の閲覧を求めることができる。
(解散)
第三十七条 研究所は、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各出資者に対し、その出資額に応じて分配しなければならない。
2 前項の規定により各出資者に分配することができる額は、その出資額を限度とする。
3 前二項に規定するもののほか、研究所の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第三十八条 通商産業大臣は、次の場合には、あらかじめ大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第二十四条、第二十九条第一項若しくは第二項又は第三十一条の認可をしようとするとき。
二 第二十六条又は第三十二条の承認をしようとするとき。
三 第三十一条又は第三十三条の通商産業省令を定めようとするとき。
第七章 罰則
(罰則)
第三十九条 第三十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした研究所の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。
第四十条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした研究所の役員又は職員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律により通商産業大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第八条第一項の政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十二条第一項及び第三項に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第三十条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十四条第二項の命令に違反したとき。
第四十一条 第九条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(研究所の設立)
第二条 通商産業大臣は、研究所の会長、所長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された会長、所長又は監事となるべき者は、研究所の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ会長、所長又は監事に任命されたものとする。
第三条 通商産業大臣は、設立委員を命じて、研究所の設立に関する事務を処理させる。
2 設立委員は、定款を作成して、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
第四条 設立委員は、前条第二項の認可を受けたときは、政府以外の者に対し研究所に対する出資を募集しなければならない。
2 設立委員は、前項の募集が終わつたときは、通商産業大臣に対し設立の認可を申請しなければならない。
第五条 設立委員は、前条第二項の認可を受けたときは、政府及び出資の募集に応じた政府以外の者に対し、出資金の払込みを求めなければならない。
2 設立委員は、出資金の払込みがあつた日において、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。
第六条 附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者は、前条第二項の事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第七条 研究所は、設立の登記をすることによつて成立する。
(財団法人アジア経済研究所からの引継ぎ)
第八条 昭和三十三年十二月十九日に設立された財団法人アジア経済研究所(以下この条において「財団法人アジア経済研究所」という。)は、寄附行為で定めるところにより、設立委員に対して、研究所においてその一切の権利及び義務を承継すべき旨を申し出ることができる。
2 設立委員は、前項の規定による申出があつたときは、遅滞なく、通商産業大臣の認可を申請しなければならない。
3 前項の認可があつたときは、財団法人アジア経済研究所の一切の権利及び義務は、研究所の成立の時において研究所に承継されるものとし、財団法人アジア経済研究所は、その時において解散するものとする。この場合においては、他の法令中法人の解散及び清算に関する規定は、適用しない。
4 前項の規定により財団法人アジア経済研究所が解散した場合における解散の登記については、政令で定める。
(経過規定)
第九条 この法律の施行の際現にアジア経済研究所という名称を使用している者は、この法律の施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。
2 第九条の規定は、前項に規定する期間内は、同項に規定する者には、適用しない。
第十条 研究所の最初の事業年度は、第二十三条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和三十六年三月三十一日に終わるものとする。
第十一条 研究所の最初の事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算については、第二十四条中「毎事業年度開始前に」とあるのは、「研究所の成立後遅滞なく」とする。
(登録税法の一部改正)
第十二条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「理化学研究所」の下に「、アジア経済研究所」を、「理化学研究所法」の下に「、アジア経済研究所法」を加える。
(所得税法の一部改正)
第十三条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「日本観光協会」の下に「、アジア経済研究所」を加える。
(法人税法の一部改正)
第十四条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第五条第一項第六号中「及び日本観光協会」を「、日本観光協会及びアジア経済研究所」に改める。
(地方税法の一部改正)
第十五条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第六号中「及び日本観光協会」を「、日本観光協会及びアジア経済研究所」に改める。
(通商産業省設置法の一部改正)
第十六条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第八条第一項第十号の次に次の一号を加える。
十の二 アジア経済研究所に関すること。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 井野碩哉
大蔵大臣 佐藤栄作
通商産業大臣 池田勇人