耐火建築促進法
法令番号: 法律第百六十号
公布年月日: 昭和27年5月31日
法令の形式: 法律
耐火建築促進法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年五月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百六十号
耐火建築促進法
(目的)
第一條 この法律は、都市における耐火建築物の建築を促進し、防火建築帯の造成を図り、火災その他の災害の防止、土地の合理的利用の増進及び木材の消費の節約に資し、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。
(防火建築帯造成の原則)
第二條 防火建築帯は、都市の枢要地帯にあつて、地上階数三以上の耐火建築物が帯状に建築された防火帯となるように造成されなければならない。
(用語の意義)
第三條 この法律における用語の意義は、第一号から第三号までに掲げるものについては、それぞれ当該各号に定めるところにより、第四号から第十一号までに掲げるものについては、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)及び建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)に定めるところによる。
一 耐火建築物 主要構造部が耐火構造である建築物をいう。
二 建築 建築物を新築し、又は増築(建築物の体積を増加しないものを除く。)することをいう。
三 防火地域 建築基準法第六十條第一項に規定する防火地域をいう。
四 主要構造部
五 耐火構造
六 建築物
七 都市計画区域
八 建築主
九 敷地
十 建築設備
十一 設計図書
(防火建築帯の指定)
第四條 建設大臣は、都市計画区域内の市町村における火災その他の災害を防止し、あわせて土地の合理的利用に資するため必要であると認めるときは、当該市町村の防火地域の全部又は一部について、防火建築帯を指定することができる。この場合においては、あらかじめ、当該市町村の長及び当該市町村を包括する都道府県の知事の意見を聞かなければならない。
2 建設大臣は、前項の規定により防火建築帯を指定しようとするときは、あらかじめ、国家消防庁長官の意見を聞かなければならない。
3 建設大臣は、第一項の規定により防火建築帯を指定したときは、これを官報で告示しなければならない。
(防火建築帯の区域内における耐火建築物に対する地方公共団体の補助)
第五條 地方公共団体は、前條第一項の規定により防火建築帯が指定された場合においては、当該区域内における耐火建築物の建築について、補助金を交付することができる。
(補助金の交付)
第六條 国は、防火建築帯の区域内において、地方公共団体が前條の規定により耐火建築物を建築する建築主に対して補助金を交付する場合又は当該地方公共団体が自らこれを建築する場合において、当該耐火建築物の建設大臣が指定する部分が、地上階数三以上のもの若しくは高さ十一メートル以上のもの又は基礎及び主要構造部を地上第三階以上の部分の増築を予定した構造とした二階建のものであるときは、当該耐火建築物の地上階数四以下及び地下第一階以上の部分について、当該地方公共団体に対して、その費用につき、予算の範囲内において、補助金を交付することができる。
2 建設大臣は、前項の規定により耐火建築物の部分を指定したときは、これを官報で告示しなければならない。
(補助金額の限度)
第七條 前條第一項の規定により国が地方公共団体に対して交付する補助金の額は、耐火建築物と木造の建築物との単位面積当りの標準建築費の差額の四分の一に相当する額に、補助の対象となる耐火建築物の床面積の合計を乗じた額以内とする。但し、当該耐火建築物を建築する者が地方公共団体以外の者である場合においては、地方公共団体が建築主に対して交付する補助金の二分の一に相当する額をこえることができない。
2 非常災害に因り多数の建築物が滅失した市町村において、第四條第一項の規定により指定した防火建築帯の区域で政令で定めるものの内においては、前項の規定は、非常災害の発生した日から一年間に限り、同項中「四分の一」とあるのは「三分の一」と読み替えて適用する。
3 第一項の標準建築費は、地域別及び構造別に建設大臣が定める。
(補助金交付の取消、停止又は返還)
第八條 地方公共団体の長は、第五條の規定により建築主に対して補助金を交付する場合で、且つ、当該補助に係る耐火建築物について第六條第一項の規定により国からの補助金の交付を受ける場合において、左の各号の一に該当する事由があるときは、当該建築主に対して、補助金の全部若しくは一部の交付を取り消し、その交付を停止し、又は交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
一 補助金を補助の目的以外に使用したとき。
二 補助に係る耐火建築物が建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律又はこれに基く命令若しくは條例(建築基準法第七十五條の規定による建築協定を含む。)の規定に違反して建築されたとき。
三 正当な理由がなくて、補助に係る耐火建築物の建築工事が地方公共団体から建築主に対して補助金交付の通知があつた日から三月以内に着手されないとき、又はその完了が著しく遅れたとき。
四 前各号の外、当該建築主がこの法律若しくはこの法律に基く命令の規定又はこれらに基く地方公共団体の長の処分に違反したとき。
2 建設大臣は、第六條第一項の規定により地方公共団体に対して補助金を交付する場合において、左の各号の一に該当する事由があるときは、当該地方公共団体に対して、補助金の全部若しくは一部の交付を取り消し、その交付を停止し、又は交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
一 地方公共団体の長が建築主について、前項各号の一に該当する事由があると認めて、当該建築主に対して、補助金の全部若しくは一部の交付を取り消し、その交付を停止し、若しくは交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命じたとき、又は地方公共団体の長がこれらの措置を講じない場合においても、建設大臣が建築主について、前項各号の一に該当する事由があると認めたとき。
二 地方公共団体が補助金を補助の目的以外に使用したとき。
三 地方公共団体が建築主である場合において、補助に係る耐火建築物が前項第二号又は第三号に該当するとき。
四 前各号の外、地方公共団体がこの法律若しくはこの法律に基く命令の規定又はこれらに基く建設大臣の処分に違反したとき。
3 前二項の規定により建設大臣又は地方公共団体の長が補助金の交付の取消若しくは停止又は交付した補助金の返還を命じようとする場合においては、あらかじめ、当該地方公共団体の長又は建築主に対し、釈明のため意見を述べ、及び自己のため有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
(補助金の交付及び返還の手続)
第九條 第六條第一項の規定による補助金の交付及び前條第二項の規定による補助金の返還に関して必要な手続は、建設省令で定める。
(建設大臣の指示監督)
第十條 建設大臣は、補助金の交付の目的を最もよく達成するため、必要があると認めるときは、その目的を達成するのに必要な限度において、補助金の交付を受ける地方公共団体の長又は当該補助に係る耐火建築物の建築主に対して、必要な指示を行い、報告書の提出を命じ、又は職員を指定して、当該補助に係る耐火建築物又は関係の物件若しくは設計図書その他の書類を実地検査させることができる。
2 前項の規定による実地検査において、現に居住の用に供している建築物に立ち入るときは、あらかじめ、その居住者の承諾を得なければならない。
3 第一項の規定により実地検査に当る職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
4 前項の規定による証票の様式は、建設省令で定める。
(防火建築帯の区域外における耐火建築物に対する地方公共団体の補助)
第十一條 地方公共団体は、防火建築帯として指定されていない区域においても、当該市町村における防火上有効な耐火建築物の建築を促進するため必要があると認める場合においては、当該耐火建築物の建築について、補助金を交付することができる。
(防火建築帯の区域内における土地の使用)
第十二條 防火建築帯の区域内において、その全部又は一部につき、当該地方公共団体の長が特に緊急に防火建築帯を造成する必要があると認める場合において、当該区域内における地上階数三以上の耐火建築物を建築する者がない部分(現に地上階数二以下の耐火建築物がある部分で、防火建築帯の効用を著しく害する虞がないと認めた部分を除く。)について、当該区域内の土地の所有者、当該土地の借地権者(当該土地を転貸している者を除く。以下同じ。)及び当該土地にある建築物の賃借権者の総数のそれぞれ三分の二以上の申出に基き、当該地方公共団体が自ら地上階数三以上の耐火建築物を建築しようとするときは、当該耐火建築物の敷地として必要な土地を使用することができる。
2 前項の規定により地方公共団体が土地を使用しようとする場合においては、当該地方公共団体の長は、あらかじめ、都市計画審議会令(大正八年勅令第四百八十三号)に基く都市計画審議会の意見を聞いた後に、当該耐火建築物の建築計画につき建設大臣の承認を受けなければならない。
3 第一項の規定による土地の使用については、この法律に別段の定がある場合を除く外、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の規定を適用する。
4 地方公共団体の長が第二項の規定による建設大臣の承認を受けようとするときは、建設省令で定める様式に従い、建築計画に係る区域(以下「起業地」という。)及び耐火建築物の建築を必要とする理由を記載した建築計画承認申請書に、左に掲げる書類を添附して、起業地を管轄する都道府県知事を経由して建設大臣に提出しなければならない。
一 事業計画書
二 起業地及び事業計画を表示する図面
三 起業地内の土地の所有者、当該土地の借地権者及び当該土地にある建築物の賃借権者の総数及び第一項の規定により申し出た者の数
四 起業地内に土地収用法第四條に規定する土地があるときは、その土地に関する調書、図面及び当該土地の管理者の意見
五 第二項の規定による都市計画審議会の意見
六 第五項の規定による建築計画につき利害関係を有する者の意見
5 地方公共団体が第一項の規定により防火建築帯を造成するため、同項の規定により土地を使用して、自ら地上階数三以上の耐火建築物を建築しようとするときは、当該地方公共団体の長は、都市計画審議会の意見を聞く前に、あらかじめ、起業地及び建築計画の概要を公告し、且つ、公告の日から二週間その書類を公衆の縦覧に供しなければならない。この場合において、当該建築計画につき利害関係を有する者は、その縦覧期間内に当該地方公共団体の長に意見書を提出することができる。
6 建設大臣は、第二項の規定により建築計画を承認した場合においては、その旨並びに当該地方公共団体の名称及び起業地を官報で告示するとともに、これらの事項を関係都道府県知事に通知しなければならない。
7 第一項の規定により土地を使用する場合における土地収用法の適用については、第二項の建設大臣の承認をもつて同法第二十條の規定による建設大臣又は都道府県知事の事業の認定が、前項の建築計画の承認の告示をもつて同法第二十六條第一項の規定による建設大臣又は都道府県知事の事業の認定の告示があつたものとみなす。この場合においては、同法第二十九條中「三年以内」とあるのは、「六月以内」と読み替えて同條の規定を適用するものとする。
(土地の使用に代る収用の請求)
第十三條 前條第一項の規定により地方公共団体(以下「起業者」という。)が土地を使用しようとする場合においては、当該土地の所有者は、その土地の収用を当該土地の所在する都道府県の収用委員会に請求することができる。
2 前項の規定による請求は、土地収用法第四十五條第一項若しくは第六十三條第二項の規定による意見書又は第六十五條第一項第一号の規定に基いて提出する意見書によつてしなければならない。
(使用の効果及び裁決)
第十四條 収用委員会が土地の使用の裁決をした場合においては、起業者は、使用の時期において、当該土地について耐火建築物の所有を目的とする借地法(大正十年法律第四十九号)に規定する賃借権を取得する。
2 土地の使用に関する裁決においては、収用委員会は、土地収用法第四十八條第一項各号に掲げる事項の外、借地法の規定に反しない限度において、借賃の支払方法、増減その他必要な事項についても裁決しなければならない。
(耐火建築物の一部の所有権をもつてする損失の補償)
第十五條 第十二條第一項の規定により土地を使用し、又は第十三條第一項の規定による請求に基き土地を収用する場合において、当該土地の所有者は、その土地の所有権に関する補償金の全部又は一部に代えて、当該耐火建築物の一部の所有権をもつて損失を補償することを収用委員会に要求することができる。この場合において、収用委員会は、その要求が相当であると認めるときは、耐火建築物の当該要求に係る部分の建築工事を完了すべき時期を定めて、使用され、又は収用される土地の位置、面積、形状、賃貸借條件等を総合的に勘案して、これらに照応すると認める耐火建築物の一部の所有権をもつてする損失の補償の裁決をしなければならない。
(耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償)
第十六條 第十二條第一項の規定により土地を使用し、又は第十三條第一項の規定による請求に基き土地を収用する場合において、前條の規定により補償の要求をしない当該土地の所有者又は当該土地の借地権者は、その土地の所有権又はその土地を使用する権利に関する補償金の全部又は一部に代えて、当該耐火建築物の一部の賃借権をもつて損失を補償することを収用委員会に要求することができる。この場合において、収用委員会は、その要求が相当であると認めるときは、耐火建築物の当該要求に係る部分の建築工事を完了すべき時期を定めて、使用され、又は収用される土地の位置、面積、形状、賃貸借條件等及びその土地にある建築物の位置、用途、規模、構造、賃貸借條件等を総合的に勘案して、これらに照応すると認める耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償の裁決をしなければならない。
2 収用委員会は、前項の規定により借地権者に対して、耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償の裁決をしようとする場合で、同時に前條の規定により土地の所有者に対して耐火建築物の一部の所有権をもつてする損失の補償の裁決をしようとする場合においては、特別の事情がある場合を除く外、所有者の要求に係る部分が借地権者の要求に係る部分より大であるときは所有者の要求に係る部分内について、所有者の要求に係る部分が借地権者の要求に係る部分より小であるときは所有者の要求に係る部分の全部を含む部分について、損失の補償の裁決をしなければならない。
3 収用委員会は、第一項の規定により土地の所有者及び借地権者に対して、耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償の裁決をしようとする場合においては、特別の事情がある場合を除く外、土地の所有者の要求に係る部分が借地権者の要求に係る部分より大であるときは所有者の要求に係る部分内について借地権者に、その他の部分について所有権者に、小であるときは借地権者に対してのみ耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償の裁決をしなければならない。
(耐火建築物の一部の賃借権又は転借権をもつてする損失の補償)
第十七條 第十二條第一項の規定により土地を使用し、又は第十三條第一項の規定による請求に基き土地を収用する場合において、当該土地にある建築物の賃借権者は、賃借権に関する補償金の全部又は一部に代えて、耐火建築物の一部の賃借権又は転借権をもつて損失を補償することを収用委員会に要求することができる。前條第一項後段の規定は、この場合について準用する。
2 収用委員会は、前項の規定により当該土地にある建築物の賃借権者に対して耐火建築物の一部の賃借権又は転借権をもつてする損失の補償の裁決をしようとする場合において、同時に第十五條の規定により土地の所有者に対して耐火建築物の一部の所有権をもつてする損失の補償の裁決及び前條の規定により土地の所有者又は借地権者に対して耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償の裁決をあわせてしようとする場合であり、且つ、左の各号の一に該当するときは、特別の事情がある場合を除く外、それぞれ当該各号に定めるところによらなければならない。
一 建築物の賃借権者の要求に係る部分が土地の所有者の第十五條の規定による要求に係る部分より大である場合においては所有者の要求に係る部分の全部を含む部分について、小である場合においては所有者の要求に係る部分内について、それぞれ賃借権(前條の規定による借地権者の要求があつて、且つ、その要求に係る部分と重複する部分については転借権)
二 建築物の賃借権者の要求に係る部分が土地の所有者の前條の規定による要求に係る部分より大である場合においては所有者の要求に係る部分の全部を含む部分について転借権、その他の部分については賃借権、小である場合においてはその要求に係る部分内について転借権
三 建築物の賃借権者の要求に係る部分が借地権者の前條の規定による要求に係る部分より大である場合においては借地権者の要求に係る部分の全部について転借権、その他の部分については賃借権、小である場合においてはその要求に係る部分内について転借権
(損失の補償にあわせて行う耐火建築物の一部等の提供の要求)
第十八條 前三條の規定により耐火建築物の一部の所有権又は賃借権若しくは転借権(以下「耐火建築物の一部等」という。)をもつて損失を補償することを要求する場合においては、当該要求をする者が当該補償金に相当する耐火建築物の一部等のみでは経済上利用の価値がないものと認めるときは、損失の補償に係る耐火建築物の一部等との差額に相当する金額を支払うことを條件として、利用上必要な限度において、当該損失の補償に係る耐火建築物の一部等に追加して他の耐火建築物の一部等を提供することを損失の補償とあわせて要求することができる。この場合において、収用委員会は、その要求が相当であると認めるときは、当該差額に相当する金額を支払うべき時期を定めて、耐火建築物の一部等に追加して当該他の耐火建築物の一部等を提供することを損失の補償とあわせて裁決しなければならない。
(担保の提供)
第十九條 前四條の規定により耐火建築物の一部等をもつてする損失の補償の裁決をする場合においては、収用委員会は、当該補償金に相当する金額を起業者が担保として提供すべき旨の裁決をあわせてしなければならない。
(敷金の払渡)
第二十條 起業者は、第十二條第一項の規定により土地を使用する場合においては、使用の時期までに、三年分の借賃に相当する金額を、敷金として、土地所有者に払い渡さなければならない。
2 起業者が前項の規定による払渡をしないときは、収用委員会の使用の裁決は、その効力を失う。
(担保の供託)
第二十一條 第十九條の規定による担保は、金銭又は収用委員会が相当と認める有価証券を供託することによつて提供するものとする。
2 前項の規定による供託は、使用又は収用の時期までにしなければならない。
3 起業者が使用又は収用の時期までに第一項の規定による供託をしないときは、収用委員会の使用又は収用の裁決は、その効力を失う。
(権利の取得)
第二十二條 第十五條から第十八條までの規定により耐火建築物の一部等をもつてする損失の補償の裁決又は耐火建築物の一部等の提供を受けるべき旨の裁決を受けた者は、耐火建築物の当該裁決に係る部分の建築工事が完了し、建築基準法第七條第三項又は第十八條第七項の規定による検査済証の交付があつたときは、当該耐火建築物の一部の所有権又は借家法(大正十年法律第五十号)に規定する賃借権若しくは転借権を取得する。
2 起業者は、前項の規定による検査済証の交付があつたときは、遅滞なく、前項に規定する者に第十五條から第十八條までの規定による裁決に係る耐火建築物の一部等を引き渡さなければならない。
(担保の取得及び取りもどし等)
第二十三條 正当な理由がなくて、起業者が第十五條から第十八條までの規定による裁決に係る耐火建築物の部分の建築工事をその完了すべき時期までに完了しないとき、又は前條第二項の規定による引渡をしないときは、損失の補償の裁決を受けた者は、収用委員会の確認を得て、当該建築工事又は引渡が遅延したことに因り受けた損害に相当する額を、第二十一條第一項の規定により起業者が提供した担保の全部又は一部について、取得することができる。
2 起業者は、前條第二項の規定による引渡をしたときは、収用委員会の確認を得て、第二十一條第一項の規定により提供した担保を取りもどすことができる。
3 第十八條の規定により差額を支払うことを條件として耐火建築物の一部等の提供を受けるべき旨の裁決を受けた者が、正当な理由がなくて、その裁決に係る差額をその支払うべき時期までに支払わないときは、起業者は、収用委員会の確認を得て、第二十一條第一項の規定により提供した担保を取りもどすことができる。
4 第十八條の規定により耐火建築物の一部等の提供を受けるべき旨の裁決を受けた者が裁決に係る差額の全部を支払うことができない場合においては、その差額を支払うべき時期までにその一部を支払うことを條件として、その損失の補償に係る耐火建築物の一部等に追加して耐火建築物の一部等を提供すべきことを収用委員会に要求することができる。この場合においては、前項の規定にかかわらず、起業者は、第二十一條第一項の規定により提供した担保を取りもどすことができない。
5 第三項の規定により起業者が取りもどした担保を当該裁決を受けた者に引き渡し、当該裁決を受けた者がこれを受け取つたときは、起業者は、収用委員会の確認を得て、当該裁決を受けた者に対する損失の補償の義務を免がれるものとする。
6 収用委員会は、第四項の規定による要求に対して耐火建築物の一部等を提供することを裁決しようとする場合においては、その要求が相当であり、且つ、起業者に甚しく損害を与えないものと認めた場合に限り、耐火建築物の一部等を提供することを損失の補償とあわせて裁決することができる。
7 第一項から第三項まで及び第五項の規定による担保の取得、取りもどし及び収用委員会の確認に関して必要な手続は、建設省令で定める。
(買受権)
第二十四條 起業者が、正当な理由がなくて、使用又は収用の時期から一年を経過しても耐火建築物の建築工事に着手しないときは、土地を使用され、若しくは収用された者又はこれらの者の包括承継人は、収用委員会の確認を得て、起業者がその土地の所有権に対して支払つた補償金に相当する金額を起業者に提供し、又は前條第一項の規定による起業者が提供した担保を取得する権利を放棄して、その使用された土地の返還を求め、又は収用された土地を買い受けることができる。
2 前項の規定による収用委員会の確認に関する手続は、建設省令で定める。
(譲渡等の場合の措置)
第二十五條 第十二條第一項の規定により土地を使用し、又は第十三條第一項の規定による請求に基き土地を収用して耐火建築物の建築工事を完了した後に、起業者が当該耐火建築物又はその部分を他に譲渡し、又は賃貸しようとする場合においては、起業者は、それぞれ左の各号に定めるところにより、これをしなければならない。この場合においては、起業者は、あらかじめ、その旨を当該各号に掲げる者に通知するとともに、公告しなければならない。
一 第二十二條の規定により当該耐火建築物の一部の賃借権を取得した者が、その取得した権利に係る部分について譲渡の要求をしたときは、他に優先してその者に譲渡すること。
二 現に土地を使用されている者がその土地の買取及びその対価として耐火建築物の一部の譲渡又は賃貸を要求したときは、その者に譲渡し、又は賃貸すること。
三 前二号に掲げる譲渡又は賃貸の要求がなかつた場合において、左のイからニまでの一に該当する者が譲渡又は賃貸の要求をしたときは、これらの者が所有し、若しくは所有していた土地の面積又は所有し、若しくは賃借していた建築物若しくはその一部の床面積の合計を基準として、当該耐火建築物の建築工事が完了した日から五年以内に限り、他に優先してこれらの者に譲渡し、又は賃貸すること。
イ 地方公共団体に当該耐火建築物の敷地となつた土地を譲渡し、又は賃貸した者、当該土地の上にあつた建築物の所有者及び当該建築物の賃借権者並びにこれらの者の包括承継人
ロ 収用された土地の所有者であつた者及びその包括承継人
ハ 使用され、又は収用された土地にあつた建築物の所有者及びその包括承継人
ニ ハに掲げる建築物の賃借権者
2 前項第三号イからニまでに掲げる者の優先順位は、その掲げる順序による。但し、前項第三号イにあつては、包括承継人は、それぞれその者によつて承継された者の順位により、二人以上の同順位者がある場合においては、その順位は、くじで定めるものとする。
3 第一項の場合において、譲渡価額又は賃貸料は、当該耐火建築物を建築した時における総建築費を基準として算出したもの以下のものでなければならない。
(補助金の総収入金額への不算入)
第二十六條 事業を営まない個人が第五條又は第十一條の規定により交付を受けた補助金を耐火建築物の建築費に充てた場合においては、当該建築費に充てた補助金の金額は、当該個人の当該補助金の交付を受けた年分の所得の計算上、所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)第九條第一項に規定する総収入金額に算入しない。
2 個人が前項の規定の適用を受けて取得した耐火建築物は、所得税法の適用については、その充てた補助金に相当する部分については、その取得価額がないものとみなす。
3 第一項の規定は、所得税法第二十一條第一項、第二十二條第一項、第二十六條第一項若しくは第二十六條の二第一項に規定する申告書又は同法第二十九條第一項若しくは第二項に規定する申告書に、第一項の規定の適用を受けようとする旨並びに交付を受けた補助金の額、その建築費に充てた補助金の額、その取得した資産の取得価額及びその取得した資産に関する事項の記載がない場合においては、税務署長において特別の事情があると認める場合を除く外、適用しない。
(固定資産税の軽減)
第二十七條 第五條又は第十一條の規定による補助に係る耐火建築物に対して課する固定資産税については、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六條第二項の規定の適用があるものとする。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三條第二十二号の次に次の一号を加える。
二十二の二 耐火建築促進法(昭和二十七年法律第百六十号)の施行に関する事務を管理すること。
3 建築基準法の一部を次のように改正する。
第五十五條第一項但書を次のように改める。
但し、左の各号の一に該当する建築物については、この限りでない。
一 商業地域内で、且つ、防火地域内にある建築物で、主要構造部が耐火構造のもの
二 巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊その他これらに類するもの
同條第二項中「前項」を「前二項」に、「同項」を「これらの項」に改め、同項を同條第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。
2 住居地域内、準工業地域内又は工業地域内で、且つ、防火地域内又は準防火地域内においては、建築物の建築面積は、前項の規定にかかわらず、敷地面積の十分の六以内とすることができる。
第六十一條の次に次の一條を加える。
(防火地域内における既存建築物に対する制限の緩和)
第六十一條の二 既存建築物で、前條の規定に適合しないものを、政令で定める範囲内において、増築し、又は改築する場合においては、第三條の規定にかかわらず、前條の規定は、適用しない。
第六十二條第一項及び第二項中「前條」を「第六十一條」に改める。
第九十九條第一項第五号中「第六十一條から第六十四條まで」を「第六十一條、第六十二條から第六十四條まで」に改める。
同條第二項中「第四号、第五号又は第七号」を「第五号、第六号又は第八号」に改める。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
建設大臣 野田卯一
耐火建築促進法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年五月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百六十号
耐火建築促進法
(目的)
第一条 この法律は、都市における耐火建築物の建築を促進し、防火建築帯の造成を図り、火災その他の災害の防止、土地の合理的利用の増進及び木材の消費の節約に資し、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。
(防火建築帯造成の原則)
第二条 防火建築帯は、都市の枢要地帯にあつて、地上階数三以上の耐火建築物が帯状に建築された防火帯となるように造成されなければならない。
(用語の意義)
第三条 この法律における用語の意義は、第一号から第三号までに掲げるものについては、それぞれ当該各号に定めるところにより、第四号から第十一号までに掲げるものについては、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)及び建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)に定めるところによる。
一 耐火建築物 主要構造部が耐火構造である建築物をいう。
二 建築 建築物を新築し、又は増築(建築物の体積を増加しないものを除く。)することをいう。
三 防火地域 建築基準法第六十条第一項に規定する防火地域をいう。
四 主要構造部
五 耐火構造
六 建築物
七 都市計画区域
八 建築主
九 敷地
十 建築設備
十一 設計図書
(防火建築帯の指定)
第四条 建設大臣は、都市計画区域内の市町村における火災その他の災害を防止し、あわせて土地の合理的利用に資するため必要であると認めるときは、当該市町村の防火地域の全部又は一部について、防火建築帯を指定することができる。この場合においては、あらかじめ、当該市町村の長及び当該市町村を包括する都道府県の知事の意見を聞かなければならない。
2 建設大臣は、前項の規定により防火建築帯を指定しようとするときは、あらかじめ、国家消防庁長官の意見を聞かなければならない。
3 建設大臣は、第一項の規定により防火建築帯を指定したときは、これを官報で告示しなければならない。
(防火建築帯の区域内における耐火建築物に対する地方公共団体の補助)
第五条 地方公共団体は、前条第一項の規定により防火建築帯が指定された場合においては、当該区域内における耐火建築物の建築について、補助金を交付することができる。
(補助金の交付)
第六条 国は、防火建築帯の区域内において、地方公共団体が前条の規定により耐火建築物を建築する建築主に対して補助金を交付する場合又は当該地方公共団体が自らこれを建築する場合において、当該耐火建築物の建設大臣が指定する部分が、地上階数三以上のもの若しくは高さ十一メートル以上のもの又は基礎及び主要構造部を地上第三階以上の部分の増築を予定した構造とした二階建のものであるときは、当該耐火建築物の地上階数四以下及び地下第一階以上の部分について、当該地方公共団体に対して、その費用につき、予算の範囲内において、補助金を交付することができる。
2 建設大臣は、前項の規定により耐火建築物の部分を指定したときは、これを官報で告示しなければならない。
(補助金額の限度)
第七条 前条第一項の規定により国が地方公共団体に対して交付する補助金の額は、耐火建築物と木造の建築物との単位面積当りの標準建築費の差額の四分の一に相当する額に、補助の対象となる耐火建築物の床面積の合計を乗じた額以内とする。但し、当該耐火建築物を建築する者が地方公共団体以外の者である場合においては、地方公共団体が建築主に対して交付する補助金の二分の一に相当する額をこえることができない。
2 非常災害に因り多数の建築物が滅失した市町村において、第四条第一項の規定により指定した防火建築帯の区域で政令で定めるものの内においては、前項の規定は、非常災害の発生した日から一年間に限り、同項中「四分の一」とあるのは「三分の一」と読み替えて適用する。
3 第一項の標準建築費は、地域別及び構造別に建設大臣が定める。
(補助金交付の取消、停止又は返還)
第八条 地方公共団体の長は、第五条の規定により建築主に対して補助金を交付する場合で、且つ、当該補助に係る耐火建築物について第六条第一項の規定により国からの補助金の交付を受ける場合において、左の各号の一に該当する事由があるときは、当該建築主に対して、補助金の全部若しくは一部の交付を取り消し、その交付を停止し、又は交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
一 補助金を補助の目的以外に使用したとき。
二 補助に係る耐火建築物が建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律又はこれに基く命令若しくは条例(建築基準法第七十五条の規定による建築協定を含む。)の規定に違反して建築されたとき。
三 正当な理由がなくて、補助に係る耐火建築物の建築工事が地方公共団体から建築主に対して補助金交付の通知があつた日から三月以内に着手されないとき、又はその完了が著しく遅れたとき。
四 前各号の外、当該建築主がこの法律若しくはこの法律に基く命令の規定又はこれらに基く地方公共団体の長の処分に違反したとき。
2 建設大臣は、第六条第一項の規定により地方公共団体に対して補助金を交付する場合において、左の各号の一に該当する事由があるときは、当該地方公共団体に対して、補助金の全部若しくは一部の交付を取り消し、その交付を停止し、又は交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
一 地方公共団体の長が建築主について、前項各号の一に該当する事由があると認めて、当該建築主に対して、補助金の全部若しくは一部の交付を取り消し、その交付を停止し、若しくは交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命じたとき、又は地方公共団体の長がこれらの措置を講じない場合においても、建設大臣が建築主について、前項各号の一に該当する事由があると認めたとき。
二 地方公共団体が補助金を補助の目的以外に使用したとき。
三 地方公共団体が建築主である場合において、補助に係る耐火建築物が前項第二号又は第三号に該当するとき。
四 前各号の外、地方公共団体がこの法律若しくはこの法律に基く命令の規定又はこれらに基く建設大臣の処分に違反したとき。
3 前二項の規定により建設大臣又は地方公共団体の長が補助金の交付の取消若しくは停止又は交付した補助金の返還を命じようとする場合においては、あらかじめ、当該地方公共団体の長又は建築主に対し、釈明のため意見を述べ、及び自己のため有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
(補助金の交付及び返還の手続)
第九条 第六条第一項の規定による補助金の交付及び前条第二項の規定による補助金の返還に関して必要な手続は、建設省令で定める。
(建設大臣の指示監督)
第十条 建設大臣は、補助金の交付の目的を最もよく達成するため、必要があると認めるときは、その目的を達成するのに必要な限度において、補助金の交付を受ける地方公共団体の長又は当該補助に係る耐火建築物の建築主に対して、必要な指示を行い、報告書の提出を命じ、又は職員を指定して、当該補助に係る耐火建築物又は関係の物件若しくは設計図書その他の書類を実地検査させることができる。
2 前項の規定による実地検査において、現に居住の用に供している建築物に立ち入るときは、あらかじめ、その居住者の承諾を得なければならない。
3 第一項の規定により実地検査に当る職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
4 前項の規定による証票の様式は、建設省令で定める。
(防火建築帯の区域外における耐火建築物に対する地方公共団体の補助)
第十一条 地方公共団体は、防火建築帯として指定されていない区域においても、当該市町村における防火上有効な耐火建築物の建築を促進するため必要があると認める場合においては、当該耐火建築物の建築について、補助金を交付することができる。
(防火建築帯の区域内における土地の使用)
第十二条 防火建築帯の区域内において、その全部又は一部につき、当該地方公共団体の長が特に緊急に防火建築帯を造成する必要があると認める場合において、当該区域内における地上階数三以上の耐火建築物を建築する者がない部分(現に地上階数二以下の耐火建築物がある部分で、防火建築帯の効用を著しく害する虞がないと認めた部分を除く。)について、当該区域内の土地の所有者、当該土地の借地権者(当該土地を転貸している者を除く。以下同じ。)及び当該土地にある建築物の賃借権者の総数のそれぞれ三分の二以上の申出に基き、当該地方公共団体が自ら地上階数三以上の耐火建築物を建築しようとするときは、当該耐火建築物の敷地として必要な土地を使用することができる。
2 前項の規定により地方公共団体が土地を使用しようとする場合においては、当該地方公共団体の長は、あらかじめ、都市計画審議会令(大正八年勅令第四百八十三号)に基く都市計画審議会の意見を聞いた後に、当該耐火建築物の建築計画につき建設大臣の承認を受けなければならない。
3 第一項の規定による土地の使用については、この法律に別段の定がある場合を除く外、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の規定を適用する。
4 地方公共団体の長が第二項の規定による建設大臣の承認を受けようとするときは、建設省令で定める様式に従い、建築計画に係る区域(以下「起業地」という。)及び耐火建築物の建築を必要とする理由を記載した建築計画承認申請書に、左に掲げる書類を添附して、起業地を管轄する都道府県知事を経由して建設大臣に提出しなければならない。
一 事業計画書
二 起業地及び事業計画を表示する図面
三 起業地内の土地の所有者、当該土地の借地権者及び当該土地にある建築物の賃借権者の総数及び第一項の規定により申し出た者の数
四 起業地内に土地収用法第四条に規定する土地があるときは、その土地に関する調書、図面及び当該土地の管理者の意見
五 第二項の規定による都市計画審議会の意見
六 第五項の規定による建築計画につき利害関係を有する者の意見
5 地方公共団体が第一項の規定により防火建築帯を造成するため、同項の規定により土地を使用して、自ら地上階数三以上の耐火建築物を建築しようとするときは、当該地方公共団体の長は、都市計画審議会の意見を聞く前に、あらかじめ、起業地及び建築計画の概要を公告し、且つ、公告の日から二週間その書類を公衆の縦覧に供しなければならない。この場合において、当該建築計画につき利害関係を有する者は、その縦覧期間内に当該地方公共団体の長に意見書を提出することができる。
6 建設大臣は、第二項の規定により建築計画を承認した場合においては、その旨並びに当該地方公共団体の名称及び起業地を官報で告示するとともに、これらの事項を関係都道府県知事に通知しなければならない。
7 第一項の規定により土地を使用する場合における土地収用法の適用については、第二項の建設大臣の承認をもつて同法第二十条の規定による建設大臣又は都道府県知事の事業の認定が、前項の建築計画の承認の告示をもつて同法第二十六条第一項の規定による建設大臣又は都道府県知事の事業の認定の告示があつたものとみなす。この場合においては、同法第二十九条中「三年以内」とあるのは、「六月以内」と読み替えて同条の規定を適用するものとする。
(土地の使用に代る収用の請求)
第十三条 前条第一項の規定により地方公共団体(以下「起業者」という。)が土地を使用しようとする場合においては、当該土地の所有者は、その土地の収用を当該土地の所在する都道府県の収用委員会に請求することができる。
2 前項の規定による請求は、土地収用法第四十五条第一項若しくは第六十三条第二項の規定による意見書又は第六十五条第一項第一号の規定に基いて提出する意見書によつてしなければならない。
(使用の効果及び裁決)
第十四条 収用委員会が土地の使用の裁決をした場合においては、起業者は、使用の時期において、当該土地について耐火建築物の所有を目的とする借地法(大正十年法律第四十九号)に規定する賃借権を取得する。
2 土地の使用に関する裁決においては、収用委員会は、土地収用法第四十八条第一項各号に掲げる事項の外、借地法の規定に反しない限度において、借賃の支払方法、増減その他必要な事項についても裁決しなければならない。
(耐火建築物の一部の所有権をもつてする損失の補償)
第十五条 第十二条第一項の規定により土地を使用し、又は第十三条第一項の規定による請求に基き土地を収用する場合において、当該土地の所有者は、その土地の所有権に関する補償金の全部又は一部に代えて、当該耐火建築物の一部の所有権をもつて損失を補償することを収用委員会に要求することができる。この場合において、収用委員会は、その要求が相当であると認めるときは、耐火建築物の当該要求に係る部分の建築工事を完了すべき時期を定めて、使用され、又は収用される土地の位置、面積、形状、賃貸借条件等を総合的に勘案して、これらに照応すると認める耐火建築物の一部の所有権をもつてする損失の補償の裁決をしなければならない。
(耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償)
第十六条 第十二条第一項の規定により土地を使用し、又は第十三条第一項の規定による請求に基き土地を収用する場合において、前条の規定により補償の要求をしない当該土地の所有者又は当該土地の借地権者は、その土地の所有権又はその土地を使用する権利に関する補償金の全部又は一部に代えて、当該耐火建築物の一部の賃借権をもつて損失を補償することを収用委員会に要求することができる。この場合において、収用委員会は、その要求が相当であると認めるときは、耐火建築物の当該要求に係る部分の建築工事を完了すべき時期を定めて、使用され、又は収用される土地の位置、面積、形状、賃貸借条件等及びその土地にある建築物の位置、用途、規模、構造、賃貸借条件等を総合的に勘案して、これらに照応すると認める耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償の裁決をしなければならない。
2 収用委員会は、前項の規定により借地権者に対して、耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償の裁決をしようとする場合で、同時に前条の規定により土地の所有者に対して耐火建築物の一部の所有権をもつてする損失の補償の裁決をしようとする場合においては、特別の事情がある場合を除く外、所有者の要求に係る部分が借地権者の要求に係る部分より大であるときは所有者の要求に係る部分内について、所有者の要求に係る部分が借地権者の要求に係る部分より小であるときは所有者の要求に係る部分の全部を含む部分について、損失の補償の裁決をしなければならない。
3 収用委員会は、第一項の規定により土地の所有者及び借地権者に対して、耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償の裁決をしようとする場合においては、特別の事情がある場合を除く外、土地の所有者の要求に係る部分が借地権者の要求に係る部分より大であるときは所有者の要求に係る部分内について借地権者に、その他の部分について所有権者に、小であるときは借地権者に対してのみ耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償の裁決をしなければならない。
(耐火建築物の一部の賃借権又は転借権をもつてする損失の補償)
第十七条 第十二条第一項の規定により土地を使用し、又は第十三条第一項の規定による請求に基き土地を収用する場合において、当該土地にある建築物の賃借権者は、賃借権に関する補償金の全部又は一部に代えて、耐火建築物の一部の賃借権又は転借権をもつて損失を補償することを収用委員会に要求することができる。前条第一項後段の規定は、この場合について準用する。
2 収用委員会は、前項の規定により当該土地にある建築物の賃借権者に対して耐火建築物の一部の賃借権又は転借権をもつてする損失の補償の裁決をしようとする場合において、同時に第十五条の規定により土地の所有者に対して耐火建築物の一部の所有権をもつてする損失の補償の裁決及び前条の規定により土地の所有者又は借地権者に対して耐火建築物の一部の賃借権をもつてする損失の補償の裁決をあわせてしようとする場合であり、且つ、左の各号の一に該当するときは、特別の事情がある場合を除く外、それぞれ当該各号に定めるところによらなければならない。
一 建築物の賃借権者の要求に係る部分が土地の所有者の第十五条の規定による要求に係る部分より大である場合においては所有者の要求に係る部分の全部を含む部分について、小である場合においては所有者の要求に係る部分内について、それぞれ賃借権(前条の規定による借地権者の要求があつて、且つ、その要求に係る部分と重複する部分については転借権)
二 建築物の賃借権者の要求に係る部分が土地の所有者の前条の規定による要求に係る部分より大である場合においては所有者の要求に係る部分の全部を含む部分について転借権、その他の部分については賃借権、小である場合においてはその要求に係る部分内について転借権
三 建築物の賃借権者の要求に係る部分が借地権者の前条の規定による要求に係る部分より大である場合においては借地権者の要求に係る部分の全部について転借権、その他の部分については賃借権、小である場合においてはその要求に係る部分内について転借権
(損失の補償にあわせて行う耐火建築物の一部等の提供の要求)
第十八条 前三条の規定により耐火建築物の一部の所有権又は賃借権若しくは転借権(以下「耐火建築物の一部等」という。)をもつて損失を補償することを要求する場合においては、当該要求をする者が当該補償金に相当する耐火建築物の一部等のみでは経済上利用の価値がないものと認めるときは、損失の補償に係る耐火建築物の一部等との差額に相当する金額を支払うことを条件として、利用上必要な限度において、当該損失の補償に係る耐火建築物の一部等に追加して他の耐火建築物の一部等を提供することを損失の補償とあわせて要求することができる。この場合において、収用委員会は、その要求が相当であると認めるときは、当該差額に相当する金額を支払うべき時期を定めて、耐火建築物の一部等に追加して当該他の耐火建築物の一部等を提供することを損失の補償とあわせて裁決しなければならない。
(担保の提供)
第十九条 前四条の規定により耐火建築物の一部等をもつてする損失の補償の裁決をする場合においては、収用委員会は、当該補償金に相当する金額を起業者が担保として提供すべき旨の裁決をあわせてしなければならない。
(敷金の払渡)
第二十条 起業者は、第十二条第一項の規定により土地を使用する場合においては、使用の時期までに、三年分の借賃に相当する金額を、敷金として、土地所有者に払い渡さなければならない。
2 起業者が前項の規定による払渡をしないときは、収用委員会の使用の裁決は、その効力を失う。
(担保の供託)
第二十一条 第十九条の規定による担保は、金銭又は収用委員会が相当と認める有価証券を供託することによつて提供するものとする。
2 前項の規定による供託は、使用又は収用の時期までにしなければならない。
3 起業者が使用又は収用の時期までに第一項の規定による供託をしないときは、収用委員会の使用又は収用の裁決は、その効力を失う。
(権利の取得)
第二十二条 第十五条から第十八条までの規定により耐火建築物の一部等をもつてする損失の補償の裁決又は耐火建築物の一部等の提供を受けるべき旨の裁決を受けた者は、耐火建築物の当該裁決に係る部分の建築工事が完了し、建築基準法第七条第三項又は第十八条第七項の規定による検査済証の交付があつたときは、当該耐火建築物の一部の所有権又は借家法(大正十年法律第五十号)に規定する賃借権若しくは転借権を取得する。
2 起業者は、前項の規定による検査済証の交付があつたときは、遅滞なく、前項に規定する者に第十五条から第十八条までの規定による裁決に係る耐火建築物の一部等を引き渡さなければならない。
(担保の取得及び取りもどし等)
第二十三条 正当な理由がなくて、起業者が第十五条から第十八条までの規定による裁決に係る耐火建築物の部分の建築工事をその完了すべき時期までに完了しないとき、又は前条第二項の規定による引渡をしないときは、損失の補償の裁決を受けた者は、収用委員会の確認を得て、当該建築工事又は引渡が遅延したことに因り受けた損害に相当する額を、第二十一条第一項の規定により起業者が提供した担保の全部又は一部について、取得することができる。
2 起業者は、前条第二項の規定による引渡をしたときは、収用委員会の確認を得て、第二十一条第一項の規定により提供した担保を取りもどすことができる。
3 第十八条の規定により差額を支払うことを条件として耐火建築物の一部等の提供を受けるべき旨の裁決を受けた者が、正当な理由がなくて、その裁決に係る差額をその支払うべき時期までに支払わないときは、起業者は、収用委員会の確認を得て、第二十一条第一項の規定により提供した担保を取りもどすことができる。
4 第十八条の規定により耐火建築物の一部等の提供を受けるべき旨の裁決を受けた者が裁決に係る差額の全部を支払うことができない場合においては、その差額を支払うべき時期までにその一部を支払うことを条件として、その損失の補償に係る耐火建築物の一部等に追加して耐火建築物の一部等を提供すべきことを収用委員会に要求することができる。この場合においては、前項の規定にかかわらず、起業者は、第二十一条第一項の規定により提供した担保を取りもどすことができない。
5 第三項の規定により起業者が取りもどした担保を当該裁決を受けた者に引き渡し、当該裁決を受けた者がこれを受け取つたときは、起業者は、収用委員会の確認を得て、当該裁決を受けた者に対する損失の補償の義務を免がれるものとする。
6 収用委員会は、第四項の規定による要求に対して耐火建築物の一部等を提供することを裁決しようとする場合においては、その要求が相当であり、且つ、起業者に甚しく損害を与えないものと認めた場合に限り、耐火建築物の一部等を提供することを損失の補償とあわせて裁決することができる。
7 第一項から第三項まで及び第五項の規定による担保の取得、取りもどし及び収用委員会の確認に関して必要な手続は、建設省令で定める。
(買受権)
第二十四条 起業者が、正当な理由がなくて、使用又は収用の時期から一年を経過しても耐火建築物の建築工事に着手しないときは、土地を使用され、若しくは収用された者又はこれらの者の包括承継人は、収用委員会の確認を得て、起業者がその土地の所有権に対して支払つた補償金に相当する金額を起業者に提供し、又は前条第一項の規定による起業者が提供した担保を取得する権利を放棄して、その使用された土地の返還を求め、又は収用された土地を買い受けることができる。
2 前項の規定による収用委員会の確認に関する手続は、建設省令で定める。
(譲渡等の場合の措置)
第二十五条 第十二条第一項の規定により土地を使用し、又は第十三条第一項の規定による請求に基き土地を収用して耐火建築物の建築工事を完了した後に、起業者が当該耐火建築物又はその部分を他に譲渡し、又は賃貸しようとする場合においては、起業者は、それぞれ左の各号に定めるところにより、これをしなければならない。この場合においては、起業者は、あらかじめ、その旨を当該各号に掲げる者に通知するとともに、公告しなければならない。
一 第二十二条の規定により当該耐火建築物の一部の賃借権を取得した者が、その取得した権利に係る部分について譲渡の要求をしたときは、他に優先してその者に譲渡すること。
二 現に土地を使用されている者がその土地の買取及びその対価として耐火建築物の一部の譲渡又は賃貸を要求したときは、その者に譲渡し、又は賃貸すること。
三 前二号に掲げる譲渡又は賃貸の要求がなかつた場合において、左のイからニまでの一に該当する者が譲渡又は賃貸の要求をしたときは、これらの者が所有し、若しくは所有していた土地の面積又は所有し、若しくは賃借していた建築物若しくはその一部の床面積の合計を基準として、当該耐火建築物の建築工事が完了した日から五年以内に限り、他に優先してこれらの者に譲渡し、又は賃貸すること。
イ 地方公共団体に当該耐火建築物の敷地となつた土地を譲渡し、又は賃貸した者、当該土地の上にあつた建築物の所有者及び当該建築物の賃借権者並びにこれらの者の包括承継人
ロ 収用された土地の所有者であつた者及びその包括承継人
ハ 使用され、又は収用された土地にあつた建築物の所有者及びその包括承継人
ニ ハに掲げる建築物の賃借権者
2 前項第三号イからニまでに掲げる者の優先順位は、その掲げる順序による。但し、前項第三号イにあつては、包括承継人は、それぞれその者によつて承継された者の順位により、二人以上の同順位者がある場合においては、その順位は、くじで定めるものとする。
3 第一項の場合において、譲渡価額又は賃貸料は、当該耐火建築物を建築した時における総建築費を基準として算出したもの以下のものでなければならない。
(補助金の総収入金額への不算入)
第二十六条 事業を営まない個人が第五条又は第十一条の規定により交付を受けた補助金を耐火建築物の建築費に充てた場合においては、当該建築費に充てた補助金の金額は、当該個人の当該補助金の交付を受けた年分の所得の計算上、所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)第九条第一項に規定する総収入金額に算入しない。
2 個人が前項の規定の適用を受けて取得した耐火建築物は、所得税法の適用については、その充てた補助金に相当する部分については、その取得価額がないものとみなす。
3 第一項の規定は、所得税法第二十一条第一項、第二十二条第一項、第二十六条第一項若しくは第二十六条の二第一項に規定する申告書又は同法第二十九条第一項若しくは第二項に規定する申告書に、第一項の規定の適用を受けようとする旨並びに交付を受けた補助金の額、その建築費に充てた補助金の額、その取得した資産の取得価額及びその取得した資産に関する事項の記載がない場合においては、税務署長において特別の事情があると認める場合を除く外、適用しない。
(固定資産税の軽減)
第二十七条 第五条又は第十一条の規定による補助に係る耐火建築物に対して課する固定資産税については、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条第二項の規定の適用があるものとする。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第二十二号の次に次の一号を加える。
二十二の二 耐火建築促進法(昭和二十七年法律第百六十号)の施行に関する事務を管理すること。
3 建築基準法の一部を次のように改正する。
第五十五条第一項但書を次のように改める。
但し、左の各号の一に該当する建築物については、この限りでない。
一 商業地域内で、且つ、防火地域内にある建築物で、主要構造部が耐火構造のもの
二 巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊その他これらに類するもの
同条第二項中「前項」を「前二項」に、「同項」を「これらの項」に改め、同項を同条第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。
2 住居地域内、準工業地域内又は工業地域内で、且つ、防火地域内又は準防火地域内においては、建築物の建築面積は、前項の規定にかかわらず、敷地面積の十分の六以内とすることができる。
第六十一条の次に次の一条を加える。
(防火地域内における既存建築物に対する制限の緩和)
第六十一条の二 既存建築物で、前条の規定に適合しないものを、政令で定める範囲内において、増築し、又は改築する場合においては、第三条の規定にかかわらず、前条の規定は、適用しない。
第六十二条第一項及び第二項中「前条」を「第六十一条」に改める。
第九十九条第一項第五号中「第六十一条から第六十四条まで」を「第六十一条、第六十二条から第六十四条まで」に改める。
同条第二項中「第四号、第五号又は第七号」を「第五号、第六号又は第八号」に改める。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
建設大臣 野田卯一