再評価積立金の資本組入に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年四月十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百四十三号
再評価積立金の資本組入に関する法律
(目的)
第一條 この法律は、株式会社について、資産再評価法(昭和二十五年法律第百十号)第百九條の規定による再評価積立金の資本への組入に関し必要な事項を定めることを目的とする。
(資本組入についての総会の決議)
第二條 株式会社(以下「会社」という。)が再評価積立金(資産再評価法第百二條に規定する再評価積立金をいう。以下同じ。)を資本に組み入れるには、商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百四十三條に定める決議によらなければならない。
(資本組入の場合の新株の発行)
第三條 会社は、再評価積立金を資本に組み入れた場合においては、前條の決議により、又は別に商法第三百四十三條に定める決議により、株主に対してその有する株式の数に応じて株式を発行することができる。この場合においては、新株の発行価額(第四條第一項の規定により新株の発行価額のうち株主に拂い込ませる金額を定める場合においては、その金額を控除した金額)の総額は、その資本に組み入れた金額をこえてはならない。
2 前項の場合においては、左に掲げる事項は、同項の決議において定めなければならない。
一 新株の額面無額面の別、種類及び数
二 新株の発行価額
3 商法第二百八十條ノ二の規定は、第一項の規定により株式を発行する場合については適用しない。
4 会社は、第一項の場合において、会社が発行する株式の総数をこえて株式を発行することはできない。
5 第一項の規定により発行する新株を株主に割り当てる場合において、割当株数に一株未満の端数を生ずるときは、その端数は、第一項の決議において別段の定がない限り、切り捨てるものとする。
(新株の拂込金額)
第四條 会社は、前條第一項の規定により株式を発行する場合においては、新株の発行価額の一部を株主に拂い込ませることができる。この場合においては、その拂い込ませる金額(以下「拂込金額」という。)及び拂込期日は、同項の決議において定めなければならない。
2 前項の拂込金額は、当該会社が額面株式を発行している場合においては、額面株式の券面額をこえることができない。
(新株の拂込金額がない場合の株主となる時期等)
第五條 第三條第一項の規定による新株発行の決議があつた場合においては、前條第一項の規定により新株の拂込金額を定めた場合を除く外、株主は、当該決議の時から新株につき株主となるものとする。
2 商法第二百八條(質権の効力)及び第二百九條第四項(登録質権者の権利)の規定は、前項の規定により株主が受くべき株式又は株券について、同法第二百九十三條ノ二第六項(株式配当の通知等)の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、商法第二百九十三條ノ二第六項中「配当」とあるのは「再評価積立金の資本組入に関する法律第五條第一項の新株」と読み替えるものとする。
(新株の割当通知)
第六條 第四條第一項の規定により新株の拂込金額を定めた場合においては、会社は、株主に対し、その引受権を有する株式の額面無額面の別、種類及び数、拂込金額及び拂込期日並びに一定の期日までに株式の申込をしないときはその引受権を失うべき旨を通知しなければならない。
2 前項の株式の申込をする場合における株式申込証には、商法第二百八十條ノ六に掲げる事項の外、新株の拂込金額を記載しなければならない。
3 商法第二百八十條ノ五第二項から第四項まで(新株引受権の通知及び公告等)の規定は、第一項の場合について準用する。
(新株の拂込)
第七條 前條第一項に規定する一定の期日までに株式の申込をした者は、拂込期日までに、各株についてその拂込金額の全額の拂込をしなければならない。
2 商法第二百八十條ノ九(株主となる時期等)の規定は、前項の規定により拂込をなすべき新株の引受人について準用する。
(新株の公募)
第八條 会社は、第六條第一項に規定する一定の期日までに申込があつた新株の総数が株主に割り当てた新株の総数に満たない場合においては、その満たない株数の新株について、更に株主を募集しなければならない。
2 会社は、第三條第五項の規定により切り捨てる端数の合計数に相当する株数の新株について、株主を募集することができる。
3 前二項の場合においては、新株の発行価額は、取締役会が定める。
(新株の引受権の讓渡)
第九條 第四條第一項の規定により新株の拂込金額を定めた場合においては、その新株の引受権は、他に讓渡することができる。
2 前項の新株の引受権の讓渡は、書面による会社の承諾がなければ、会社その他の第三者に対して対抗することができない。
(新株を引き受けない株主の金銭分配請求権)
第十條 第六條第三項において準用する商法第二百八十條ノ五第四項の規定により新株の引受権を失つた株主は、会社に対して、その割当を受けた新株の数に応じて、第八條第一項の規定により募集した新株の発行価額から拂込金額を控除した額の合計額に相当する金銭を分配すべきことを請求することができる。但し、前條の規定によりその新株の引受権を他に讓渡した株主は、この限りでない。
(資本の金額及び資本準備金の積立についての特例)
第十一條 第四條第一項の規定により新株の拂込金額を定めた場合においては、その新株については、その発行価額のうち当該拂込金額に相当する金額を資本に組み入れるものとする。
2 前項の場合において、当該新株が第八條第一項の規定による募集に係るものであるときは、当該新株の発行価額のうち資本に組み入れない金額は、商法第二百八十八條ノ二の規定にかかわらず、資本準備金として積み立てることを要しない。
3 第一項の場合において、当該新株が第八條第二項の規定による募集に係るものであるときは、当該新株の発行価額のうち資本に組み入れない金額は、資本準備金として積み立てなければならない。
4 新株の拂込金額を定めなかつた場合において、当該新株が第八條第二項の規定による募集に係るものであるときは、その新株については、その発行価額の全額を資本に組み入れないものとする。この場合においては、その資本に組み入れない金額は、資本準備金として積み立てなければならない。
(所得計算の特例)
第十二條 前條第二項から第四項までに規定する新株の発行価額のうち資本に組み入れない金額は、法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)又は地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による各事業年度の所得の計算上益金に算入しない。
2 第十條の規定による金銭の分配の請求をした株主に当該金銭を分配した場合においては、その分配した金額は、法人税法又は地方税法の規定による各事業年度の所得の計算上損金に算入しない。
(罰則)
第十三條 会社の取締役は、左の各号の一に該当する場合においては、三十万円以下の過料に処する。
一 第五條第二項において準用する商法第二百九十三條ノ二第六項の規定による通知若しくは公告をすることを怠り、第六條第一項の規定による通知若しくは同條第三項において準用する同法第二百八十條ノ五第二項の規定による公告をすることを怠り、又はこれらの通知若しくは公告をするに際し、不正の通知若しくは公告をしたとき。
二 第十一條第三項又は第四項の規定に違反して資本準備金として積み立てなかつたとき。
附 則
この法律は、商法の一部を改正する法律(昭和二十五年法律第百六十七号)施行の日(昭和二十六年七月一日)から施行する。
法務総裁 大橋武夫
大蔵大臣 池田勇人
内閣総理大臣 吉田茂
再評価積立金の資本組入に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年四月十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百四十三号
再評価積立金の資本組入に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、株式会社について、資産再評価法(昭和二十五年法律第百十号)第百九条の規定による再評価積立金の資本への組入に関し必要な事項を定めることを目的とする。
(資本組入についての総会の決議)
第二条 株式会社(以下「会社」という。)が再評価積立金(資産再評価法第百二条に規定する再評価積立金をいう。以下同じ。)を資本に組み入れるには、商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百四十三条に定める決議によらなければならない。
(資本組入の場合の新株の発行)
第三条 会社は、再評価積立金を資本に組み入れた場合においては、前条の決議により、又は別に商法第三百四十三条に定める決議により、株主に対してその有する株式の数に応じて株式を発行することができる。この場合においては、新株の発行価額(第四条第一項の規定により新株の発行価額のうち株主に払い込ませる金額を定める場合においては、その金額を控除した金額)の総額は、その資本に組み入れた金額をこえてはならない。
2 前項の場合においては、左に掲げる事項は、同項の決議において定めなければならない。
一 新株の額面無額面の別、種類及び数
二 新株の発行価額
3 商法第二百八十条ノ二の規定は、第一項の規定により株式を発行する場合については適用しない。
4 会社は、第一項の場合において、会社が発行する株式の総数をこえて株式を発行することはできない。
5 第一項の規定により発行する新株を株主に割り当てる場合において、割当株数に一株未満の端数を生ずるときは、その端数は、第一項の決議において別段の定がない限り、切り捨てるものとする。
(新株の払込金額)
第四条 会社は、前条第一項の規定により株式を発行する場合においては、新株の発行価額の一部を株主に払い込ませることができる。この場合においては、その払い込ませる金額(以下「払込金額」という。)及び払込期日は、同項の決議において定めなければならない。
2 前項の払込金額は、当該会社が額面株式を発行している場合においては、額面株式の券面額をこえることができない。
(新株の払込金額がない場合の株主となる時期等)
第五条 第三条第一項の規定による新株発行の決議があつた場合においては、前条第一項の規定により新株の払込金額を定めた場合を除く外、株主は、当該決議の時から新株につき株主となるものとする。
2 商法第二百八条(質権の効力)及び第二百九条第四項(登録質権者の権利)の規定は、前項の規定により株主が受くべき株式又は株券について、同法第二百九十三条ノ二第六項(株式配当の通知等)の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、商法第二百九十三条ノ二第六項中「配当」とあるのは「再評価積立金の資本組入に関する法律第五条第一項の新株」と読み替えるものとする。
(新株の割当通知)
第六条 第四条第一項の規定により新株の払込金額を定めた場合においては、会社は、株主に対し、その引受権を有する株式の額面無額面の別、種類及び数、払込金額及び払込期日並びに一定の期日までに株式の申込をしないときはその引受権を失うべき旨を通知しなければならない。
2 前項の株式の申込をする場合における株式申込証には、商法第二百八十条ノ六に掲げる事項の外、新株の払込金額を記載しなければならない。
3 商法第二百八十条ノ五第二項から第四項まで(新株引受権の通知及び公告等)の規定は、第一項の場合について準用する。
(新株の払込)
第七条 前条第一項に規定する一定の期日までに株式の申込をした者は、払込期日までに、各株についてその払込金額の全額の払込をしなければならない。
2 商法第二百八十条ノ九(株主となる時期等)の規定は、前項の規定により払込をなすべき新株の引受人について準用する。
(新株の公募)
第八条 会社は、第六条第一項に規定する一定の期日までに申込があつた新株の総数が株主に割り当てた新株の総数に満たない場合においては、その満たない株数の新株について、更に株主を募集しなければならない。
2 会社は、第三条第五項の規定により切り捨てる端数の合計数に相当する株数の新株について、株主を募集することができる。
3 前二項の場合においては、新株の発行価額は、取締役会が定める。
(新株の引受権の譲渡)
第九条 第四条第一項の規定により新株の払込金額を定めた場合においては、その新株の引受権は、他に譲渡することができる。
2 前項の新株の引受権の譲渡は、書面による会社の承諾がなければ、会社その他の第三者に対して対抗することができない。
(新株を引き受けない株主の金銭分配請求権)
第十条 第六条第三項において準用する商法第二百八十条ノ五第四項の規定により新株の引受権を失つた株主は、会社に対して、その割当を受けた新株の数に応じて、第八条第一項の規定により募集した新株の発行価額から払込金額を控除した額の合計額に相当する金銭を分配すべきことを請求することができる。但し、前条の規定によりその新株の引受権を他に譲渡した株主は、この限りでない。
(資本の金額及び資本準備金の積立についての特例)
第十一条 第四条第一項の規定により新株の払込金額を定めた場合においては、その新株については、その発行価額のうち当該払込金額に相当する金額を資本に組み入れるものとする。
2 前項の場合において、当該新株が第八条第一項の規定による募集に係るものであるときは、当該新株の発行価額のうち資本に組み入れない金額は、商法第二百八十八条ノ二の規定にかかわらず、資本準備金として積み立てることを要しない。
3 第一項の場合において、当該新株が第八条第二項の規定による募集に係るものであるときは、当該新株の発行価額のうち資本に組み入れない金額は、資本準備金として積み立てなければならない。
4 新株の払込金額を定めなかつた場合において、当該新株が第八条第二項の規定による募集に係るものであるときは、その新株については、その発行価額の全額を資本に組み入れないものとする。この場合においては、その資本に組み入れない金額は、資本準備金として積み立てなければならない。
(所得計算の特例)
第十二条 前条第二項から第四項までに規定する新株の発行価額のうち資本に組み入れない金額は、法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)又は地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による各事業年度の所得の計算上益金に算入しない。
2 第十条の規定による金銭の分配の請求をした株主に当該金銭を分配した場合においては、その分配した金額は、法人税法又は地方税法の規定による各事業年度の所得の計算上損金に算入しない。
(罰則)
第十三条 会社の取締役は、左の各号の一に該当する場合においては、三十万円以下の過料に処する。
一 第五条第二項において準用する商法第二百九十三条ノ二第六項の規定による通知若しくは公告をすることを怠り、第六条第一項の規定による通知若しくは同条第三項において準用する同法第二百八十条ノ五第二項の規定による公告をすることを怠り、又はこれらの通知若しくは公告をするに際し、不正の通知若しくは公告をしたとき。
二 第十一条第三項又は第四項の規定に違反して資本準備金として積み立てなかつたとき。
附 則
この法律は、商法の一部を改正する法律(昭和二十五年法律第百六十七号)施行の日(昭和二十六年七月一日)から施行する。
法務総裁 大橋武夫
大蔵大臣 池田勇人
内閣総理大臣 吉田茂