電波監理委員会設置法
法令番号: 法律第百三十三号
公布年月日: 昭和25年5月2日
法令の形式: 法律
電波監理委員会設置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月二日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百三十三号
電波監理委員会設置法
(目的)
第一條 この法律は、電波監理委員会の所掌事務の範囲及び権限を明確に定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するに足る組織を定めることを目的とする。
(設置)
第二條 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三條第二項の規定に基いて、総理府の外局として、電波監理委員会を設置する。
(所掌事務)
第三條 電波監理委員会は、左に掲げる事務をつかさどる。
一 無線局の開設の根本的基準を定めることその他無線局(高周波利用設備を含む。以下同じ。)の免許等に関すること。
二 無線設備(高周波利用設備を含む。以下同じ。)の技術基準を定めること。
三 無線局の運用に関すること。
四 無線従事者国家試験に関すること。
五 無線従事者の免許に関すること。
六 日本放送協会に関すること。
七 電波監理委員会の処分に対する異議の申立の聽聞に関すること。
八 前各号に掲げるものの外、電波及び放送の規律に関すること。
(権限)
第四條 電波監理委員会は、この法律に規定する所掌事務を遂行するため、左に掲げる権限を有する。但し、その権限の行使は、法律(これに基く命令を含む。)に従つてなさなければならない。
一 予算の範囲内で所掌事務の遂行に必要な支出負担行為をすること。
二 收入金を徴收し、所掌事務の遂行に必要な支拂をすること。
三 所掌事務の遂行に直接必要な事務所、業務施設、研究施設等を設置し、及び管理すること。
四 所掌事務の遂行に直接必要な業務用資材、研究用資材、事務用品等を調達すること。
五 不用財産を処分すること。
六 職員の任免及び賞罰を行い、その他職員の人事を管理すること。
七 職員の厚生及び保健のため必要な施設をし、及び管理すること。
八 職員に貸與する宿舍を設置し、及び管理すること。
九 所掌事務に関する統計及び調査資料を作成し、刊行し、及び頒布すること。
十 所掌事務の監察を行い、法令の定めるところに従い、必要な措置をとること。
十一 所掌事務の周知宣伝を行うこと。
十二 電波監理委員会の公印を制定すること。
十三 所掌事務に係る公益法人その他の団体につき、許可又は認可を與えること。
十四 所掌事務に関し、報告を徴すること。
十五 電波の利用に関する業務及び技術の研究及び調査であつて、所掌事務を遂行するのに必要なものを自ら行い、又は自ら行うことを不利と認める場合にこれを部外の研究機関に委託すること。
十六 所掌事務を遂行するのに必要な特許権及び実用新案権並びにこれらの実施権を取得すること。
十七 條約により定められた範囲内において電波の管理に関する国際的取極を商議し、及び締結すること並びに国際電気通信連合その他の機関と連絡すること。
十八 無線局の開設を免許し、又は承認すること。
十九 無線局についてその無線設備、無線従事者の資格及び員数等を検査すること。
二十 電波を監視し、及び規律すること。
二十一 周波数標準値を定め、標準電波を発射し、及び標準時を通報すること。
二十二 電波が伝わる状況を予報し、及び電波の伝わり方の異常に関して警報を発すること。
二十三 無線設備の技術基準を定めること。
二十四 委託により、無線設備の機器の型式検定をすること。
二十五 無線従事者国家試験を行い、及び無線従事者免許を與えること。
二十六 委託により、無線設備の性能試験及びその機器の較正を行うこと。
二十七 委託により、無線局の周波数を測定すること。
二十八 日本放送協会の定款の変更を認可すること。
二十九 日本放送協会に対し、国際放送を行うべきことを命ずること。
三十 日本放送協会とその放送を受信する者との契約の條項を認可すること。
三十一 日本放送協会の放送設備の讓渡、賃貸等につき認可すること。
三十二 日本放送協会が放送受信用機器の修理業務を行うことができる場所を指定すること。
三十三 前各号に掲げるものの外、法律(これに基く命令を含む。)に基き、電波監理委員会に属させられた権限
(組織)
第五條 電波監理委員会は、委員長一人及び委員六人をもつて組織する。
(委員長及び委員の任命)
第六條 委員長及び委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
2 委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のため、両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、両議院の同意を得ないで委員長又は委員を任命することができる。この場合においては、任命後最初の国会において、両議院の同意を得なければならない。
3 左の各号の一に該当する者は、委員長又は委員となることができない。
一 禁こ以上の刑に処せられた者
二 国家公務員として懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
三 国会議員
四 政党の役員(任命の日以前一年間においてこれに該当した者を含む。)
五 放送事業者若しくは無線設備の機器の製造業者若しくは販売業者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わずこれと同等以上の職権若しくは支配力を有する者を含む。以下この條中同じ。)若しくはその法人の議決権の十分の一以上を有する者(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)
六 前号に掲げる事業者の団体の役員(任命の日以前一年間においてこれに該当した者を含む。)
4 委員長及び委員の任命については、四人以上が同一の政党に属する者となることとなつてはならない。
(宣誓及び服務)
第七條 委員長及び委員は、任命後、内閣総理大臣の面前において、服務の宣誓をした後でなければ、その職務を行つてはならない。
2 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第九十六條、第九十八條から第百二條まで及び第百五條の規定は、委員長及び委員に準用する。
(兼職の禁止)
第八條 委員長及び委員は、営利を目的とする団体の役員となり、自ら営利事業に従事し、その他金銭上の利益を目的とする業務を行つてはならない。
(任期)
第九條 委員長及び委員の任期は、六年とする。但し、補欠の委員長又は委員は、前任者の残任期間在任する。
2 委員長及び委員は、再任されることができる。
(退職)
第十條 委員長又は委員は、第六條第二項後段の規定による両議院の同意が得られなかつたときは、当然退職するものとする。
(罷免)
第十一條 内閣総理大臣は、委員長又は委員が第六條第三項各号の一に該当するに至つたときは、これを罷免しなければならない。
第十二條 内閣総理大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長若しくは委員に職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があると認めるときは、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。
2 内閣総理大臣は、委員長及び委員のうち四人以上が同一の政党に属することとなつたときは、同一の政党に属する者が三人になるように、両議院の同意を得て、委員を罷免する。
(委員長)
第十三條 委員長は、電波監理委員会の会務を総理し、電波監理委員会を代表する。
2 委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときに委員長の職務を行わせるため、副委員長一人を置く。
3 副委員長は、委員のうちから互選した者について、委員長が任命する。
(給與)
第十四條 委員長及び委員は、別に法律で定めるところにより給與を受ける。
(退職後の就職の制限)
第十五條 委員長又は委員であつた者は、その退職後一年間は、第六條第三項第五号及び第六号に掲げる職についてはならない。
(会議及び手続)
第十六條 電波監理委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 電波監理委員会の議事は、出席者の過半数をもつて決する。可否同数のときは、委員長の決するところによる。
3 電波監理委員会の会議の議事は、議事録として記録しておかなければならない。この記録は、電波監理委員会規則で定める手続により、公衆の閲覽のために公開されなければならない。
4 前三項に定めるものの外、電波監理委員会の会議の議事に関する手続は、電波監理委員会規則で定める。
(規則の制定)
第十七條 電波監理委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基いて、電波監理委員会規則を制定することができる。
(報告)
第十八條 電波監理委員会は、第十六條の規定による会議を開いて議決をしたときは、その要旨を内閣総理大臣に報告しなければならない。但し、内閣総理大臣がその必要がないと認めた事項については、この限りでない。
2 電波監理委員会は、左に掲げる事項について調査し、毎年一回内閣総理大臣を経由して、国会に報告しなければならない。
一 無線局の開設の状況
二 放送番組の状況及びその改善の方策
三 日本放送協会の業務の状況及び放送事業の振興の方策
四 無線設備の改善の方策
五 電波の利用に関する業務及び技術の発達を図る方策
六 その他電波監理委員会の所掌に属する事項の状況
(審理官)
第十九條 電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第七章に定める聽聞を行うため、電波監理委員会に審理官五人以内を置く。
2 審理官は、電波監理委員会の同意を得て、委員長が任命する。これを罷免するときも、同様とする。
(事務局)
第二十條 電波監理委員会に、事務局として電波監理総局を置く。
2 電波監理総局は、電波監理委員会の事務を処理する。
3 電波監理総局の長は、電波監理長官とする。電波監理長官は、電波監理委員会の指揮監督を受け、電波監理総局の事務を掌理する。
4 電波監理長官は、電波監理委員会の同意を得て、委員長が任命する。これを罷免するときも、同様とする。
5 電波監理委員会は、その所掌事務の遂行に支障を及ぼすおそれがないと認められる範囲内において、その権限に属する事項の一部を電波監理総局に行わせることができる。
(内部組織)
第二十一條 電波監理総局に、官房及び左の三部を置く。
法規経済部
施設監督部
電波部
(官房の事務)
第二十二條 官房においては、電波監理総局の事務のうち、左に掲げる事務をつかさどる。
一 機密に関すること。
二 公印を制定し、及び管理すること。
三 公文書類を接受し、発送し、編集し、及び保存すること。
四 無線局の免許に関する意見を取りまとめること。
五 分課に関すること。
六 聽聞に関すること。
七 監察を行うこと。
八 周知宣伝に関すること。
九 調査及び統計に関すること。
十 職員の定員、職階、任免、分限、懲戒、服務その他の人事並びに教養及び訓練に関すること。
十一 職員の厚生及び保健並びに宿舍に関すること。
十二 経費及び收入の予算、決算及び会計並びに会計の監査に関すること。
十三 行政財産及び物品を管理すること。
十四 他の部の所掌に属しない事務に関すること。
(法規経済部の事務)
第二十三條 法規経済部においては、電波監理総局の事務のうち、左に掲げる事務をつかさどる。
一 電波及び放送の規律に関する條約及び法令に関すること。
二 国際電気通信連合その他の機関との連絡に関すること。
三 無線局の開設の根本的基準に関すること。
四 無線局の免許に関すること。但し、社会的、経済的な事項に限る。
五 無線局の運用に関すること。但し、社会的、経済的な事項に限る。
六 無線従事者国家試験に関すること。
七 無線従事者の免許に関すること。
八 日本放送協会等電波監理委員会の所掌事務に係る公益法人その他の団体に関すること。
九 日本放送協会が放送受信用機器の修理業務を行うことができる場所の指定に関すること。
十 電波監理委員会の所掌事務に係る法務に関すること。
十一 社会的、経済的な見地からする電波及び放送の規律に関すること。
(施設監督部の事務)
第二十四條 施設監督部においては、電波監理総局の事務のうち、左に掲げる事務をつかさどる。
一 無線設備の技術基準に関すること。但し、電波部の所掌に属するものを除く。
二 無線局の免許に関すること。但し、法規経済部の所掌に属するものを除く。
三 無線局の運用に関すること。但し、法規経済部の所掌に属するものを除く。
四 国際周波数登録委員会との連絡に関すること。
五 無線局の検査に関すること。
六 技術的見地からする電波及び放送の規律に関すること。但し、電波部の所掌に属するものを除く。
(電波部の事務)
第二十五條 電波部においては、電波監理総局の事務のうち、左に掲げる事務をつかさどる。
一 電波の利用に関する技術の研究及び調査をし、又はこれを部外の研究機関に委託すること。
二 無線局に対し指定すべき周波数を選定すること。
三 周波数標準値を定め、標準電波を発射し、及び標準時を通報すること。
四 無線設備の機器の技術基準を定め、並びに無線設備の機器の型式検定をすること。
五 電波の伝わる状況を予報し、及び電波の伝わり方の異常に関して警報を発すること。
六 電波の監視に関すること。
七 無線局の電波の発射の臨時の停止に関すること。
八 国際無線通信諮問委員会及び国際電波監視機関との連絡に関すること。
九 無線設備の機器の較正をすること。
十 電波監理委員会の所掌事務を遂行するのに必要な施設であつて無線設備に関するものの設置及び管理に関すること。
十一 電波技術審議会に関すること。
十二 電波観測所に関すること。
(地方機関)
第二十六條 電波監理総局の地方機関として、地方電波監理局を置く。
2 地方電波監理局の名称、位置及び管轄区域は、左の通りとする。
名称
位置
管轄区域
関東電波監理局
東京都
東京都 神奈川県 埼玉県 群馬県 千葉県 茨城県 栃木県 山梨県
信越電波監理局
長野市
長野県 新潟県
東海電波監理局
名古屋市
愛知県 三重県 靜岡県 岐阜県
北陸電波監理局
金沢市
石川県 福井県 富山県
近畿電波監理局
大阪市
大阪府 京都府 兵庫県 奈良県 滋賀県 和歌山県
中国電波監理局
広島市
広島県 鳥取県 島根県 岡山県 山口県
四国電波監理局
松山市
愛媛県 徳島県 香川県 高知県
九州電波監理局
熊本市
熊本県 長崎県 福岡県 大分県 佐賀県 宮崎県 鹿兒島県
東北電波監理局
仙台市
宮城県 福島県 岩手県 青森県 山形県 秋田県
北海道電波監理局
札幌市
北海道
3 地方電波監理局は、電波監理総局の事務の一部を分掌するものとし、その範囲は、政令で定める。
4 第二十五條第六号及び第七号に掲げる事務については、第二項の管轄区域にかかわらず、電波監理委員会規則で別段の定をすることができる。
5 地方電波監理局の内部組織は、電波監理委員会規則で定める。
6 電波監理委員会は、地方電波監理局の事務の一部を分掌させるため必要があるときは、電波監視局及び出張所を設けることができる。
7 前項の電波監視局及び出張所の名称、位置、管轄区域、所掌事務の範囲及び内部組織は、電波監理委員会規則で定める。
(附属機関)
第二十七條 左の表の上欄に掲げる機関は、電波監理委員会の附属機関として置かれるものとし、その設置の目的は、それぞれ下欄に記載する通りとする。
種類
目的
電波技術審議会
電波監理委員会の諮問に応じて、電波の技術に関する事項について調査審議すること
電波観測所
電波監理委員会の所掌事務を行うのに必要な電波の伝わり方の観測及び研究を行うこと
職員訓練所
電波監理委員会の職員の訓練を行うこと
2 電波技術審議会の組織、所掌事務及び委員その他の職員については、政令で定める。
3 電波観測所及び職員訓練所の名称、位置及び内部組織は、電波監理委員会規則で定める。
(職員)
第二十八條 電波監理委員会に置かれる職員の任免、昇任、懲戒その他人事管理に関する事項については国家公務員法の定めるところによる。
(定員)
第二十九條 電波監理委員会に置かれる職員の定員は、別に法律で定める。
(罰則)
第三十條 第八條若しくは第十五條の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
附 則
1 この法律は、電波法施行の日から施行する。
2 第六條第一項の規定による電波監理委員会の委員長及び委員の任命のために必要な行為は、前項の規定にかかわらず、この法律施行前においても行うことができる。
3 この法律施行後最初に任命される委員の任期は、第九條第一項の規定にかかわらず、内閣総理大臣の定めるところにより、それぞれ一年、二年、三年、四年、五年及び六年とする。
4 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第十七條中「外国為替管理委員会」を
外国為替管理委員会
電波監理委員会
に改める。
第十八條中
外国為替管理委員会
外国為替管理委員会設置法(昭和二十四年法律第二百二十九号)
外国為替管理委員会
外国為替管理委員会設置法(昭和二十四年法律第二百二十九号)
電波監理委員会
電波監理委員会設置法(昭和二十五年法律第百三十三号)
に改める。
5 国家行政組織法の一部を次のように改正する。
別表第一の総理府の項中「外国為替管理委員会」を
外国為替管理委員会
電波監理委員会
に改め、同表の電気通信省の項中「電波庁」を削る。
6 特別職の職員の給與に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一條第十三号の次に次の一号を加える。
十三の二 電波監理委員会の委員長及び委員
別表中「統計委員会委員長」を
統計委員会委員長
電波監理委員会委員長
に、「公正取引委員会委員」を
公正取引委員会委員
電波監理委員会委員
に改める。
7 この法律施行の際、現に電波庁の職員である者は、電波監理委員会の職員に同一の勤務條件をもつて任ぜられたものとみなす。但し、別に辞令を発せられたときは、この限りでない。
8 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
第百五十六條第五項中「地方電波監理局の出張所」を「電波監視局、地方電波監理局の出張所、電波観測所」に改める。
9 国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号)の規定の適用については、電波監理委員会の職員は、電気通信省の職員とみなす。
10 電気通信省設置法第四十七條の規定の適用については、電波監理委員会の職員及びその家族は、電気通信省の職員及びその家族とみなす。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣臨時代理 国務大臣 殖田俊吉
電気通信大臣 小沢佐重喜
電波監理委員会設置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年五月二日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百三十三号
電波監理委員会設置法
(目的)
第一条 この法律は、電波監理委員会の所掌事務の範囲及び権限を明確に定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するに足る組織を定めることを目的とする。
(設置)
第二条 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基いて、総理府の外局として、電波監理委員会を設置する。
(所掌事務)
第三条 電波監理委員会は、左に掲げる事務をつかさどる。
一 無線局の開設の根本的基準を定めることその他無線局(高周波利用設備を含む。以下同じ。)の免許等に関すること。
二 無線設備(高周波利用設備を含む。以下同じ。)の技術基準を定めること。
三 無線局の運用に関すること。
四 無線従事者国家試験に関すること。
五 無線従事者の免許に関すること。
六 日本放送協会に関すること。
七 電波監理委員会の処分に対する異議の申立の聴聞に関すること。
八 前各号に掲げるものの外、電波及び放送の規律に関すること。
(権限)
第四条 電波監理委員会は、この法律に規定する所掌事務を遂行するため、左に掲げる権限を有する。但し、その権限の行使は、法律(これに基く命令を含む。)に従つてなさなければならない。
一 予算の範囲内で所掌事務の遂行に必要な支出負担行為をすること。
二 収入金を徴収し、所掌事務の遂行に必要な支払をすること。
三 所掌事務の遂行に直接必要な事務所、業務施設、研究施設等を設置し、及び管理すること。
四 所掌事務の遂行に直接必要な業務用資材、研究用資材、事務用品等を調達すること。
五 不用財産を処分すること。
六 職員の任免及び賞罰を行い、その他職員の人事を管理すること。
七 職員の厚生及び保健のため必要な施設をし、及び管理すること。
八 職員に貸与する宿舎を設置し、及び管理すること。
九 所掌事務に関する統計及び調査資料を作成し、刊行し、及び頒布すること。
十 所掌事務の監察を行い、法令の定めるところに従い、必要な措置をとること。
十一 所掌事務の周知宣伝を行うこと。
十二 電波監理委員会の公印を制定すること。
十三 所掌事務に係る公益法人その他の団体につき、許可又は認可を与えること。
十四 所掌事務に関し、報告を徴すること。
十五 電波の利用に関する業務及び技術の研究及び調査であつて、所掌事務を遂行するのに必要なものを自ら行い、又は自ら行うことを不利と認める場合にこれを部外の研究機関に委託すること。
十六 所掌事務を遂行するのに必要な特許権及び実用新案権並びにこれらの実施権を取得すること。
十七 条約により定められた範囲内において電波の管理に関する国際的取極を商議し、及び締結すること並びに国際電気通信連合その他の機関と連絡すること。
十八 無線局の開設を免許し、又は承認すること。
十九 無線局についてその無線設備、無線従事者の資格及び員数等を検査すること。
二十 電波を監視し、及び規律すること。
二十一 周波数標準値を定め、標準電波を発射し、及び標準時を通報すること。
二十二 電波が伝わる状況を予報し、及び電波の伝わり方の異常に関して警報を発すること。
二十三 無線設備の技術基準を定めること。
二十四 委託により、無線設備の機器の型式検定をすること。
二十五 無線従事者国家試験を行い、及び無線従事者免許を与えること。
二十六 委託により、無線設備の性能試験及びその機器の較正を行うこと。
二十七 委託により、無線局の周波数を測定すること。
二十八 日本放送協会の定款の変更を認可すること。
二十九 日本放送協会に対し、国際放送を行うべきことを命ずること。
三十 日本放送協会とその放送を受信する者との契約の条項を認可すること。
三十一 日本放送協会の放送設備の譲渡、賃貸等につき認可すること。
三十二 日本放送協会が放送受信用機器の修理業務を行うことができる場所を指定すること。
三十三 前各号に掲げるものの外、法律(これに基く命令を含む。)に基き、電波監理委員会に属させられた権限
(組織)
第五条 電波監理委員会は、委員長一人及び委員六人をもつて組織する。
(委員長及び委員の任命)
第六条 委員長及び委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
2 委員長又は委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のため、両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、両議院の同意を得ないで委員長又は委員を任命することができる。この場合においては、任命後最初の国会において、両議院の同意を得なければならない。
3 左の各号の一に該当する者は、委員長又は委員となることができない。
一 禁こ以上の刑に処せられた者
二 国家公務員として懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
三 国会議員
四 政党の役員(任命の日以前一年間においてこれに該当した者を含む。)
五 放送事業者若しくは無線設備の機器の製造業者若しくは販売業者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わずこれと同等以上の職権若しくは支配力を有する者を含む。以下この条中同じ。)若しくはその法人の議決権の十分の一以上を有する者(任命の日以前一年間においてこれらに該当した者を含む。)
六 前号に掲げる事業者の団体の役員(任命の日以前一年間においてこれに該当した者を含む。)
4 委員長及び委員の任命については、四人以上が同一の政党に属する者となることとなつてはならない。
(宣誓及び服務)
第七条 委員長及び委員は、任命後、内閣総理大臣の面前において、服務の宣誓をした後でなければ、その職務を行つてはならない。
2 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第九十六条、第九十八条から第百二条まで及び第百五条の規定は、委員長及び委員に準用する。
(兼職の禁止)
第八条 委員長及び委員は、営利を目的とする団体の役員となり、自ら営利事業に従事し、その他金銭上の利益を目的とする業務を行つてはならない。
(任期)
第九条 委員長及び委員の任期は、六年とする。但し、補欠の委員長又は委員は、前任者の残任期間在任する。
2 委員長及び委員は、再任されることができる。
(退職)
第十条 委員長又は委員は、第六条第二項後段の規定による両議院の同意が得られなかつたときは、当然退職するものとする。
(罷免)
第十一条 内閣総理大臣は、委員長又は委員が第六条第三項各号の一に該当するに至つたときは、これを罷免しなければならない。
第十二条 内閣総理大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長若しくは委員に職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があると認めるときは、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。
2 内閣総理大臣は、委員長及び委員のうち四人以上が同一の政党に属することとなつたときは、同一の政党に属する者が三人になるように、両議院の同意を得て、委員を罷免する。
(委員長)
第十三条 委員長は、電波監理委員会の会務を総理し、電波監理委員会を代表する。
2 委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときに委員長の職務を行わせるため、副委員長一人を置く。
3 副委員長は、委員のうちから互選した者について、委員長が任命する。
(給与)
第十四条 委員長及び委員は、別に法律で定めるところにより給与を受ける。
(退職後の就職の制限)
第十五条 委員長又は委員であつた者は、その退職後一年間は、第六条第三項第五号及び第六号に掲げる職についてはならない。
(会議及び手続)
第十六条 電波監理委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 電波監理委員会の議事は、出席者の過半数をもつて決する。可否同数のときは、委員長の決するところによる。
3 電波監理委員会の会議の議事は、議事録として記録しておかなければならない。この記録は、電波監理委員会規則で定める手続により、公衆の閲覧のために公開されなければならない。
4 前三項に定めるものの外、電波監理委員会の会議の議事に関する手続は、電波監理委員会規則で定める。
(規則の制定)
第十七条 電波監理委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基いて、電波監理委員会規則を制定することができる。
(報告)
第十八条 電波監理委員会は、第十六条の規定による会議を開いて議決をしたときは、その要旨を内閣総理大臣に報告しなければならない。但し、内閣総理大臣がその必要がないと認めた事項については、この限りでない。
2 電波監理委員会は、左に掲げる事項について調査し、毎年一回内閣総理大臣を経由して、国会に報告しなければならない。
一 無線局の開設の状況
二 放送番組の状況及びその改善の方策
三 日本放送協会の業務の状況及び放送事業の振興の方策
四 無線設備の改善の方策
五 電波の利用に関する業務及び技術の発達を図る方策
六 その他電波監理委員会の所掌に属する事項の状況
(審理官)
第十九条 電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第七章に定める聴聞を行うため、電波監理委員会に審理官五人以内を置く。
2 審理官は、電波監理委員会の同意を得て、委員長が任命する。これを罷免するときも、同様とする。
(事務局)
第二十条 電波監理委員会に、事務局として電波監理総局を置く。
2 電波監理総局は、電波監理委員会の事務を処理する。
3 電波監理総局の長は、電波監理長官とする。電波監理長官は、電波監理委員会の指揮監督を受け、電波監理総局の事務を掌理する。
4 電波監理長官は、電波監理委員会の同意を得て、委員長が任命する。これを罷免するときも、同様とする。
5 電波監理委員会は、その所掌事務の遂行に支障を及ぼすおそれがないと認められる範囲内において、その権限に属する事項の一部を電波監理総局に行わせることができる。
(内部組織)
第二十一条 電波監理総局に、官房及び左の三部を置く。
法規経済部
施設監督部
電波部
(官房の事務)
第二十二条 官房においては、電波監理総局の事務のうち、左に掲げる事務をつかさどる。
一 機密に関すること。
二 公印を制定し、及び管理すること。
三 公文書類を接受し、発送し、編集し、及び保存すること。
四 無線局の免許に関する意見を取りまとめること。
五 分課に関すること。
六 聴聞に関すること。
七 監察を行うこと。
八 周知宣伝に関すること。
九 調査及び統計に関すること。
十 職員の定員、職階、任免、分限、懲戒、服務その他の人事並びに教養及び訓練に関すること。
十一 職員の厚生及び保健並びに宿舎に関すること。
十二 経費及び収入の予算、決算及び会計並びに会計の監査に関すること。
十三 行政財産及び物品を管理すること。
十四 他の部の所掌に属しない事務に関すること。
(法規経済部の事務)
第二十三条 法規経済部においては、電波監理総局の事務のうち、左に掲げる事務をつかさどる。
一 電波及び放送の規律に関する条約及び法令に関すること。
二 国際電気通信連合その他の機関との連絡に関すること。
三 無線局の開設の根本的基準に関すること。
四 無線局の免許に関すること。但し、社会的、経済的な事項に限る。
五 無線局の運用に関すること。但し、社会的、経済的な事項に限る。
六 無線従事者国家試験に関すること。
七 無線従事者の免許に関すること。
八 日本放送協会等電波監理委員会の所掌事務に係る公益法人その他の団体に関すること。
九 日本放送協会が放送受信用機器の修理業務を行うことができる場所の指定に関すること。
十 電波監理委員会の所掌事務に係る法務に関すること。
十一 社会的、経済的な見地からする電波及び放送の規律に関すること。
(施設監督部の事務)
第二十四条 施設監督部においては、電波監理総局の事務のうち、左に掲げる事務をつかさどる。
一 無線設備の技術基準に関すること。但し、電波部の所掌に属するものを除く。
二 無線局の免許に関すること。但し、法規経済部の所掌に属するものを除く。
三 無線局の運用に関すること。但し、法規経済部の所掌に属するものを除く。
四 国際周波数登録委員会との連絡に関すること。
五 無線局の検査に関すること。
六 技術的見地からする電波及び放送の規律に関すること。但し、電波部の所掌に属するものを除く。
(電波部の事務)
第二十五条 電波部においては、電波監理総局の事務のうち、左に掲げる事務をつかさどる。
一 電波の利用に関する技術の研究及び調査をし、又はこれを部外の研究機関に委託すること。
二 無線局に対し指定すべき周波数を選定すること。
三 周波数標準値を定め、標準電波を発射し、及び標準時を通報すること。
四 無線設備の機器の技術基準を定め、並びに無線設備の機器の型式検定をすること。
五 電波の伝わる状況を予報し、及び電波の伝わり方の異常に関して警報を発すること。
六 電波の監視に関すること。
七 無線局の電波の発射の臨時の停止に関すること。
八 国際無線通信諮問委員会及び国際電波監視機関との連絡に関すること。
九 無線設備の機器の較正をすること。
十 電波監理委員会の所掌事務を遂行するのに必要な施設であつて無線設備に関するものの設置及び管理に関すること。
十一 電波技術審議会に関すること。
十二 電波観測所に関すること。
(地方機関)
第二十六条 電波監理総局の地方機関として、地方電波監理局を置く。
2 地方電波監理局の名称、位置及び管轄区域は、左の通りとする。
名称
位置
管轄区域
関東電波監理局
東京都
東京都 神奈川県 埼玉県 群馬県 千葉県 茨城県 栃木県 山梨県
信越電波監理局
長野市
長野県 新潟県
東海電波監理局
名古屋市
愛知県 三重県 静岡県 岐阜県
北陸電波監理局
金沢市
石川県 福井県 富山県
近畿電波監理局
大阪市
大阪府 京都府 兵庫県 奈良県 滋賀県 和歌山県
中国電波監理局
広島市
広島県 鳥取県 島根県 岡山県 山口県
四国電波監理局
松山市
愛媛県 徳島県 香川県 高知県
九州電波監理局
熊本市
熊本県 長崎県 福岡県 大分県 佐賀県 宮崎県 鹿児島県
東北電波監理局
仙台市
宮城県 福島県 岩手県 青森県 山形県 秋田県
北海道電波監理局
札幌市
北海道
3 地方電波監理局は、電波監理総局の事務の一部を分掌するものとし、その範囲は、政令で定める。
4 第二十五条第六号及び第七号に掲げる事務については、第二項の管轄区域にかかわらず、電波監理委員会規則で別段の定をすることができる。
5 地方電波監理局の内部組織は、電波監理委員会規則で定める。
6 電波監理委員会は、地方電波監理局の事務の一部を分掌させるため必要があるときは、電波監視局及び出張所を設けることができる。
7 前項の電波監視局及び出張所の名称、位置、管轄区域、所掌事務の範囲及び内部組織は、電波監理委員会規則で定める。
(附属機関)
第二十七条 左の表の上欄に掲げる機関は、電波監理委員会の附属機関として置かれるものとし、その設置の目的は、それぞれ下欄に記載する通りとする。
種類
目的
電波技術審議会
電波監理委員会の諮問に応じて、電波の技術に関する事項について調査審議すること
電波観測所
電波監理委員会の所掌事務を行うのに必要な電波の伝わり方の観測及び研究を行うこと
職員訓練所
電波監理委員会の職員の訓練を行うこと
2 電波技術審議会の組織、所掌事務及び委員その他の職員については、政令で定める。
3 電波観測所及び職員訓練所の名称、位置及び内部組織は、電波監理委員会規則で定める。
(職員)
第二十八条 電波監理委員会に置かれる職員の任免、昇任、懲戒その他人事管理に関する事項については国家公務員法の定めるところによる。
(定員)
第二十九条 電波監理委員会に置かれる職員の定員は、別に法律で定める。
(罰則)
第三十条 第八条若しくは第十五条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
附 則
1 この法律は、電波法施行の日から施行する。
2 第六条第一項の規定による電波監理委員会の委員長及び委員の任命のために必要な行為は、前項の規定にかかわらず、この法律施行前においても行うことができる。
3 この法律施行後最初に任命される委員の任期は、第九条第一項の規定にかかわらず、内閣総理大臣の定めるところにより、それぞれ一年、二年、三年、四年、五年及び六年とする。
4 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第十七条中「外国為替管理委員会」を
外国為替管理委員会
電波監理委員会
に改める。
第十八条中
外国為替管理委員会
外国為替管理委員会設置法(昭和二十四年法律第二百二十九号)
外国為替管理委員会
外国為替管理委員会設置法(昭和二十四年法律第二百二十九号)
電波監理委員会
電波監理委員会設置法(昭和二十五年法律第百三十三号)
に改める。
5 国家行政組織法の一部を次のように改正する。
別表第一の総理府の項中「外国為替管理委員会」を
外国為替管理委員会
電波監理委員会
に改め、同表の電気通信省の項中「電波庁」を削る。
6 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十三号の次に次の一号を加える。
十三の二 電波監理委員会の委員長及び委員
別表中「統計委員会委員長」を
統計委員会委員長
電波監理委員会委員長
に、「公正取引委員会委員」を
公正取引委員会委員
電波監理委員会委員
に改める。
7 この法律施行の際、現に電波庁の職員である者は、電波監理委員会の職員に同一の勤務条件をもつて任ぜられたものとみなす。但し、別に辞令を発せられたときは、この限りでない。
8 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
第百五十六条第五項中「地方電波監理局の出張所」を「電波監視局、地方電波監理局の出張所、電波観測所」に改める。
9 国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号)の規定の適用については、電波監理委員会の職員は、電気通信省の職員とみなす。
10 電気通信省設置法第四十七条の規定の適用については、電波監理委員会の職員及びその家族は、電気通信省の職員及びその家族とみなす。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣臨時代理 国務大臣 殖田俊吉
電気通信大臣 小沢佐重喜