選挙運動等の臨時特例に関する法律
法令番号: 法律第百九十六号
公布年月日: 昭和23年7月29日
法令の形式: 法律
選挙運動等の臨時特例に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年七月二十九日
内閣総理大臣 芦田均
法律第百九十六号
選挙運動等の臨時特例に関する法律
(この法律の目的及び適用範囲)
第一條 この法律は、現下の経済事情に鑑み、選挙の公営を強化し、選挙を最も公平且つ適正に行い、以て選挙の腐敗を防止することを目的とし、衆議院議員の選挙に、これを適用する。
(立会演説会)
第二條 市及び人口概ね五千以上の町村で都道府縣の選挙管理委員会の指定するものは、議員候補者の政見を選挙人に周知させるため、立会演説会を開催しなければならない。
2 前項の市は、人口概ね五万ごとを一單位として、立会演説会を開催するようにしなければならない。
3 第一項の町村以外の町村で人口、交通の状況等を参酌の上都道府縣の選挙管理委員会の指定したものは、立会演説会を開催しなければならない。
第三條 立会演説会において演説をする者は、議員候補者でなければならない。
2 議員候補者は、その代理として一人を限り、自己の加わるべき立会演説会において演説を行わせることができる。但し、その演説の回数は、当該候補者が第五條第二項又は第六條第二項の規定により行い得べき演説の総回数の五分の一を超えてはならない。
3 前項但書の回数の計算については、端数は、これを一回とみなす。
第四條 都道府縣の選挙管理委員会は、あらかじめ立会演説会を開催すべき予定の日時及び会場並びに一回の立会演説会において演説をすることのできる議員候補者の数及び演説の時間を決定し、選挙の期日の公示又は告示の日から三日以内に、これを告示しなければならない。
2 前項の場合において必要があると認めるときは、都道府縣の選挙管理委員会は議員候補者を班に分けて、立会演説会を実施する方法を講じなければならない。
3 第一項の規定による決定をなすに当つては、都道府縣の選挙管理委員会は、都道府縣の区域内に主たる事務所を有する政党又はその支部で最近に行われた総選挙において所属の衆議院議員を有し若しくは有したものの代表者一人の参集を求めて、その意見をきかなければならない。
4 前項の参集に加わろうとする政党又はその支部は、都道府縣の選挙管理委員会に、その指定する期日までに、その旨を届け出なければならない。
第五條 立会演説会に加わろうとする議員候補者は、都道府縣の選挙管理委員会に、その指定する期日までに、その旨を届け出なければならない。
2 前項の届出のあつた議員候補者について、最初に行われる立会演説会における演説の順序及び前條第二項の規定により班を分けて実施する場合におけるその所属の班は、都道府縣の選挙管理委員会が、くじでこれを決定する。この場合においては、併せて議員候補者が演説をすることのできる立会演説会の日時及び会場を決定しなければならない。
3 第二回以後の立会演説会における議員候補者の演説の順序は、原則として、前回の第一順位の者を最後の順位とし、第二順位以下の者を順次一順位づつ繰り上げたものによる。
4 都道府縣の選挙管理委員会は、第二項の決定をしたときは、直ちに、当該候補者及び関係市町村の選挙管理委員会に、これを通知しなければならない。
第六條 前條第一項の規定による期日後立候補の届出をした者で立会演説会に加わろうとする者は、都道府縣の選挙管理委員会の定めるところにより、その旨を届け出なければならない。
2 前項の届出のあつた議員候補者が演説をすることのできる立会演説会の日時、会場及び最初に加わることを得べき立会演説会における演説の順序並びに第四條第二項の規定により班を分けて実施する場合におけるその所属の班は、都道府縣の選挙管理委員会がこれを決定する。
3 前條第三項及び第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第七條 市町村の選挙管理委員会は、前二條の規定により通知があつたときは、立会演説会を開催すべき期日前二日までに、公衆の見易い場所に、立会演説会を開催すべき日時及び会場並びに演説を行うべき議員候補者の氏名及び党派別を掲示しなければならない。この場合における掲示の場所は、立会演説会を開催すべき一市町村又は一單位につき、二十箇所以上でなければならない。
2 市町村の選挙管理委員会は、立会演説会開催の当日の演説会場の表示並びに演説会場における議員候補者の氏名及び党派別の掲示をしなければならない。
3 前二項に規定するものの外、会場の施設その他立会演説会の実施に関する事務は、市町村の選挙管理委員会がこれを行う。
第八條 前六條に定めるものを除く外、立会演説会に関し必要な事項は、都道府縣の選挙管理委員会がこれを定める。
(個人演説会)
第九條 議員候補者は、市町村の選挙管理委員会の指定する施設を使用して、個人演説会を三十回以内開催することができる。
2 前項の施設については、政令の定めるところにより、その管理者において、必要な設備をしなければならない。
3 市町村の選挙管理委員会は、第一項の施設の指定をしたときは、直ちに、都道府縣の選挙管理委員会に、これを報告しなければならない。
4 前項の報告があつたときは、都道府縣の選挙管理委員会は、これを告示しなければならない。
第十條 議員候補者が第十二條第一項の規定による届出をした後、その開催すべき個人演説会を実施しなかつた場合においても、その実施しなかつた回数は、これを前條第一項の規定による回数に算入するものとする。但し、天災その他不可抗力に因る場合は、この限りでない。
2 立会演説会が開催される当日には、当該市町村において、個人演説会を開催することができない。
第十一條 個人演説会においては、議員候補者以外の者も演説をすることができる。
第十二條 個人演説会を開催しようとする議員候補者は、開催すべき期日前五日までに、使用すべき施設、開催すべき日時並びに議員候補者の氏名及び党派別を市町村の選挙管理委員会に届け出なければならない。
2 市町村の選挙管理委員会は、前項の届出があつたときは、個人演説会を開催すべき期日前二日までに、都道府縣の選挙管理委員会のあらかじめ定めるところにより、公衆の見易い場所に、個人演説会を開催すべき日時及び会場並びに演説を行うべき議員候補者の氏名及び党派別を掲示しなければならない。この場合における掲示の場所は、個人演説会を開催すべき市町村につき、十箇所とする。
3 第七條第二項の規定は、個人演説会の会場に関する表示及び掲示について、これを準用する。
第十三條 個人演説会において使用する施設については、その使用に関し、料金を徴收することができない。
(街頭演説会)
第十四條 選挙運動のためにする街頭における演説会は、その場所に議員候補者が現在する場合に限り、これを行うことができる。
2 前項の場所には、議員候補者の現在する間、立札及びちようちんを掲示することができる。この場合において、当該候補者が現在しなくなつたときは、直ちに、これを撤去しなければならない。
(演説会の禁止)
第十五條 この法律に定めるところの立会演説会、個人演説会及び街頭における演説会を除く外、選挙運動のためにする演説会は、いかなる名義を以てするを問わず、これを開催することができない。
(放送)
第十六條 議員候補者は、選挙運動の期間中、公益のため、その政見を放送することができる。
2 前項の放送に関しては、当該選挙区のすべての議員候補者に対して、同一放送設備を使用し、同一時間数を與える等同等の利便を提供しなければならない。
3 前二項の放送の回数、日時その他放送に関し必要な事項は、全國選挙管理委員会が日本放送協会と協議の上、これを定める。
第十七條 日本放送協会は、その定めるところにより、議員候補者の氏名、年令、党派別、主要な経歴等を関係区域の選挙人に周知させるため、放送をするものとする。
2 前項の放送の回数は、選挙の期日前二十日から選挙の期日の前日までの間において、各議員候補者について概ね十回とする。
(新聞廣告)
第十八條 議員候補者及び政党その他の政治團体又はその支部の代表者は、都道府縣の選挙管理委員会が議員候補者一人につき定める同一寸法で、都道府縣の選挙管理委員会が同一選挙区ごとに指定する一つの日刊新聞に、選挙運動の期間中一回を限り、選挙に関して廣告をすることができる。
2 前項の廣告を掲載した新聞紙は、第十九條の規定にかかわらず、新聞販賣を業とする者が、通常の方法でこれを頒布することができる。
(文書図画の制限)
第十九條 選挙運動のために使用する郵便葉書、筆書した書状、名刺その他一切の文書図画は、これを頒布することができない。但し、選挙事務所の設置、立会人の依頼、演説会に関し必要な連絡その他選挙事務の連絡のために使用する郵便葉書及び無封書状は、この限りでない。
2 前項但書の郵便葉書及び無封書状は、議員候補者一人について通じて千枚とし、郵便官署において選挙事務用である旨の表示をしたものでなければならない。
3 選挙運動のために使用する回覽板その他の文書図画又は看板(プラカードを含む。)の類を多数の者に回覽させることは、これを第一項の頒布とみなす。但し、第十四條第二項及び第二十二條第五項に規定するものを回覽させることは、この限りでない。
第二十條 選挙運動のために使用する文書図画は、左の各号に掲げるものの外は、これを掲示することができない。
一 第十四條第二項の規定により街頭における演説会のためにその場所において使用する立札及びちようちん
二 第二十二條第五項の規定により自動車、拡声機又は船舶に使用する張札、立札及びちようちん
三 選挙事務所を表示するために、その場所において使用する張札、立札、ちようちん及び看板の類
第二十一條 何人も、選挙運動の期間中は、著述、演藝等の廣告その他いかなる名義を以てするを問わず、前二條の禁止を免れる行爲として、主として議員候補者の氏名、政党その他の政治團体の名称又は議員候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し、又は掲示することができない。
2 選挙運動の期間前に掲示した文書図画で、前項の規定に該当するものがあると認めるときは、都道府縣及び市町村の選挙管理委員会は、選挙運動の期間中に限り、これを撤去し、又は撤去させることができる。
(自動車等の制限)
第二十二條 主として選挙運動のために使用される自動車(道路交通取締法第二條第五項に規定する諸車をいう。以下これに同じ。)、拡声機及び船舶は、議員候補者一人について、それぞれ同時に、左の各号の制限を超えてこれを使用してはならない。
一 自動車 一台
二 拡声機 一揃
三 船 舶 一隻
2 前項の自動車、拡声機又は船舶を使用しようとする場合には、議員候補者は、あらかじめ都道府縣の選挙管理委員会の発行する証明書の交付を受けなければならない。
3 第一項の自動車、拡声機又は船舶を使用する者は、前項の証明書を常時携帶するとともに、その使用する自動車、拡声機又は船舶には、都道府縣の選挙管理委員会の定めるところの表示をしなければならない。
4 前項の証明書は、当該公務員の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
5 第一項の自動車、拡声機及び船舶には、議員候補者の氏名、党派別等を表示する張札、立札及びちようちんを掲示することができる。
6 第一項の自動車を使用するために要した費用は、これを選挙運動の費用でないものとみなす。
(飮食物の提供の禁止)
第二十三條 何人も、選挙運動に関し、いかなる名義を以てするを問わず、飮食物を提供し又は飮食物の提供を受けてはならない。但し、湯茶を提供し又は湯茶の提供を受けることは、この限りでない。
(選挙運動の制限)
第二十四條 何人も、左の各号に掲げる行爲は、これをすることができない。
一 いかなる方法を以てするを問わず、選挙運動のために特定の候補者の氏名又は政党その他の政治團体の名称を連呼すること、但し、個人演説会を開催する場合にあつてはその実施一時間前からその場所において、街頭における演説会を行う場合にあつてはその実施の場所において、当該演説会の告知のためにする場合は、この限りでない。
二 選挙に関し、自動車を連ね又は隊伍を組んで往來する等氣勢を張る行爲をすること
三 選挙の当日選挙運動をすること
(交通機関の利用)
第二十五條 議員候補者、推薦届出者その他選挙運動に從事する者が、選挙運動の期間中関係区域内において、國有鉄道、國営自動車、地方鉄道、軌道、一般乘合旅客自動車運送事業等の交通機関を利用するため、各議員候補者は、運輸大臣の定めるところにより、通じて十五枚を限り、特殊乘車券の交付を受けることができる。
(燃料のあつせん)
第二十六條 議員候補者が選挙運動のために第二十二條第一項第一号の規定による自動車のために使用するガソリンその他の自動車用燃料に関しては、その配給又は交付につき、國又は地方公共團体において、これをあつせんするものとする。この場合においては、全國選挙管理委員会又は都道府縣の選挙管理委員会は、配給の計画その他実施上必要な措置を講じなければならない。
前項の規定によりガソリンその他の自動車用燃料の配給又は交付を受けた者は、議員候補者たることを辞した場合には、直ちに、その全部を返還しなければならない。但し、選挙運動に使用したため全部を返還することができないときは、選挙運動に使用したことを証する明細書を添えて、残部を返還しなければならない。
(公営に要する経費の分担)
第二十七條 議員候補者の届出又は推薦届出をしようとする者は、選挙の公営に要する経費の分担として、議員候補者一人につき、二万円又はこれに相当する額面の國債証書を、あらかじめ國庫に納付しなければならない。
2 前項の規定により國庫に納付した物は、議員候補者が選挙の期日までに死亡し、又は当該候補者たることを辞したときその他いかなる場合においても、これを返還しないものとする。
3 第一項の規定による納付をした者が、当該選挙区において衆議院議員選挙法第七十五條第一項の規定により更に選挙が行われるとき、再び議員候補者の届出又は推薦届出をする場合には、第一項の規定による納付をすることを要しない。
4 衆議院議員選挙法第六十七條第一項乃至第三項の規定による届出をする場合にあつては第一項の納付をしたことを証すべき書面、前項の規定による届出をする場合にあつては前回に納付をしたことを証すべき書面を添付しなければならない。
(國庫の負担)
第二十八條 左の各号に掲げる経費は、國庫の負担とする。
一 立会演説会の開催に要する経費
二 個人演説会のための告知及び施設に関する経費
三 放送に要する経費
四 新聞廣告に要する経費
五 第十九條第二項に規定する郵便葉書及び無封書状の経費
六 第二十五條の規定による交通機関の使用に要する経費
(特別区、区及び全部事務組合)
第二十九條 この法律の適用については、特別区及び地方自治法第百五十五條第二項の規定による区は、これを市とみなし、町村の全部事務組合は、これを一町村とみなす。
(特別の規定)
第三十條 交通至難の島嶼その他の地においてこの法律の規定を適用しがたい事項については、政令で特別の規定を設けることができる。
(施行に関する政令)
第三十一條 この法律の施行に関し必要な規定は、政令でこれを定める。
(罰則)
第三十二條 左の各号の一に該当する者は、これを二年以下の禁錮又は三千円以上五万円以下の罰金に処する。
一 第三條第一項又は第二項の規定に違反して演説をした者
二 第九條第一項又は第十條第二項の規定に違反して個人演説会を開催した者
三 第十四條の規定に違反して街頭における演説をし、又は立札若しくはちようちんを掲示した者
四 第十五條の規定に違反して演説会を開催した者
五 第十八條第一項の規定に違反して新聞廣告をした者
六 第十九條、第二十條又は第二十一條の規定に違反して文書図画を頒布し、又は掲示した者
七 第二十二條第一項の規定に違反して自動車、拡声機又は船舶を使用した者
八 第二十三條の規定に違反して飮食物を提供し又は飮食物の提供を受けた者
第三十三條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の禁錮又は千円以上三万円以下の罰金に処する。
一 第十四條第二項の規定による立札又はちようちんを正当な理由がなくて撤去しなかつた者
二 第二十二條第三項又は第四項の規定に違反して証明書を携帶せず、表示をせず又は呈示を拒んだ者
三 第二十四條の規定に違反した者
四 第二十六條第二項の規定によるガソリンその他の自動車用燃料を正当な理由がなくて返還しなかつた者
(当選無効)
第三十四條 当選人がその選挙に関し、この法律に掲げる罪を犯し刑に処せられたときは、その当選を無効とする。
2 衆議院議員選挙法第百四十三條の規定は、前項に掲げる者が刑に処せられた場合に、これを準用する。
3 第一項の規定による当選無効は、衆議院議員選挙法第七十五條及び第七十七條の規定の適用については、これを同法第百三十六條の規定による当選無効とみなす。
(選挙権及び被選挙権の停止)
第三十五條 第三十二條の罪を犯した者で、罰金の刑に処せられたものはその裁判が確定した日から五年間、禁錮の刑に処せられたものはその裁判が確定した日から刑の執行を終るまでの間又は刑の時効に因る場合を除く外刑の執行の免除を受けるまでの間及びその後五年間、衆議院議員の選挙における選挙権及び被選挙権を有しない。但し、刑の執行猶予の言渡を受けた者については、その期間は、その裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間とする。
2 裁判所は、情状に因り、刑の言渡と同時に前項に規定する者に対し、同項の選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用せず、又は同項の期間を短縮する旨を宣告することができる。
(時効)
第三十六條 第三十二條及び第三十三條の罪の時効は、六箇月を経過することに因り完成する。但し、犯人が逃亡したときは、その期間は、これを一年とする。
附 則
第三十七條 この法律は、次の総選挙から、これを施行する。
第三十八條 選挙運動の文書図画等の特例に関する法律(昭和二十二年法律第十六号)は、この法律の施行後は、衆議院議員の選挙については、これを適用しない。
内閣総理大臣 芦田均
大藏大臣 北村徳太郎
通信大臣 冨吉榮二
選挙運動等の臨時特例に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年七月二十九日
内閣総理大臣 芦田均
法律第百九十六号
選挙運動等の臨時特例に関する法律
(この法律の目的及び適用範囲)
第一条 この法律は、現下の経済事情に鑑み、選挙の公営を強化し、選挙を最も公平且つ適正に行い、以て選挙の腐敗を防止することを目的とし、衆議院議員の選挙に、これを適用する。
(立会演説会)
第二条 市及び人口概ね五千以上の町村で都道府県の選挙管理委員会の指定するものは、議員候補者の政見を選挙人に周知させるため、立会演説会を開催しなければならない。
2 前項の市は、人口概ね五万ごとを一単位として、立会演説会を開催するようにしなければならない。
3 第一項の町村以外の町村で人口、交通の状況等を参酌の上都道府県の選挙管理委員会の指定したものは、立会演説会を開催しなければならない。
第三条 立会演説会において演説をする者は、議員候補者でなければならない。
2 議員候補者は、その代理として一人を限り、自己の加わるべき立会演説会において演説を行わせることができる。但し、その演説の回数は、当該候補者が第五条第二項又は第六条第二項の規定により行い得べき演説の総回数の五分の一を超えてはならない。
3 前項但書の回数の計算については、端数は、これを一回とみなす。
第四条 都道府県の選挙管理委員会は、あらかじめ立会演説会を開催すべき予定の日時及び会場並びに一回の立会演説会において演説をすることのできる議員候補者の数及び演説の時間を決定し、選挙の期日の公示又は告示の日から三日以内に、これを告示しなければならない。
2 前項の場合において必要があると認めるときは、都道府県の選挙管理委員会は議員候補者を班に分けて、立会演説会を実施する方法を講じなければならない。
3 第一項の規定による決定をなすに当つては、都道府県の選挙管理委員会は、都道府県の区域内に主たる事務所を有する政党又はその支部で最近に行われた総選挙において所属の衆議院議員を有し若しくは有したものの代表者一人の参集を求めて、その意見をきかなければならない。
4 前項の参集に加わろうとする政党又はその支部は、都道府県の選挙管理委員会に、その指定する期日までに、その旨を届け出なければならない。
第五条 立会演説会に加わろうとする議員候補者は、都道府県の選挙管理委員会に、その指定する期日までに、その旨を届け出なければならない。
2 前項の届出のあつた議員候補者について、最初に行われる立会演説会における演説の順序及び前条第二項の規定により班を分けて実施する場合におけるその所属の班は、都道府県の選挙管理委員会が、くじでこれを決定する。この場合においては、併せて議員候補者が演説をすることのできる立会演説会の日時及び会場を決定しなければならない。
3 第二回以後の立会演説会における議員候補者の演説の順序は、原則として、前回の第一順位の者を最後の順位とし、第二順位以下の者を順次一順位づつ繰り上げたものによる。
4 都道府県の選挙管理委員会は、第二項の決定をしたときは、直ちに、当該候補者及び関係市町村の選挙管理委員会に、これを通知しなければならない。
第六条 前条第一項の規定による期日後立候補の届出をした者で立会演説会に加わろうとする者は、都道府県の選挙管理委員会の定めるところにより、その旨を届け出なければならない。
2 前項の届出のあつた議員候補者が演説をすることのできる立会演説会の日時、会場及び最初に加わることを得べき立会演説会における演説の順序並びに第四条第二項の規定により班を分けて実施する場合におけるその所属の班は、都道府県の選挙管理委員会がこれを決定する。
3 前条第三項及び第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第七条 市町村の選挙管理委員会は、前二条の規定により通知があつたときは、立会演説会を開催すべき期日前二日までに、公衆の見易い場所に、立会演説会を開催すべき日時及び会場並びに演説を行うべき議員候補者の氏名及び党派別を掲示しなければならない。この場合における掲示の場所は、立会演説会を開催すべき一市町村又は一単位につき、二十箇所以上でなければならない。
2 市町村の選挙管理委員会は、立会演説会開催の当日の演説会場の表示並びに演説会場における議員候補者の氏名及び党派別の掲示をしなければならない。
3 前二項に規定するものの外、会場の施設その他立会演説会の実施に関する事務は、市町村の選挙管理委員会がこれを行う。
第八条 前六条に定めるものを除く外、立会演説会に関し必要な事項は、都道府県の選挙管理委員会がこれを定める。
(個人演説会)
第九条 議員候補者は、市町村の選挙管理委員会の指定する施設を使用して、個人演説会を三十回以内開催することができる。
2 前項の施設については、政令の定めるところにより、その管理者において、必要な設備をしなければならない。
3 市町村の選挙管理委員会は、第一項の施設の指定をしたときは、直ちに、都道府県の選挙管理委員会に、これを報告しなければならない。
4 前項の報告があつたときは、都道府県の選挙管理委員会は、これを告示しなければならない。
第十条 議員候補者が第十二条第一項の規定による届出をした後、その開催すべき個人演説会を実施しなかつた場合においても、その実施しなかつた回数は、これを前条第一項の規定による回数に算入するものとする。但し、天災その他不可抗力に因る場合は、この限りでない。
2 立会演説会が開催される当日には、当該市町村において、個人演説会を開催することができない。
第十一条 個人演説会においては、議員候補者以外の者も演説をすることができる。
第十二条 個人演説会を開催しようとする議員候補者は、開催すべき期日前五日までに、使用すべき施設、開催すべき日時並びに議員候補者の氏名及び党派別を市町村の選挙管理委員会に届け出なければならない。
2 市町村の選挙管理委員会は、前項の届出があつたときは、個人演説会を開催すべき期日前二日までに、都道府県の選挙管理委員会のあらかじめ定めるところにより、公衆の見易い場所に、個人演説会を開催すべき日時及び会場並びに演説を行うべき議員候補者の氏名及び党派別を掲示しなければならない。この場合における掲示の場所は、個人演説会を開催すべき市町村につき、十箇所とする。
3 第七条第二項の規定は、個人演説会の会場に関する表示及び掲示について、これを準用する。
第十三条 個人演説会において使用する施設については、その使用に関し、料金を徴収することができない。
(街頭演説会)
第十四条 選挙運動のためにする街頭における演説会は、その場所に議員候補者が現在する場合に限り、これを行うことができる。
2 前項の場所には、議員候補者の現在する間、立札及びちようちんを掲示することができる。この場合において、当該候補者が現在しなくなつたときは、直ちに、これを撤去しなければならない。
(演説会の禁止)
第十五条 この法律に定めるところの立会演説会、個人演説会及び街頭における演説会を除く外、選挙運動のためにする演説会は、いかなる名義を以てするを問わず、これを開催することができない。
(放送)
第十六条 議員候補者は、選挙運動の期間中、公益のため、その政見を放送することができる。
2 前項の放送に関しては、当該選挙区のすべての議員候補者に対して、同一放送設備を使用し、同一時間数を与える等同等の利便を提供しなければならない。
3 前二項の放送の回数、日時その他放送に関し必要な事項は、全国選挙管理委員会が日本放送協会と協議の上、これを定める。
第十七条 日本放送協会は、その定めるところにより、議員候補者の氏名、年令、党派別、主要な経歴等を関係区域の選挙人に周知させるため、放送をするものとする。
2 前項の放送の回数は、選挙の期日前二十日から選挙の期日の前日までの間において、各議員候補者について概ね十回とする。
(新聞広告)
第十八条 議員候補者及び政党その他の政治団体又はその支部の代表者は、都道府県の選挙管理委員会が議員候補者一人につき定める同一寸法で、都道府県の選挙管理委員会が同一選挙区ごとに指定する一つの日刊新聞に、選挙運動の期間中一回を限り、選挙に関して広告をすることができる。
2 前項の広告を掲載した新聞紙は、第十九条の規定にかかわらず、新聞販売を業とする者が、通常の方法でこれを頒布することができる。
(文書図画の制限)
第十九条 選挙運動のために使用する郵便葉書、筆書した書状、名刺その他一切の文書図画は、これを頒布することができない。但し、選挙事務所の設置、立会人の依頼、演説会に関し必要な連絡その他選挙事務の連絡のために使用する郵便葉書及び無封書状は、この限りでない。
2 前項但書の郵便葉書及び無封書状は、議員候補者一人について通じて千枚とし、郵便官署において選挙事務用である旨の表示をしたものでなければならない。
3 選挙運動のために使用する回覧板その他の文書図画又は看板(プラカードを含む。)の類を多数の者に回覧させることは、これを第一項の頒布とみなす。但し、第十四条第二項及び第二十二条第五項に規定するものを回覧させることは、この限りでない。
第二十条 選挙運動のために使用する文書図画は、左の各号に掲げるものの外は、これを掲示することができない。
一 第十四条第二項の規定により街頭における演説会のためにその場所において使用する立札及びちようちん
二 第二十二条第五項の規定により自動車、拡声機又は船舶に使用する張札、立札及びちようちん
三 選挙事務所を表示するために、その場所において使用する張札、立札、ちようちん及び看板の類
第二十一条 何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義を以てするを問わず、前二条の禁止を免れる行為として、主として議員候補者の氏名、政党その他の政治団体の名称又は議員候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し、又は掲示することができない。
2 選挙運動の期間前に掲示した文書図画で、前項の規定に該当するものがあると認めるときは、都道府県及び市町村の選挙管理委員会は、選挙運動の期間中に限り、これを撤去し、又は撤去させることができる。
(自動車等の制限)
第二十二条 主として選挙運動のために使用される自動車(道路交通取締法第二条第五項に規定する諸車をいう。以下これに同じ。)、拡声機及び船舶は、議員候補者一人について、それぞれ同時に、左の各号の制限を超えてこれを使用してはならない。
一 自動車 一台
二 拡声機 一揃
三 船 舶 一隻
2 前項の自動車、拡声機又は船舶を使用しようとする場合には、議員候補者は、あらかじめ都道府県の選挙管理委員会の発行する証明書の交付を受けなければならない。
3 第一項の自動車、拡声機又は船舶を使用する者は、前項の証明書を常時携帯するとともに、その使用する自動車、拡声機又は船舶には、都道府県の選挙管理委員会の定めるところの表示をしなければならない。
4 前項の証明書は、当該公務員の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
5 第一項の自動車、拡声機及び船舶には、議員候補者の氏名、党派別等を表示する張札、立札及びちようちんを掲示することができる。
6 第一項の自動車を使用するために要した費用は、これを選挙運動の費用でないものとみなす。
(飲食物の提供の禁止)
第二十三条 何人も、選挙運動に関し、いかなる名義を以てするを問わず、飲食物を提供し又は飲食物の提供を受けてはならない。但し、湯茶を提供し又は湯茶の提供を受けることは、この限りでない。
(選挙運動の制限)
第二十四条 何人も、左の各号に掲げる行為は、これをすることができない。
一 いかなる方法を以てするを問わず、選挙運動のために特定の候補者の氏名又は政党その他の政治団体の名称を連呼すること、但し、個人演説会を開催する場合にあつてはその実施一時間前からその場所において、街頭における演説会を行う場合にあつてはその実施の場所において、当該演説会の告知のためにする場合は、この限りでない。
二 選挙に関し、自動車を連ね又は隊伍を組んで往来する等気勢を張る行為をすること
三 選挙の当日選挙運動をすること
(交通機関の利用)
第二十五条 議員候補者、推薦届出者その他選挙運動に従事する者が、選挙運動の期間中関係区域内において、国有鉄道、国営自動車、地方鉄道、軌道、一般乗合旅客自動車運送事業等の交通機関を利用するため、各議員候補者は、運輸大臣の定めるところにより、通じて十五枚を限り、特殊乗車券の交付を受けることができる。
(燃料のあつせん)
第二十六条 議員候補者が選挙運動のために第二十二条第一項第一号の規定による自動車のために使用するガソリンその他の自動車用燃料に関しては、その配給又は交付につき、国又は地方公共団体において、これをあつせんするものとする。この場合においては、全国選挙管理委員会又は都道府県の選挙管理委員会は、配給の計画その他実施上必要な措置を講じなければならない。
前項の規定によりガソリンその他の自動車用燃料の配給又は交付を受けた者は、議員候補者たることを辞した場合には、直ちに、その全部を返還しなければならない。但し、選挙運動に使用したため全部を返還することができないときは、選挙運動に使用したことを証する明細書を添えて、残部を返還しなければならない。
(公営に要する経費の分担)
第二十七条 議員候補者の届出又は推薦届出をしようとする者は、選挙の公営に要する経費の分担として、議員候補者一人につき、二万円又はこれに相当する額面の国債証書を、あらかじめ国庫に納付しなければならない。
2 前項の規定により国庫に納付した物は、議員候補者が選挙の期日までに死亡し、又は当該候補者たることを辞したときその他いかなる場合においても、これを返還しないものとする。
3 第一項の規定による納付をした者が、当該選挙区において衆議院議員選挙法第七十五条第一項の規定により更に選挙が行われるとき、再び議員候補者の届出又は推薦届出をする場合には、第一項の規定による納付をすることを要しない。
4 衆議院議員選挙法第六十七条第一項乃至第三項の規定による届出をする場合にあつては第一項の納付をしたことを証すべき書面、前項の規定による届出をする場合にあつては前回に納付をしたことを証すべき書面を添付しなければならない。
(国庫の負担)
第二十八条 左の各号に掲げる経費は、国庫の負担とする。
一 立会演説会の開催に要する経費
二 個人演説会のための告知及び施設に関する経費
三 放送に要する経費
四 新聞広告に要する経費
五 第十九条第二項に規定する郵便葉書及び無封書状の経費
六 第二十五条の規定による交通機関の使用に要する経費
(特別区、区及び全部事務組合)
第二十九条 この法律の適用については、特別区及び地方自治法第百五十五条第二項の規定による区は、これを市とみなし、町村の全部事務組合は、これを一町村とみなす。
(特別の規定)
第三十条 交通至難の島嶼その他の地においてこの法律の規定を適用しがたい事項については、政令で特別の規定を設けることができる。
(施行に関する政令)
第三十一条 この法律の施行に関し必要な規定は、政令でこれを定める。
(罰則)
第三十二条 左の各号の一に該当する者は、これを二年以下の禁錮又は三千円以上五万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項又は第二項の規定に違反して演説をした者
二 第九条第一項又は第十条第二項の規定に違反して個人演説会を開催した者
三 第十四条の規定に違反して街頭における演説をし、又は立札若しくはちようちんを掲示した者
四 第十五条の規定に違反して演説会を開催した者
五 第十八条第一項の規定に違反して新聞広告をした者
六 第十九条、第二十条又は第二十一条の規定に違反して文書図画を頒布し、又は掲示した者
七 第二十二条第一項の規定に違反して自動車、拡声機又は船舶を使用した者
八 第二十三条の規定に違反して飲食物を提供し又は飲食物の提供を受けた者
第三十三条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の禁錮又は千円以上三万円以下の罰金に処する。
一 第十四条第二項の規定による立札又はちようちんを正当な理由がなくて撤去しなかつた者
二 第二十二条第三項又は第四項の規定に違反して証明書を携帯せず、表示をせず又は呈示を拒んだ者
三 第二十四条の規定に違反した者
四 第二十六条第二項の規定によるガソリンその他の自動車用燃料を正当な理由がなくて返還しなかつた者
(当選無効)
第三十四条 当選人がその選挙に関し、この法律に掲げる罪を犯し刑に処せられたときは、その当選を無効とする。
2 衆議院議員選挙法第百四十三条の規定は、前項に掲げる者が刑に処せられた場合に、これを準用する。
3 第一項の規定による当選無効は、衆議院議員選挙法第七十五条及び第七十七条の規定の適用については、これを同法第百三十六条の規定による当選無効とみなす。
(選挙権及び被選挙権の停止)
第三十五条 第三十二条の罪を犯した者で、罰金の刑に処せられたものはその裁判が確定した日から五年間、禁錮の刑に処せられたものはその裁判が確定した日から刑の執行を終るまでの間又は刑の時効に因る場合を除く外刑の執行の免除を受けるまでの間及びその後五年間、衆議院議員の選挙における選挙権及び被選挙権を有しない。但し、刑の執行猶予の言渡を受けた者については、その期間は、その裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間とする。
2 裁判所は、情状に因り、刑の言渡と同時に前項に規定する者に対し、同項の選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用せず、又は同項の期間を短縮する旨を宣告することができる。
(時効)
第三十六条 第三十二条及び第三十三条の罪の時効は、六箇月を経過することに因り完成する。但し、犯人が逃亡したときは、その期間は、これを一年とする。
附 則
第三十七条 この法律は、次の総選挙から、これを施行する。
第三十八条 選挙運動の文書図画等の特例に関する法律(昭和二十二年法律第十六号)は、この法律の施行後は、衆議院議員の選挙については、これを適用しない。
内閣総理大臣 芦田均
大蔵大臣 北村徳太郎
通信大臣 冨吉栄二