会社利益配当等臨時措置法
法令番号: 法律第百九十号
公布年月日: 昭和22年12月16日
法令の形式: 法律
会社利益配当等臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月十六日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百九十号
会社利益配当等臨時措置法
第一條 この法律は、会社の利益の分配の適正を期するため、会社の利益の配当等につき所要の調整を加え、以て会社の経理を堅実にし、産業の健全な発達に資することを目的とする。
第二條 会社は、当該事業年度の総益金(当該事業年度において取り崩した積立金及び前事業年度から繰り越した益金は、これを含まないものとする。)及び第三項の規定による配当引当積立金から取り崩した金額の合計額から左の各号に掲げる金額の合計額を差し引いた金額(以下配当引当金という。)を超えて利益又は剩余金の配当をしてはならない。
一 当該事業年度の総損金及び前事業年度から繰越した損金
二 額面以上の價額を以て株式を発行した場合においてその額面を超える金額から発行のため、必要な費用を控除した金額で当該事業年度の益金であるもの
三 合併に因り消滅した会社から承継した資産の價額が、当該会社から承継した債務の額並びに当該会社の株主に交付した株式の拂込株金額(当該会社の社員の拂込出資として評價された額を含む。)及び金銭の総額を超える場合におけるその超過額で当該事業年度の益金であるもの
四 資本の減少に因り減少した株金額又は出資額が、消却又は株金若しくは出資の拂戻に充てた金額及び当該減資により填補する損金の額の合計額を超える場合におけるその超過額で当該事業年度の益金であるもの
五 当該事業年度の益金で資産の評價換に因り生じたもの
六 前四号に掲げるものの外、当該事業年度の益金で当該会社の運営に因り生じたもの以外の益金
七 当該事業年度分の法人税に相当する金額
前項第七号の当該事業年度分の法人税に相当する金額とは、会社の当該事業年度の法人税法による所得の金額から前項第二号乃至第六号に掲げる金額の合計額を差し引いた金額を同法による当該事業年度の所得として同法の規定を適用して算出した税額と当該会社の同法による当該事業年度の資本につき同法の規定を適用して算出した税額との合計額に相当する金額とする。
会社は、配当引当金のうち、当該事業年度において配当に充てなかつた金額を、配当引当積立金として積み立てることができる。
第三條 会社は、利益若しくは剩余金の配当をするために借入金をし、又は借入金により利益若しくは剩余金の配当をしてはならない。
会社は、当該事業年度末までに支拂期日の到來した金銭債務(当該会社が遅滯の責に任じない金銭債務を除く。)を完済した後でなければ、利益又は剩余金の配当をしてはならない。
第四條 会社経理應急措置法の特別経理会社(以下特別経理会社という。)で企業再建整備法の整備計画を提出したものは、前二條の規定に反しない場合においても、企業再建整備法の決定整備計画の全部の実行を終るまでは、利益の配当をしてはならない。但し、大藏大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
第五條 会社は、利益又は剩余金の配当をしたときは、決算に関する報告書並びに準備金及び利益の配当に関する報告書を作成し、当該事業年度の決算確定後三十日以内に、これを大藏大臣に提出しなければならない。
大藏大臣は、前項の報告書の樣式を指定して、これによるべきことを命ずることができる。
第六條 大藏大臣は、会社の業務又は財産の状況に関して報告を徴し、又は当該官吏に必要な場所に臨檢し、帳簿書類その他必要な物件を檢査させることができる。
前項の規定により当該官吏に臨檢檢査させる場合には、その身分を示す証票を携帶させなければならない。
第七條 左の場合において、その行爲をした会社の代表者、代理人、使用人その他の從業者は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第二條第一項、第三條又は第四條の規定に違反して配当したとき
二 第三條第一項の規定に違反して借入金をしたとき
前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第八條 第六條の規定による報告をなさず、若しくは虚僞の報告をなし、又は故なく当該官吏の臨檢檢査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第九條 会社の代表者、代理人、使用人その他の從業者が、その会社の業務に関し第七條又は前條の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その会社に対しても、各本條の罰金刑を科する。
第十條 第五條の報告を怠り、又は虚僞の報告をした場合においては、会社の取締役又はこれに準ずる者は、これを五千円以下の過料に処する。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律施行後最初に株主総会の承認その他適法の手続を経て確定する利益又は剩余金の配当については、当該利益又は剩余金の配当に係る事業年度の直前の事業年度から繰り越した益金及び当該事業年度において取り崩した積立金の金額のうち大藏大臣の承認を受けた金額は、これを第二條第一項の総益金の金額に算入することができる。
大藏大臣は、前項の繰り越した益金及び取り崩した積立金の金額のうち、第二條第一項第二号乃至第六号の益金に該当する金額又は該当しないことが明らかでない金額については、前項の承認を與えないことができる。
会社配当等禁止制限令は、これを廃止する。
この法律施行前株主総会の承認その他適法の手続を経て確定した利益又は剩余金の配当については、旧令は、この法律施行後においても、なおその効力を有する。
この法律施行前(前項の配当については、同項の規定により効力を有する旧令の失効前)になした行爲に対する罰則の適用については、なお從前の例による。
大藏大臣 栗栖赳夫
司法大臣 鈴木義男
内閣総理大臣 片山哲
会社利益配当等臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月十六日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百九十号
会社利益配当等臨時措置法
第一条 この法律は、会社の利益の分配の適正を期するため、会社の利益の配当等につき所要の調整を加え、以て会社の経理を堅実にし、産業の健全な発達に資することを目的とする。
第二条 会社は、当該事業年度の総益金(当該事業年度において取り崩した積立金及び前事業年度から繰り越した益金は、これを含まないものとする。)及び第三項の規定による配当引当積立金から取り崩した金額の合計額から左の各号に掲げる金額の合計額を差し引いた金額(以下配当引当金という。)を超えて利益又は剰余金の配当をしてはならない。
一 当該事業年度の総損金及び前事業年度から繰越した損金
二 額面以上の価額を以て株式を発行した場合においてその額面を超える金額から発行のため、必要な費用を控除した金額で当該事業年度の益金であるもの
三 合併に因り消滅した会社から承継した資産の価額が、当該会社から承継した債務の額並びに当該会社の株主に交付した株式の払込株金額(当該会社の社員の払込出資として評価された額を含む。)及び金銭の総額を超える場合におけるその超過額で当該事業年度の益金であるもの
四 資本の減少に因り減少した株金額又は出資額が、消却又は株金若しくは出資の払戻に充てた金額及び当該減資により填補する損金の額の合計額を超える場合におけるその超過額で当該事業年度の益金であるもの
五 当該事業年度の益金で資産の評価換に因り生じたもの
六 前四号に掲げるものの外、当該事業年度の益金で当該会社の運営に因り生じたもの以外の益金
七 当該事業年度分の法人税に相当する金額
前項第七号の当該事業年度分の法人税に相当する金額とは、会社の当該事業年度の法人税法による所得の金額から前項第二号乃至第六号に掲げる金額の合計額を差し引いた金額を同法による当該事業年度の所得として同法の規定を適用して算出した税額と当該会社の同法による当該事業年度の資本につき同法の規定を適用して算出した税額との合計額に相当する金額とする。
会社は、配当引当金のうち、当該事業年度において配当に充てなかつた金額を、配当引当積立金として積み立てることができる。
第三条 会社は、利益若しくは剰余金の配当をするために借入金をし、又は借入金により利益若しくは剰余金の配当をしてはならない。
会社は、当該事業年度末までに支払期日の到来した金銭債務(当該会社が遅滞の責に任じない金銭債務を除く。)を完済した後でなければ、利益又は剰余金の配当をしてはならない。
第四条 会社経理応急措置法の特別経理会社(以下特別経理会社という。)で企業再建整備法の整備計画を提出したものは、前二条の規定に反しない場合においても、企業再建整備法の決定整備計画の全部の実行を終るまでは、利益の配当をしてはならない。但し、大蔵大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
第五条 会社は、利益又は剰余金の配当をしたときは、決算に関する報告書並びに準備金及び利益の配当に関する報告書を作成し、当該事業年度の決算確定後三十日以内に、これを大蔵大臣に提出しなければならない。
大蔵大臣は、前項の報告書の様式を指定して、これによるべきことを命ずることができる。
第六条 大蔵大臣は、会社の業務又は財産の状況に関して報告を徴し、又は当該官吏に必要な場所に臨検し、帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。
前項の規定により当該官吏に臨検検査させる場合には、その身分を示す証票を携帯させなければならない。
第七条 左の場合において、その行為をした会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第二条第一項、第三条又は第四条の規定に違反して配当したとき
二 第三条第一項の規定に違反して借入金をしたとき
前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第八条 第六条の規定による報告をなさず、若しくは虚偽の報告をなし、又は故なく当該官吏の臨検検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第九条 会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その会社の業務に関し第七条又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その会社に対しても、各本条の罰金刑を科する。
第十条 第五条の報告を怠り、又は虚偽の報告をした場合においては、会社の取締役又はこれに準ずる者は、これを五千円以下の過料に処する。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
この法律施行後最初に株主総会の承認その他適法の手続を経て確定する利益又は剰余金の配当については、当該利益又は剰余金の配当に係る事業年度の直前の事業年度から繰り越した益金及び当該事業年度において取り崩した積立金の金額のうち大蔵大臣の承認を受けた金額は、これを第二条第一項の総益金の金額に算入することができる。
大蔵大臣は、前項の繰り越した益金及び取り崩した積立金の金額のうち、第二条第一項第二号乃至第六号の益金に該当する金額又は該当しないことが明らかでない金額については、前項の承認を与えないことができる。
会社配当等禁止制限令は、これを廃止する。
この法律施行前株主総会の承認その他適法の手続を経て確定した利益又は剰余金の配当については、旧令は、この法律施行後においても、なおその効力を有する。
この法律施行前(前項の配当については、同項の規定により効力を有する旧令の失効前)になした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
大蔵大臣 栗栖赳夫
司法大臣 鈴木義男
内閣総理大臣 片山哲