過度経済力集中排除法
法令番号: 法律第二百七号
公布年月日: 昭和22年12月18日
法令の形式: 法律
過度経済力集中排除法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月十八日
内閣総理大臣 片山哲
法律第二百七号
過度経済力集中排除法
第一條 この法律は、平和的且つ民主的な國家を再建するための方策の一環として、できるだけ速やかに過度の経済力の集中を排除し、國民経済を合理的に再編成することによつて、民主的で健全な國民経済再建の基礎を作ることを目的とする。
第二條 この法律で企業とは、企業連合、企業結合、企業合同、会社、組合、個人企業その他形態の何であるかを問わず、事業上、金融上その他経済上の一切の方法又は事業体を含むものとする。
この法律で独立企業とは、各個の法律上の人格を有する企業をいう。
この法律で関係とは、協定、了解、共同行爲その他名義の何であるかを問わず、一切の関係をいう。
この法律で事業分野とは、事業上、金融上その他経済上の一切の活動の分野を含むものとする。
この法律の施行について独占的性質の企業とは、独立企業の合併の結果、又は昭和十二年七月一日から昭和二十年九月一日までの間に当該事業分野において從前に比し過当な事業の拡張をした結果、当該事業分野において影響力を持つている、又は持つ虞のある企業を含むものとする。この場合において、影響力とは、企業による支配力であつて、当該事業分野における價格の決定又は資金、商品若しくは役務の移動を実質的に左右するに足る程度のものをいう。
この法律の施行について関連性のない事業分野とは、生産過程において相互に依存する生産分野、一の最終生産品の生産において生産の段階となつている生産分野又はその他相互の間に生産、販賣若しくは経営の合理化に役立つ関係のある事業分野のいずれにも該当しない事業分野をいう。
この法律で競爭又はこの法律の施行について競爭者とは、現実に存する競爭又は競爭者及び潜在的な競爭又は競爭者をいう。
この法律で生産能力とは、生産施設を通常の状態において最高度に使用した場合の生産の能力をいう。
この法律で家族とは、本人並びにその配偶者及び三親等内の親族をいう。
この法律の施行について個人又は家族における富とは、個人又は家族の成員が所有し、又は支配する企業財産その他の財産を含むものとする。
第三條 持株会社整理委員会は、過度の経済力の集中で、この法律施行の日において現に存している又は昭和二十年八月一日以後この法律施行の日前において存したものを指定し、公共の利益のために、これを排除しなければならない。
前項の場合において過度の経済力の集中とは、営利を目的とする私企業又はその結合体で、一の分野においてその有する相対的規模が題であり、又は二以上の分野においてその占める地位を集積した力が大であるために、事業の重要な部分において、競爭を制限し、又は他の企業が独立して事業を営むことを阻害するものをいう。
持株会社整理委員会は、前項の定義及び第六條第一項の規定による具体的基準に從い、過度の経済力の集中を指定しなければならない。
第四條 前條の規定による指定は、昭和二十三年九月三十日までに、これをしなければならない。
第五條 持株会社整理委員会は、第三條の規定による指定をしたときは、その旨を文書で利害関係人に通知しなければならない。同條の規定による指定を取り消したときも、同樣である。
前項の規定による指定の通知は、公告してこれを行うことができる。
第六條 持株会社整理委員会は、左に掲げる事項その他必要な事項を考慮して、過度の経済力の集中に該当するかどうかを決定する具体的基準を定めて、これを公示しなければならない。
一 当該企業の内地における生産額又は取引額の当該事業分野における内地全体の生産額又は取引額に対する割合。
二 当該企業の内地における生産能力と昭和十二年六月三十日以前における内地における最高生産能力との比較。
三 当該企業の内地における生産能力又は取引額の当該事業分野における内地全体の生産能力又は取引額に対する割合と昭和十二年六月三十日以前におけるその最高の割合との比較。
四 他の企業に対する当該企業の支配的な関係の内容。
五 当該企業の工場事業場の数及びその位置その他の立地條件。
六 工場事業場の生産過程における相互的関連性の有無及びその程度並びに工場事業場の原料の使用又は生産品の生産若しくは販賣における相互的関連性の有無及びその程度。
七 当該企業の原料に対する支配の内容。
八 独立企業の合併その他の方法による事業の拡張の事情。
九 当該企業全体の生産能率と当該企業の各部門又はその結合体の生産能率との比較。
十 一手買取又は一手販賣その他これらに類する独占的性質又は制限的性質の取極めその他の関係の有無、物品の購入若しくは販賣についての特権、生産若しくは販賣の制限、價格の固定、事業地域若しくは販賣地域の制限又は特許権若しくは技術の排他的交換を内容とする取極めその他の関係の有無及びこれらの取極めその他の関係への参加の有無。
十一 個人又は家族の成員が企業に対して行う実質的支配の内容。
前項第九号の生産能率を判定するに当つては、生産高又は單價がその企業の構造の変更により影響されるかどうかについても考慮しなければならない。
第七條 持株会社整理委員会は、第三條の規定により指定された過度の経済力の集中の排除について、この法律の目的を達成するのに必要な措置をとらなければならない。
持株会社整理委員会は、前項の措置に関し必要な範囲内において左に掲げる権能を有する。
一 第三條の規定により指定された過度の経済力の集中を排除するための原則、計画及び手続を定めること。
二 諸般の情報を集め、整理し、及び調査し、情報の整理及び提出を求め、記録の保存を命じ、報告及び意見の提出を求め、並びに帳簿書類その他の物件の所持者に対し当該物件の提出を命じ、及び提出物件を留めて置くこと。
三 関係人又は参考人に出頭を命じて審尋し、及び鑑定人に出頭を命じて鑑定させること。
四 工場事業場その他必要な場所に臨檢して、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を檢査すること。
五 財産の讓渡若しくは引渡を命じ、又は株式その他の有價証券につき議決権の行使の委任を求めること及び当該財産が個人又は家族の成員の所有に属する場合においては、その讓渡の対價として受領した金銭で有價証券を取得すべきことを命じ、又はその讓渡の対價として有價証券を交付し、且つ、これらの有價証券の任意の讓渡を制限すること。
六 法人その他の團体の解散を命じ、企業連合、企業結合、企業合同、一手買取、一手販賣その他の独占的性質又は制限的性質の取極めの解消を命じその他過度の経済力の集中を存続させる行爲を禁止すること。
七 企業の再編成、財産処分その他第三條の規定により指定された過度の経済力の集中を排除するのに必要な措置に関する計画書の提出を求め、これを承認し、及び企業再編成計画書の提出のない場合又はその内容が不適当である場合において、企業の再編成計画書を作成すること。
八 企業再編成計画の実施につき一切の裁判上又は裁判外の権限を有する管理人を指名し、及び企業再編成計画の実施、財産処分、法人その他の團体の解散又は清算その他過度の経済力の集中を排除するのに必要な措置の実施を監督すること。
九 持株会社整理委員会の承認を受けないで財産の移轉その他の行爲をすることを禁止すること。
十 その他第三條の規定により指定された過度の経済力の集中を排除するのに必要と認められ、且つ、この法律の規定に適合する行爲をすること。
十一 前各号に掲げる事項を実施するために、必要な指令をし、又は必要な規則を定めてこれを公示すること。
前項第六号の規定により持株会社整理委員会か法人その他の團体に対しその解散を命じた場合は、他の法令の規定又は契約その他の定にかかわらず、当該法人その他の團体は、その命令により解散する。
第二項第四号の規定により臨檢檢査をする者は、一定の証票を携帶しなければならない。
第八條 持株会社整理委員会は、企業再編成、財産処分その他第三條の規定により指定された過度の経済力の集中を排除するのに必要な措置に関する計画を承認し、若しくは作成しようとするとき、前條第二項第五号若しくは第六号の規定による処分をしようとするとき、又はその他の処分をする場合において必要と認めるときは、その承認その他の処分の指令案を文書で利害関係人及び公正取引委員会に通達しなければならない。
前項の規定による指令案の文書(提出された計画書の承認に係るものを除く。)には、処分の基礎となつた事実の認定を附記しなければならない。この場合において、その事実の認定は、指令案の基礎となつている経済上、生産上その他の資料を詳細に示し、又はその事実の認定には、これらの資料に関する説明を覚書として添附しなければならない。
第五條第二項の規定は、第一項の規定による指令案の通達に、これを準用する。
第九條 持株会社整理委員会は、指令案を通達した日から十五日を経過した後に利害関係人に対し聽聞会を開かなければならない。
前項の聽聞会においては、利害関係人は、指令案について異議の申立又は意見の具申をすることができる。
持株会社整理委員会は、第一項の聽聞会の手続について、規則を定めて、これを公示することができる。
第十條 公正取引委員会は、指令案が昭和二十二年法律第五十四号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下私的独占禁止法という。)の規定に反すると認めるときは、その旨を持株会社整理委員会に対し指示しなければならない。
第十一條 持株会社整理委員会は、第九條第二項の規定による異議の申立若しくは意見の具申又は前條の規定による指示に基き、指令案につき必要な変更を加えることができる。
持株会社整理委員会は、指令の内容を決定したときは、その決定指令を文書で利害関係人に通達しなければならない。
第五條第二項の規定は、前項の規定による決定指令の通達に、これを準用する。
第十二條 持株会社整理委員会は、企業再編成計画が債権者、社債権者及び株主(社員を含む。以下同じ。)を公正且つ公平に取り扱つていない場合には、これを承認してはならない。
企業再編成計画においては、債権者、社債権者及び株主の承認を得ないで、これらの者の権利の変更の定をすることができる。但し、これらの者は、聽聞会において、異議の申立をすることができる。
第十三條 事実の認定が実質的な証拠を基礎としていない場合又は持株会社整理委員会が実質的な証拠を採用しなかつた場合においては、利害関係人は、決定指令が通達され、又は公告された日から三十日以内に、内閣総理大臣に不服の申立をすることができる。但し、その証拠の欠如が聽聞会において特に指摘されなかつた場合又はその実質的な証拠が故意に持株会社整理委員会に提出されなかつた場合には、この限りでない。
第十四條 前條の規定による不服申立があつた日から三十日以内に、内閣総理大臣は、その証拠の欠如が実質的性質のものであるために、指令が独断的になつているかどうかを決定しなければならない。
内閣総理大臣は、その証拠の欠如が実質的性質のものであるために指令が独断的になつていると認める場合においては、必要な程度において第八條乃至第十一條に規定する手続に準じ、適当に変更を加えさせるため、その事件を持株会社整理委員会に差し戻さなければならない。
第十五條 第十三條の規定による不服申立の期間内及び同條の規定による不服申立があつた場合にはその事件が確定するまでの間は、当該決定指令の執行は、停止される。
第十六條 過度の経済力の集中は、他の法令の規定に基く場合又は自発的に生じた場合であるかどうかを問わず、この法律の定めるところにより、これを排除することができる。
第十七條 この法律の施行は、配給統制に関する法令の適用を妨げるものではない。
第十八條 第三條の規定により指定された過度の経済力の集中については、その組織が消滅し、解体若しくは清算を終了し、解体中若しくは清算中にあり、又は変更を加えられた場合においても、持株会社整理委員会が、そのいかなる形態による継続もこれを禁止するために必要な措置をとることを妨げない。
第十九條 持株会社整理委員会の決定指令の執行に関する事項は、公正取引委員会がこれを掌る。
持株会社整理委員会の決定指令については、公正取引委員会に対しその変更の申立をすることができる。
前項の規定による申立に基く持株会社整理委員会の決定指令の変更は、第二十六條の規定により持株会社整理委員会の権限を公正取引委員会に移す日前においては、持株会社整理委員会の同意がなければ、これをしてはならない。
第二十條 持株会社整理委員会は、この法律の規定による職権の一部を公正取引委員会に委任することができる。
持株会社整理委員会は、この法律の規定による職権を行使するのに必要な範囲内において、これに関する事務を行政官廳その他の機関に委嘱することができる。
第二十一條 左の各号の一に該当する者は、これを三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第七條第二項第五号の規定による命令に違反し、同号の規定による請求に從わず、又は同号の規定による制限に違反した者
二 第七條第二項第六号の規定による解散命令又は禁止に違反した者。
三 第七條第二項第九号の規定による禁止に違反した者
前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第二十二條 第七條第二項第四号の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、これを六箇月以下の懲役又は千円以下の罰金に処する。
第二十三條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、第二十一條第一項又は前條の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金刑を科する。
第二十四條 第七條第二項第七号の規定による計画書の提出の請求に從わなかつた者は、これを一万円以下の過料に処する。
第二十五條 左の各号の一に該当する者は、これを千円以下の過料に処する。
一 第七條第二項第二号の規定による請求に從わず、又は同号の規定による命令に違反して情報を整理せず、情報、報告、意見若しくは帳簿書類その他の物件を提出せず、記録を保存せず、又は虚僞の情報、報告若しくは意見を提出した者。
二 第七條第二項第三号の規定による出頭命令に違反し、同号の規定による審尋に対し陳述せず、若しくは虚僞の陳述をし、又は同号の規定による鑑定命令に対し鑑定せず、若しくは虚僞の鑑定をした者
第二十六條 この法律の規定による持株会社整理委員会の職権及び記録並びにこの法律の目的の達成を確保するために必要な職員は、昭和二十三年九月一日から同年十二月三十一日までの間において別に法律で定めるところにより、これを公正取引委員会に移すものとする。
第二十七條 私的独占禁止法の規定及びその規定に基く公正取引委員会の権限は、この法律の規定及び持株会社整理委員会の権限によつて変更されることはない。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
会社利益配当等臨時措置法の一部を次のように改正する。
第四條中「整備計画を提出したもの」の下に「又は過度経済力集中排除法第三條の規定により指定された会社(以下指定会社という。)」を「決定整備計画」の下に「又は過度経済力集中排除法の決定指令の内容」を加え、同條に次の一項を加える。
指定会社(特別経理会社である指定会社を除く。)の利益の配当について大藏大臣が前項但書の許可をなすについては、予め、持株会社整理委員会の意見を求めなければならない。
第七條第一項第一号中「第四條」の下に「第一項」を加える。
内閣総理大臣 片山哲
大藏大臣 栗栖赳夫
司法大臣 鈴木義男
厚生大臣 一松定吉
農林大臣 波多野鼎
商工大臣 水谷長三郎
運輸大臣 北村徳太郎
逓信大臣 三木武夫
労働大臣 米窪滿亮
過度経済力集中排除法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月十八日
内閣総理大臣 片山哲
法律第二百七号
過度経済力集中排除法
第一条 この法律は、平和的且つ民主的な国家を再建するための方策の一環として、できるだけ速やかに過度の経済力の集中を排除し、国民経済を合理的に再編成することによつて、民主的で健全な国民経済再建の基礎を作ることを目的とする。
第二条 この法律で企業とは、企業連合、企業結合、企業合同、会社、組合、個人企業その他形態の何であるかを問わず、事業上、金融上その他経済上の一切の方法又は事業体を含むものとする。
この法律で独立企業とは、各個の法律上の人格を有する企業をいう。
この法律で関係とは、協定、了解、共同行為その他名義の何であるかを問わず、一切の関係をいう。
この法律で事業分野とは、事業上、金融上その他経済上の一切の活動の分野を含むものとする。
この法律の施行について独占的性質の企業とは、独立企業の合併の結果、又は昭和十二年七月一日から昭和二十年九月一日までの間に当該事業分野において従前に比し過当な事業の拡張をした結果、当該事業分野において影響力を持つている、又は持つ虞のある企業を含むものとする。この場合において、影響力とは、企業による支配力であつて、当該事業分野における価格の決定又は資金、商品若しくは役務の移動を実質的に左右するに足る程度のものをいう。
この法律の施行について関連性のない事業分野とは、生産過程において相互に依存する生産分野、一の最終生産品の生産において生産の段階となつている生産分野又はその他相互の間に生産、販売若しくは経営の合理化に役立つ関係のある事業分野のいずれにも該当しない事業分野をいう。
この法律で競争又はこの法律の施行について競争者とは、現実に存する競争又は競争者及び潜在的な競争又は競争者をいう。
この法律で生産能力とは、生産施設を通常の状態において最高度に使用した場合の生産の能力をいう。
この法律で家族とは、本人並びにその配偶者及び三親等内の親族をいう。
この法律の施行について個人又は家族における富とは、個人又は家族の成員が所有し、又は支配する企業財産その他の財産を含むものとする。
第三条 持株会社整理委員会は、過度の経済力の集中で、この法律施行の日において現に存している又は昭和二十年八月一日以後この法律施行の日前において存したものを指定し、公共の利益のために、これを排除しなければならない。
前項の場合において過度の経済力の集中とは、営利を目的とする私企業又はその結合体で、一の分野においてその有する相対的規模が題であり、又は二以上の分野においてその占める地位を集積した力が大であるために、事業の重要な部分において、競争を制限し、又は他の企業が独立して事業を営むことを阻害するものをいう。
持株会社整理委員会は、前項の定義及び第六条第一項の規定による具体的基準に従い、過度の経済力の集中を指定しなければならない。
第四条 前条の規定による指定は、昭和二十三年九月三十日までに、これをしなければならない。
第五条 持株会社整理委員会は、第三条の規定による指定をしたときは、その旨を文書で利害関係人に通知しなければならない。同条の規定による指定を取り消したときも、同様である。
前項の規定による指定の通知は、公告してこれを行うことができる。
第六条 持株会社整理委員会は、左に掲げる事項その他必要な事項を考慮して、過度の経済力の集中に該当するかどうかを決定する具体的基準を定めて、これを公示しなければならない。
一 当該企業の内地における生産額又は取引額の当該事業分野における内地全体の生産額又は取引額に対する割合。
二 当該企業の内地における生産能力と昭和十二年六月三十日以前における内地における最高生産能力との比較。
三 当該企業の内地における生産能力又は取引額の当該事業分野における内地全体の生産能力又は取引額に対する割合と昭和十二年六月三十日以前におけるその最高の割合との比較。
四 他の企業に対する当該企業の支配的な関係の内容。
五 当該企業の工場事業場の数及びその位置その他の立地条件。
六 工場事業場の生産過程における相互的関連性の有無及びその程度並びに工場事業場の原料の使用又は生産品の生産若しくは販売における相互的関連性の有無及びその程度。
七 当該企業の原料に対する支配の内容。
八 独立企業の合併その他の方法による事業の拡張の事情。
九 当該企業全体の生産能率と当該企業の各部門又はその結合体の生産能率との比較。
十 一手買取又は一手販売その他これらに類する独占的性質又は制限的性質の取極めその他の関係の有無、物品の購入若しくは販売についての特権、生産若しくは販売の制限、価格の固定、事業地域若しくは販売地域の制限又は特許権若しくは技術の排他的交換を内容とする取極めその他の関係の有無及びこれらの取極めその他の関係への参加の有無。
十一 個人又は家族の成員が企業に対して行う実質的支配の内容。
前項第九号の生産能率を判定するに当つては、生産高又は単価がその企業の構造の変更により影響されるかどうかについても考慮しなければならない。
第七条 持株会社整理委員会は、第三条の規定により指定された過度の経済力の集中の排除について、この法律の目的を達成するのに必要な措置をとらなければならない。
持株会社整理委員会は、前項の措置に関し必要な範囲内において左に掲げる権能を有する。
一 第三条の規定により指定された過度の経済力の集中を排除するための原則、計画及び手続を定めること。
二 諸般の情報を集め、整理し、及び調査し、情報の整理及び提出を求め、記録の保存を命じ、報告及び意見の提出を求め、並びに帳簿書類その他の物件の所持者に対し当該物件の提出を命じ、及び提出物件を留めて置くこと。
三 関係人又は参考人に出頭を命じて審尋し、及び鑑定人に出頭を命じて鑑定させること。
四 工場事業場その他必要な場所に臨検して、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査すること。
五 財産の譲渡若しくは引渡を命じ、又は株式その他の有価証券につき議決権の行使の委任を求めること及び当該財産が個人又は家族の成員の所有に属する場合においては、その譲渡の対価として受領した金銭で有価証券を取得すべきことを命じ、又はその譲渡の対価として有価証券を交付し、且つ、これらの有価証券の任意の譲渡を制限すること。
六 法人その他の団体の解散を命じ、企業連合、企業結合、企業合同、一手買取、一手販売その他の独占的性質又は制限的性質の取極めの解消を命じその他過度の経済力の集中を存続させる行為を禁止すること。
七 企業の再編成、財産処分その他第三条の規定により指定された過度の経済力の集中を排除するのに必要な措置に関する計画書の提出を求め、これを承認し、及び企業再編成計画書の提出のない場合又はその内容が不適当である場合において、企業の再編成計画書を作成すること。
八 企業再編成計画の実施につき一切の裁判上又は裁判外の権限を有する管理人を指名し、及び企業再編成計画の実施、財産処分、法人その他の団体の解散又は清算その他過度の経済力の集中を排除するのに必要な措置の実施を監督すること。
九 持株会社整理委員会の承認を受けないで財産の移転その他の行為をすることを禁止すること。
十 その他第三条の規定により指定された過度の経済力の集中を排除するのに必要と認められ、且つ、この法律の規定に適合する行為をすること。
十一 前各号に掲げる事項を実施するために、必要な指令をし、又は必要な規則を定めてこれを公示すること。
前項第六号の規定により持株会社整理委員会か法人その他の団体に対しその解散を命じた場合は、他の法令の規定又は契約その他の定にかかわらず、当該法人その他の団体は、その命令により解散する。
第二項第四号の規定により臨検検査をする者は、一定の証票を携帯しなければならない。
第八条 持株会社整理委員会は、企業再編成、財産処分その他第三条の規定により指定された過度の経済力の集中を排除するのに必要な措置に関する計画を承認し、若しくは作成しようとするとき、前条第二項第五号若しくは第六号の規定による処分をしようとするとき、又はその他の処分をする場合において必要と認めるときは、その承認その他の処分の指令案を文書で利害関係人及び公正取引委員会に通達しなければならない。
前項の規定による指令案の文書(提出された計画書の承認に係るものを除く。)には、処分の基礎となつた事実の認定を附記しなければならない。この場合において、その事実の認定は、指令案の基礎となつている経済上、生産上その他の資料を詳細に示し、又はその事実の認定には、これらの資料に関する説明を覚書として添附しなければならない。
第五条第二項の規定は、第一項の規定による指令案の通達に、これを準用する。
第九条 持株会社整理委員会は、指令案を通達した日から十五日を経過した後に利害関係人に対し聴聞会を開かなければならない。
前項の聴聞会においては、利害関係人は、指令案について異議の申立又は意見の具申をすることができる。
持株会社整理委員会は、第一項の聴聞会の手続について、規則を定めて、これを公示することができる。
第十条 公正取引委員会は、指令案が昭和二十二年法律第五十四号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下私的独占禁止法という。)の規定に反すると認めるときは、その旨を持株会社整理委員会に対し指示しなければならない。
第十一条 持株会社整理委員会は、第九条第二項の規定による異議の申立若しくは意見の具申又は前条の規定による指示に基き、指令案につき必要な変更を加えることができる。
持株会社整理委員会は、指令の内容を決定したときは、その決定指令を文書で利害関係人に通達しなければならない。
第五条第二項の規定は、前項の規定による決定指令の通達に、これを準用する。
第十二条 持株会社整理委員会は、企業再編成計画が債権者、社債権者及び株主(社員を含む。以下同じ。)を公正且つ公平に取り扱つていない場合には、これを承認してはならない。
企業再編成計画においては、債権者、社債権者及び株主の承認を得ないで、これらの者の権利の変更の定をすることができる。但し、これらの者は、聴聞会において、異議の申立をすることができる。
第十三条 事実の認定が実質的な証拠を基礎としていない場合又は持株会社整理委員会が実質的な証拠を採用しなかつた場合においては、利害関係人は、決定指令が通達され、又は公告された日から三十日以内に、内閣総理大臣に不服の申立をすることができる。但し、その証拠の欠如が聴聞会において特に指摘されなかつた場合又はその実質的な証拠が故意に持株会社整理委員会に提出されなかつた場合には、この限りでない。
第十四条 前条の規定による不服申立があつた日から三十日以内に、内閣総理大臣は、その証拠の欠如が実質的性質のものであるために、指令が独断的になつているかどうかを決定しなければならない。
内閣総理大臣は、その証拠の欠如が実質的性質のものであるために指令が独断的になつていると認める場合においては、必要な程度において第八条乃至第十一条に規定する手続に準じ、適当に変更を加えさせるため、その事件を持株会社整理委員会に差し戻さなければならない。
第十五条 第十三条の規定による不服申立の期間内及び同条の規定による不服申立があつた場合にはその事件が確定するまでの間は、当該決定指令の執行は、停止される。
第十六条 過度の経済力の集中は、他の法令の規定に基く場合又は自発的に生じた場合であるかどうかを問わず、この法律の定めるところにより、これを排除することができる。
第十七条 この法律の施行は、配給統制に関する法令の適用を妨げるものではない。
第十八条 第三条の規定により指定された過度の経済力の集中については、その組織が消滅し、解体若しくは清算を終了し、解体中若しくは清算中にあり、又は変更を加えられた場合においても、持株会社整理委員会が、そのいかなる形態による継続もこれを禁止するために必要な措置をとることを妨げない。
第十九条 持株会社整理委員会の決定指令の執行に関する事項は、公正取引委員会がこれを掌る。
持株会社整理委員会の決定指令については、公正取引委員会に対しその変更の申立をすることができる。
前項の規定による申立に基く持株会社整理委員会の決定指令の変更は、第二十六条の規定により持株会社整理委員会の権限を公正取引委員会に移す日前においては、持株会社整理委員会の同意がなければ、これをしてはならない。
第二十条 持株会社整理委員会は、この法律の規定による職権の一部を公正取引委員会に委任することができる。
持株会社整理委員会は、この法律の規定による職権を行使するのに必要な範囲内において、これに関する事務を行政官庁その他の機関に委嘱することができる。
第二十一条 左の各号の一に該当する者は、これを三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第七条第二項第五号の規定による命令に違反し、同号の規定による請求に従わず、又は同号の規定による制限に違反した者
二 第七条第二項第六号の規定による解散命令又は禁止に違反した者。
三 第七条第二項第九号の規定による禁止に違反した者
前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第二十二条 第七条第二項第四号の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、これを六箇月以下の懲役又は千円以下の罰金に処する。
第二十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、第二十一条第一項又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
第二十四条 第七条第二項第七号の規定による計画書の提出の請求に従わなかつた者は、これを一万円以下の過料に処する。
第二十五条 左の各号の一に該当する者は、これを千円以下の過料に処する。
一 第七条第二項第二号の規定による請求に従わず、又は同号の規定による命令に違反して情報を整理せず、情報、報告、意見若しくは帳簿書類その他の物件を提出せず、記録を保存せず、又は虚偽の情報、報告若しくは意見を提出した者。
二 第七条第二項第三号の規定による出頭命令に違反し、同号の規定による審尋に対し陳述せず、若しくは虚偽の陳述をし、又は同号の規定による鑑定命令に対し鑑定せず、若しくは虚偽の鑑定をした者
第二十六条 この法律の規定による持株会社整理委員会の職権及び記録並びにこの法律の目的の達成を確保するために必要な職員は、昭和二十三年九月一日から同年十二月三十一日までの間において別に法律で定めるところにより、これを公正取引委員会に移すものとする。
第二十七条 私的独占禁止法の規定及びその規定に基く公正取引委員会の権限は、この法律の規定及び持株会社整理委員会の権限によつて変更されることはない。
附 則
この法律は、公布の日から、これを施行する。
会社利益配当等臨時措置法の一部を次のように改正する。
第四条中「整備計画を提出したもの」の下に「又は過度経済力集中排除法第三条の規定により指定された会社(以下指定会社という。)」を「決定整備計画」の下に「又は過度経済力集中排除法の決定指令の内容」を加え、同条に次の一項を加える。
指定会社(特別経理会社である指定会社を除く。)の利益の配当について大蔵大臣が前項但書の許可をなすについては、予め、持株会社整理委員会の意見を求めなければならない。
第七条第一項第一号中「第四条」の下に「第一項」を加える。
内閣総理大臣 片山哲
大蔵大臣 栗栖赳夫
司法大臣 鈴木義男
厚生大臣 一松定吉
農林大臣 波多野鼎
商工大臣 水谷長三郎
運輸大臣 北村徳太郎
逓信大臣 三木武夫
労働大臣 米窪満亮