相続税法
法令番号: 法律第八十七号
公布年月日: 昭和22年4月30日
法令の形式: 法律
朕は、帝國議会の協賛を経た相続税法を改正する法律を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年四月二十八日
内閣総理大臣 吉田茂
大藏大臣 石橋湛山
法律第八十七号
相続税法目次
第一章
総則
第二章
課税價格、控除及び税率
第一節
相続税
第二節
贈與税
第三章
財產の評價
第四章
申告及び納付
第五章
課税價格の更正及び決定
第六章
審査、訴願及び訴訟
第七章
延納及び物納
第八章
雜則
第九章
罰則
相続税法
第一章 総則
第一條 相続が開始した場合において、被相続人がこの法律の施行地に住所を有するとき又は相続財產がこの法律の施行地にあるときは、左に掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一 相続人
二 受遺者
三 相続開始前二年以内に被相続人から贈與を受けた者
財產を贈與した個人(以下贈與者という。)がこの法律の施行地に住所を有するとき、又は贈與の目的たる財產(以下贈與財產という。)がこの法律の施行地にあるときは、贈與者は、この法律により、贈與税を納める義務がある。
第二條 被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有するときは、相続財產の全部に対し、相続税を課する。
被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有しないときは、この法律の施行地にある相続財產に対し、相続税を課する。
第三條 贈與者が贈與のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有するときは、贈與財產の全部に対し、贈與税を課する。
贈與者が贈與のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有しないときは、この法律の施行地にある贈與財產に対し、贈與税を課する。
年の中途において、この法律の施行地に住所を有していた者がこの法律の施行地に住所を有しなくなつたとき又はこの法律の施行地に住所を有しなかつた者がこの法律の施行地に住所を有することとなつたときは、この法律の施行地に住所を有していた期間内に贈與した贈與財產の全部及びこの法律の施行地にある贈與財產で贈與者がこの法律の施行地に住所を有していなかつた期間内に贈與したものに対し、贈與税を課する。
第四條 左に掲げる財產は、これを相続財產とみなす。
一 相続開始前二年以内に被相続人が贈與した財產
二 相続開始の時においてまだ保險事故が発生していない生命保險契約で被相続人が保險料の全部又は一部を負担したものについては、命令の定めるところにより、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した保險料の金額に相当するもの
三 被相続人の死亡に因り相続人その他の者の受け取る生命保險契約の保險金
四 退職手当、功労金及びこれらの性質を有する給與(以下退職手当金等という。)で被相続人に支給せらるべきであつたものが被相続人の死亡したためその相続人その他の者に支給された場合におけるその退職手当金等
五 相続開始の時においてまだ定期金給付事由の発生していない郵便年金その他の定期金の給付に関する契約で被相続人が掛金の全部又は一部を負担したものについては、命令の定めるところにより、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した掛金の金額に相当するもの
六 定期金受取人の死亡に至るまで定期金の給付をなす外、一定期間内に定期金受取人が死亡したときは、その死亡後遺族その他の者に対して継続して定期金を給付する契約に基いて、定期金受取人たる被相続人の死亡後、相続人その他の者が取得する定期金に関する権利で被相続人が掛金の全部又は一部を負担したものについては、命令の定めるところにより、当該権利のうち被相続人が負担した掛金の金額に相当するもの
七 被相続人の死亡に因り相続人その他の者が取得する定期金に関する権利で、前二号に掲げるもの以外のもの
被相続人の被相続人が生命保險契約又は定期金の給付に関する契約について負担した保險料又は掛金は、それぞれこれを被相続人が負担した保險料又は掛金とみなして、前項第二号、第五号又は第六号の規定を適用する。
第五條 信託行爲があつた場合において、委託者以外の者が信託の利益の全部又は一部についての受益者であるときは、当該信託行爲があつた時において、委託者が信託の利益を受ける権利(受益者が信託の利益の一部を受ける場合においては、当該信託の利益を受ける権利のうち、その受ける利益に相当するもの)を受益者に贈與したものとみなす。
委託者が受益者である信託について、あらたに委託者以外の者が受益者となつた場合においては、委託者以外の者が受益者となつた時において、委託者が信託の利益を受ける権利をあらたに受益者となつた者に贈與したものとみなす。
第六條 相続開始前二年以内に信託行爲があつた信託について、委託者たる被相続人以外の者が信託の利益の全部又は一部についての受益者である場合又は相続開始前二年以内に委託者たる被相続人が受益者である信託について、あらたに委託者以外の者が受益者となつた場合において、当該信託が左の各号に掲げる信託の一に該当するときは、当該信託の利益を受ける権利については、当該信託の受託者を受益者とみなして、前條の規定を適用する。
一 相続開始の時において信託行爲により受益者として指定された者が受益の意思表示をしていないためまだ受益者が確定していない信託
二 相続開始の時において受益者がまだ存在していない信託
三 停止條件附で信託の利益を受ける権利を有せしめた信託で相続開始の時においてまだ條件が成就していないもの
四 相続開始の時において受益者が不特定である信託
前項の場合において、受託者が同項の規定の適用により納付すべき相続税は、命令の定めるところにより、当該信託財產の中から、これを納付しなければならない。
第七條 生命保險契約で保險金受取人以外の者が全部又は一部の保險料を負担したものについては、保險事故が発生した時において、保險料を負担した者が、命令の定めるところにより、保險金額のうちその負担した保險料の金額に相当するものを保險金受取人に贈與したものとみなす。
前項の規定の適用については、被相続人が負担した保險料は、これを相続人が負担した保險料とみなす。
第一項の規定は、第四條第一項第三号の規定により当該保險金を相続財產とみなす場合においては、これを適用しない。
第八條 郵便年金その他の定期金の給付に関する契約で定期金受取人以外の者が全部又は一部の掛金を負担したものについては、定期金給付の事由が発生した時において、掛金を負担した者が、命令の定めるところにより、当該契約に関する権利のうちその負担した掛金の金額に相当するものを定期金受取人に贈與したものとみなす。
前項の規定は、郵便年金その他の定期金の給付に関する契約につき返還金その他これに準ずるものの支拂があつた場合について、これを準用する。
前條第二項の規定は、前二項の場合について、これを準用する。
第一項又は第二項の規定は、第四條第一項第六号又は第七号の規定により当該定期金給付の契約に関する権利を相続財產とみなす場合においては、その相続財產とみなされる権利については、これを適用しない。
第九條 生前処分で寄附行爲がなされたときは、財團法人設立の許可があつた時において、寄附行爲をなした者が、当該寄附財產を財團法人に贈與したものとみなす。
第十條 著しく低い價額の対價で財產の讓渡がなされたときは、その讓渡の時において、財產の讓渡人が、その対價の價額と讓渡の時における讓渡財產の時價との差額に相当する金額を当該財產の讓受人に贈與したものとみなす。
第十一條 対價を受けないで又は著しく低い價額の対價で債務の免除、引受又は第三者のためにする債務の弁済があつたときは、その免除、引受又は弁済があつた時において、免除、引受又は弁済をなした者が、免除、引受又は弁済に係る債務金額に相当する金額を債務者に贈與したものとみなす。但し、命令で定める場合においては、この限りでない。
第十二條 第五條、第七條乃至前條に規定する場合の外、対價を受けないで又は著しく低い價額の対價で、他人に利益を受けしめたときは、その利益を受けしめた者が、その利益を受けしめた時において、利益の價額に相当する金額を利益を受けた者に増與したものとみなす。
前項の規定の適用について必要な事項は、命令でこれを定める。
第十三條 遺言で信託、生命保險契約の保險料若しくは定期金の給付に関する契約の掛金の拂込、寄附行爲又は前三條に掲げる行爲をなしたときは、遺贈があつたものとみなす。
第四條第一項第三号、第四号、第六号又は第七号の場合において、相続人以外の者が、保險金を受け取り、退職手当金等を支給され又は定期金に関する権利を取得したときは、当該財產について遺贈があつたものとみなす。
贈與者の死亡に因り効力を生ずべき贈與は、これを遺贈とみなす。
第十四條 左の各号に掲げる財產の所在は、当該各号に規定する場所による。
一 動產若しくは不動產又は不動產の上に存する権利については、その動產又は不動產の所在 但し、船舶については、船籍の所在
二 鉱業権又は砂鉱権については、鉱区の所在
三 漁業権若しくは入漁権又は漁業権を目的とする権利については、漁場に最も近い沿岸の属する市町村又はこれに相当する行政区画
四 金融機関に対する預金、貯金、積金又は寄託金で命令で定めるものについては、その預金、貯金、積金又は寄託金をなした営業所又は事業所の所在
五 合同運用信託に関する権利については、その信託をなした営業所の所在
六 前各号の外、この法律の施行地に営業所又は事業所を有する者の当該営業所又は事業所の営業上又は事業上の権利については、その営業所又は事業所の所在
前項に掲げる財產以外の財產の所在は、権利者の住所の所在による。
第一項第五号の合同運用信託とは、信託会社(信託業務を兼営する銀行を含む。)が引き受けた金銭信託で、共同しない多数の委託者の信託財產を合同して運用するものをいう。
第十五條 相続財產の所在は、相続開始の時の現況による。但し、第四條第一項第一号に掲げる財產については、贈與の時の現況による。
贈與財產の所在は、贈與の時の現況による。
第二章 課税價格、控除及び税率
第一節 相続税
第十六條 被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有するときは、相続財產の價格から左に掲げるものの金額を控除した金額を以て課税價格とする。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 葬式費用
前項の課税價格の計算については、相続開始前二年以内になされた契約による贈與の義務で、相続開始の際現に存するものの金額は、これを前項第一号に掲げる債務の金額に算入しない。
第十七條 被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有しないときは、この法律の施行地にある相続財產の價格から被相続人の債務(公租公課を含む。以下同じ。)のうち、左に掲げるものの金額を控除した金額を以て課税價格とする。
一 その財產に係る公租公課
二 その財產を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務
三 前二号の外、その財產を取得、維持又は管理するために生じた債務
四 その財產に関する贈與の義務(相続開始前二年以内になされた契約によるものを除く。)
五 前四号の外、被相続人が、相続開始の際この法律の施行地に営業所又は事業所を有する場合においては、その営業所又は事業所の営業上又は事業上の債務
第十八條 前二條の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。
第十九條 左に掲げる相続財產の價額は、これを課税價格に算入しない。
一 國、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團体に対してなした贈與又は遺贈に係る財產の價格
二 相続開始前二年以内に被相続人が同一人に対してなした贈與の目的たる財產の價額の合計金額が千円以下である場合における当該贈與に係る財產の價額
三 第四條第一項第三号、第四号、第六号又は第七号に掲げる保險金、退職手当金等又は定期金に関する権利の價額の合計金額のうち、三万円までの金額
四 互に扶養をなす義務ある者相互間において生活費又は教育費に充てるためになした贈與に係る財產の價額のうち、通常必要と認められるもの
第二十條 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で命令で定めるものに対して相続開始前二年以内になした贈與に係る財產又は遺贈に係る財產の價格の合計金額のうち、十万円又は本條及び第二十一條の規定の適用前の課税價格の十分の一に相当する金額のいずれか低い一方の金額までの金額は、これを課税價格に算入しない。
第二十一條 相続税については、課税價格から五万円を控除する。
第二十二條 相続税は、課税價格(前條の規定による控除後の課税價格をいう。以下特別の定のある場合を除く外、本節中同じ。)を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用して、これを課する。
課税價格
税率
第一種
第二種
第三種
納税義務者が、被相続人の直系卑属又は配偶者であるとき
納税義務者が、被相続人の直系尊属又は兄弟姉妹であるとき
納税義務者が、その他の者であるとき
二万円以下の金額
百分の十
百分の十三
百分の十五
二万円を超える金額
百分の十二
百分の十五
百分の十七
五万円を超える金額
百分の十四
百分の十七
百分の十九
十万円を超える金額
百分の十六
百分の十九
百分の二十一
十五万円を超える金額
百分の十八
百分の二十一
百分の二十三
二十万円を超える金額
百分の二十一
百分の二十四
百分の二十六
二十五万円を超える金額
百分の二十四
百分の二十七
百分の二十九
三十万円を超える金額
百分の二十七
百分の三十
百分の三十二
三十五万円を超える金額
百分の三十
百分の三十三
百分の三十五
四十万円を超える金額
百分の三十三
百分の三十六
百分の三十八
五十万円を超える金額
百分の三十六
百分の三十九
百分の四十一
六十万円を超える金額
百分の三十九
百分の四十二
百分の四十四
八十万円を超える金額
百分の四十二
百分の四十五
百分の四十七
百万円を超える金額
百分の四十五
百分の四十八
百分の五十
百五十万円を超える金額
百分の四十八
百分の五十一
百分の五十三
二百万円を超える金額
百分の五十一
百分の五十四
百分の五十六
三百万円を超える金額
百分の五十四
百分の五十七
百分の五十九
四百万円を超える金額
百分の五十七
百分の六十
百分の六十二
五百万円を超える金額
百分の六十
百分の六十三
百分の六十五
納税義務者が二人以上であるときは、各納税義務者の納付すべき税額は、課税價格に前項の税率を適用して算出した金額を、前條の規定による控除前の課税價格中各ゝその者の受ける利益の價格の占める割合により按分して計算した金額とする。但し、二人以上の納税義務者について適用すべき税率の種類を異にするときは、課税價格についてその者に適用すべき種類の税率を適用して各別に算出した金額に、前條の規定による控除前の課税價格中その者の受ける利益の價格の占める割合を乘じて計算した金額とする。
二人以上の者が第四條第一項第三号、第四号、第六号又は第七号に掲げる保險金を掲げる保險金を受け取り、退職手当金等を支給され又は定期金に関する権利を取得した場合においては、第十九條第三号の規定により課税價格に算入しない金額は、これをその者の受け取つた保險金額、支給された退職手当金等の金額又は取得した定期金に関する権利の價格の割合により按分して、前項に規定するその者の受ける利益の價額を計算する。
前項の規定は、第二十條の規定の適用がある場合において、同條に規定する者が二人以上あるときの、各ゝの者の受ける利益の價額の計算について、これを準用する。
相続人のあることが分明でない場合において、その相続人について納付すべき税額は、第三種の税率を適用して算出した金額とする。
前項の規定の適用があつた場合において、相続人のあることが分明となり、且つ、その相続人が第一種又は第二種の税率の適用のある者であるときは、政府は、税率の適用を改訂し、税金の差額を還付する。
第二十三條 相続が開始した場合において、被相続人が当該相続の開始前五年以内に開始した相続について相続税を納付したとき又は納付すべきときは、命令の定めるところにより、その納付した又は納付すべき前の相続税の額に相当する相続税の全部又は一部を免除する。
前項の規定の適用については、第二十六條の規定により控除された税額については、相続税の納付があつたものとみなす。
第二十四條 第六條第一項第一号乃至第三号に掲げる信託について受益者として指定された者が受益の意思表示をなし、受益者が存在するに至り又は條件が成就した後当該受益者の死亡に因り相続が開始した場合においては、第六條の規定により当該信託の受託者の納付した又は納付すべき相続税は、これを当該受益者の納付した相続税とみなして前條第一項の規定を適用する。
第二十五條 この法律の施行地外にある相続財產について、その地の法令により相続税が課せられたときは、命令の定めるところにより、その課せられた相続税の額に相当する相続税の全部又は一部を免除する。
第二十六條 相続開始前二年以内に被相続人がなした贈與について納付した又は納付すべき贈與税があるときは、命令の定めるところにより、当該贈與税額(第五十八條及び第五十九條の規定による加算税額又は追徴税額に相当する金額を除く。以下本條中同じ。)を、相続人の納付すべき相続税額から控除する。
前項の規定の適用ある場合においては、当該相続についての課税價格の計算については、当該贈與税額に相当する金額を相続財產の價額に加算する。
前項の規定により相続財產の價額に加算した金額は、第二十二條第二項の納税義務者の受ける利益の價額の計算については、これを相続人の受ける利益の價額に算入する。この場合において相続人が二人以上あるときは、各相続人の受ける利益の價額に算入する金額は、その加算した金額をその相続分に應じて按分して計算した金額とする。
第二節 贈與税
第二十七條 贈與者が贈與のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有するときは、贈與者がその年一月一日から十二月三十一日までの間に贈與した財產の價額の合計金額を以て課税價格とする。
贈與者が贈與のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有しないときは、贈與者がその年一月一日から十二月三十一日までの間に贈與した財產で、この法律の施行地にあるものの價額の合計金額を以て課税價格とする。
年の中途において、この法律の施行地に住所を有していた者がこの法律の施行地に住所を有しなくなつたとき又はこの法律の施行地に住所を有していなかつた者がこの法律の施行地に住所を有することとなつたときは、この法律の施行地に住所を有していた期間内に贈與した贈與財產の價額及びこの法律の施行地にある贈與財產で、贈與者がこの法律の施行地に住所を有していなかつた期間内に贈與したものの價額の合計金額を以て課税價格とする。
第二十八條 左に掲げる贈與財產の價額は、課税價格に算入しない。
一 國、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團体に対してなした贈與に係る財產の價額
二 その年中に同一人に対してなした贈與の目的たる財產の價額の合計金額が千円以下である場合における当該贈與に係る財產の價額
三 その年中に宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で命令で定めるものに対してなした贈與に係る財產の價額の合計金額のうち、五千円(その贈與に係る財產の價額の合計金額が五千円を超えるときは、五千円及び五千円を超え十万円までの金額についてその二分の一に相当する金額の合計金額)までの金額
四 互に扶養をなす義務のある者相互間において生活費又は教育費に充てるためになした贈與に係る財產の價額のうち、通常必要と認められるもの
第二十九條 贈與税については、課税價格から五万円を控除する。
納税義務者が前年までの分の贈與税について前項の規定による控除を受けていた場合においては、同項の規定による控除は、これをなさない。但し、前年までの分の贈與税について同項の規定により控除を受けた金額が通じて五万円に満たないときは、五万円と前年までの分の贈與税につき同項の規定により控除を受けた金額の合計金額との差額を課税價格から控除する。
第三十條 贈與税は、納税義務者のその年までの課税價格(前條に規定する控除後の課税價格をいう。以下特別の定のある場合を除く外、本節中同じ。)の合計金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用して算出した金額から、納税義務者の前年までの課税價格の合計金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用して算出した金額を控除した差額により、これを課する。
二万円以下の金額 百分の十五
二万円を超える金額 百分の十七
五万円を超える金額 百分の十九
十万円を超える金額 百分の二十一
十五万円を超える金額 百分の二十三
二十万円を超える金額 百分の二十六
二十五万円を超える金額 百分の二十九
三十万円を超える金額 百分の三十二
三十五万円を超える金額 百分の三十五
四十万円を超える金額 百分の三十八
五十万円を超える金額 百分の四十一
六十万円を超える金額 百分の四十四
八十万円を超える金額 百分の四十七
百万円を超える金額 百分の五十
百五十万円を超える金額 百分の五十三
二百万円を超える金額 百分の五十六
三百万円を超える金額 百分の五十九
四百万円を超える金額 百分の六十二
五百万円を超える金額 百分の六十五
第三十一條 この法律の施行地外にある財產につきなした贈與についてその地の法令により贈與税を課せられたときは、命令の定めるところにより、その課せられた贈與税の額に相当する贈與税の全部又は一部を免除する。
第三十二條 相続開始前二年以内に被相続人がなした贈與については、贈與税(第五十八條及び第五十九條の規定による贈與税を除く。)を免除する。但し、相続開始の日までに政府に提出された第三十九條の規定による申告書に記載された課税價格(第四十條の規定による修正後の課税價格を含む。)及び同日までになされた第四十五條の規定による政府の更正又は決定に係る課税價格に対する税額については、この限りでない。
第三章 財產の評價
第三十三條 地上権(借地法に規定する借地権を除く。以下同じ。)及び永小作権の價額は、相続財產については相続開始の時、贈與財產については贈與の時における現況により、残存期間に應じ、その目的となつている土地の價額に左に掲げる割合を乘じて算出した金額による。
残存期間が十年以下のもの 百分の五
残存期間が十年を超え十五年以下のもの 百分の十
残存期間が十五年を超え二十年以下のもの 百分の二十
残存期間が二十年を超え二十五年以下のもの 百分の三十
残存期間が二十五年を超え三十年以下のもの及び地上権で残存期間の定のないもの 百分の四十
残存期間が三十年を超え三十五年以下のもの 百分の五十
残存期間が三十五年を超え四十年以下のもの 百分の六十
残存期間が四十年を超え四十五年以下のもの 百分の七十
残存期間が四十五年を超え五十年以下のもの 百分の八十
残存期間が五十年を超えるもの 百分の九十
第三十四條 相続財產たる定期金に関する権利で相続開始の時までに給付事由の発生しているものの價額は、左に掲げる金額による。
一 有期定期金については、相続開始の時の現況により、残存期間に受くべき給付金額に、その残存期間に應じ、左の割合を乘じて算出した金額、但し、一年間に受くべき金額の二十倍を超えることができない。
残存期間が五年以下のもの 百分の八十
残存期間が五年を超え十五年以下のもの 百分の七十
残存期間が十五年を超え二十五年以下のもの 百分の六十
残存期間が二十五年を超え三十五年以下のもの 百分の五十
残存期間が三十五年を超えるもの 百分の四十
二 無期定期金については、その一年間に受くべき金額の二十倍に相当する金額
三 終身定期金については、相続開始の時の現況により、一年間に受くべき金額に、その目的とされた人の年齢に應じ、左の倍数を乘じて算出した金額
二十五歳以下の者 十五倍
二十五歳を超え四十歳以下の者 十二倍
四十歳を超え五十歳以下の者 八倍
五十歳を超え六十歳以下の者 五倍
六十歳を超え七十歳以下の者 二倍
七十歳を超える者 一倍
第八條第一項に規定する定期金給付の契約に関する権利の價額は、定期金給付の事由が発生した時の現況により、前項の規定を準用して算定した金額による。
前項に定めるものの外、相続財產たる定期金に関する権利で相続開始の時までに給付事由の発生しているものの價額及び第八條第一項及び第二項に規定する定期金給付の契約に関する権利の價額の評價に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十五條 相続開始の時までにまだ保險事故の発生していない生命保險契約に関する権利の價額は、相続開始の時までに拂い込まれた保險料の合計金額を基準として、命令の定めるところにより計算した金額による。
第三十六條 相続開始の時までにまだ年金支拂事由の発生していない郵便年金契約に関する権利の價額は、相続開始の時までに拂い込まれた掛金の合計金額に、掛金の拂込開始の時から相続開始の時までの経過期間を基準として、命令で定める割合を乘じて算出した金額による。
第三十七條 第三十三條、第三十四條第一項及び第三項並びに前二條に定めるものの外、相続財產の價額は、相続開始当時の時價により、相続財產の價額から控除すべき債務の金額は、相続開始当時の現況による。
第三十三條並びに第三十四條第二項及び第三項に定めるものの外、贈與財產の價額は、贈與の時における時價による。
第四章 申告及び納付
第三十八條 相続税について納税義務がある者は、命令の定めるところにより、相続の開始後四箇月以内に、課税價格その他の事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。
前項の場合において、納税義務者が二人以上あるときは、連署で前項の申告書を提出しなければならない。但し、他の納税義務者の氏名を附記して、各別に申告書を提出することを妨げない。
通信、交通その他已むを得ない事由に因り、第一項の期限内に同項の規定による申告書を提出することができない者については、政府は、命令の定めるところにより、同項の期限を延長することができる。
第三十九條 贈與税について納税義務がある者は、命令の定めるところにより、贈與をなした年の翌年一月三十一日までに、課税價格その他の事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。
前條第三項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
贈與税について納税義務がある者が贈與のあつた年の中途においてこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなる場合における、第一項の規定による申告書の提出については、命令で特別の定をなすことができる。
第四十條 前二條の規定による申告書を提出した者は、前二條の規定による申告書の提出期限後その申告に係る課税價格について脱漏があることを発見したときは、直ちに政府に申し出て、その申告書を修正しなければならない。
前項の規定は、第四十五條の規定による課税價格の更正又は決定があつた者が更正又は決定に係る課税價格について脱漏があることを発見した場合における課税價格の修正について、これを準用する。
第四十一條 第三十八條又は第三十九條の規定による申告書に記載された課税價格に対する相続税又は贈與税は、第三十八條又は第三十九條の規定による申告書の提出期限までに、これを納付しなければならない。
第三十八條又は第三十九條の規定による申告書の提出期限後課税價格の申告書の提出があつた場合において、その申告書に記載された課税價格に対する相続税又は贈與税は、その申告書提出の日に、これを納付しなければならない。
前條第一項の規定による申告書の修正又は同條第二項の規定による課税價格の修正があつた場合において、その修正に因り増加する税額に相当する相続税又は贈與税は、その申告書の修正又は課税價格の修正の日に、これを納付しなければならない。
納税義務者が、前三項の定めるところにより、相続税又は贈與税を完納しなかつたときは、政府は、國税徴收法第九條の規定により、これを督促する。
第四十二條 第六條第一項第四号の規定の適用を受ける信託の受託者は、相続開始の時において現に存する信託財產の價額を限度として、相続税を納める義務を負う。
第四十三條 相続税について納税義務がある者が二人以上あるときは、各納税義務者は、他の納税義務者の納付すべき相続税について、その受けた利益の價額を限度として、連帶納付の責に任ずる。
第四十四條 受贈者は、贈與者の納付すべき贈與税について、贈與に因りその受けた利益の價額を限度として、連帶納付の責に任ずる。
第五章 課税價格の更正及び決定
第四十五條 第三十八條若しくは第三十九條の規定による申告書が提出された場合又は第四十條の規定による申告書の修正があつた場合において、申告又は修正に係る課税價格が、政府において調査した課税價格と異るときは、政府は、その調査により、その課税價格を更正する。
政府は、納税義務があると認められる者が第三十八條又は第三十九條の規定による申告書を提出しなかつた場合においては、その調査により、その課税價格を決定する。
納税義務者が第三十八條又は第三十九條の規定による申告書を提出せず、且つ、第六十五條に規定する納税管理人の申告をなさないで、この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、政府は、命令の定めるところにより、第三十八條又は第三十九條の規定による申告書の提出期限前においても、その調査により、その課税價格を決定することができる。
政府は、前三項の規定による課税價格の更正又は決定後その更正又は決定に係る課税價格について脱漏があることを発見したときは、その調査により、その課税價格を更正することができる。
第四十六條 政府は、前條の規定により、課税價格を更正し又は決定したときは、これを納税義務者に通知する。
この法律の施行地に住所及び居所を有しない者が第六十五條に規定する納税管理人の申告をしていないときは、前項の通知に代えて公告することができる。この場合において、公告の初日から七日を経過したときは、その通知があつたものとみなす。
第四十七條 政府は、第四十五條の規定により課税價格を更正し又は決定した場合においては、前條第一項の通知をなした日から一箇月後を納期限として、その追徴税額(その不足税額又はその決定による税額をいう。以下同じ。)を徴收する。但し、納税義務者が第六十五條に規定する納税管理人の申告をなさないで、この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなる場合においては、直ちに追徴税額を徴收する。
第六章 審査、訴願及び訴訟
第四十八條 納税義務者は、第四十六條の規定により政府の通知した課税價格又は第六十條の規定により政府の通知した税額に対して異議があるときは、通知を受けた日から一箇月以内に、不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
前項の請求があつた場合においても、政府は、税金の徴收を猶予しない。但し、政府において已むを得ない事由があると認めたときは、税金の徴收を猶予することができる。
第四十九條 政府は、前條第一項の請求があつたときは、これを決定し、納税義務者に通知しなければならない。
第五十條 前條第一項の決定に対し、不服がある者は、訴願又は訴訟をなすことができる。
第四十五條の規定により政府のなした更正若しくは決定又は第五十九條の規定により政府のなした税額の追徴に関する訴願又は訴訟は、審査の決定を経た後でなければ、これをなすことができない。
第七章 延納及び物納
第五十一條 相続税の納税義務者は、その納付すべき相続税額が一万円以上で、且つ、金銭で一時に納付することを困難とする事由があるときは、命令の定めるところにより、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供し、五年以内の年賦延納を申請することができる。
前項の規定は、相続税につき連帶納付の責に任ずる者について、これを準用する。
第五十二條 相続税の納税義務者は、その納付すべき相続税額のうち、金銭で納付することを困難とする金額について、物納を申請することができる。
前項の規定は、相続税につき連帶納付の責に任ずる者について、これを準用する。
前二項の場合において、物納に充てることができる財產の種類その他物納に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第五十三條 政府は、前二條の規定により相続税の延納又は物納の申請があつた場合において、必要があると認めるときは、税金の納付を猶予することができる。
第五十四條 第五十二條第一項又は第二項の規定の適用を受けて納付した相続税につき過誤納があつた場合の還付に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第八章 雜則
第五十五條 納税義務者が、災害に因り著しく資力を喪失して、納税困難と認められるときは、政府は、命令の定めるところにより、相続税又は贈與税を軽減し又は免除することができる。
政府は、前項の場合において、同項の規定による軽減又は免除に関する処分が確定するまで、税金の徴收を猶予することができる。
第五十六條 納税義務者の提出した申告書又は課税價格の更正、決定若しくは修正に関する書類を閲覽しようとする者は、命令の定めるところにより、政府に、その閲覽を請求することができる。
第五十七條 納税義務があると認められる者が申告書を提出しなかつた事実又は課税價格に脱漏があると認められる事実を、政府に報告した者がある場合において、政府がその報告に因つて課税價格を決定し又は更正したときは、政府は、命令の定めるところにより、その報告者に対し、課税價格の決定又は更正に因り徴收することができた税額の百分の十以下に相当する金額を、報償金として交付することができる。但し、報償金の金額は、十万円を超えることができない。
前項の規定は、その報告をなした者が官吏又は待遇官吏であるときは、これを適用しない。その報告が、官吏若しくは待遇官吏の知り得た事実、公務員(官吏及び待遇官吏を除く。)の職務上知り得た事実又は不法の行爲に因り知り得た事実に基くものである場合も、また同樣とする。
第五十八條 納税義務者は、第四十一條第二項又は第三項の規定により納付すべき相続税又は贈與税については、当該各項に規定する日に、命令の定めるところにより、命令で定める期間に應じ、当該税額百円について一日三銭の割合を乘じて算出した金額に相当する税額を加算して納付しなければならない。
第四十一條第四項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第一項の規定は、政府が、第四十七條の規定による追徴税額又は第五十一條の規定による延納税額に相当する相続税を徴收する場合について、これを準用する。
第五十九條 第四十一條第二項又は第三項の規定により相続税又は贈與税の納付があつた場合又は第四十七條の規定による追徴税額に相当する相続税又は贈與税を徴收することとなつた場合においては、第三十八條又は第三十九條の申告期限内に申告書の提出がなかつたこと、第四十條第一項の規定による申告書の修正があつた場合において前の申告若しくは修正に係る課税價格について脱漏があつたこと又は納税義務者の申告若しくは修正した課税價格が政府の調査した課税價格と異ることについて已むを得ない事由があると認められる場合を除く外、政府は、命令の定めるところにより、命令で定める期間に應じ、当該税額に一箇月を経過するごとに百分の五の割合を乘じて算出した金額に相当する税額の相続税又は贈與税を追徴する。但し、その金額は、当該税額に百分の五十を乘じて算出した金額を超えることができない。
前項の規定により追徴する税額については、第五十一條及び第五十二條の規定は、これを適用しない。
第六十條 政府は、前條第一項の規定により追徴する税額を決定したときは、これを納税義務者に通知する。
第四十六條第二項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第六十一條 相続が開始した後、相続人の廃除又はその取消に関する裁判の確定に因り相続人に異動を生じた場合においては、その裁判確定前に、裁判確定前の相続人のなした課税價格の申告(その修正を含む。以下本條中同じ。)又は裁判確定前の相続人について政府のなした課税價格の更正若しくは決定は、これを裁判の確定に因り相続人となつた者のなした課税價格の申告又は裁判の確定に因り相続人となつた者について政府のなした課税價格の更正若しくは決定とみなし、裁判確定前の相続人の納付した相続税は、これを裁判の確定に因り相続人となつた者の納付した相続税とみなす。
前項の場合において、裁判の確定に因り相続人となつた者は、裁判確定前の相続人の申告した課税價格又は裁判確定前の相続人について政府の更正若しくは決定した課税價格について異議があるときは、第四十八條の規定による審査の請求をなすことができる。但し、その期限は裁判の確定した日から二箇月以内とする。
前二項の規定は、相続の抛棄に因り、その抛棄前の相続人と異る者が相続人となつた場合について、これを準用する。
相続人の廃除に関する裁判の確定又は相続の抛棄に因り、相続人のうち、その受ける利益の價額が増加した者がある場合においては、裁判の確定に因り廃除された者又は相続の抛棄をなした者の納付した相続税は、これを相続人のうち、裁判の確定又は相続の抛棄に因りその受ける利益の價額が増加した者が納付したものとみなす。
相続人の廃除の取消に関する裁判の確定に因り、相続人のうち、その受ける利益の價額が減少した者がある場合においては、裁判の確定に因り、相続人のうち、その受ける利益の價額が減少した者の納付した相続税は、これを裁判の確定に因り相続人となつた者が納付した相続税とみなす。
第六十二條 第六條第一項第一号乃至第三号に規定する信託について受益者として指定された者が受益しない旨の意思表示をしたこと、受益者が存在しないことに確定したこと又は條件が成就しないこととなつたことに因り信託財產又は信託の利益を受ける権利が委託者に帰属したときは、当該信託は、初めからなかつたものとみなす。
前項の規定の適用について必要な事項は、命令でこれを定める。
第六十三條 相続人があることが分明でないとき又は相続人が相続財產について全く処分の権能を有しないときは、この法律中相続人に関する規定は、相続財產管理人又は遺言執行者に、これを準用する。この場合においては、第三十八條第一項の規定による申告書の提出期限は、その就職の日から四箇月とする。
第六十四條 相続税は、相続の開始地を、その納税地とする。但し、相続の開始地がこの法律の施行地外の地であるときは、この法律の施行地にある相続財產の所在地(その相続財產が二以上の地にあるときは、主たる相続財產の所在地)を、その納税地とする。
贈與税は、この法律の施行地にある贈與者の住所地(この法律の施行地に住所がないときは、この法律の施行地にある居所地)をその納税地とする。
贈與者がこの法律の施行地に住所及び居所を有しない場合における贈與税の納税地は、贈與者が納税地として申告した場所とする。その申告がないときは、政府が、その納税地を指定する。
第六十五條 納税義務者は、この法律の施行地に住所及び居所を有しないときは、申告書の提出その他相続税又は贈與税に関する一切の事項を処理せしめるため、この法律の施行地に住所又は居所を有する者の中から納税管理人を定め、政府に申告しなければならない。納税義務者がこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときも、また同樣とする。
第六十六條 相続人は、相続の開始後三箇月以内に、被相続人が相続開始前二年以内になした贈與の受贈者及び受遺者に対し、命令の定めるところにより、被相続人の氏名、相続開始の年月日、相続の開始地その他受贈者又は受遺者が、第三十八條の規定による申告書を提出するために必要な事項を通知しなければならない。
第六十七條 市町村長その他命令で定める者は、死亡又は失踪に関する届書を受理したときは、これを政府に報告しなければならない。
第六十八條 この法律の施行地において、生命保險金を支拂つた者は、命令の定めるところにより、支拂調書を政府に提出しなければならない。
この法律の施行地において、本人に支給すべき退職手当金等を、本人が死亡したため、その相続人その他の者に支給した法人は、命令の定めるところにより、支拂調書を政府に提出しなければならない。
この法律の施行地において、受益者と委託者とが同一人でない信託を引き受けた者は、命令の定めるところにより、信託に関する調書を政府に提出しなければならない。
第六十九條 收税官吏は、相続税に関する調査又は相続税の徴收について必要があるときは、左の各号に掲げる者に質問し又は第一号に掲げる者の財產若しくはその財產に関する帳簿書類その他の物件を檢査することができる。
一 納税義務者又は納税義務があると認められる者
二 前條の調書を提出しなければならない者
三 納税義務者又は納税義務があると認められる者に対し、債権若しくは債務を有していたと認められる者又は債権若しくは債務を有すると認められる者
四 納税義務者又は納税義務があると認められる者が、出資者であつたと認められる法人又は出資者であると認められる法人
五 納税義務者又は納税義務があると認められる者に対し、財產を讓渡したと認められる者又は財產を讓渡する義務があると認められる者
六 納税義務者又は納税義務があると認められる者から、財產を取得したと認められる者又は財產を取得する権利があると認められる者
七 納税義務者又は納税義務があると認められる者の財產を保管したと認められる者又は保管すると認められる者
八 納税義務者又は納税義務があると認められる者が、その営業又は事業に関して加入していたと認められる團体又は加入していると認められる團体
收税官吏は、贈與税に関する調査について必要があるときは、左の各号に掲げる者に質問し又は第一号若しくは第二号に掲げる者の財產若しくはその財產に関する帳簿書類その他の物件を檢査することができる。
一 納税義務者又は納税義務があると認められる者
二 納税義務者又は納税義務があると認められる者から贈與を受けた者又は贈與を受けたと認められる者
三 前條の調書を提出しなければならない者
四 贈與財產若しくは贈與財產と認められる財產を保管したと認められる者又は保管すると認められる者
第七十條 都道府縣、市町村その他の公共團体は、相続税及び贈與税の附加税を課することができない。
第九章 罰則
第七十一條 詐僞その他不正の行爲により相続税又は贈與税を免れた者は、これを一年以下の懲役又はその免れた税金の三倍以下に相当する罰金若しくは科料に処する。
前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第一項の場合においては、政府は、直ちに、その課税價格を決定し、その税金を懲收する。
第七十二條 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第六十八條の調書を提出せず又はその調書に虚僞の記載をなして、これを提出した者
二 第六十九條の規定による財產又はその財產に関する帳簿書類その他の物件の調査を拒み、妨げ又は忌避した者
三 前号の帳簿書類で虚僞の記載をなしたものを呈示した者
四 第六十九條の規定による收税官吏の質問に対し答弁をなさない者
五 前号の質問に対し虚僞の答弁をなした者
第七十三條 相続税又は贈與税に関する調査又は審査の事務に從事している者又はこれに從事していた者が、その調査又は審査に関して知り得た祕密を漏らし又は窃用したときは、これを二年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第七十四條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財產に関して、第七十一條第一項又は第七十二條の違反行爲をなしたときは、その行爲者を罰する外、その法人又は人に対し、各本條の罰金刑を科する。
第七十五條 他人の相続税又は贈與税について、政府に対し、第五十七條に規定する事実に関する虚僞の報告をなした者は、これを三年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第七十六條 第七十一條第一項の罪を犯した者には、刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及び第六十六條の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に処するときは、この限りでない。
附 則
第一條 この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
第二條 この法律は、本州、北海道、四國、九州及びその附属の島(政令で定める地域を除く。)に、これを施行する。
第三條 この法律施行前に開始した相続に対する相続税については、なお從前の例による。但し、左の各号に掲げる事項については、当該各号に定めるところによる。
一 この法律の施行後、政府が從前の第十五條又は從前の第十七條ノ二の規定により決定又は処分をなす場合においては、相続税審査委員会の諮問を経ることを必要としない。
二 この法律施行後、從前の第十六條の規定による出訴をなす場合においては、裁判所に対し、これをなすものとする。
この法律の施行前に信託に因り委託者が他人に信託の利益を受ける権利を有せしめた場合において、当該信託の元本又は收益の受益者がこの法律施行後初めて元本又は收益を受けることとなつたときは、当該信託行爲のあつた時において、從前の第二十三條の規定による遺產相続が開始したものとみなす。
第四條 この法律施行後開始する相続の開始前二年以内に被相続人が贈與した贈與財產に対し課した又は課せらるべき從前の第二十三條の規定による相続税があるときは、当該相続税額は、命令の定めるところにより、受贈者の納付すべき相続税額から、これを控除する。
第五條 昭和二十二年分の贈與税については、第二十七條に規定する課税價格は、この法律施行の日から昭和二十二年十二月三十一日までの間に贈與された贈與財產の價額により、これを計算する。
第六條 登録税法の一部を次のように改正する。
第二條第二号を次のように改める。
二 遺言、贈與其ノ他無償名義ニ因ル所有權ノ取得
不動產價格 千分ノ二十五
第三條第二號中「千分ノ五十五」を「千分ノ二十」に改める。
第三條ノ二 信託財產タル不動產又ハ船舶ヲ受託者ヨリ受益者ニ移ス場合ニ於ケル所有權取得ノ登記ニ付テハ左ノ區別ニ從ヒ登録税ヲ納ムヘシ
不動產 不動產價格 千分ノ二十五
船舶 船舶價格 千分ノ二十
第七條 租税特別措置法の一部を次のように改正する。
第三條中「第十七條ノ二」を「第五十二條」に、「不動產又は立木」を「不動產、立木その他命令で定める資產」に、「山林の所得」を「山林所得」に改める。
第六條第一項中「以下同じ。」を「以下特別の定をなす場合を除く外、同じ。」に改める。
第七條第一項中「相続財產のうち」を「相続財產(昭和二十二年五月三日以後に開始する相続については、相続開始前二年以内に被相続人が贈與した財產を含む。以下本條中同じ。)のうち」に改める。
朕は、帝国議会の協賛を経た相続税法を改正する法律を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年四月二十八日
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 石橋湛山
法律第八十七号
相続税法目次
第一章
総則
第二章
課税価格、控除及び税率
第一節
相続税
第二節
贈与税
第三章
財産の評価
第四章
申告及び納付
第五章
課税価格の更正及び決定
第六章
審査、訴願及び訴訟
第七章
延納及び物納
第八章
雑則
第九章
罰則
相続税法
第一章 総則
第一条 相続が開始した場合において、被相続人がこの法律の施行地に住所を有するとき又は相続財産がこの法律の施行地にあるときは、左に掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一 相続人
二 受遺者
三 相続開始前二年以内に被相続人から贈与を受けた者
財産を贈与した個人(以下贈与者という。)がこの法律の施行地に住所を有するとき、又は贈与の目的たる財産(以下贈与財産という。)がこの法律の施行地にあるときは、贈与者は、この法律により、贈与税を納める義務がある。
第二条 被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有するときは、相続財産の全部に対し、相続税を課する。
被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有しないときは、この法律の施行地にある相続財産に対し、相続税を課する。
第三条 贈与者が贈与のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有するときは、贈与財産の全部に対し、贈与税を課する。
贈与者が贈与のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有しないときは、この法律の施行地にある贈与財産に対し、贈与税を課する。
年の中途において、この法律の施行地に住所を有していた者がこの法律の施行地に住所を有しなくなつたとき又はこの法律の施行地に住所を有しなかつた者がこの法律の施行地に住所を有することとなつたときは、この法律の施行地に住所を有していた期間内に贈与した贈与財産の全部及びこの法律の施行地にある贈与財産で贈与者がこの法律の施行地に住所を有していなかつた期間内に贈与したものに対し、贈与税を課する。
第四条 左に掲げる財産は、これを相続財産とみなす。
一 相続開始前二年以内に被相続人が贈与した財産
二 相続開始の時においてまだ保険事故が発生していない生命保険契約で被相続人が保険料の全部又は一部を負担したものについては、命令の定めるところにより、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した保険料の金額に相当するもの
三 被相続人の死亡に因り相続人その他の者の受け取る生命保険契約の保険金
四 退職手当、功労金及びこれらの性質を有する給与(以下退職手当金等という。)で被相続人に支給せらるべきであつたものが被相続人の死亡したためその相続人その他の者に支給された場合におけるその退職手当金等
五 相続開始の時においてまだ定期金給付事由の発生していない郵便年金その他の定期金の給付に関する契約で被相続人が掛金の全部又は一部を負担したものについては、命令の定めるところにより、当該契約に関する権利のうち被相続人が負担した掛金の金額に相当するもの
六 定期金受取人の死亡に至るまで定期金の給付をなす外、一定期間内に定期金受取人が死亡したときは、その死亡後遺族その他の者に対して継続して定期金を給付する契約に基いて、定期金受取人たる被相続人の死亡後、相続人その他の者が取得する定期金に関する権利で被相続人が掛金の全部又は一部を負担したものについては、命令の定めるところにより、当該権利のうち被相続人が負担した掛金の金額に相当するもの
七 被相続人の死亡に因り相続人その他の者が取得する定期金に関する権利で、前二号に掲げるもの以外のもの
被相続人の被相続人が生命保険契約又は定期金の給付に関する契約について負担した保険料又は掛金は、それぞれこれを被相続人が負担した保険料又は掛金とみなして、前項第二号、第五号又は第六号の規定を適用する。
第五条 信託行為があつた場合において、委託者以外の者が信託の利益の全部又は一部についての受益者であるときは、当該信託行為があつた時において、委託者が信託の利益を受ける権利(受益者が信託の利益の一部を受ける場合においては、当該信託の利益を受ける権利のうち、その受ける利益に相当するもの)を受益者に贈与したものとみなす。
委託者が受益者である信託について、あらたに委託者以外の者が受益者となつた場合においては、委託者以外の者が受益者となつた時において、委託者が信託の利益を受ける権利をあらたに受益者となつた者に贈与したものとみなす。
第六条 相続開始前二年以内に信託行為があつた信託について、委託者たる被相続人以外の者が信託の利益の全部又は一部についての受益者である場合又は相続開始前二年以内に委託者たる被相続人が受益者である信託について、あらたに委託者以外の者が受益者となつた場合において、当該信託が左の各号に掲げる信託の一に該当するときは、当該信託の利益を受ける権利については、当該信託の受託者を受益者とみなして、前条の規定を適用する。
一 相続開始の時において信託行為により受益者として指定された者が受益の意思表示をしていないためまだ受益者が確定していない信託
二 相続開始の時において受益者がまだ存在していない信託
三 停止条件附で信託の利益を受ける権利を有せしめた信託で相続開始の時においてまだ条件が成就していないもの
四 相続開始の時において受益者が不特定である信託
前項の場合において、受託者が同項の規定の適用により納付すべき相続税は、命令の定めるところにより、当該信託財産の中から、これを納付しなければならない。
第七条 生命保険契約で保険金受取人以外の者が全部又は一部の保険料を負担したものについては、保険事故が発生した時において、保険料を負担した者が、命令の定めるところにより、保険金額のうちその負担した保険料の金額に相当するものを保険金受取人に贈与したものとみなす。
前項の規定の適用については、被相続人が負担した保険料は、これを相続人が負担した保険料とみなす。
第一項の規定は、第四条第一項第三号の規定により当該保険金を相続財産とみなす場合においては、これを適用しない。
第八条 郵便年金その他の定期金の給付に関する契約で定期金受取人以外の者が全部又は一部の掛金を負担したものについては、定期金給付の事由が発生した時において、掛金を負担した者が、命令の定めるところにより、当該契約に関する権利のうちその負担した掛金の金額に相当するものを定期金受取人に贈与したものとみなす。
前項の規定は、郵便年金その他の定期金の給付に関する契約につき返還金その他これに準ずるものの支払があつた場合について、これを準用する。
前条第二項の規定は、前二項の場合について、これを準用する。
第一項又は第二項の規定は、第四条第一項第六号又は第七号の規定により当該定期金給付の契約に関する権利を相続財産とみなす場合においては、その相続財産とみなされる権利については、これを適用しない。
第九条 生前処分で寄附行為がなされたときは、財団法人設立の許可があつた時において、寄附行為をなした者が、当該寄附財産を財団法人に贈与したものとみなす。
第十条 著しく低い価額の対価で財産の譲渡がなされたときは、その譲渡の時において、財産の譲渡人が、その対価の価額と譲渡の時における譲渡財産の時価との差額に相当する金額を当該財産の譲受人に贈与したものとみなす。
第十一条 対価を受けないで又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受又は第三者のためにする債務の弁済があつたときは、その免除、引受又は弁済があつた時において、免除、引受又は弁済をなした者が、免除、引受又は弁済に係る債務金額に相当する金額を債務者に贈与したものとみなす。但し、命令で定める場合においては、この限りでない。
第十二条 第五条、第七条乃至前条に規定する場合の外、対価を受けないで又は著しく低い価額の対価で、他人に利益を受けしめたときは、その利益を受けしめた者が、その利益を受けしめた時において、利益の価額に相当する金額を利益を受けた者に増与したものとみなす。
前項の規定の適用について必要な事項は、命令でこれを定める。
第十三条 遺言で信託、生命保険契約の保険料若しくは定期金の給付に関する契約の掛金の払込、寄附行為又は前三条に掲げる行為をなしたときは、遺贈があつたものとみなす。
第四条第一項第三号、第四号、第六号又は第七号の場合において、相続人以外の者が、保険金を受け取り、退職手当金等を支給され又は定期金に関する権利を取得したときは、当該財産について遺贈があつたものとみなす。
贈与者の死亡に因り効力を生ずべき贈与は、これを遺贈とみなす。
第十四条 左の各号に掲げる財産の所在は、当該各号に規定する場所による。
一 動産若しくは不動産又は不動産の上に存する権利については、その動産又は不動産の所在 但し、船舶については、船籍の所在
二 鉱業権又は砂鉱権については、鉱区の所在
三 漁業権若しくは入漁権又は漁業権を目的とする権利については、漁場に最も近い沿岸の属する市町村又はこれに相当する行政区画
四 金融機関に対する預金、貯金、積金又は寄託金で命令で定めるものについては、その預金、貯金、積金又は寄託金をなした営業所又は事業所の所在
五 合同運用信託に関する権利については、その信託をなした営業所の所在
六 前各号の外、この法律の施行地に営業所又は事業所を有する者の当該営業所又は事業所の営業上又は事業上の権利については、その営業所又は事業所の所在
前項に掲げる財産以外の財産の所在は、権利者の住所の所在による。
第一項第五号の合同運用信託とは、信託会社(信託業務を兼営する銀行を含む。)が引き受けた金銭信託で、共同しない多数の委託者の信託財産を合同して運用するものをいう。
第十五条 相続財産の所在は、相続開始の時の現況による。但し、第四条第一項第一号に掲げる財産については、贈与の時の現況による。
贈与財産の所在は、贈与の時の現況による。
第二章 課税価格、控除及び税率
第一節 相続税
第十六条 被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有するときは、相続財産の価格から左に掲げるものの金額を控除した金額を以て課税価格とする。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 葬式費用
前項の課税価格の計算については、相続開始前二年以内になされた契約による贈与の義務で、相続開始の際現に存するものの金額は、これを前項第一号に掲げる債務の金額に算入しない。
第十七条 被相続人が相続開始の際この法律の施行地に住所を有しないときは、この法律の施行地にある相続財産の価格から被相続人の債務(公租公課を含む。以下同じ。)のうち、左に掲げるものの金額を控除した金額を以て課税価格とする。
一 その財産に係る公租公課
二 その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権で担保される債務
三 前二号の外、その財産を取得、維持又は管理するために生じた債務
四 その財産に関する贈与の義務(相続開始前二年以内になされた契約によるものを除く。)
五 前四号の外、被相続人が、相続開始の際この法律の施行地に営業所又は事業所を有する場合においては、その営業所又は事業所の営業上又は事業上の債務
第十八条 前二条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る。
第十九条 左に掲げる相続財産の価額は、これを課税価格に算入しない。
一 国、都道府県、市町村その他命令で定める公共団体に対してなした贈与又は遺贈に係る財産の価格
二 相続開始前二年以内に被相続人が同一人に対してなした贈与の目的たる財産の価額の合計金額が千円以下である場合における当該贈与に係る財産の価額
三 第四条第一項第三号、第四号、第六号又は第七号に掲げる保険金、退職手当金等又は定期金に関する権利の価額の合計金額のうち、三万円までの金額
四 互に扶養をなす義務ある者相互間において生活費又は教育費に充てるためになした贈与に係る財産の価額のうち、通常必要と認められるもの
第二十条 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で命令で定めるものに対して相続開始前二年以内になした贈与に係る財産又は遺贈に係る財産の価格の合計金額のうち、十万円又は本条及び第二十一条の規定の適用前の課税価格の十分の一に相当する金額のいずれか低い一方の金額までの金額は、これを課税価格に算入しない。
第二十一条 相続税については、課税価格から五万円を控除する。
第二十二条 相続税は、課税価格(前条の規定による控除後の課税価格をいう。以下特別の定のある場合を除く外、本節中同じ。)を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用して、これを課する。
課税価格
税率
第一種
第二種
第三種
納税義務者が、被相続人の直系卑属又は配偶者であるとき
納税義務者が、被相続人の直系尊属又は兄弟姉妹であるとき
納税義務者が、その他の者であるとき
二万円以下の金額
百分の十
百分の十三
百分の十五
二万円を超える金額
百分の十二
百分の十五
百分の十七
五万円を超える金額
百分の十四
百分の十七
百分の十九
十万円を超える金額
百分の十六
百分の十九
百分の二十一
十五万円を超える金額
百分の十八
百分の二十一
百分の二十三
二十万円を超える金額
百分の二十一
百分の二十四
百分の二十六
二十五万円を超える金額
百分の二十四
百分の二十七
百分の二十九
三十万円を超える金額
百分の二十七
百分の三十
百分の三十二
三十五万円を超える金額
百分の三十
百分の三十三
百分の三十五
四十万円を超える金額
百分の三十三
百分の三十六
百分の三十八
五十万円を超える金額
百分の三十六
百分の三十九
百分の四十一
六十万円を超える金額
百分の三十九
百分の四十二
百分の四十四
八十万円を超える金額
百分の四十二
百分の四十五
百分の四十七
百万円を超える金額
百分の四十五
百分の四十八
百分の五十
百五十万円を超える金額
百分の四十八
百分の五十一
百分の五十三
二百万円を超える金額
百分の五十一
百分の五十四
百分の五十六
三百万円を超える金額
百分の五十四
百分の五十七
百分の五十九
四百万円を超える金額
百分の五十七
百分の六十
百分の六十二
五百万円を超える金額
百分の六十
百分の六十三
百分の六十五
納税義務者が二人以上であるときは、各納税義務者の納付すべき税額は、課税価格に前項の税率を適用して算出した金額を、前条の規定による控除前の課税価格中各ゝその者の受ける利益の価格の占める割合により按分して計算した金額とする。但し、二人以上の納税義務者について適用すべき税率の種類を異にするときは、課税価格についてその者に適用すべき種類の税率を適用して各別に算出した金額に、前条の規定による控除前の課税価格中その者の受ける利益の価格の占める割合を乗じて計算した金額とする。
二人以上の者が第四条第一項第三号、第四号、第六号又は第七号に掲げる保険金を掲げる保険金を受け取り、退職手当金等を支給され又は定期金に関する権利を取得した場合においては、第十九条第三号の規定により課税価格に算入しない金額は、これをその者の受け取つた保険金額、支給された退職手当金等の金額又は取得した定期金に関する権利の価格の割合により按分して、前項に規定するその者の受ける利益の価額を計算する。
前項の規定は、第二十条の規定の適用がある場合において、同条に規定する者が二人以上あるときの、各ゝの者の受ける利益の価額の計算について、これを準用する。
相続人のあることが分明でない場合において、その相続人について納付すべき税額は、第三種の税率を適用して算出した金額とする。
前項の規定の適用があつた場合において、相続人のあることが分明となり、且つ、その相続人が第一種又は第二種の税率の適用のある者であるときは、政府は、税率の適用を改訂し、税金の差額を還付する。
第二十三条 相続が開始した場合において、被相続人が当該相続の開始前五年以内に開始した相続について相続税を納付したとき又は納付すべきときは、命令の定めるところにより、その納付した又は納付すべき前の相続税の額に相当する相続税の全部又は一部を免除する。
前項の規定の適用については、第二十六条の規定により控除された税額については、相続税の納付があつたものとみなす。
第二十四条 第六条第一項第一号乃至第三号に掲げる信託について受益者として指定された者が受益の意思表示をなし、受益者が存在するに至り又は条件が成就した後当該受益者の死亡に因り相続が開始した場合においては、第六条の規定により当該信託の受託者の納付した又は納付すべき相続税は、これを当該受益者の納付した相続税とみなして前条第一項の規定を適用する。
第二十五条 この法律の施行地外にある相続財産について、その地の法令により相続税が課せられたときは、命令の定めるところにより、その課せられた相続税の額に相当する相続税の全部又は一部を免除する。
第二十六条 相続開始前二年以内に被相続人がなした贈与について納付した又は納付すべき贈与税があるときは、命令の定めるところにより、当該贈与税額(第五十八条及び第五十九条の規定による加算税額又は追徴税額に相当する金額を除く。以下本条中同じ。)を、相続人の納付すべき相続税額から控除する。
前項の規定の適用ある場合においては、当該相続についての課税価格の計算については、当該贈与税額に相当する金額を相続財産の価額に加算する。
前項の規定により相続財産の価額に加算した金額は、第二十二条第二項の納税義務者の受ける利益の価額の計算については、これを相続人の受ける利益の価額に算入する。この場合において相続人が二人以上あるときは、各相続人の受ける利益の価額に算入する金額は、その加算した金額をその相続分に応じて按分して計算した金額とする。
第二節 贈与税
第二十七条 贈与者が贈与のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有するときは、贈与者がその年一月一日から十二月三十一日までの間に贈与した財産の価額の合計金額を以て課税価格とする。
贈与者が贈与のあつた年においてこの法律の施行地に住所を有しないときは、贈与者がその年一月一日から十二月三十一日までの間に贈与した財産で、この法律の施行地にあるものの価額の合計金額を以て課税価格とする。
年の中途において、この法律の施行地に住所を有していた者がこの法律の施行地に住所を有しなくなつたとき又はこの法律の施行地に住所を有していなかつた者がこの法律の施行地に住所を有することとなつたときは、この法律の施行地に住所を有していた期間内に贈与した贈与財産の価額及びこの法律の施行地にある贈与財産で、贈与者がこの法律の施行地に住所を有していなかつた期間内に贈与したものの価額の合計金額を以て課税価格とする。
第二十八条 左に掲げる贈与財産の価額は、課税価格に算入しない。
一 国、都道府県、市町村その他命令で定める公共団体に対してなした贈与に係る財産の価額
二 その年中に同一人に対してなした贈与の目的たる財産の価額の合計金額が千円以下である場合における当該贈与に係る財産の価額
三 その年中に宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で命令で定めるものに対してなした贈与に係る財産の価額の合計金額のうち、五千円(その贈与に係る財産の価額の合計金額が五千円を超えるときは、五千円及び五千円を超え十万円までの金額についてその二分の一に相当する金額の合計金額)までの金額
四 互に扶養をなす義務のある者相互間において生活費又は教育費に充てるためになした贈与に係る財産の価額のうち、通常必要と認められるもの
第二十九条 贈与税については、課税価格から五万円を控除する。
納税義務者が前年までの分の贈与税について前項の規定による控除を受けていた場合においては、同項の規定による控除は、これをなさない。但し、前年までの分の贈与税について同項の規定により控除を受けた金額が通じて五万円に満たないときは、五万円と前年までの分の贈与税につき同項の規定により控除を受けた金額の合計金額との差額を課税価格から控除する。
第三十条 贈与税は、納税義務者のその年までの課税価格(前条に規定する控除後の課税価格をいう。以下特別の定のある場合を除く外、本節中同じ。)の合計金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用して算出した金額から、納税義務者の前年までの課税価格の合計金額を左の各級に区分し、逓次に各税率を適用して算出した金額を控除した差額により、これを課する。
二万円以下の金額 百分の十五
二万円を超える金額 百分の十七
五万円を超える金額 百分の十九
十万円を超える金額 百分の二十一
十五万円を超える金額 百分の二十三
二十万円を超える金額 百分の二十六
二十五万円を超える金額 百分の二十九
三十万円を超える金額 百分の三十二
三十五万円を超える金額 百分の三十五
四十万円を超える金額 百分の三十八
五十万円を超える金額 百分の四十一
六十万円を超える金額 百分の四十四
八十万円を超える金額 百分の四十七
百万円を超える金額 百分の五十
百五十万円を超える金額 百分の五十三
二百万円を超える金額 百分の五十六
三百万円を超える金額 百分の五十九
四百万円を超える金額 百分の六十二
五百万円を超える金額 百分の六十五
第三十一条 この法律の施行地外にある財産につきなした贈与についてその地の法令により贈与税を課せられたときは、命令の定めるところにより、その課せられた贈与税の額に相当する贈与税の全部又は一部を免除する。
第三十二条 相続開始前二年以内に被相続人がなした贈与については、贈与税(第五十八条及び第五十九条の規定による贈与税を除く。)を免除する。但し、相続開始の日までに政府に提出された第三十九条の規定による申告書に記載された課税価格(第四十条の規定による修正後の課税価格を含む。)及び同日までになされた第四十五条の規定による政府の更正又は決定に係る課税価格に対する税額については、この限りでない。
第三章 財産の評価
第三十三条 地上権(借地法に規定する借地権を除く。以下同じ。)及び永小作権の価額は、相続財産については相続開始の時、贈与財産については贈与の時における現況により、残存期間に応じ、その目的となつている土地の価額に左に掲げる割合を乗じて算出した金額による。
残存期間が十年以下のもの 百分の五
残存期間が十年を超え十五年以下のもの 百分の十
残存期間が十五年を超え二十年以下のもの 百分の二十
残存期間が二十年を超え二十五年以下のもの 百分の三十
残存期間が二十五年を超え三十年以下のもの及び地上権で残存期間の定のないもの 百分の四十
残存期間が三十年を超え三十五年以下のもの 百分の五十
残存期間が三十五年を超え四十年以下のもの 百分の六十
残存期間が四十年を超え四十五年以下のもの 百分の七十
残存期間が四十五年を超え五十年以下のもの 百分の八十
残存期間が五十年を超えるもの 百分の九十
第三十四条 相続財産たる定期金に関する権利で相続開始の時までに給付事由の発生しているものの価額は、左に掲げる金額による。
一 有期定期金については、相続開始の時の現況により、残存期間に受くべき給付金額に、その残存期間に応じ、左の割合を乗じて算出した金額、但し、一年間に受くべき金額の二十倍を超えることができない。
残存期間が五年以下のもの 百分の八十
残存期間が五年を超え十五年以下のもの 百分の七十
残存期間が十五年を超え二十五年以下のもの 百分の六十
残存期間が二十五年を超え三十五年以下のもの 百分の五十
残存期間が三十五年を超えるもの 百分の四十
二 無期定期金については、その一年間に受くべき金額の二十倍に相当する金額
三 終身定期金については、相続開始の時の現況により、一年間に受くべき金額に、その目的とされた人の年齢に応じ、左の倍数を乗じて算出した金額
二十五歳以下の者 十五倍
二十五歳を超え四十歳以下の者 十二倍
四十歳を超え五十歳以下の者 八倍
五十歳を超え六十歳以下の者 五倍
六十歳を超え七十歳以下の者 二倍
七十歳を超える者 一倍
第八条第一項に規定する定期金給付の契約に関する権利の価額は、定期金給付の事由が発生した時の現況により、前項の規定を準用して算定した金額による。
前項に定めるものの外、相続財産たる定期金に関する権利で相続開始の時までに給付事由の発生しているものの価額及び第八条第一項及び第二項に規定する定期金給付の契約に関する権利の価額の評価に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十五条 相続開始の時までにまだ保険事故の発生していない生命保険契約に関する権利の価額は、相続開始の時までに払い込まれた保険料の合計金額を基準として、命令の定めるところにより計算した金額による。
第三十六条 相続開始の時までにまだ年金支払事由の発生していない郵便年金契約に関する権利の価額は、相続開始の時までに払い込まれた掛金の合計金額に、掛金の払込開始の時から相続開始の時までの経過期間を基準として、命令で定める割合を乗じて算出した金額による。
第三十七条 第三十三条、第三十四条第一項及び第三項並びに前二条に定めるものの外、相続財産の価額は、相続開始当時の時価により、相続財産の価額から控除すべき債務の金額は、相続開始当時の現況による。
第三十三条並びに第三十四条第二項及び第三項に定めるものの外、贈与財産の価額は、贈与の時における時価による。
第四章 申告及び納付
第三十八条 相続税について納税義務がある者は、命令の定めるところにより、相続の開始後四箇月以内に、課税価格その他の事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。
前項の場合において、納税義務者が二人以上あるときは、連署で前項の申告書を提出しなければならない。但し、他の納税義務者の氏名を附記して、各別に申告書を提出することを妨げない。
通信、交通その他已むを得ない事由に因り、第一項の期限内に同項の規定による申告書を提出することができない者については、政府は、命令の定めるところにより、同項の期限を延長することができる。
第三十九条 贈与税について納税義務がある者は、命令の定めるところにより、贈与をなした年の翌年一月三十一日までに、課税価格その他の事項を記載した申告書を、政府に提出しなければならない。
前条第三項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
贈与税について納税義務がある者が贈与のあつた年の中途においてこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなる場合における、第一項の規定による申告書の提出については、命令で特別の定をなすことができる。
第四十条 前二条の規定による申告書を提出した者は、前二条の規定による申告書の提出期限後その申告に係る課税価格について脱漏があることを発見したときは、直ちに政府に申し出て、その申告書を修正しなければならない。
前項の規定は、第四十五条の規定による課税価格の更正又は決定があつた者が更正又は決定に係る課税価格について脱漏があることを発見した場合における課税価格の修正について、これを準用する。
第四十一条 第三十八条又は第三十九条の規定による申告書に記載された課税価格に対する相続税又は贈与税は、第三十八条又は第三十九条の規定による申告書の提出期限までに、これを納付しなければならない。
第三十八条又は第三十九条の規定による申告書の提出期限後課税価格の申告書の提出があつた場合において、その申告書に記載された課税価格に対する相続税又は贈与税は、その申告書提出の日に、これを納付しなければならない。
前条第一項の規定による申告書の修正又は同条第二項の規定による課税価格の修正があつた場合において、その修正に因り増加する税額に相当する相続税又は贈与税は、その申告書の修正又は課税価格の修正の日に、これを納付しなければならない。
納税義務者が、前三項の定めるところにより、相続税又は贈与税を完納しなかつたときは、政府は、国税徴収法第九条の規定により、これを督促する。
第四十二条 第六条第一項第四号の規定の適用を受ける信託の受託者は、相続開始の時において現に存する信託財産の価額を限度として、相続税を納める義務を負う。
第四十三条 相続税について納税義務がある者が二人以上あるときは、各納税義務者は、他の納税義務者の納付すべき相続税について、その受けた利益の価額を限度として、連帯納付の責に任ずる。
第四十四条 受贈者は、贈与者の納付すべき贈与税について、贈与に因りその受けた利益の価額を限度として、連帯納付の責に任ずる。
第五章 課税価格の更正及び決定
第四十五条 第三十八条若しくは第三十九条の規定による申告書が提出された場合又は第四十条の規定による申告書の修正があつた場合において、申告又は修正に係る課税価格が、政府において調査した課税価格と異るときは、政府は、その調査により、その課税価格を更正する。
政府は、納税義務があると認められる者が第三十八条又は第三十九条の規定による申告書を提出しなかつた場合においては、その調査により、その課税価格を決定する。
納税義務者が第三十八条又は第三十九条の規定による申告書を提出せず、且つ、第六十五条に規定する納税管理人の申告をなさないで、この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、政府は、命令の定めるところにより、第三十八条又は第三十九条の規定による申告書の提出期限前においても、その調査により、その課税価格を決定することができる。
政府は、前三項の規定による課税価格の更正又は決定後その更正又は決定に係る課税価格について脱漏があることを発見したときは、その調査により、その課税価格を更正することができる。
第四十六条 政府は、前条の規定により、課税価格を更正し又は決定したときは、これを納税義務者に通知する。
この法律の施行地に住所及び居所を有しない者が第六十五条に規定する納税管理人の申告をしていないときは、前項の通知に代えて公告することができる。この場合において、公告の初日から七日を経過したときは、その通知があつたものとみなす。
第四十七条 政府は、第四十五条の規定により課税価格を更正し又は決定した場合においては、前条第一項の通知をなした日から一箇月後を納期限として、その追徴税額(その不足税額又はその決定による税額をいう。以下同じ。)を徴収する。但し、納税義務者が第六十五条に規定する納税管理人の申告をなさないで、この法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなる場合においては、直ちに追徴税額を徴収する。
第六章 審査、訴願及び訴訟
第四十八条 納税義務者は、第四十六条の規定により政府の通知した課税価格又は第六十条の規定により政府の通知した税額に対して異議があるときは、通知を受けた日から一箇月以内に、不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
前項の請求があつた場合においても、政府は、税金の徴収を猶予しない。但し、政府において已むを得ない事由があると認めたときは、税金の徴収を猶予することができる。
第四十九条 政府は、前条第一項の請求があつたときは、これを決定し、納税義務者に通知しなければならない。
第五十条 前条第一項の決定に対し、不服がある者は、訴願又は訴訟をなすことができる。
第四十五条の規定により政府のなした更正若しくは決定又は第五十九条の規定により政府のなした税額の追徴に関する訴願又は訴訟は、審査の決定を経た後でなければ、これをなすことができない。
第七章 延納及び物納
第五十一条 相続税の納税義務者は、その納付すべき相続税額が一万円以上で、且つ、金銭で一時に納付することを困難とする事由があるときは、命令の定めるところにより、その納付を困難とする金額を限度として、担保を提供し、五年以内の年賦延納を申請することができる。
前項の規定は、相続税につき連帯納付の責に任ずる者について、これを準用する。
第五十二条 相続税の納税義務者は、その納付すべき相続税額のうち、金銭で納付することを困難とする金額について、物納を申請することができる。
前項の規定は、相続税につき連帯納付の責に任ずる者について、これを準用する。
前二項の場合において、物納に充てることができる財産の種類その他物納に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第五十三条 政府は、前二条の規定により相続税の延納又は物納の申請があつた場合において、必要があると認めるときは、税金の納付を猶予することができる。
第五十四条 第五十二条第一項又は第二項の規定の適用を受けて納付した相続税につき過誤納があつた場合の還付に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第八章 雑則
第五十五条 納税義務者が、災害に因り著しく資力を喪失して、納税困難と認められるときは、政府は、命令の定めるところにより、相続税又は贈与税を軽減し又は免除することができる。
政府は、前項の場合において、同項の規定による軽減又は免除に関する処分が確定するまで、税金の徴収を猶予することができる。
第五十六条 納税義務者の提出した申告書又は課税価格の更正、決定若しくは修正に関する書類を閲覧しようとする者は、命令の定めるところにより、政府に、その閲覧を請求することができる。
第五十七条 納税義務があると認められる者が申告書を提出しなかつた事実又は課税価格に脱漏があると認められる事実を、政府に報告した者がある場合において、政府がその報告に因つて課税価格を決定し又は更正したときは、政府は、命令の定めるところにより、その報告者に対し、課税価格の決定又は更正に因り徴収することができた税額の百分の十以下に相当する金額を、報償金として交付することができる。但し、報償金の金額は、十万円を超えることができない。
前項の規定は、その報告をなした者が官吏又は待遇官吏であるときは、これを適用しない。その報告が、官吏若しくは待遇官吏の知り得た事実、公務員(官吏及び待遇官吏を除く。)の職務上知り得た事実又は不法の行為に因り知り得た事実に基くものである場合も、また同様とする。
第五十八条 納税義務者は、第四十一条第二項又は第三項の規定により納付すべき相続税又は贈与税については、当該各項に規定する日に、命令の定めるところにより、命令で定める期間に応じ、当該税額百円について一日三銭の割合を乗じて算出した金額に相当する税額を加算して納付しなければならない。
第四十一条第四項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第一項の規定は、政府が、第四十七条の規定による追徴税額又は第五十一条の規定による延納税額に相当する相続税を徴収する場合について、これを準用する。
第五十九条 第四十一条第二項又は第三項の規定により相続税又は贈与税の納付があつた場合又は第四十七条の規定による追徴税額に相当する相続税又は贈与税を徴収することとなつた場合においては、第三十八条又は第三十九条の申告期限内に申告書の提出がなかつたこと、第四十条第一項の規定による申告書の修正があつた場合において前の申告若しくは修正に係る課税価格について脱漏があつたこと又は納税義務者の申告若しくは修正した課税価格が政府の調査した課税価格と異ることについて已むを得ない事由があると認められる場合を除く外、政府は、命令の定めるところにより、命令で定める期間に応じ、当該税額に一箇月を経過するごとに百分の五の割合を乗じて算出した金額に相当する税額の相続税又は贈与税を追徴する。但し、その金額は、当該税額に百分の五十を乗じて算出した金額を超えることができない。
前項の規定により追徴する税額については、第五十一条及び第五十二条の規定は、これを適用しない。
第六十条 政府は、前条第一項の規定により追徴する税額を決定したときは、これを納税義務者に通知する。
第四十六条第二項の規定は、前項の場合について、これを準用する。
第六十一条 相続が開始した後、相続人の廃除又はその取消に関する裁判の確定に因り相続人に異動を生じた場合においては、その裁判確定前に、裁判確定前の相続人のなした課税価格の申告(その修正を含む。以下本条中同じ。)又は裁判確定前の相続人について政府のなした課税価格の更正若しくは決定は、これを裁判の確定に因り相続人となつた者のなした課税価格の申告又は裁判の確定に因り相続人となつた者について政府のなした課税価格の更正若しくは決定とみなし、裁判確定前の相続人の納付した相続税は、これを裁判の確定に因り相続人となつた者の納付した相続税とみなす。
前項の場合において、裁判の確定に因り相続人となつた者は、裁判確定前の相続人の申告した課税価格又は裁判確定前の相続人について政府の更正若しくは決定した課税価格について異議があるときは、第四十八条の規定による審査の請求をなすことができる。但し、その期限は裁判の確定した日から二箇月以内とする。
前二項の規定は、相続の抛棄に因り、その抛棄前の相続人と異る者が相続人となつた場合について、これを準用する。
相続人の廃除に関する裁判の確定又は相続の抛棄に因り、相続人のうち、その受ける利益の価額が増加した者がある場合においては、裁判の確定に因り廃除された者又は相続の抛棄をなした者の納付した相続税は、これを相続人のうち、裁判の確定又は相続の抛棄に因りその受ける利益の価額が増加した者が納付したものとみなす。
相続人の廃除の取消に関する裁判の確定に因り、相続人のうち、その受ける利益の価額が減少した者がある場合においては、裁判の確定に因り、相続人のうち、その受ける利益の価額が減少した者の納付した相続税は、これを裁判の確定に因り相続人となつた者が納付した相続税とみなす。
第六十二条 第六条第一項第一号乃至第三号に規定する信託について受益者として指定された者が受益しない旨の意思表示をしたこと、受益者が存在しないことに確定したこと又は条件が成就しないこととなつたことに因り信託財産又は信託の利益を受ける権利が委託者に帰属したときは、当該信託は、初めからなかつたものとみなす。
前項の規定の適用について必要な事項は、命令でこれを定める。
第六十三条 相続人があることが分明でないとき又は相続人が相続財産について全く処分の権能を有しないときは、この法律中相続人に関する規定は、相続財産管理人又は遺言執行者に、これを準用する。この場合においては、第三十八条第一項の規定による申告書の提出期限は、その就職の日から四箇月とする。
第六十四条 相続税は、相続の開始地を、その納税地とする。但し、相続の開始地がこの法律の施行地外の地であるときは、この法律の施行地にある相続財産の所在地(その相続財産が二以上の地にあるときは、主たる相続財産の所在地)を、その納税地とする。
贈与税は、この法律の施行地にある贈与者の住所地(この法律の施行地に住所がないときは、この法律の施行地にある居所地)をその納税地とする。
贈与者がこの法律の施行地に住所及び居所を有しない場合における贈与税の納税地は、贈与者が納税地として申告した場所とする。その申告がないときは、政府が、その納税地を指定する。
第六十五条 納税義務者は、この法律の施行地に住所及び居所を有しないときは、申告書の提出その他相続税又は贈与税に関する一切の事項を処理せしめるため、この法律の施行地に住所又は居所を有する者の中から納税管理人を定め、政府に申告しなければならない。納税義務者がこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときも、また同様とする。
第六十六条 相続人は、相続の開始後三箇月以内に、被相続人が相続開始前二年以内になした贈与の受贈者及び受遺者に対し、命令の定めるところにより、被相続人の氏名、相続開始の年月日、相続の開始地その他受贈者又は受遺者が、第三十八条の規定による申告書を提出するために必要な事項を通知しなければならない。
第六十七条 市町村長その他命令で定める者は、死亡又は失踪に関する届書を受理したときは、これを政府に報告しなければならない。
第六十八条 この法律の施行地において、生命保険金を支払つた者は、命令の定めるところにより、支払調書を政府に提出しなければならない。
この法律の施行地において、本人に支給すべき退職手当金等を、本人が死亡したため、その相続人その他の者に支給した法人は、命令の定めるところにより、支払調書を政府に提出しなければならない。
この法律の施行地において、受益者と委託者とが同一人でない信託を引き受けた者は、命令の定めるところにより、信託に関する調書を政府に提出しなければならない。
第六十九条 収税官吏は、相続税に関する調査又は相続税の徴収について必要があるときは、左の各号に掲げる者に質問し又は第一号に掲げる者の財産若しくはその財産に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる。
一 納税義務者又は納税義務があると認められる者
二 前条の調書を提出しなければならない者
三 納税義務者又は納税義務があると認められる者に対し、債権若しくは債務を有していたと認められる者又は債権若しくは債務を有すると認められる者
四 納税義務者又は納税義務があると認められる者が、出資者であつたと認められる法人又は出資者であると認められる法人
五 納税義務者又は納税義務があると認められる者に対し、財産を譲渡したと認められる者又は財産を譲渡する義務があると認められる者
六 納税義務者又は納税義務があると認められる者から、財産を取得したと認められる者又は財産を取得する権利があると認められる者
七 納税義務者又は納税義務があると認められる者の財産を保管したと認められる者又は保管すると認められる者
八 納税義務者又は納税義務があると認められる者が、その営業又は事業に関して加入していたと認められる団体又は加入していると認められる団体
収税官吏は、贈与税に関する調査について必要があるときは、左の各号に掲げる者に質問し又は第一号若しくは第二号に掲げる者の財産若しくはその財産に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる。
一 納税義務者又は納税義務があると認められる者
二 納税義務者又は納税義務があると認められる者から贈与を受けた者又は贈与を受けたと認められる者
三 前条の調書を提出しなければならない者
四 贈与財産若しくは贈与財産と認められる財産を保管したと認められる者又は保管すると認められる者
第七十条 都道府県、市町村その他の公共団体は、相続税及び贈与税の附加税を課することができない。
第九章 罰則
第七十一条 詐偽その他不正の行為により相続税又は贈与税を免れた者は、これを一年以下の懲役又はその免れた税金の三倍以下に相当する罰金若しくは科料に処する。
前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。
第一項の場合においては、政府は、直ちに、その課税価格を決定し、その税金を懲収する。
第七十二条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第六十八条の調書を提出せず又はその調書に虚偽の記載をなして、これを提出した者
二 第六十九条の規定による財産又はその財産に関する帳簿書類その他の物件の調査を拒み、妨げ又は忌避した者
三 前号の帳簿書類で虚偽の記載をなしたものを呈示した者
四 第六十九条の規定による収税官吏の質問に対し答弁をなさない者
五 前号の質問に対し虚偽の答弁をなした者
第七十三条 相続税又は贈与税に関する調査又は審査の事務に従事している者又はこれに従事していた者が、その調査又は審査に関して知り得た秘密を漏らし又は窃用したときは、これを二年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第七十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、第七十一条第一項又は第七十二条の違反行為をなしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。
第七十五条 他人の相続税又は贈与税について、政府に対し、第五十七条に規定する事実に関する虚偽の報告をなした者は、これを三年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第七十六条 第七十一条第一項の罪を犯した者には、刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及び第六十六条の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に処するときは、この限りでない。
附 則
第一条 この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。
第二条 この法律は、本州、北海道、四国、九州及びその附属の島(政令で定める地域を除く。)に、これを施行する。
第三条 この法律施行前に開始した相続に対する相続税については、なお従前の例による。但し、左の各号に掲げる事項については、当該各号に定めるところによる。
一 この法律の施行後、政府が従前の第十五条又は従前の第十七条ノ二の規定により決定又は処分をなす場合においては、相続税審査委員会の諮問を経ることを必要としない。
二 この法律施行後、従前の第十六条の規定による出訴をなす場合においては、裁判所に対し、これをなすものとする。
この法律の施行前に信託に因り委託者が他人に信託の利益を受ける権利を有せしめた場合において、当該信託の元本又は収益の受益者がこの法律施行後初めて元本又は収益を受けることとなつたときは、当該信託行為のあつた時において、従前の第二十三条の規定による遺産相続が開始したものとみなす。
第四条 この法律施行後開始する相続の開始前二年以内に被相続人が贈与した贈与財産に対し課した又は課せらるべき従前の第二十三条の規定による相続税があるときは、当該相続税額は、命令の定めるところにより、受贈者の納付すべき相続税額から、これを控除する。
第五条 昭和二十二年分の贈与税については、第二十七条に規定する課税価格は、この法律施行の日から昭和二十二年十二月三十一日までの間に贈与された贈与財産の価額により、これを計算する。
第六条 登録税法の一部を次のように改正する。
第二条第二号を次のように改める。
二 遺言、贈与其ノ他無償名義ニ因ル所有権ノ取得
不動産価格 千分ノ二十五
第三条第二号中「千分ノ五十五」を「千分ノ二十」に改める。
第三条ノ二 信託財産タル不動産又ハ船舶ヲ受託者ヨリ受益者ニ移ス場合ニ於ケル所有権取得ノ登記ニ付テハ左ノ区別ニ従ヒ登録税ヲ納ムヘシ
不動産 不動産価格 千分ノ二十五
船舶 船舶価格 千分ノ二十
第七条 租税特別措置法の一部を次のように改正する。
第三条中「第十七条ノ二」を「第五十二条」に、「不動産又は立木」を「不動産、立木その他命令で定める資産」に、「山林の所得」を「山林所得」に改める。
第六条第一項中「以下同じ。」を「以下特別の定をなす場合を除く外、同じ。」に改める。
第七条第一項中「相続財産のうち」を「相続財産(昭和二十二年五月三日以後に開始する相続については、相続開始前二年以内に被相続人が贈与した財産を含む。以下本条中同じ。)のうち」に改める。