証券取引法
法令番号: 法律第二十二号
公布年月日: 昭和22年3月28日
法令の形式: 法律
朕は、帝國議会の協賛を経た証券取引法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年三月二十七日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
大藏大臣 石橋湛山
法律第二十二号
証券取引法目次
第一章
総則
第二章
株式又は社債の発行に関する届出
第三章
証券業者
第四章
証券取引所
第一節
設立及び組織
第二節
会員
第三節
管理
第四節
有價証券市場における賣買取引
第五節
有價証券市場における賣買取引の受託
第六節
解散
第七節
監督
第五章
証券取引委員会
第六章
雜則
第七章
罰則
証券取引法
第一章 総則
第一條 この法律は、國民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するため、有價証券の発行及び賣買その他の取引を公正ならしめ、且つ、有價証券の流通を円滑ならしめることを目的とする。
第二條 この法律において有價証券とは、左に掲げるものをいう。
一 國債証券
二 地方債証券
三 特別の法律により設立された法人の発行する債券
四 社債券
五 特別の法律により設立された法人の発行する出資証券
六 株券
七 外國又は外國法人の発行する証券で前各号の証券の性質を有するもの
第三條 この法律において証券業とは、有價証券の賣買、賣買の媒介、引受又は募集若しくは賣出の取扱をなす営業をいう。
第四條 この法律において目論見書とは、株式又は社債の発行に際し使用する説明書その他の文書で、事業に関する計画又は收支見込を記載したものをいう。
第五條 この法律において有價証券市場とは、一定の秩序のもとに有價証券の賣買取引が行われる市場をいう。
第二章 株式又は社債の発行に関する届出
第六條 株式又は社債(特別の法律により設立された法人の発行するものを除く。第二十二條に規定する場合を除き以下同じ。)を発行しようとするときは、会社成立前の場合においてはその発起人(合併に因り会社を設立する場合においては設立委員)、会社成立後の場合においてはその取締役(株式合資会社においては業務を執行する無限責任社員)及び職務代行者(株式会社又は株式合資会社の商法第二百五十八條第二項、第二百七十條第一項又は第二百七十二條第一項の職務代行者をいう。以下同じ。)の全員が、命令の定めるところにより、当該株式又は社債に関し、左に掲げる事項を政府に届け出なければならない。但し、当該発行に係る株式又は社債の額面総額が二十万円未満であつて、政府の指定する場合は、この限りでない。
一 会社の目的、商号及び資本又は出資に関する事項
二 会社の事業
三 会社の最近三事業年度の業務成績
四 会社の財產に関する事項
五 最近三事業年度末における会社の株式價格
六 当該株式又は社債の発行に因り取得する資金の使用計画
七 当該株式又は社債の種類、銘柄、数量及び金額
八 当該株式又は社債の募集又は募集の委託の條件
九 目論見書に記載する事項
十 その他命令で定める事項
外國会社がこの法律の施行地内において株式又は社債を募集しようとする場合は、商法第四百七十九條第二項に規定する代表者が、前項の届出をしなければならない。
第一項の規定による届出書の中に、訂正を必要とするものがあるときは、前二項に掲げる者は、訂正届出書を政府に提出しなければならない。
第七條 前條第一項第九号の記載事項と異なる事項を記載した目論見書は、株式又は社債の発行に際し、これを使用することができない。
第八條 第六條の規定により届出を必要とする株式又は社債については、左に掲げる期間の経過後でなければ、株式若しくは社債の募集若しくは募集の委託をし、合併に因る株式の割当をし又は発起人において株式の引受をしてはならない。
一 第六條第一項の規定による届出書の提出があつた日から十五日
二 前号の期間内に第六條第三項の規定による訂正届出書の提出があつたときは、その提出があつた日から十五日
三 第九條の規定による照会又は処分があつたときは、政府が別に指定する期間
第九條 政府は、第六條の規定により提出があつた届出書類に形式上の不備があると認めるときはその補完を命じ、又はその内容の中に重要な事項について眞実に反するものがあり若しくは重要な事項の記載の省略があると認めるときは、届出者に照会し、必要があるときは、訂正届出書の提出を命ずる。
前項の処分は、前條の規定により株式若しくは社債の募集若しくは募集の委託又は株式の割当若しくは引受をすることができることとなつた日以後は、これをなすことができない。
第十條 第六條第一項若しくは第三項又は前條第一項の規定により提出があつた届出書類に、眞実に反する記載があり又は重要な事項の記載の省略があつたときは、当該届出書類の届出者は、その記載を信じて株式の申込をし若しくは社債の募集に應じた者又は当該株式若しくは社債を取得した者に対し、連帶して損害賠償の責に任ずる。但し、届出者が故意及び過失がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
前項の責任は、第八條の規定により株式若しくは社債の募集若しくは募集の委託又は株式の割当若しくは引受ができることとなつた日から三年を経過したときは、時効によつて消滅する。
第十一條 前條の規定は、第七條の規定に違反して第六條第一項第九号の記載事項と異なる事項を記載した目論見書を使用した者に、これを準用する。
第十二條 株式会社又は株式合資会社は、命令の定めるところにより、事業年度ごとに、業務又は財產の状況に関する報告書を作成し、毎事業年度経過後二箇月以内に、これを政府に提出しなければならない。但し、その発行した株式又は社債の額面総額が二十万円未満であつて、政府が指定する場合は、この限りでない。
第九條第一項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第十三條 第六條又は前條の書類は、命令の定めるところにより、政府にこれを備え置き、その全部又は一部を公衆の縱覽に供しなければならない。
何人も、命令の定めるところにより、手数料を納め、前項の書類の謄本又は抄本の交付を請求することができる。
第十四條 第十二條の規定により書類を提出しなければならない者が解散したときは、その取締役(株式合資会社にあつては業務を執行する無限責任社員)は、遅滯なく、その旨を政府に届け出なければならない。
第三章 証券業者
第十五條 証券業を営もうとする者は、命令の定めるところにより、政府の免許を受けなければならない。
前項の免許を受けた者(以下証券業者という。)は、命令の定めるところにより、免許料を納めなければならない。
第十六條 純財產額が政府の指定する額に滿たない者は、前條第一項の免許を受けることができない。
前項の純財產額の算定に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十七條 左の各号の一に該当する者は、第十五條第一項の免許を受けることができない。
一 破產者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終つた後、又は執行を受けることがないこととなつた後、五年を経過するまでの者
三 第十八條第二項、第十九條第二項又は第三十條の規定により免許を取り消され、取消の日から五年を経過するまでの者
四 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁治產者でその法定代理人が前各号の一に該当するもの
五 法人でその取締役その他業務を執行する役員の中に第一号乃至第三号の一に該当する者のあるもの
第十八條 証券業者の純財產額が第十六條第一項の規定により政府の指定する額を下ることとなつたときは、政府は、直ちにその営業を停止しなければならない。
前項の場合において、証券業者の純財產額が六箇月以内に第十六條第一項の規定により政府の指定する額以上に回復しないときは、政府は、第十五條第一項の規定による免許を取り消さなければならない。
第十九條 証券業者が第十七條第一号、第二号、第四号又は第五号に該当することとなつたときは、免許は、その効力を失う。
政府は、不正の手段により第十五條第一項の免許を受けた者のあることを発見したときは、その免許を取り消すことができる。
第二十條 証券業者は、命令の定めるところにより、営業保証金を供託しなければならない。
前項の営業保証金は、命令の定めるところにより、國債証券を以て、これに充てることができる。
証券業者とその営業に関し取引をした者は、その取引に因り生じた債権に関し、営業保証金について、他の債権者に先だち弁済を受ける権利がある。
第二十一條 証券業者は、左の場合においては、その旨を政府に届け出なければならない。
一 商号を変更しようとするとき
二 支店その他の営業所又は代理店を設置しようとするとき
三 本店その他の営業所を変更しようとするとき
四 証券業の外他の営業を営もうとするとき
前項の規定により届け出た事項は、政府がその届出を受理した日から十日後でなければ、これを実施してはならない。
政府は、第一項の規定により届け出た事項の中に適当でないと認めるものがあるときは、その実施の停止を命ずることができる。
第二十二條 証券業者たる株式会社でその資本金額が命令で定める額以上の者は、他の法律の制限にかかわらず、社債募集の委託を受け、又は社債募集の委託を受けた会社がないこととなつた場合の事務承継者となることができる。
第二十三條 証券業者が有價証券の賣出又は有價証券の募集若しくは賣出の取扱をしようとするときは、命令の定めるところにより、政府に届け出なければならない。
第二十一條第二項及び第三項の規定は、前項の届出に、これを準用する。
第二十四條 証券業者は、有價証券を賣買したときは、命令の定めるところにより、賣買に関する書類を作成し、これをその賣買の相手方に交付しなければならない。
第二十五條 証券業者は、命令の定めるところにより、営業に関する帳簿を備え置き、これに必要な事項を記載しなければならない。
第二十六條 証券業者の営業については、四月から九月まで及び十月から翌年三月までを、その営業年度とする。
第二十七條 証券業者は、命令の定めるところにより、営業年度ごとに、営業報告書を作成し、毎営業年度経過後二箇月以内に、これを政府に提出しなければならない。
政府は、必要があると認めるときは、命令の定めるところにより、証券業者に対し、前項の営業報告書を新聞紙に掲載すべき旨を命ずることができる。
第二十八條 政府は、必要があると認めるときは、証券業者に対し、その営業若しくは財產に関する報告を命じ又は当該官吏をして営業若しくは財產の状況若しくは帳簿書類その他の物件を檢査させることができる。
第二十九條 政府は、証券業者の営業又は財產の状況により、これと取引する者の利益を保護するため必要があると認めるときは、その営業を停止し又は制限し、財產の供託を命じその他必要な命令をすることができる。
第三十條 証券業者又はその取締役その他業務を執行する役員が左の各号の一に該当する行爲をしたときは、政府は、第十五條第一項の免許を取り消し、又は営業の停止若しくは取締役その他業務を執行する役員の解任を命ずることができる。
一 営業に関し、詐欺の行爲を以て他人から金銭若しくは有價証券の交付を受け又は営業に関し、他人に交付すべき金銭若しくは有價証券を不正に領得したとき
二 営業に関し、取引の相手方に対し、有價証券に関する重要な事実について虚僞の陳述をして、有價証券の賣買その他の取引をし又はその勧誘をしたとき
三 法令又は法令に基いてする行政官廳の処分に違反したとき
第三十一條 政府は、命令の定めるところにより、証券業者のなす有價証券の賣買その他の取引に関する爭について当事者たる証券業者又はその相手方の申立があつたときは、その爭の解決を図るため仲介をしなければならない。
証券業者が前項の仲介に基く協定を履行しないときは、政府は、当該証券業者に対し、六箇月以下の営業の停止を命ずることができる。
第四章 証券取引所
第一節 設立及び組織
第三十二條 証券業者は、命令の定めるところにより、政府の免許を受け、証券取引所を設立することができる。
第三十三條 証券取引所は、一の地区については一に限り、これを設立することができる。
前項の地区は、命令でこれを定める。
第三十四條 証券取引所は、社團法人とする。
証券取引所は、会員組織とする。
第三十五條 証券取引所は、有價証券市場の開設を、その目的とする。
証券取引所は、前項の目的を達成するために直接必要な業務の外、これを営むことができない。
第三十六條 証券取引所の定款には、左に掲げる事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 当該証券取引所に関する地区
四 事務所の所在地
五 基本金及び出資に関する事項
六 会員に関する事項
七 会員信認金に関する事項
八 経費の分担に関する事項
九 役員に関する事項
十 会議に関する事項
十一 業務の執行に関する事項
十二 会計に関する事項
十三 公告の方法
証券取引所は、その定款を変更しようとするときは、その旨を政府に届け出なければならない。
第二十一條第二項及び第三項の規定は、前項の届出について、これを準用する。
第三十七條 証券取引所の開設する有價証券市場(以下本章中有價証券市場という。)は、当該証券取引所に関する地区において一箇所に限る。
第三十八條 第三十二條の免許を受けたときは、その免許を申請した証券業者は、命令の定めるところにより、証券取引所の設立の登記をしなければならない。
証券取引所は、設立の登記をなすに因り成立する。
第三十九條 証券取引所は、命令の定めるところにより、登記をしなければならない。
前項の規定により、登記すべき事項は、登記をした後でなければ、これを以て第三者に対抗することができない。
第四十條 民法第五十條の規定は、証券取引所に、これを準用する。
第二節 会員
第四十一條 証券取引所の会員は、証券業者に限る。
第四十二條 純財產額が政府の指定する額に満たない者は、会員となることができない。
会員の純財產額が前項の規定により政府の指定する額を下ることとなつたときは、政府は、直ちにその者の有價証券市場における賣買取引を停止するとともに、その旨を証券取引所に通知しなければならない。
前項の場合において、会員の純財產額が六箇月以内に第一項の規定により政府の指定する額以上に回復しないときは、政府は、証券取引所に対し、当該会員の除名を命じなければならない。
前三項の純財產額の算定に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第四十三條 会員は、定款の定めるところにより、出資をしなければならない。
会員の責任は、定款の定める経費負担の外、その出資額を限度とする。
第四十四條 会員の持分は、定款の定めるところにより、証券取引所の承認を受け、当該会員が脱退しようとするときに限り、これを讓り渡すことができる。
第四十五條 会員は、定款の定めるところにより、証券取引所の承認を受けて脱退することができる。
第四十六條 前條に規定する場合の外、会員は、左の事由によつて脱退する。
一 会員たる資格の喪失
二 死亡又は解散
三 除名
第四十七條 会員が脱退したときは、証券取引所は、定款の定めるところにより、その持分を拂い戻さなければならない。
第四十八條 会員は、定款の定めるところにより、証券取引所に対し、会員信認金を預託しなければならない。
会員信認金の額は、政府の定める額を下つてはならない。
会員信認金は、命令の定めるところにより、証券取引所の指定する有價証券を以て、これに充てることができる。
会員に対して有價証券市場における賣買取引の委託をした者は、その委託に因り生じた債権に関し、当該会員の会員信認金について、他の債権者に先だち弁済を受ける権利がある。
第四十九條 証券取引所は、その秩序を保持するため、定款の定めるところにより、会員に対し一万円以下の過怠金を課し、その者の有價証券市場における賣買取引を停止し若しくは制限し、又はこれを除名することができる。
第五十條 会員が脱退した場合においては、証券取引所は、定款の定めるところにより、本人若しくはその一般承継人又は他の会員をして、その有價証券市場においてなした賣買取引を結了せしめなければならない。この場合においては、本人又はその一般承継人は、その賣買取引の結了の目的の範囲内において、なほこれを会員とみなす。
前項の規定により証券取引所が、他の会員をして、その賣買取引を結了せしめるときは、本人又はその一般承継人と他の会員との間に、委任契約が成立していたものとみなす。
第三節 管理
第五十一條 証券取引所に、左の役員を置く。
理事長 一人
理事 二人以上
監事 二人以上
役員は、定款の定めるところにより、会員が、これを選挙する。
第十七條各号の一に該当する者は、役員となることができない。
第五十二條 理事長は、証券取引所を代表し、その事務を総理する。
理事は、定款の定めるところにより、証券取引所を代表し、理事長を補佐して証券取引所の事務を掌理し、理事長事故あるときはその職務を代理し、理事長欠員のときはその職務を行う。
監事は、証券取引所の事務を監査する。
第五十三條 役員が、第十七條各号の一に該当することとなつたときは、その職を失う。
役員は、他の証券取引所の役員を兼ねることができない。
政府は、不正の手段により役員となつた者のあることを発見したときは、証券取引所に対し、当該役員の解任を命じなければならない。
第五十四條 政府は、理事又は監事の職務を行う者のない場合において、必要があると認めるときは、仮理事又は仮監事を選任することができる。
第五十五條 証券取引所は、左の方法による外、業務上の資金(会員信認金として預託を受けたものを含む。)を運用することができない。
一 國債又は地方債の買入
二 銀行への預け金又は郵便貯金
第五十六條 民法第四十四條、第五十一條、第五十四條、第五十七條、第六十條乃至第六十六條及び非訟事件手続法第三十五條第一項の規定は、証券取引所にこれを準用する。
第四節 有價証券市場における賣買取引
第五十七條 有價証券市場における賣買取引は、当該有價証券市場を開設する証券取引所の会員に限り、これをなすことができる。
第五十八條 証券取引所は、その開設する有價証券市場における賣買取引の種類及び期限を定めようとするときは、政府の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、また同樣とする。
第五十九條 証券取引所は、命令の定めるところにより、業務規程を作成しなければならない。
証券取引所は、前項の業務規程を作成しようとするときは、政府に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、また同樣とする。
第二十一條第二項及び第三項の規定は、前項の届出について、これを準用する。
第六十條 証券取引所は、取引物件として上場する有價証券の銘柄を定めようとするときは、命令の定めるところにより、賣買取引の種類ごとに、政府に届け出なければならない。その上場を廃止しようとするときも、また同樣とする。
第二十一條第二項及び第三項の規定は、前項の届出について、これを準用する。
第六十一條 会員が有價証券市場における賣買取引に基く債務の不履行に因り他の会員に対し損害を與えたときは、その損害を受けた会員は、その損害を與えた会員の会員信認金について、他の債権者に先だち弁済を受ける権利がある。
第四十八條第四項の規定による有價証券市場における賣買取引の委託者の優先権は、前項の優先権に対し、優先の効力を有する。
第六十二條 証券取引所は、命令の定めるところにより、その開設する有價証券市場における相場及び賣買取引高を公示しなければならない。
第六十三條 第五十條の規定は、会員の有價証券市場における賣買取引がこの法律の定めるところにより停止された場合に、これを準用する。
第五節 有價証券市場における賣買取引の受託
第六十四條 会員は、本店若しくは支店その他の営業所又は代理店以外の場所を、有價証券市場における賣買取引の受託の取扱をなす場所とすることができない。
本店以外の営業所又は代理店を有價証券市場における賣買取引の受託の取扱をなす場所としようとするときは、会員は、その所属する証券取引所の承認を受けなければならない。
証券取引所は、前項の承認をしたときは、遅滯なく、その旨を公告しなければならない。
会員は、その代理店がその会員のためなした受託の取扱につき委託者に対し與えた損害を賠償する責に任じなければならない。
第六十五條 何人も、有價証券市場における賣買取引について委託の媒介若しくは取次をし又は委託者の代理人となることを営業とすることができない。但し、証券業者が委託の媒介をなすことを営業とすることは、この限りでない。
第六十六條 会員は、委託を受けた有價証券市場における賣買取引について、有價証券市場において賣付、買付又は受渡をしないでこれをしたと同一又は類似の計算を以て、委託者に対し、その決済をすることができない。
会員が前項の規定に違反したときは、証券取引所は、当該会員に対し一万円以下の過怠金を課し、その者の有價証券市場における賣買取引を二箇月以上停止し又はこれを除名しなければならない。
第六十七條 会員は、有價証券市場における賣買取引の委託を受けるときは、命令の定めるところにより、委託者から委託証拠金を徴しなければならない。
前項の委託証拠金の額は、当該委託により賣買取引される有價証券の價額又は賣買取引委託金額の百分の三十以上で、政府の定めるところにより算定した額を下つてはならない。
前項の有價証券の價額の算定に関し、必要な事項は、命令でこれを定める。
第一項の規定による委託証拠金は、命令の定めるところにより、有價証券を以て、これに充てることができる。
第六十八條 会員は、有價証券市場における賣買取引の委託を受けるときは、委託者から証券取引所の定める委託手数料を徴しなければならない。
証券取引所は、前項の委託手数料について、政府の認可を受けなければならない。
第六十九條 会員は、委託を受けた有價証券市場における賣買取引が成立したときは、命令の定めるところにより、賣買報告書を作成し、これを委託者に交付しなければならない。
第六節 解散
第七十條 証券取引所は、左の事由に因り解散する。
一 定款に定めた事由の発生
二 総会の決議
三 会員が一人になつたこと
四 破產
五 設立免許の取消
第七十一條 残余財產は、定款又は総会の決議により別段の定をする場合の外、平等に、これを会員に分配しなければならない。
第七十二條 民法第六十九條、第七十條、第七十三條乃至第七十六條及び第七十八條乃至第八十三條、商法第百二十五條、第百二十六條、第百二十八條、第百二十九條、第百三十一條、第四百十九條及び第四百二十七條並びに非訟事件手続法第三十五條第二項、第三十六條、第三十七條ノ二、第百三十五條ノ二十五第二項第三項、第百三十六條第一項、第百三十七條及び第百三十八條の規定は、証券取引所の解散の場合に、これを準用する。但し、民法第七十條及び第七十四條中「理事」とあるのは、「理事長及び理事」と読み替えるものとする。
民法第四十四條、第五十四條、第五十七條、第六十條及び第六十一條の規定は、証券取引所の清算人に、これを準用する。
第七節 監督
第七十三條 政府は、必要があると認めるときは、証券取引所に対し、その業務若しくは財產に関する報告を命じ、又は当該官吏をして業務若しくは財產の状況又は帳簿書類その他の物件を檢査させることができる。
第七十四條 政府は、証券取引所の行爲が法令若しくは法令に基いてする行政官廳の処分に違反したときは、左の処分をすることができる。
一 証券取引所の設立免許の取消
二 証券取引所の業務の一部又は全部の停止
三 証券取引所の業務の一部の禁止
四 役員の解任
第七十五條 政府は、命令の定めるところにより、有價証券市場における賣買取引に関する爭について当事者たる会員又はその相手方の申立があつたときは、その爭の解決を図るため仲介をしなければならない。
会員が前項の仲介に基く協定を履行しないときは、政府は、当該会員に対し、六箇月以下の有價証券市場における賣買取引の停止を命ずることができる。
第七十六條 この法律に規定するものの外、有價証券市場における賣買取引に関し生ずる弊害を防止するため必要な事項は、命令でこれを定める。
第七十七條 証券取引所には、営業税を課さない。
第五章 証券取引委員会
第七十八條 有價証券取引の適正を図り投資者の利益を保護するため、政府に証券取引委員会(以下委員会という。)を置く。
委員会は、前項に定める目的を達成するため、左の事務を行う。
一 この法律施行に関する方針について審議すること
二 この法律に基く命令及び重要な処分について審査し、承認すること
三 この法律の施行に関する事項について調査し、必要がある場合は、関係者の意見を徴し又はその帳簿書類の提出を求めること
四 有價証券に関する調査を公表すること
五 この法律の施行のため必要な予算の作成に関與し、必要がある場合は、その結果を内閣に報告すること
第七十九條 委員会は、委員三人を以て、これを組織する。
委員は、学識経驗のある者の中から、内閣でこれを命ずる。
委員の任期は、三年とする。但し、この法律施行後最初に委員となる者の任期は、その一人は三年、一人は四年、一人は五年とし、前任者の任期満了前に補欠任命を受けた委員の任期は、前任者の残任期間とする。
第八十條 委員は、その任期中、その意に反して解任されない。
委員の服務に関しては、官吏服務規律を準用する。
第八十一條 委員会に委員長を置き、委員の中から、これを互選する。
第八十二條 第七十八條乃至前條に定めるものの外、委員会に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第六章 雜則
第八十三條 政府が第九條第一項(第十二條第二項において準用する場合を含む。)の規定により書類の訂正を命じようとするとき又は第十八條、第十九條第二項、第二十九條、第三十條、第三十一條第二項、第四十二條第二項第三項、第五十三條第三項、第七十四條若しくは第七十五條第二項の規定により命令その他の処分をしようとするときは、命令の定めるところにより、その処分の相手方を審問しなければならない。但し、その処分の相手方が正当な事由がなく審問に應じないときは、この限りでない。
第八十四條 株式会社又は株式合資会社は、命令の定めるところにより、その取締役(株式合資会社にあつては業務を執行する無限責任社員)、監査役及び当該会社の資本(株式合資会社にあつては出資総額と株金総額の合計額)の百分の十以上に相当する株式を有する株主が当該会社の株式を取得し又は讓渡したときは、政府に報告書を提出しなければならない。
政府は、必要があると認めるときは、株式会社又は株式合資会社に対し、政府の定める方法により、前項の株式の取得又は讓渡に関する公告をなすべきことを命ずることができる。
第八十五條 証券取引所以外の者は、有價証券市場を開設することができない。
何人も、前項の規定に違反して開設された有價証券市場において取引をしてはならない。
第七章 罰則
第八十六條 左の各号の一に該当する者は、これを二年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
一 有價証券の募集若しくは賣出のため又は有價証券市場における相場の変動を図る目的を以て、虚僞の風説を流布し、僞計を用い又は暴行若しくは脅迫した者
二 第三十二條の規定に違反し免許を受けないで証券取引所を設立した者
三 前條第一項の規定に違反し有價証券市場を開設した者
第八十七條 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第六條第一項の規定による届出がないのにその株式又は社債を募集、募集の委託若しくは合併に因る株式の割当をした者又は株式の引受をした発起人
二 第六條又は第九條の規定による届出書類に、虚僞の記載をし又は重要な事項の記載を省略してこれを政府に提出した者
三 第七條の規定に違反した者
四 第八條の規定に違反し株式若しくは社債の募集若しくは募集の委託又は株式の割当若しくは引受をした者
五 第十五條第一項の規定に違反し免許を受けないで証券業を営んだ者
六 第二十一條第一項、第二十三條第一項、第三十六條第二項、第五十九條第二項又は第六十條第一項の規定により届け出るべき事項を届け出ないで実施した者
七 第二十一條第三項(第二十三條第二項、第三十六條第三項、第五十九條第三項又は第六十條第二項の規定により準用する場合を含む。)の規定による実施を停止する命令に違反した者
八 第十八條第一項又は第四十二條第二項の規定による処分に違反した者
九 証券取引所の開設する有價証券市場における相場を僞つて公示した者
十 公示若しくは頒布の目的を以て証券取引所の開設する有價証券市場における相場を僞つて記載した文書を作成し又はこれを頒布した者
十一 第六十四條第一項の規定に違反した者
十二 第六十五條の規定に違反し有價証券市場における賣買取引の委託の媒介若しくは取次をし又は委託者の代理人となることを営業とした者
十三 第八十五條第二項の規定に違反し取引をした者
第八十八條 証券取引所の開設する有價証券市場によらないで、有價証券市場における相場により差金の授受を目的とする行爲をした者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。但し、刑法第百八十六條の規定の適用を妨げない。
第八十九條 証券取引所の役員(仮理事及び仮監事を含む。)又は使用人が、その職務に関して、賄賂を收受し又はその要求若しくは約束をしたときは、これを三年以下の懲役に処する。
前項の場合において、收受した賄賂は、これを沒收する。その全部又は一部を沒收することができないときは、その價額を追徴する。
第一項の賄賂を供與し又はその申込若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
第九十條 左の各号の一に該当する者は、これを一万円以下の罰金に処する。
一 第十二條第一項、第二十七條第一項又は第八十四條第一項の規定による報告書を提出せず又はこれに記載すべき事項を記載せず若しくは虚僞の記載をした者
二 第二十八條又は第七十三條の規定により報告すべき事項を報告せず又は虚僞の報告をした者
三 第二十七條第二項又は第八十四條第二項の規定による政府の命令に違反した者
四 第五十八條又は第六十八條第二項の規定により認可を受けるべき事項を認可を受けないでした者
五 第二十一條第二項(第二十三條第二項、第三十六條第三項、第五十九條第三項又は第六十條第二項の規定により準用する場合を含む。)の規定に違反した者
六 第二十五條の規定による帳簿を備え置かず又はこれに虚僞の記載をした者
七 第七十六條の規定に基く命令に違反した者
八 第二十八條又は第七十三條の規定による檢査を拒み、妨げ又は忌避した者
第九十一條 取締役、株式合資会社の業務を執行する無限責任社員、職務代行者若しくは支配人、証券業者(証券業者が会社の場合においては、取締役、業務を執行する社員、職務代行者又は支配人)又は証券取引所の理事長、理事(仮理事を含む。)若しくは清算人は、左の場合においては、五千円以下の過料に処する。
一 この法律又はこの法律に基いて発する命令に定める登記をすることを怠つたとき
二 第十四條の規定に違反し届出を怠つたとき
三 第五十五條の規定に違反したとき
四 第五十六條において準用する民法第五十一條の規定による財產目録若しくは社員名簿を備え置かなかつたとき又はこれに不正の記載をしたとき
五 第六十四條第三項、第七十二條において準用する民法第七十九條第一項第二項又は同法第八十一條第一項の規定に違反し公告をすることを怠り又は不正の公告をしたとき
六 第七十二條において準用する民法第七十條第二項又は同法第八十一條第一項の規定に違反し破產宣告の請求をすることを怠つたとき
七 第七十二條において準用する商法第百三十一條の規定に違反し証券取引所の財產を分配したとき
第九十二條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財產に関し、第八十六條第二号第三号、第八十七條、第九十條第一号乃至第七号の違反行爲をしたときは、その行爲者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金刑を科する。
附 則
第一條 この法律施行の期日は、各規定について、勅令でこれを定める。
第二條 有價証券業取締法、有價証券引受業法及び有價証券割賦販賣業法は、これを廃止する。
第三條 取引所法の一部を次のように改正する。
第一條中「免許ヲ受ケテ」の下に「本法ニ依リ」を、「物件」の下に「(有價証券ヲ除ク以下第二十八條ニ規定スル場合ヲ除クノ外同シ)」を加える。
第二條、第十一條ノ四第二項、第十六條ノ二第二項、第十六條ノ三、第二十二條第一項及び第二十七條乃至第二十九條中「農商務大臣」を「主務大臣」に改める。
第四條ノ二を削る。
第十一條第一項を削り、同條第四項を次のように改める。
合名会社、合資会社又ハ株式合資会社ニ在リテハ其ノ無限責任社員中、株式会社又ハ有限会社に在リテハ其ノ取締役中前二項ニ該当スル者アルトキハ会員又ハ取引員トナルコトヲ得ス
第十一條ノ二第一項中「第二項又ハ第四項」を「又ハ第三項」に改め、同條第二項中「農商務大臣」を「主務大臣」に、「、第二項若ハ第四項」を「若ハ第三項」に改め、同條第三項中「第一項、第三項又ハ第四項」を「第二項又ハ第三項」に改め、同條第四項中「農商務大臣」を「主務大臣」に、「第一項、第三項若ハ第四項」を「第二項若ハ第三項」に改める。
第十八條中「有價証券ニ在リテハ三箇月、」を削る。
第四條 この法律施行前になした行爲に対する罰則の適用については、旧有價証券業取締法、旧有價証券引受業法及び旧有價証券割賦販賣業法は、この法律施行後も、なおその効力を有する。
第五條 旧有價証券業取締法、旧有價証券引受業法、旧有價証券割賦販賣業法又は日本証券取引所法の規定により免許を取り消された者は、第十七條の規定の適用については、これをこの法律の規定により証券業者の免許を取り消されたものとみなす。
第六條 この法律施行の際現に旧有價証券業取締法により有價証券業を営む者、旧有價証券引受業法により有價証券引受業を営む者若しくは旧有價証券割賦販賣業法により有價証券割賦販賣業を営む者又は銀行若しくは信託会社でこれらの営業を営む者は、第十五條の規定施行の日から六箇月を限り、同條第一項の免許を受けたものとみなす。
前項に掲げる者が同項の期間内に第十五條第一項の免許を申請した場合においては、その申請に対する免許又は不免許の処分の日までも、また、前項と同様とする。
第十五條第二項、第十六條及び第十八條の規定は、前二項の規定により第十五條第一項の免許を受けた者とみなされた者については、これを適用しない。
第一項又は第二項の規定により第十五條第一項の免許を受けた者とみなされた者の営業保証金については、第二十條第一項の規定にかかわらず、なお從前の例による。
第七條 この法律又はこの法律に基いて発する命令に規定した事項について、政府のなした違法処分に因り権利を害されたとする者は、当分の間、行政裁判所に出訴することができる。
朕は、帝国議会の協賛を経た証券取引法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年三月二十七日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
大蔵大臣 石橋湛山
法律第二十二号
証券取引法目次
第一章
総則
第二章
株式又は社債の発行に関する届出
第三章
証券業者
第四章
証券取引所
第一節
設立及び組織
第二節
会員
第三節
管理
第四節
有価証券市場における売買取引
第五節
有価証券市場における売買取引の受託
第六節
解散
第七節
監督
第五章
証券取引委員会
第六章
雑則
第七章
罰則
証券取引法
第一章 総則
第一条 この法律は、国民経済の適切な運営及び投資者の保護に資するため、有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ、且つ、有価証券の流通を円滑ならしめることを目的とする。
第二条 この法律において有価証券とは、左に掲げるものをいう。
一 国債証券
二 地方債証券
三 特別の法律により設立された法人の発行する債券
四 社債券
五 特別の法律により設立された法人の発行する出資証券
六 株券
七 外国又は外国法人の発行する証券で前各号の証券の性質を有するもの
第三条 この法律において証券業とは、有価証券の売買、売買の媒介、引受又は募集若しくは売出の取扱をなす営業をいう。
第四条 この法律において目論見書とは、株式又は社債の発行に際し使用する説明書その他の文書で、事業に関する計画又は収支見込を記載したものをいう。
第五条 この法律において有価証券市場とは、一定の秩序のもとに有価証券の売買取引が行われる市場をいう。
第二章 株式又は社債の発行に関する届出
第六条 株式又は社債(特別の法律により設立された法人の発行するものを除く。第二十二条に規定する場合を除き以下同じ。)を発行しようとするときは、会社成立前の場合においてはその発起人(合併に因り会社を設立する場合においては設立委員)、会社成立後の場合においてはその取締役(株式合資会社においては業務を執行する無限責任社員)及び職務代行者(株式会社又は株式合資会社の商法第二百五十八条第二項、第二百七十条第一項又は第二百七十二条第一項の職務代行者をいう。以下同じ。)の全員が、命令の定めるところにより、当該株式又は社債に関し、左に掲げる事項を政府に届け出なければならない。但し、当該発行に係る株式又は社債の額面総額が二十万円未満であつて、政府の指定する場合は、この限りでない。
一 会社の目的、商号及び資本又は出資に関する事項
二 会社の事業
三 会社の最近三事業年度の業務成績
四 会社の財産に関する事項
五 最近三事業年度末における会社の株式価格
六 当該株式又は社債の発行に因り取得する資金の使用計画
七 当該株式又は社債の種類、銘柄、数量及び金額
八 当該株式又は社債の募集又は募集の委託の条件
九 目論見書に記載する事項
十 その他命令で定める事項
外国会社がこの法律の施行地内において株式又は社債を募集しようとする場合は、商法第四百七十九条第二項に規定する代表者が、前項の届出をしなければならない。
第一項の規定による届出書の中に、訂正を必要とするものがあるときは、前二項に掲げる者は、訂正届出書を政府に提出しなければならない。
第七条 前条第一項第九号の記載事項と異なる事項を記載した目論見書は、株式又は社債の発行に際し、これを使用することができない。
第八条 第六条の規定により届出を必要とする株式又は社債については、左に掲げる期間の経過後でなければ、株式若しくは社債の募集若しくは募集の委託をし、合併に因る株式の割当をし又は発起人において株式の引受をしてはならない。
一 第六条第一項の規定による届出書の提出があつた日から十五日
二 前号の期間内に第六条第三項の規定による訂正届出書の提出があつたときは、その提出があつた日から十五日
三 第九条の規定による照会又は処分があつたときは、政府が別に指定する期間
第九条 政府は、第六条の規定により提出があつた届出書類に形式上の不備があると認めるときはその補完を命じ、又はその内容の中に重要な事項について真実に反するものがあり若しくは重要な事項の記載の省略があると認めるときは、届出者に照会し、必要があるときは、訂正届出書の提出を命ずる。
前項の処分は、前条の規定により株式若しくは社債の募集若しくは募集の委託又は株式の割当若しくは引受をすることができることとなつた日以後は、これをなすことができない。
第十条 第六条第一項若しくは第三項又は前条第一項の規定により提出があつた届出書類に、真実に反する記載があり又は重要な事項の記載の省略があつたときは、当該届出書類の届出者は、その記載を信じて株式の申込をし若しくは社債の募集に応じた者又は当該株式若しくは社債を取得した者に対し、連帯して損害賠償の責に任ずる。但し、届出者が故意及び過失がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
前項の責任は、第八条の規定により株式若しくは社債の募集若しくは募集の委託又は株式の割当若しくは引受ができることとなつた日から三年を経過したときは、時効によつて消滅する。
第十一条 前条の規定は、第七条の規定に違反して第六条第一項第九号の記載事項と異なる事項を記載した目論見書を使用した者に、これを準用する。
第十二条 株式会社又は株式合資会社は、命令の定めるところにより、事業年度ごとに、業務又は財産の状況に関する報告書を作成し、毎事業年度経過後二箇月以内に、これを政府に提出しなければならない。但し、その発行した株式又は社債の額面総額が二十万円未満であつて、政府が指定する場合は、この限りでない。
第九条第一項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第十三条 第六条又は前条の書類は、命令の定めるところにより、政府にこれを備え置き、その全部又は一部を公衆の縦覧に供しなければならない。
何人も、命令の定めるところにより、手数料を納め、前項の書類の謄本又は抄本の交付を請求することができる。
第十四条 第十二条の規定により書類を提出しなければならない者が解散したときは、その取締役(株式合資会社にあつては業務を執行する無限責任社員)は、遅滞なく、その旨を政府に届け出なければならない。
第三章 証券業者
第十五条 証券業を営もうとする者は、命令の定めるところにより、政府の免許を受けなければならない。
前項の免許を受けた者(以下証券業者という。)は、命令の定めるところにより、免許料を納めなければならない。
第十六条 純財産額が政府の指定する額に満たない者は、前条第一項の免許を受けることができない。
前項の純財産額の算定に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十七条 左の各号の一に該当する者は、第十五条第一項の免許を受けることができない。
一 破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終つた後、又は執行を受けることがないこととなつた後、五年を経過するまでの者
三 第十八条第二項、第十九条第二項又は第三十条の規定により免許を取り消され、取消の日から五年を経過するまでの者
四 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は禁治産者でその法定代理人が前各号の一に該当するもの
五 法人でその取締役その他業務を執行する役員の中に第一号乃至第三号の一に該当する者のあるもの
第十八条 証券業者の純財産額が第十六条第一項の規定により政府の指定する額を下ることとなつたときは、政府は、直ちにその営業を停止しなければならない。
前項の場合において、証券業者の純財産額が六箇月以内に第十六条第一項の規定により政府の指定する額以上に回復しないときは、政府は、第十五条第一項の規定による免許を取り消さなければならない。
第十九条 証券業者が第十七条第一号、第二号、第四号又は第五号に該当することとなつたときは、免許は、その効力を失う。
政府は、不正の手段により第十五条第一項の免許を受けた者のあることを発見したときは、その免許を取り消すことができる。
第二十条 証券業者は、命令の定めるところにより、営業保証金を供託しなければならない。
前項の営業保証金は、命令の定めるところにより、国債証券を以て、これに充てることができる。
証券業者とその営業に関し取引をした者は、その取引に因り生じた債権に関し、営業保証金について、他の債権者に先だち弁済を受ける権利がある。
第二十一条 証券業者は、左の場合においては、その旨を政府に届け出なければならない。
一 商号を変更しようとするとき
二 支店その他の営業所又は代理店を設置しようとするとき
三 本店その他の営業所を変更しようとするとき
四 証券業の外他の営業を営もうとするとき
前項の規定により届け出た事項は、政府がその届出を受理した日から十日後でなければ、これを実施してはならない。
政府は、第一項の規定により届け出た事項の中に適当でないと認めるものがあるときは、その実施の停止を命ずることができる。
第二十二条 証券業者たる株式会社でその資本金額が命令で定める額以上の者は、他の法律の制限にかかわらず、社債募集の委託を受け、又は社債募集の委託を受けた会社がないこととなつた場合の事務承継者となることができる。
第二十三条 証券業者が有価証券の売出又は有価証券の募集若しくは売出の取扱をしようとするときは、命令の定めるところにより、政府に届け出なければならない。
第二十一条第二項及び第三項の規定は、前項の届出に、これを準用する。
第二十四条 証券業者は、有価証券を売買したときは、命令の定めるところにより、売買に関する書類を作成し、これをその売買の相手方に交付しなければならない。
第二十五条 証券業者は、命令の定めるところにより、営業に関する帳簿を備え置き、これに必要な事項を記載しなければならない。
第二十六条 証券業者の営業については、四月から九月まで及び十月から翌年三月までを、その営業年度とする。
第二十七条 証券業者は、命令の定めるところにより、営業年度ごとに、営業報告書を作成し、毎営業年度経過後二箇月以内に、これを政府に提出しなければならない。
政府は、必要があると認めるときは、命令の定めるところにより、証券業者に対し、前項の営業報告書を新聞紙に掲載すべき旨を命ずることができる。
第二十八条 政府は、必要があると認めるときは、証券業者に対し、その営業若しくは財産に関する報告を命じ又は当該官吏をして営業若しくは財産の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
第二十九条 政府は、証券業者の営業又は財産の状況により、これと取引する者の利益を保護するため必要があると認めるときは、その営業を停止し又は制限し、財産の供託を命じその他必要な命令をすることができる。
第三十条 証券業者又はその取締役その他業務を執行する役員が左の各号の一に該当する行為をしたときは、政府は、第十五条第一項の免許を取り消し、又は営業の停止若しくは取締役その他業務を執行する役員の解任を命ずることができる。
一 営業に関し、詐欺の行為を以て他人から金銭若しくは有価証券の交付を受け又は営業に関し、他人に交付すべき金銭若しくは有価証券を不正に領得したとき
二 営業に関し、取引の相手方に対し、有価証券に関する重要な事実について虚偽の陳述をして、有価証券の売買その他の取引をし又はその勧誘をしたとき
三 法令又は法令に基いてする行政官庁の処分に違反したとき
第三十一条 政府は、命令の定めるところにより、証券業者のなす有価証券の売買その他の取引に関する争について当事者たる証券業者又はその相手方の申立があつたときは、その争の解決を図るため仲介をしなければならない。
証券業者が前項の仲介に基く協定を履行しないときは、政府は、当該証券業者に対し、六箇月以下の営業の停止を命ずることができる。
第四章 証券取引所
第一節 設立及び組織
第三十二条 証券業者は、命令の定めるところにより、政府の免許を受け、証券取引所を設立することができる。
第三十三条 証券取引所は、一の地区については一に限り、これを設立することができる。
前項の地区は、命令でこれを定める。
第三十四条 証券取引所は、社団法人とする。
証券取引所は、会員組織とする。
第三十五条 証券取引所は、有価証券市場の開設を、その目的とする。
証券取引所は、前項の目的を達成するために直接必要な業務の外、これを営むことができない。
第三十六条 証券取引所の定款には、左に掲げる事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 当該証券取引所に関する地区
四 事務所の所在地
五 基本金及び出資に関する事項
六 会員に関する事項
七 会員信認金に関する事項
八 経費の分担に関する事項
九 役員に関する事項
十 会議に関する事項
十一 業務の執行に関する事項
十二 会計に関する事項
十三 公告の方法
証券取引所は、その定款を変更しようとするときは、その旨を政府に届け出なければならない。
第二十一条第二項及び第三項の規定は、前項の届出について、これを準用する。
第三十七条 証券取引所の開設する有価証券市場(以下本章中有価証券市場という。)は、当該証券取引所に関する地区において一箇所に限る。
第三十八条 第三十二条の免許を受けたときは、その免許を申請した証券業者は、命令の定めるところにより、証券取引所の設立の登記をしなければならない。
証券取引所は、設立の登記をなすに因り成立する。
第三十九条 証券取引所は、命令の定めるところにより、登記をしなければならない。
前項の規定により、登記すべき事項は、登記をした後でなければ、これを以て第三者に対抗することができない。
第四十条 民法第五十条の規定は、証券取引所に、これを準用する。
第二節 会員
第四十一条 証券取引所の会員は、証券業者に限る。
第四十二条 純財産額が政府の指定する額に満たない者は、会員となることができない。
会員の純財産額が前項の規定により政府の指定する額を下ることとなつたときは、政府は、直ちにその者の有価証券市場における売買取引を停止するとともに、その旨を証券取引所に通知しなければならない。
前項の場合において、会員の純財産額が六箇月以内に第一項の規定により政府の指定する額以上に回復しないときは、政府は、証券取引所に対し、当該会員の除名を命じなければならない。
前三項の純財産額の算定に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第四十三条 会員は、定款の定めるところにより、出資をしなければならない。
会員の責任は、定款の定める経費負担の外、その出資額を限度とする。
第四十四条 会員の持分は、定款の定めるところにより、証券取引所の承認を受け、当該会員が脱退しようとするときに限り、これを譲り渡すことができる。
第四十五条 会員は、定款の定めるところにより、証券取引所の承認を受けて脱退することができる。
第四十六条 前条に規定する場合の外、会員は、左の事由によつて脱退する。
一 会員たる資格の喪失
二 死亡又は解散
三 除名
第四十七条 会員が脱退したときは、証券取引所は、定款の定めるところにより、その持分を払い戻さなければならない。
第四十八条 会員は、定款の定めるところにより、証券取引所に対し、会員信認金を預託しなければならない。
会員信認金の額は、政府の定める額を下つてはならない。
会員信認金は、命令の定めるところにより、証券取引所の指定する有価証券を以て、これに充てることができる。
会員に対して有価証券市場における売買取引の委託をした者は、その委託に因り生じた債権に関し、当該会員の会員信認金について、他の債権者に先だち弁済を受ける権利がある。
第四十九条 証券取引所は、その秩序を保持するため、定款の定めるところにより、会員に対し一万円以下の過怠金を課し、その者の有価証券市場における売買取引を停止し若しくは制限し、又はこれを除名することができる。
第五十条 会員が脱退した場合においては、証券取引所は、定款の定めるところにより、本人若しくはその一般承継人又は他の会員をして、その有価証券市場においてなした売買取引を結了せしめなければならない。この場合においては、本人又はその一般承継人は、その売買取引の結了の目的の範囲内において、なほこれを会員とみなす。
前項の規定により証券取引所が、他の会員をして、その売買取引を結了せしめるときは、本人又はその一般承継人と他の会員との間に、委任契約が成立していたものとみなす。
第三節 管理
第五十一条 証券取引所に、左の役員を置く。
理事長 一人
理事 二人以上
監事 二人以上
役員は、定款の定めるところにより、会員が、これを選挙する。
第十七条各号の一に該当する者は、役員となることができない。
第五十二条 理事長は、証券取引所を代表し、その事務を総理する。
理事は、定款の定めるところにより、証券取引所を代表し、理事長を補佐して証券取引所の事務を掌理し、理事長事故あるときはその職務を代理し、理事長欠員のときはその職務を行う。
監事は、証券取引所の事務を監査する。
第五十三条 役員が、第十七条各号の一に該当することとなつたときは、その職を失う。
役員は、他の証券取引所の役員を兼ねることができない。
政府は、不正の手段により役員となつた者のあることを発見したときは、証券取引所に対し、当該役員の解任を命じなければならない。
第五十四条 政府は、理事又は監事の職務を行う者のない場合において、必要があると認めるときは、仮理事又は仮監事を選任することができる。
第五十五条 証券取引所は、左の方法による外、業務上の資金(会員信認金として預託を受けたものを含む。)を運用することができない。
一 国債又は地方債の買入
二 銀行への預け金又は郵便貯金
第五十六条 民法第四十四条、第五十一条、第五十四条、第五十七条、第六十条乃至第六十六条及び非訟事件手続法第三十五条第一項の規定は、証券取引所にこれを準用する。
第四節 有価証券市場における売買取引
第五十七条 有価証券市場における売買取引は、当該有価証券市場を開設する証券取引所の会員に限り、これをなすことができる。
第五十八条 証券取引所は、その開設する有価証券市場における売買取引の種類及び期限を定めようとするときは、政府の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、また同様とする。
第五十九条 証券取引所は、命令の定めるところにより、業務規程を作成しなければならない。
証券取引所は、前項の業務規程を作成しようとするときは、政府に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、また同様とする。
第二十一条第二項及び第三項の規定は、前項の届出について、これを準用する。
第六十条 証券取引所は、取引物件として上場する有価証券の銘柄を定めようとするときは、命令の定めるところにより、売買取引の種類ごとに、政府に届け出なければならない。その上場を廃止しようとするときも、また同様とする。
第二十一条第二項及び第三項の規定は、前項の届出について、これを準用する。
第六十一条 会員が有価証券市場における売買取引に基く債務の不履行に因り他の会員に対し損害を与えたときは、その損害を受けた会員は、その損害を与えた会員の会員信認金について、他の債権者に先だち弁済を受ける権利がある。
第四十八条第四項の規定による有価証券市場における売買取引の委託者の優先権は、前項の優先権に対し、優先の効力を有する。
第六十二条 証券取引所は、命令の定めるところにより、その開設する有価証券市場における相場及び売買取引高を公示しなければならない。
第六十三条 第五十条の規定は、会員の有価証券市場における売買取引がこの法律の定めるところにより停止された場合に、これを準用する。
第五節 有価証券市場における売買取引の受託
第六十四条 会員は、本店若しくは支店その他の営業所又は代理店以外の場所を、有価証券市場における売買取引の受託の取扱をなす場所とすることができない。
本店以外の営業所又は代理店を有価証券市場における売買取引の受託の取扱をなす場所としようとするときは、会員は、その所属する証券取引所の承認を受けなければならない。
証券取引所は、前項の承認をしたときは、遅滞なく、その旨を公告しなければならない。
会員は、その代理店がその会員のためなした受託の取扱につき委託者に対し与えた損害を賠償する責に任じなければならない。
第六十五条 何人も、有価証券市場における売買取引について委託の媒介若しくは取次をし又は委託者の代理人となることを営業とすることができない。但し、証券業者が委託の媒介をなすことを営業とすることは、この限りでない。
第六十六条 会員は、委託を受けた有価証券市場における売買取引について、有価証券市場において売付、買付又は受渡をしないでこれをしたと同一又は類似の計算を以て、委託者に対し、その決済をすることができない。
会員が前項の規定に違反したときは、証券取引所は、当該会員に対し一万円以下の過怠金を課し、その者の有価証券市場における売買取引を二箇月以上停止し又はこれを除名しなければならない。
第六十七条 会員は、有価証券市場における売買取引の委託を受けるときは、命令の定めるところにより、委託者から委託証拠金を徴しなければならない。
前項の委託証拠金の額は、当該委託により売買取引される有価証券の価額又は売買取引委託金額の百分の三十以上で、政府の定めるところにより算定した額を下つてはならない。
前項の有価証券の価額の算定に関し、必要な事項は、命令でこれを定める。
第一項の規定による委託証拠金は、命令の定めるところにより、有価証券を以て、これに充てることができる。
第六十八条 会員は、有価証券市場における売買取引の委託を受けるときは、委託者から証券取引所の定める委託手数料を徴しなければならない。
証券取引所は、前項の委託手数料について、政府の認可を受けなければならない。
第六十九条 会員は、委託を受けた有価証券市場における売買取引が成立したときは、命令の定めるところにより、売買報告書を作成し、これを委託者に交付しなければならない。
第六節 解散
第七十条 証券取引所は、左の事由に因り解散する。
一 定款に定めた事由の発生
二 総会の決議
三 会員が一人になつたこと
四 破産
五 設立免許の取消
第七十一条 残余財産は、定款又は総会の決議により別段の定をする場合の外、平等に、これを会員に分配しなければならない。
第七十二条 民法第六十九条、第七十条、第七十三条乃至第七十六条及び第七十八条乃至第八十三条、商法第百二十五条、第百二十六条、第百二十八条、第百二十九条、第百三十一条、第四百十九条及び第四百二十七条並びに非訟事件手続法第三十五条第二項、第三十六条、第三十七条ノ二、第百三十五条ノ二十五第二項第三項、第百三十六条第一項、第百三十七条及び第百三十八条の規定は、証券取引所の解散の場合に、これを準用する。但し、民法第七十条及び第七十四条中「理事」とあるのは、「理事長及び理事」と読み替えるものとする。
民法第四十四条、第五十四条、第五十七条、第六十条及び第六十一条の規定は、証券取引所の清算人に、これを準用する。
第七節 監督
第七十三条 政府は、必要があると認めるときは、証券取引所に対し、その業務若しくは財産に関する報告を命じ、又は当該官吏をして業務若しくは財産の状況又は帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
第七十四条 政府は、証券取引所の行為が法令若しくは法令に基いてする行政官庁の処分に違反したときは、左の処分をすることができる。
一 証券取引所の設立免許の取消
二 証券取引所の業務の一部又は全部の停止
三 証券取引所の業務の一部の禁止
四 役員の解任
第七十五条 政府は、命令の定めるところにより、有価証券市場における売買取引に関する争について当事者たる会員又はその相手方の申立があつたときは、その争の解決を図るため仲介をしなければならない。
会員が前項の仲介に基く協定を履行しないときは、政府は、当該会員に対し、六箇月以下の有価証券市場における売買取引の停止を命ずることができる。
第七十六条 この法律に規定するものの外、有価証券市場における売買取引に関し生ずる弊害を防止するため必要な事項は、命令でこれを定める。
第七十七条 証券取引所には、営業税を課さない。
第五章 証券取引委員会
第七十八条 有価証券取引の適正を図り投資者の利益を保護するため、政府に証券取引委員会(以下委員会という。)を置く。
委員会は、前項に定める目的を達成するため、左の事務を行う。
一 この法律施行に関する方針について審議すること
二 この法律に基く命令及び重要な処分について審査し、承認すること
三 この法律の施行に関する事項について調査し、必要がある場合は、関係者の意見を徴し又はその帳簿書類の提出を求めること
四 有価証券に関する調査を公表すること
五 この法律の施行のため必要な予算の作成に関与し、必要がある場合は、その結果を内閣に報告すること
第七十九条 委員会は、委員三人を以て、これを組織する。
委員は、学識経験のある者の中から、内閣でこれを命ずる。
委員の任期は、三年とする。但し、この法律施行後最初に委員となる者の任期は、その一人は三年、一人は四年、一人は五年とし、前任者の任期満了前に補欠任命を受けた委員の任期は、前任者の残任期間とする。
第八十条 委員は、その任期中、その意に反して解任されない。
委員の服務に関しては、官吏服務規律を準用する。
第八十一条 委員会に委員長を置き、委員の中から、これを互選する。
第八十二条 第七十八条乃至前条に定めるものの外、委員会に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第六章 雑則
第八十三条 政府が第九条第一項(第十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定により書類の訂正を命じようとするとき又は第十八条、第十九条第二項、第二十九条、第三十条、第三十一条第二項、第四十二条第二項第三項、第五十三条第三項、第七十四条若しくは第七十五条第二項の規定により命令その他の処分をしようとするときは、命令の定めるところにより、その処分の相手方を審問しなければならない。但し、その処分の相手方が正当な事由がなく審問に応じないときは、この限りでない。
第八十四条 株式会社又は株式合資会社は、命令の定めるところにより、その取締役(株式合資会社にあつては業務を執行する無限責任社員)、監査役及び当該会社の資本(株式合資会社にあつては出資総額と株金総額の合計額)の百分の十以上に相当する株式を有する株主が当該会社の株式を取得し又は譲渡したときは、政府に報告書を提出しなければならない。
政府は、必要があると認めるときは、株式会社又は株式合資会社に対し、政府の定める方法により、前項の株式の取得又は譲渡に関する公告をなすべきことを命ずることができる。
第八十五条 証券取引所以外の者は、有価証券市場を開設することができない。
何人も、前項の規定に違反して開設された有価証券市場において取引をしてはならない。
第七章 罰則
第八十六条 左の各号の一に該当する者は、これを二年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
一 有価証券の募集若しくは売出のため又は有価証券市場における相場の変動を図る目的を以て、虚偽の風説を流布し、偽計を用い又は暴行若しくは脅迫した者
二 第三十二条の規定に違反し免許を受けないで証券取引所を設立した者
三 前条第一項の規定に違反し有価証券市場を開設した者
第八十七条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第六条第一項の規定による届出がないのにその株式又は社債を募集、募集の委託若しくは合併に因る株式の割当をした者又は株式の引受をした発起人
二 第六条又は第九条の規定による届出書類に、虚偽の記載をし又は重要な事項の記載を省略してこれを政府に提出した者
三 第七条の規定に違反した者
四 第八条の規定に違反し株式若しくは社債の募集若しくは募集の委託又は株式の割当若しくは引受をした者
五 第十五条第一項の規定に違反し免許を受けないで証券業を営んだ者
六 第二十一条第一項、第二十三条第一項、第三十六条第二項、第五十九条第二項又は第六十条第一項の規定により届け出るべき事項を届け出ないで実施した者
七 第二十一条第三項(第二十三条第二項、第三十六条第三項、第五十九条第三項又は第六十条第二項の規定により準用する場合を含む。)の規定による実施を停止する命令に違反した者
八 第十八条第一項又は第四十二条第二項の規定による処分に違反した者
九 証券取引所の開設する有価証券市場における相場を偽つて公示した者
十 公示若しくは頒布の目的を以て証券取引所の開設する有価証券市場における相場を偽つて記載した文書を作成し又はこれを頒布した者
十一 第六十四条第一項の規定に違反した者
十二 第六十五条の規定に違反し有価証券市場における売買取引の委託の媒介若しくは取次をし又は委託者の代理人となることを営業とした者
十三 第八十五条第二項の規定に違反し取引をした者
第八十八条 証券取引所の開設する有価証券市場によらないで、有価証券市場における相場により差金の授受を目的とする行為をした者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。但し、刑法第百八十六条の規定の適用を妨げない。
第八十九条 証券取引所の役員(仮理事及び仮監事を含む。)又は使用人が、その職務に関して、賄賂を収受し又はその要求若しくは約束をしたときは、これを三年以下の懲役に処する。
前項の場合において、収受した賄賂は、これを没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第一項の賄賂を供与し又はその申込若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。
第九十条 左の各号の一に該当する者は、これを一万円以下の罰金に処する。
一 第十二条第一項、第二十七条第一項又は第八十四条第一項の規定による報告書を提出せず又はこれに記載すべき事項を記載せず若しくは虚偽の記載をした者
二 第二十八条又は第七十三条の規定により報告すべき事項を報告せず又は虚偽の報告をした者
三 第二十七条第二項又は第八十四条第二項の規定による政府の命令に違反した者
四 第五十八条又は第六十八条第二項の規定により認可を受けるべき事項を認可を受けないでした者
五 第二十一条第二項(第二十三条第二項、第三十六条第三項、第五十九条第三項又は第六十条第二項の規定により準用する場合を含む。)の規定に違反した者
六 第二十五条の規定による帳簿を備え置かず又はこれに虚偽の記載をした者
七 第七十六条の規定に基く命令に違反した者
八 第二十八条又は第七十三条の規定による検査を拒み、妨げ又は忌避した者
第九十一条 取締役、株式合資会社の業務を執行する無限責任社員、職務代行者若しくは支配人、証券業者(証券業者が会社の場合においては、取締役、業務を執行する社員、職務代行者又は支配人)又は証券取引所の理事長、理事(仮理事を含む。)若しくは清算人は、左の場合においては、五千円以下の過料に処する。
一 この法律又はこの法律に基いて発する命令に定める登記をすることを怠つたとき
二 第十四条の規定に違反し届出を怠つたとき
三 第五十五条の規定に違反したとき
四 第五十六条において準用する民法第五十一条の規定による財産目録若しくは社員名簿を備え置かなかつたとき又はこれに不正の記載をしたとき
五 第六十四条第三項、第七十二条において準用する民法第七十九条第一項第二項又は同法第八十一条第一項の規定に違反し公告をすることを怠り又は不正の公告をしたとき
六 第七十二条において準用する民法第七十条第二項又は同法第八十一条第一項の規定に違反し破産宣告の請求をすることを怠つたとき
七 第七十二条において準用する商法第百三十一条の規定に違反し証券取引所の財産を分配したとき
第九十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、第八十六条第二号第三号、第八十七条、第九十条第一号乃至第七号の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附 則
第一条 この法律施行の期日は、各規定について、勅令でこれを定める。
第二条 有価証券業取締法、有価証券引受業法及び有価証券割賦販売業法は、これを廃止する。
第三条 取引所法の一部を次のように改正する。
第一条中「免許ヲ受ケテ」の下に「本法ニ依リ」を、「物件」の下に「(有価証券ヲ除ク以下第二十八条ニ規定スル場合ヲ除クノ外同シ)」を加える。
第二条、第十一条ノ四第二項、第十六条ノ二第二項、第十六条ノ三、第二十二条第一項及び第二十七条乃至第二十九条中「農商務大臣」を「主務大臣」に改める。
第四条ノ二を削る。
第十一条第一項を削り、同条第四項を次のように改める。
合名会社、合資会社又ハ株式合資会社ニ在リテハ其ノ無限責任社員中、株式会社又ハ有限会社に在リテハ其ノ取締役中前二項ニ該当スル者アルトキハ会員又ハ取引員トナルコトヲ得ス
第十一条ノ二第一項中「第二項又ハ第四項」を「又ハ第三項」に改め、同条第二項中「農商務大臣」を「主務大臣」に、「、第二項若ハ第四項」を「若ハ第三項」に改め、同条第三項中「第一項、第三項又ハ第四項」を「第二項又ハ第三項」に改め、同条第四項中「農商務大臣」を「主務大臣」に、「第一項、第三項若ハ第四項」を「第二項若ハ第三項」に改める。
第十八条中「有価証券ニ在リテハ三箇月、」を削る。
第四条 この法律施行前になした行為に対する罰則の適用については、旧有価証券業取締法、旧有価証券引受業法及び旧有価証券割賦販売業法は、この法律施行後も、なおその効力を有する。
第五条 旧有価証券業取締法、旧有価証券引受業法、旧有価証券割賦販売業法又は日本証券取引所法の規定により免許を取り消された者は、第十七条の規定の適用については、これをこの法律の規定により証券業者の免許を取り消されたものとみなす。
第六条 この法律施行の際現に旧有価証券業取締法により有価証券業を営む者、旧有価証券引受業法により有価証券引受業を営む者若しくは旧有価証券割賦販売業法により有価証券割賦販売業を営む者又は銀行若しくは信託会社でこれらの営業を営む者は、第十五条の規定施行の日から六箇月を限り、同条第一項の免許を受けたものとみなす。
前項に掲げる者が同項の期間内に第十五条第一項の免許を申請した場合においては、その申請に対する免許又は不免許の処分の日までも、また、前項と同様とする。
第十五条第二項、第十六条及び第十八条の規定は、前二項の規定により第十五条第一項の免許を受けた者とみなされた者については、これを適用しない。
第一項又は第二項の規定により第十五条第一項の免許を受けた者とみなされた者の営業保証金については、第二十条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
第七条 この法律又はこの法律に基いて発する命令に規定した事項について、政府のなした違法処分に因り権利を害されたとする者は、当分の間、行政裁判所に出訴することができる。