戦時補償特別措置法
法令番号: 法律第三十八號
公布年月日: 昭和21年10月19日
法令の形式: 法律
朕は、帝國議會の協贊を經た戰時補償特別措置法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十月十八日
内閣總理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
内務大臣 大村清一
文部大臣 田中耕太郎
農林大臣 和田博雄
遞信大臣 一松定吉
商工大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
運輸大臣 平塚常次郎
大藏大臣 石橋湛山
法律第三十八號
戰時補償特別措置法目次
第一章
總則
第二章
課税價格、控除、免除及び税率
第三章
申告及び納付
第四章
課税價格の更正及び決定
第五章
審査、訴願及び行政訴訟
第六章
代位納付
第七章
雜則
第八章
罰則
第九章
補則
戰時補償特別措置法
第一章 總則
第一條 この法律において戰時補償請求權とは、政府に對する請求權及び特定機關(國の施策に協力する法人その他の團體で命令で定めるものをいふ。以下同じ。)に對する請求權(政府の財政的保障のある範圍内のものに限る。)で左に掲げるものをいふ。但し、政府又は特定機關の通常の業務に關して生じた請求權を除く。
一 辨濟期が昭和二十年八月十五日以前のもので、同日以前に決濟(辨濟、代物辨濟、相殺又は更改をいふ。以下同じ。)がなかつたもの(一部の決濟があつた場合には決濟があつた部分を除く。)及び同日以前に企業整備資金措置法第五條に規定する更改による決濟の方法(これらに準ずる決濟の方法で命令で定めるものを含む。)によつて決濟があつたもの(決濟のため設定された政府特殊借入金、債務者特殊借入金、特殊預金、特殊金錢信託その他命令で定める債權について、同日以前に償還、拂戻若しくは解除又は混同に因る消滅があつた金額に相當する部分を除く。)
二 辨濟期が昭和二十年八月十五日後のもので、同日以前に生じた損害若しくは損失(同日において現に存した契約に關し同日後に生じたものを含む。)又は同日以前になされた給付(同日において現に存した契約に因り、同日後になされたものを含む。)若しくは施設に因るもの
前項の政府とは、國、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團體をいふ。
第一項第一號の規定の適用については、政府特殊借入金の債權を銀行に讓渡して命令で定める預金を取得した者の當該預金につき、昭和二十年八月十五日以前に拂戻のあつた金額は、これを政府特殊借入金につき同日以前に償還のあつた金額とみなす。
第一項但書の通常の業務に關して生じた請求權の範圍は、命令でこれを定める。
第二條 この法律施行の際現に戰時補償請求權(金錢の給付を目的とするものに限る。以下第六十五條に規定する場合を除く外同じ。)を有し、又はこの法律施行前に戰時補償請求權について決濟を受けた者には、この法律により、戰時補償特別税を課する。
第三條 戰時補償特別税は、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團體には、これを課さない。
第四條 左に掲げる請求權については、戰時補償特別税を課さない。
一 國債、地方債及び特定機關の發行した債券の請求權
二 死亡又は傷害に關する保險金又は補償金の請求權
三 救恤制度に基き生ずる請求權
四 その他命令で定めるもの
第五條 戰時補償請求權について決濟を受けた者について、この法律施行前に相續の開始があつた場合においては、被相續人が戰時補償請求權について受けた決濟は、相續人がこれを受けたものとみなして、この法律を適用する。
第六條 戰時補償請求權について決濟を受けた法人が、この法律施行前に合併に因り消滅した場合においては、合併に因り消滅した法人が戰時補償請求權について受けた決濟は、合併後存續する法人又は合併に因り設立された法人が、これを受けたものとみなして、この法律を適用する。
戰時補償請求權について決濟を受けた甲法人が、この法律施行前に乙法人となつたときは、甲法人は合併に因り消滅した法人、乙法人は合併に因り設立された法人とみなして、前項の規定を適用する。
戰時補償請求權について決濟を受けた法人について、この法律施行前に分割があつた場合においては、命令の定めるところにより、分割に因り消滅した法人が戰時補償請求權について受けた決濟は、分割に因り設立された法人が、これを受けたものとみなして、この法律を適用する。
第七條 戰時補償請求權について決濟を受けた法人が、この法律施行前に解散に因り消滅した場合においては、その法人から政府特殊借入金(戰時補償請求權の決濟のため設定された政府特殊借入金で命令で定めるものをいふ。以下第四十五條及び第六十三條に規定する場合を除く外同じ。)の債權又は特殊預金等(戰時補償請求權の決濟のため設立された特殊預金、特殊金錢信託、債務者特殊借入金その他命令で定める債權をいふ。以下同じ。)の讓渡を受けた者が、その讓渡を受けた政府特殊借入金又は特殊預金等の金額の限度において、戰時補償請求權について決濟を受けたものとみなして、この法律を適用する。
第二章 課税價格、控除、免除及び税率
第八條 戰時補償特別税は、この法律施行の際現に存する戰時補償請求權の價額又はこの法律施行前に戰時補償請求權について決濟のあつた金額を課税價格として、これを賦課する。
この法律施行の際現に存する戰時補償請求權の價額は、請求金額の確定してゐる請求權についてはその金額、請求金額の確定してゐない請求權については權利者の請求しようとする金額の全額による。
前項に規定するものを除く外、戰時補償請求權の價額又は戰時補償請求權について決濟のあつた金額の算定について必要な事項は、命令で れを定める。
第九條 別表一、別表二又は別表三に掲げる請求權以外の戰時補償請求權については、この法律施行前に決濟のあつた金額(企業整備資金措置法第五條に規定する更改による決濟の方法によつて決濟があつた場合においては、この法律施行前に政府特殊借入金又は特殊預金等について償還、拂戻若しくは解除又は混同に因る消滅があつた金額に限る。)は、これを課税價格に算入しない。
第十條 別表一に掲げる請求權については、一請求權ごとに一萬圓が課税價格から控除される。
前項の規定は、別表一第十號に掲げる請求權については、課税價格のうち、この法律施行前に決濟がなかつた金額には、これを適用しない。
別表二に掲げる請求權については、左に掲げる金額が課税價格から控除される。
一 納税義務者が個人の場合においては 五萬圓
二 納税義務者が法人の場合においては 一請求權ごとに 一萬圓
個人が別表二に掲げる請求權の二以上について戰時補償特別税を課せられる場合においては、その請求權の價額又はその請求權について決濟のあつた金額を合算し、その總額について、前項第一號の規定を適用する。
前四項の規定により、課税價格から控除される金額は、各納税義務者につき、その總額が十萬圓を超えることができない。
前項の規定の適用について必要な事項は、命令でこれを定める。
別表三に掲げる請求權については、五萬圓が課税價格から控除される。
第四項の規定は、個人又は法人が別表三に掲げる請求權の二以上について戰時補償特別税を課せられる場合に、これを準用する。
前二項の規定は、この法律施行の際現に別表一又は別表二に掲げる請求權を有し、又はこの法律施行前に別表一又は別表二に掲げる請求權について決濟を受けた者については、第一項乃至第六項の規定による控除金額の總額が五萬圓以下である場合に限り、これを適用する。この場合における前二項の規定による控除金額は、五萬圓から第一項乃至第六項の規定による控除金額の總額を控除した金額とする。
第五條又は第六條の場合において、課税價格から控除される金額の算定については、命令で第一項乃至前項の規定に對する特例を定めることができる。
戰時補償請求權の讓渡があつた場合において、課税價格から控除される金額の算定については、第一項乃至第九項の規定にかかはらず命令の定めるところによる。保險の目的の讓渡なくして保險契約に因り生じた權利の讓渡があつた場合において、課税價格から控除される金額の算定についてもまた同じ。
第一項乃至前項の規定は、戰時補償請求權で在外資産たるものには、これを適用しない。
第一項及び第三項第二號の一請求權竝びに前項の戰時補償請求權で在外資産たるものの意義は、命令でこれを定める。
第十一條 前條の規定は、第十四條に規定する申告期限内に同條の規定による申告書の提出がない場合には、これを適用しない。但し、課税價格が前條に規定する控除金額以下の場合においては、この法律施行前に戰時補償請求權について、金錢で支拂はれた、又は特殊預金等について拂戻、解除若しくは償還若しくは混同に因る消滅のあつた金額については、申告書の提出がない場合においても、同條の規定は、これを適用する。
前項但書に規定する場合を除く外、第十四條の規定による申告書の提出なくして、しかも前條の規定を適用すべき場合は、命令でこれを定める。
第十二條 民法第三十四條の規定により設立した法人その他の營利を目的としない法人又は團體で命令で定めるものが、この法律施行の際現に別表二第一號に掲げる請求權を有し、又はこの法律施行前に同號に掲げる請求權について決濟を受けた場合においては、政府は、命令の定めるところにより、戰時補償特別税審査委員會の諮問を經て、戰時補償特別税を輕減又は免除することができる。
政府は、前項の場合において、同項の規定による輕減又は免除に關する處分が確定するまで、命令の定めるところにより、税金の納付を猶豫することができる。
戰時補償特別税審査委員會に關する規程は、勅令でこれを定める。
第十三條 戰時補償特別税の税率は、百分の百とする。
第三章 申告及び納付
第十四條 納税義務者は、命令の定める日(以下一般申告期限といふ。)までに、命令の定めるところにより、課税價格その他必要な事項を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
納税義務者が左の各號の一に該當するときは、納税義務者は、命令の定めるところにより、當該各號の定める金融機關を經由して、(該當する金融機關が二以上ある場合においては、當該金融機關を經由して各別に、)前項の申告書を提出しなければならない。この場合において、金融機關が申告書を受理したときは、その申告書は、同項の規定により政府に提出されたものとみなす。
一 この法律施行の際現に特殊預金等を有してゐる者であるときは、その特殊預金等の預入先の金融機關(特殊金錢信託については受託者たる金融機關、債務者特殊借入金については債務者たる金融機關をいふ。以下同じ。)
二 この法律施行前に政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を金融機關に讓渡した者であるときは、その讓渡先の金融機關
三 第三十四條第一項又は第二項の規定に該當する者であるときは、その者から債務の決濟を受けた金融機關
通信、交通その他の状況により、一般申告期限内にその申告書を提出することができない者の申告については、命令で特別の定をなすことができる。
この法律において金融機關とは、銀行、信託會社その他命令で定める法人をいふ。
第十五條 納税義務者は、命令の定めるところにより、前條の規定による申告期限内に、戰時補償特別税を納付しなければならない。
納税義務者が前條第二項の規定により申告書を提出したときは、同項に規定する金融機關は、納税義務者から戰時補償特別税を徴收し、一般申告期限の屬する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第十六條 第三十三條又は第三十四條に規定する場合においては、納税義務者が納付すべき税額は、課税價格について第十條乃至第十三條の規定を適用して算出した戰時補償特別税の額から、第三十三條又は第三十四條の規定により戰時補償特別税を納付する義務がある者が納付すべき税額を控除した金額とする。
第十七條 この法律施行の際現に納税義務者の有する戰時補償請求權は、戰時補償特別税額を限度として、第十四條の規定による申告書の提出と同時に、(同條に規定する申告期限内に同條の規定による申告書の提出のなかつた場合においては、同條に規定する申告期限の經過した時において、)消滅する。
前項の場合においては、その消滅した戰時補償請求權については、その消滅と同時に、戰時補償特別税の納付があつたものとみなす。
第十八條 第十五條の場合において、納税義務者がこの法律施行の際現に政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を有するときは、納税義務者は、先づ、その政府特殊借入金の債權を政府に讓渡し、これを以て戰時補償特別税の納付に充て、又はその特殊預金等について、期限前の拂戻、解除若しくは償還を受け、これにより取得した金錢を以て戰時補償特別税を納付しなければならない。
第十九條 納税義務者が政府特殊借入金の債權を有する場合において、一般申告期限内に第十四條第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、政府は、一般申告期限の翌日に、その政府特殊借入金の債權を以て戰時補償特別税を徴收する。
納税義務者が特殊預金等を有する場合において、一般申告期限内に第十四條第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、特殊預金等の預入先の金融機關は、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、その特殊預金等について期限前の拂戻、解除又は償還をなし、これにより納税義務者が取得すべき金錢を以て戰時補償特別税を徴收し、一般申告期限の屬する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第二十條 前二條の規定は、政府特殊借入金の債權又は特殊預金等について擔保權(國税徴收法第三條に規定する擔保權を含む。以下同じ。)が存する場合又は強制執行手續、國税徴收法による強制徴收手續その他これらの手續に準ずるものが進行中である場合においても、その適用を妨げない。
政府特殊借入金の債權について擔保權が存する場合において、第十八條又は前條第一項の規定により、その政府特殊借入金の債權が戰時補償特別税の納付に充てられたときは、その擔保權は、戰時補償特別税の納付と同時に、消滅する。
前二項に規定するものを除く外、前二條の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十一條 第十四條の規定による申告書を提出した者が、同條に規定する申告期限内に、戰時補償特別税を完納しなかつたときは、政府は、國税徴收法第九條の規定により、これを督促する。
前條の規定は、第十二條第二項の規定により徴收を猶豫された戰時補償特別税を、國税徴收法により、特殊預金等を以て徴收する場合について、これを準用する。
第二十二條 第十五條又は第十九條の場合において、金融機關が、別表一第十四號又は別表二第一號若しくは第二號に掲げる請求權の決濟に必要な資金を損害保險會社又は損害保險中央會に融通したため、貸付金の債權を有するときは、第十五條第二項又は第十九條第二項の規定により金融機關が納付すべき税額のうち當該請求權に對する税額に相當する金額の貸付金の債權に、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、消滅する。この場合においては、金融機關は、その消滅した貸付金の債權の金額に相當する税額について、第十五條第二項又は第十九條第二項の規定による税金納付の義務を免除される。
前項の規定は、金融機關が、別表三に掲げる請求權の決濟に必要な資金を國民更生金庫又は産業設備營團に融通したため、貸付金の債權を有する場合に、これを準用する。
前二項の場合においては、金融機關は、命令の定めるところにより、その消滅した貸付金の債權の金額その他必要な事項を政府に屆け出るとともに、損害保險會社若しくは損害保險中央會又は國民更生金庫若しくは産業設備營團にこれを通知しなければならない。
第二十三條 納税義務者が金錢を以て戰時補償特別税の全部又は一部を納付すべき場合において、その完納を困難とするときは、納税義務者は、戰時補償特別税の物納を申請し、又は擔保を提供してその延納を申請することができる。
前項の場合において、物納に充てることができる財産の種類その他物納に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
第一項の場合において、延納の期間は、これを一般申告期限後二箇年以内とし、擔保の種類その他延納に關し必要な事項は、命令でこれを定める。
政府は、第一項の申請があつた場合において、必要があると認めるときは、税金の納付を猶豫することができる。
第一項の規定により延納を許可された場合においては、當該延納税額については、命令の定めるところにより、命令の定める期間に應じ、當該税額に年百分の十の割合を乘じて算出した金額に相當する税額を加算して、これを納付しなければならない。
第二十四條 第五條の場合において、相續人が二人以上あつたときは、相續人は、相續財産の價額(相續に因り債務を承繼したときは、相續財産の價額からその債務の金額を控除した金額)のうち、各自その受けた利益の價額の占める割合に應じて、戰時補償特別税を納付しなければならない。
前項の場合において、相續に因り承繼した債務の金額が相續財産の價額を超えてゐたときは、各相續人の納付すべき戰時補償特別税の税額は、命令の定めるところによる。
前二項の場合においては、相續人は、他の相續人の納付すべき戰時補償特別税について、連帶納付の責に任ずる。
第五條の場合において、その相續が財産を留保した家督相續であつたときは、被相續人は、相續人の納付すべき戰時補償特別税について、連帶納付の責に任ずる。
分割に因り設立された法人は、分割に因り設立された他の法人が、第六條第三項の規定により、納付すべき戰時補償特別税又は分割後存續する他の法人が、分割前に取得した戰時補償請求權につき、納付すべき戰時補償特別税について、連帶納付の責に任ずる。
前三項の規定は、戰時補償特別税のうち、政府特殊借入金の債權を以て納付すべき額及び特殊預金等につき期限前の拂戻、解除又は償還を受け、これにより取得した金錢を以て納付すべき額に相當するものについては、これを適用しない。
第二十五條 納税義務者は、戰時補償特別税を納付するため必要があるときは、命令の定めるところにより、命令で定める預金、貯金その他の債權の全部又は一部について、期限前の拂戻を請求し、又はこれらに關する契約を解除し、若しくは變更することができる。
前項の場合において、その契約の相手方が納税義務者に給付すべき金額その他必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十六條 第十四條第二項、第十五條第二項、第十九條第二項、第三十五條第二項、第三十六條第二項、第三十八條第二項及び第四十五條の規定の適用については、産業設備營團は、これを金融機關とみなす。
第四章 課税價格の更正及び決定
第二十七條 第十四條の規定による申告書が提出された場合において、その申告された課税價格が政府において調査した課税價格と異るときは、政府は、その調査により、その申告された課税價格を更正する。
政府は、納税義務があると認められる者が第十四條の規定による申告書を提出しなかつた場合においては、政府の調査により、その課税價格(第十七條の規定により消滅した戰時補償請求權の課税價格を除く。)を決定する。
政府は、前二項の規定による課税價格の更正又は決定後、その更正し又は決定した課税價格について脱漏があることを發見したときは、政府の調査により、その課税價格を更正することができる。
前三項の規定による課税價格の更正又は決定は、この法律施行後五年間に限り、これを行ふことができる。
第二十八條 政府は、前條の規定により、課税價格を更正し又は決定したときは、これを納税義務者に通知する。
この法律の施行地に住所及び居所又は營業所若しくは事務所を有しない納税義務者が納税管理人の申告をしてゐないときは、前項の通知に代へて公告をなすことができる。この場合において、公告の初日から七日を經過したときは、その通知があつたものとみなす。
第二十九條 政府は、第二十七條の規定により、課税價格を更正し又は決定した場合においては、前條の通知をなした日から一箇月後を納期限とし、その不足税額又はその決定による税額の戰時補償特別税を徴收する。
前項の場合において、第十九條の規定によつて徴收した税金があるときは、その税額は、前項の規定により徴收すべき戰時補償特別税の税額から、これを控除する。
第五章 審査、訴願及び行政訴訟
第三十條 納税義務者は、第二十七條の規定による課税價格の更正又は決定に對して異議があるときは、その通知を受けた日から一箇月以内に不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
政府は、前項の請求があつた場合においても、税金の徴收を猶豫しない。
第三十一條 政府は、前條第一項の請求があつたときは、これを決定し、納税義務者に通知しなければならない。
第三十二條 前條の決定に對し不服がある者は、訴願をなし又は行政裁判所に出訴することができる。
第六章 代位納付
第三十三條 納税義務者以外の者でこの法律施行の際現に政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を有するものは、その政府特殊借入金又は特殊預等の金額を限度として、納税義務者に代位して戰時補償特別税を納付する義務がある。
前項の場合において、この法律施行の際現に納税義務者の有する政府特殊借入金の債權又は特殊預金等の金額と、納税義務者に代位して戰時補償特別税を納付する義務がある者(以下代位納付義務者といふ。)の有する政府特殊借入金の債權又は特殊預金等の金額との合計額が、課税價格につき第十條乃至第十三條の規定を適用して算出した戰時補償特別税の額を超える場合においては、代位納付義務者は、戰時補償特別税の額から納税義務者がこの法律施行の際現に有する政府特殊借入金の債權又は特殊預金等の金額を控除した金額について、戰時補償特別税を納付する義務がある。この場合において、代位納付義務者が二人以上あるときは、各代位納付義務者の納付すべき戰時補償特別税の税額は、命令の定めるところによる。
第三十四條 企業整備資金措置法第四條又は臨時資金調整法第十條ノ二の規定の適用があつた場合において、納税義務者が金融機關に對する債務を決濟することを理由として、戰時補償請求權について、企業整備資金措置法第五條に規定する更改による決濟の方法(これらに準ずる決濟の方法で命令で定めるものを含む。)以外の方法により決濟を受け、その金融機關に對する債務を決濟したときは、その金融機關は、決濟を受けた金額を限度として、納税義務者に代位して戰時補償特別税を納付する義務がある。
戰時補償請求權の決濟のため特殊預金等の設定を受けた者又はその特殊預金等の讓渡を受けた者が、この法律施行前に、金融機關に對する債務を決濟することを理由として、特殊預金等について、期限前の拂戻、解除若しくは償還を受け、その金融機關に對する債務を決濟し、又は金融機關に對する債務の決濟のため、特殊預金等をその金融機關に讓渡した場合においては、その金融機關は、決濟を受けた金額(その金融機關が當該特殊預金等を讓渡した場合においては、その讓渡した特殊預金等の金額を除く。)を限度として、納税義務者に代位して戰時補償特別税を納付する義務がある。
前條第一項の規定は、前項に規定する特殊預金等の讓渡を受けた金融機關については、これを適用しない。
前條第二項の規定は、第一項及び第二項の場合に、これを準用する。
第三十五條 代位納付義務者は、一般申告期限内に、命令の定めるところにより、第三十三條第一項に規定する政府特殊借入金の債權又は特殊預金等の金額、前條第一項又は第二項に規定する決濟を受けた金額その他必要な事項を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
この法律施行の際現に特殊預金等を有する代位納付義務者は、その特殊預金等の預入先の金融機關を經由して、前項の申告書を提出しなければならない。この場合において、預入先の金融機關が申告書を受理したときは、その申告書は、同項の規定により政府に提出されたものとみなす。
第十四條第三項の規定は、第一項の規定による申告について、これを準用する。
第三十六條 代位納付義務者は、命令の定めるところにより、前條の規定による申告期限内に、戰時補償特別税を納付しなければならない。
前項の場合において、代位納付義務者が前條第二項の規定により申告書を提出したときは、同項に規定する金融機關は、代位納付義務者から戰時補償特別税を徴收し、一般申告期限の屬する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第三十七條 第十條の規定は、納税義務者が第十四條の規定による申告書を提出しなかつた場合においても、代位納付義務者が第三十五條の規定による申告書を提出した場合においては、代位納付義務者の納付すべき戰時補償特別税の税額の計算について、これを適用する。
第三十八條 この法律施行の際現に政府特殊借入金の債權を有する代位納付義務者が一般申告期限内に第三十五條第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、政府は、一般申告期限の翌日に、その政府特殊借入金の債權を以て戰時補償特別税を徴收する。
この法律施行の際現に特殊預金等を有する代位納付義務者が一般申告期限内に第三十五條第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、その特殊預金等の預入先の金融機關は、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、その特殊預金等について期限前の拂戻、解除又は償還をなし、これにより代位納付義務者が取得すべき金錢を以て戰時補償特別税を徴收し、一般申告期限の屬する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第二十條第一項及び第二項の規定は、前二項の場合に、これを準用する。
前項に規定するものを除く外、第一項及び第二項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十九條 第三十六條又は前條の場合において、代位納付義務者が、別表一第十四號又は別表二第一號若しくは第二號に掲げる請求權の決濟に必要な資金を損害保險會社又は損害保險中央會に融通したため、貸付金の債權を有するときは、第三十六條第二項又は前條第二項の規定により代位納付義務者が納付すべき税額のうち當該請求權に對する税額に相當する金額の貸付金の債權は、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、消滅する。この場合においては、代位納付義務者は、その消滅した貸付金の債權の金額に相當する税額について、同條の規定による税金納付の義務を免除される。
前項の規定は、代位納付義務者が、別表三に掲げる請求權の決濟に必要な資金を國民更生金庫又は産業設備營團に融通したため、貸付金の債權を有する場合に、これを準用する。
前二項の場合においては、代位納付義務者は、命令の定めるところにより、その消滅した貸付金の債權の金額その他必要な事項を政府に屆け出るとともに、損害保險會社若しくは損害保險中央會又は國民更生金庫若しくは産業設備營團にこれを通知しなければならない。
第四十條 第十八條及び第二十一條の規定は、代位納付義務者の納付すべき戰時補償特別税について、これを準用する。
第二十二條の規定は、代位納付義務者が金融機關に特殊預金等を有する場合において、その特殊預金等の預入先の金融機關について、これを準用する。
前二章の規定は、代位納付義務者の納付すべき戰時補償特別税額の更正若しくは決定又は審査、訴願若しくは行政訴訟について、これを準用する。
第四十一條 第三十三條の規定により戰時補償特別税を納付した代位納付義務者が、戰時補償特別税の納付に充てた政府特殊借入金の債權又は戰時補償特別税を納付するため期限前の拂戻、解除若しくは償還を受けた特殊預金等を、納税義務者その他の者から有償で取得した者である場合においては、代位納付義務者は、その政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を讓渡した者に對し、命令の定めるところにより、その取得に要した對價に相當する金額の範圍内において、求償をなすことができる。
前項の場合において、讓渡人が求償に應じて履行したときは、當該讓渡人は、その政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を有償で取得した者である場合に限り、その政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を讓渡した者に對し、命令の定めるところにより、その取得に要した對價に相當する金額の範圍内において、求償をなすことができる。
前項の規定は、同項に規定する讓渡人以外の者でその政府特殊借入金の債權又は特殊預金等を讓渡したものが求償に應じて履行した場合について、これを準用する。
第一項の場合においては、代位納付義務者の有する政府特殊借入金の債權又は特殊預金等について存する擔保權は、同項の規定による求償權により、代位納付義務者が受くべきものに對しても、これを行ふことができる。
第四十二條 第三十四條の規定により戰時補償特別税を納付した代位納付義務者は、納税義務者その他同條に規定する債務の決濟をなした者に對し、命令の定めるところにより、その納付した税額の範圍内において求償をなすことができる。
前條第二項乃至第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第七章 雜則
第四十三條 納税義務者は、第三十三條又は第三十四條に規定する場合においては、命令の定めるところにより、課税價格その他必要な事項を代位納付義務者に通知しなければならない。
代位納付義務者は、命令の定めるところにより、第三十三條第一項に規定する政府特殊借入金又は特殊預金等の金額、第三十四條第一項又は第二項に規定する決濟を受けた金額その他必要な事項を納税義務者に通知しなければならない。
第四十四條 法人が解散した場合において、戰時補償特別税を完納しないで殘餘財産の分配を終了したときは、その税金については、清算人は、連帶して納税の義務があるものとする。
第四十五條 金融機關が、第十五條第二項、第十九條第二項、第三十六條第二項又は第三十八條第二項の規定により、その徴收した戰時補償特別税を政府に納付する場合において、金融上の都合により、金錢による納付を困難とするときは、命令の定めるところにより、金融機關は、政府に申請して、その有する政府特殊借入金の債權を政府に讓渡し、これを以て戰時補償特別税の納付に充てることができる。
第四十六條 命令で定める法人は、命令の定めるところにより、戰時補償請求權に關する調書を政府に提出しなければならない。
第四十七條 收税官吏は、戰時補償特別税に關する調査又は戰時補償特別税の徴收について必要があるときは、納税義務者若しくは納税義務者と認められる者又は代位納付義務者若しくは代位納付義務者と認められる者に質問し、又はその戰時補償請求權に關する帳簿書類その他の物件を檢査することができる。
第四十八條 收税官吏は、戰時補償特別税に關する調査又は戰時補償特別税の徴收について必要があるときは、左に掲げる者に質問し、又はその戰時補償請求權に關する帳簿書類その他の物件を檢査することができる。
一 第四十六條の規定に基く命令により調書を提出すべき者
二 納税義務者又は納税義務者と認められる者に對し、戰時補償請求權に關係のある財産を讓渡したと認められる者
三 納税義務者又は納税義務者と認められる者から、戰時補償請求權に關係のある財産を取得したと認められる者
第四十九條 收税官吏は、戰時補償特別税の調査に關し必要があるときは、官吏その他の公務員又は特定機關の職員であつた者で戰時補償請求權に關係のある事務に從事してゐたものに質問することができる。
政府は、戰時補償特別税の調査に關し必要があるときは、命令の定めるところにより、前項に規定する者の出頭を命ずることができる。
前項の規定による命令に從ひ出頭した者には、命令の定めるところにより、手當及び旅費を給する。
第五十條 戰時補償特別税は、個人についてはその住所地、この法律の施行地に住所のないときは居所地、法人についてはその本店又は主たる事務所の所在地をその納税地とする。但し、個人は、政府に申告して、居所地を納税地とすることができる。
この法律の施行地に住所及び居所のない個人又はこの法律の施行地に本店若しくは主たる事務所を有しない法人は、命令の定めるところにより、納税地を定めて政府に申告しなければならない。その申告のないときは、政府が、その納税地を指定する。
第五十一條 納税義務者若しくは代位納付義務者たる個人が納税地に現住しないとき、又は納税義務者若しくは代位納付義務者たる法人が納税地に營業所若しくは事務所を有しないときは、第十四條又は第三十五條の規定による申告書の提出その他戰時補償特別税に關する一切の事項を處理させるため、納税地に居住する者の中から納税管理人を定め、政府に申告しなければならない。納税義務者又は代位納付義務者たる個人がこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるとき竝びに納税義務者又は代位納付義務者たる法人が納税地に營業所又は事務所を有しないこととなるときもまた同じ。
第五十二條 都道府縣、市町村その他の公共團體は、戰時補償特別税の附加税を課することができない。
第五十三條 納税義務者が讓渡を受けた戰時補償請求權(保險の目的の讓渡なくして讓渡を受けた保險契約に因り生じた權利に因るものを含む。)について戰時補償特別税を納付した場合又は第四十一條第一項乃至第三項竝びに第四十二條第一項及び第二項の規定により、求償に應じて履行した場合において、その戰時補償請求權が有償で取得したものであるときは、納税義務者は、讓渡人に對し、命令の定めるところにより、その取得に要した對價に相當する金額の範圍内において、求償をなすことができる。
第四十一條第二項乃至第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第五十四條 個人の所得税法による所得、營業税法による純益又は舊臨時利得税法による利益のうちに、事業の收益で戰時補償請求權に因るものが算入されてゐるときは、命令の定めるところにより、當該年分の所得税、營業税、營業税附加税又は臨時利得税の税額と當該年分の所得、純益又は利益の金額から當該事業の收益の金額を控除した金額により計算した所得税、營業税、營業税附加税又は臨時利得税の額との差額に相當する税額を、所得税、營業税、營業税附加税又は臨時利得税について免除する。
第五十五條 法人の法人税法による各事業年度の普通所得、營業税法による各事業年度の純益、舊臨時利得税法による利益又は特別法人税法による各事業年度の剩餘金のうちに、戰時補償請求權に因る益金が算入されてゐるときは、命令の定めるところにより、當該事業年度分の法人税、營業税、營業税附加税、臨時利得税又は特別法人税の税額と、當該事業年度の所得、純益、利益又は剩餘金から戰時補償請求權に因る益金を控除した金額により計算した法人税、營業税、營業税附加税、臨時利得税又は特別法人税の額との差額に相當する税額を、法人税、營業税、營業税附加税、臨時利得税又は特別法人税について免除する。
第五十六條 法人の納付すべき戰時補償特別税は、法人税法による各事業年度の普通所得、營業税法による各事業年度の純益又は特別法人税法による各事業年度の剩餘金の計算上、これを損金に算入しない。
法人の資産(商品その他命令で定めるものを除く。)の評價換又は讓渡に因る益金、債務の消滅に因る益金、資本の減少に因る益金その他命令で定める益金については、その合計金額が戰時補償特別税額から戰時補償請求權に因る益金の額を控除した金額に達するまでの金額は、命令の定めるところにより、法人税法による各事業年度の普通所得、營業税法による各事業年度の純益又は特別法人税法による各事業年度の剩餘金の計算上、これを益金に算入しない。
前二項の規定の適用については、第五十三條第一項の規定により戰時補償請求權の讓渡人が求償される場合において、その求償される金額は、これを戰時補償特別税とみなす。
第五十七條 この法律施行前に相續の開始があつた場合において、相續財産(相續開始前一年以内に被相續人が贈與した財産を含む。以下同じ。)のうちに戰時補償請求權、政府特殊借入金の債權又は特殊預金等が含まれてゐたときは、命令の定めるところにより、當該相續税額と、當該相續税の課税價格から當該戰時補償請求權について課せられる戰時補償特別税額の全部又は一部を控除した金額によつて計算した相續税の額との差額を、當該相續税について免除する。
前項の規定は、この法律施行前に開始した相續の相續財産のうちに、政府特殊借入金の債權又は特殊預金等により取得した財産が含まれてゐた場合について、これを準用する。この場合において、課税價格から控除する戰時補償特別税額は、その取得した財産の課税價格から當該戰時補償請求權について第十條の規定による控除金額を控除した金額を超えることができない。
第五十八條 この法律施行前に相續の開始があつた場合において、その相續財産につき生じた戰時補償請求權について戰時補償特別税が課せられたときは、當該相續について昭和二十年八月十五日後に納期限を定められた相續税に限り、命令の定めるところにより、當該戰時補償特別税額のうち命令で定める金額の、當該相續についての課税價格に對する割合を、當該相續税額に乘じて算出した金額を免除する。
第五十九條 改正前の戰時特殊損害保險法第十六條の規定(損害保險中央會法第五十六條の規定による改正前のものをいふ。)による戰爭保險の業務に關する保險會社に對する損失の補償については、第二十二條(第四十條において準用する場合を含む。)又は第三十九條の規定により消滅した貸付金の債權の金額に相當する金額を、その補償すべき損失の額から控除する。
第六十條 國、地方公共團體若しくは特定機關に對して土地若しくは建物(土地又は建物に定着する物を含む。以下本條中同じ。)又は鑛業權若しくは砂鑛權を讓渡し又は國、地方公共團體若しくは特定機關に土地若しくは建物を收用された場合において、その對價の請求權について戰時補償特別税を課せられたときは、國、地方公共團體又は特定機關は、この法律施行の際現に當該土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權を有する場合に限り、舊所有者又は舊鑛業權者若しくは舊砂鑛權者の請求により、當該土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權を、現状において、これらの者に對し、讓渡しなければならない。
前項の規定により土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權の讓渡を受けようとする者は、當該土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權の讓渡又は收用の對價の價格に相當する金額からその對價の請求權に課せられた戰時補償特別税額を控除した金額に相當する對價を、國、地方公共團體又は特定機關に支拂はなければならない。
前項の場合において國、地方公共團體又は特定機關が當該土地又は建物につき有益費を出したときは、舊所有者は、その費用の額に相當する金額を、前項の金額に加算して支拂はなければならない。
第一項の規定により地方公共團體又は特定機關が土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權を舊所有者又は舊鑛業權者若しくは舊砂鑛權者に讓渡した場合においては、政府は、當該土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權の讓渡又は收用の對價の請求權に課せられた戰時補償特別税に相當する金額の全部又は一部を、地方公共團體又は特定機關に交付しなければならない。
第一項の規定により土地若しくは建物又は鑛業權若しくは砂鑛權の讓渡を受けようとする者は、一般申告期限後三箇月以内に、その旨を國、地方公共團體又は特定機關に申し出なければならない。 前項に規定するものを除く外、第一項乃至第四項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第六十一條 鑛業權又は砂鑛權が國、地方公共團體又は特定機關に讓渡された後に消滅した場合その他命令で定める場合において、その對價の請求權その他命令で定める請求權について、戰時補償特別税を課せられたときは、舊鑛業權者又は舊砂鑛權者は、鑛業法第三十三條の規定にかかはらず、前に鑛區又は砂鑛區の存した土地に關し、同一鑛物を目的とする鑛業又は同一砂鑛を目的とする砂鑛業の出願について優先權を有する。
鑛業又は砂鑛業の出願について前項の規定の適用を受けようとする者は、命令の定めるところにより、一般申告期限後三箇月以内に、政府に出願しなければならない。
前項に規定するものを除く外、第一項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第六十二條 雙務契約に因り生じた戰時補償請求權について戰時補償特別税を課せられた場合において、その戰時補償請求權の對價たる給付で、この法律施行前すでに履行されたものがあるときは、納税義務者は、前二條に規定する場合を除く外、他の法令又は契約にかかはらず、戰時補償特別税の課税を理由として物の返還その他何等の請求をもなすことができない。
雙務契約に因り生じた戰時補償請求權について戰時補償特別税を課せられた場合においては、納税義務者は、他の法令又は契約にかかはらず、その戰時補償請求權の對價たる給付で、この法律施行の際にまだ履行されてゐないものについては、これを履行する必要がない。
納税義務者以外の者で最初に戰時補償請求權を取得したものは、前二項の規定の適用については、これを納税義務者とみなす。
第六十三條 戰時補償特別税の納税義務者又は代位納付義務者が戰時補償特別税の納付後において有する政府特殊借入金の債權(第十條の規定の適用の結果戰時補償特別税を納付しないこととなつた者の有するものを含む。)及び戰時補償特別税の納付の義務のない者が有する政府特殊借入金の債權は、命令の定めるところにより、これを當該債權の金額と同額の登録國債となすものとする。
第六十四條 政府は、命令の定めるところにより、戰時補償特別税の納付後において存する戰時補償請求權(第十條の規定の適用の結果戰時補償特別税を納付しないこととなつた者の有するものを含む。)で政府に對するものの決濟を、國債證券の交付により、行ふことができる。
前項の規定による決濟のため交付する國債證券の交付價格は、額面金額による。
政府は、第一項の請求權の決濟のため必要な金額を限り、公債を發行することができる。
第六十五條 この法律施行の際現に存する戰時補償請求權で金錢の給付以外の給付をその目的とするものは、この法律施行の日に、消滅する。
第六十六條 會社その他の法人が昭和二十年八月十五日以前においてなした資金の融通、有價證券の應募、引受若しくは買入又は債務の引受若しくは保證に因り生じた又は生ずべき損失で、政府において補填すべきものは、他の法令又は契約にかかはらず、これを補填しない。但し、命令で定めるものはこの限りでない。
第六十七條 政府が會社その他の法人のためになした保證(命令で定めるものを除く。)は、この法律施行の日において、その效力を失ふ。
第八章 罰則
第六十八條 詐僞その他不正の行爲により、戰時補償特別税を逋脱した者は、これを一年以下の懲役又は十萬圓以下の罰金に處する。
第六十九條 左の各號の一に該當する者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
一 正當の事由なくして第四十六條の調書を提出せず、又は同條の調書に虚僞の記載をなしてこれを提出した者
二 第四十七條又は第四十八條の規定による帳簿書類その他の物件の檢査を拒み、妨げ又は忌避した者
三 前號の帳簿書類で虚僞の記載をなしたものを呈示した者
四 第四十七條、第四十八條又は第四十九條第一項の規定による收税官吏の質問に對し答辯をなさない者
五 前號の質問に對し虚僞の答辯をなした者
第七十條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財産に關して、第六十八條又は前條第一號若しくは第三號乃至第五號の違反行爲をなしたときは、その行爲者を罰する外、その法人又は人に對し、各本條の罰金刑を科する。
第七十一條 第六十八條の罪を犯した者には、刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及び第六十六條の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に處するときは、この限りでない。
第七十二條 第十四條又は第三十五條に規定する申告期限内に第十四條又は第三十五條の規定による申告書の提出を怠つた者は、これを五千圓以下の過料に處する。
第七十三條 第四十九條第二項の規定により出頭を命ぜられた者が、正當の事由なくして、出頭しないときは、これを千圓以下の過料に處する。
第九章 補則
第七十四條 皇室の財産に係る戰時補償請求權の特別措置に關し必要な事項は、この法律の定めるところに準じ、皇室令を以て、これを定める。
附 則
この法律の施行の期日は、勅令で、これを定める。
この法律は、本州、北海道、四國、九州及びその附屬島嶼(勅令で定める地域を除く。)に、これを施行する。
(別表一)
一 舊軍需會社法第十三條(同法に基く命令において準用する場合を含む。)の規定に基く補助金、損失補償金又は利益保證の請求權
二 舊國家總動員法第二十七條又は第二十八條の規定に基く補償金(別表二第三號に掲げるものを除く。)又は補助金の請求權
三 舊兵器等製造事業特別助成法第四條の規定に基く設備建設費の請求權
四 舊兵器等製造事業特別助成法第五條の規定に基く設備の買上代金請求權及びこれに代るべき請求權
五 舊防空法第十六條第二項の規定による補助金で工場の疎開に關するものの請求權及び工場の疎開に關する國のその他の補助金の請求權
六 政府(第一條第二項に規定する政府をいふ。以下別表中同じ。)に對する物資、勞務若しくは利益の供給又は政府の注文に係る仕事の完成に對する對價の請求權
七 政府に對する物資、勞務若しくは利益の供給又は政府の注文に係る仕事の完成に關する契約を政府が解除した場合の損害賠償請求權又は仕掛半製品のまま引き取つた場合その他これに準ずる場合の對價の請求權
八 政府に徴傭された船舶の原状囘復及び修理に關する費用の請求權
九 政府に對する損害賠償請求權で財産上の損害に因るもの(別表一のうち別號に掲げるもの及び別表二に掲げるものを除く。)
十 今次の戰爭の遂行に關して、政府が法令の特別の規定に基かずに處分をなしたことに因る損失補償請求權
十一 産業設備營團と事業者との間の設備建設契約に基く産業設備營團に對する設備建設費の請求權又は産業設備營團と事業者との間に設備建設契約の豫約がある場合において、事業者の建設した設備につき、産業設備營團が豫約を履行しないことに因る損害賠償請求權
十二 産業設備營團が終戰に因り船舶、機械等の製造又は購入の契約を解除した場合の損害賠償請求權
十三 日本倉庫統制株式會社に對し倉庫用建築物を讓渡した場合の代金請求權(當該建築物が除却された場合のものに限る。)
十四 舊戰爭保險臨時措置法若しくは舊戰時特殊損害保險法又はこれらによる旨を定めた勅令(南洋群島戰爭保險臨時措置令を含む。)に基く戰爭保險契約による戰爭保險金の請求權で、この法律の施行地外にある財産を保險の目的とするもの
(別表二)
一 舊戰爭保險臨時措置法又は舊戰時特殊損害保險法に基く戰爭保險契約による戰爭保險金の請求權(別表一第十四號に掲げるものを除く。)
二 舊損害保險國營再保險法に基く勅令に掲げる戰爭保險金の請求權若しくは從前の損害保險中央會法第十八條第一項に掲げる海上保險金(木船保險の保險金を含む。)の請求權又は漁船保險法施行令第二條第二項に掲げる保險金の請求權
三 舊戰時海運管理令第二條の規定により使用された船舶の、戰爭に關する事故に因る損失に對する補償金の請求權
四 政府に徴傭された船舶の、戰爭に關する事故に因る損害賠償請求權
五 舊防空法第五條ノ五第二項の規定により指定された地區内に存する建築物(工事中のものを含む。以下同じ。)を除却する場合における補償金及び當該建築物(その存する土地を含む。)の賣買代金の請求權
(別表三)
國民更生金庫、産業設備營團、帝國鑛業開發株式會社又は日本石炭株式會社その他命令で定める者に對する請求權で企業整備に關するもの
朕は、帝国議会の協賛を経た戦時補償特別措置法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十月十八日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
内務大臣 大村清一
文部大臣 田中耕太郎
農林大臣 和田博雄
逓信大臣 一松定吉
商工大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
運輸大臣 平塚常次郎
大蔵大臣 石橋湛山
法律第三十八号
戦時補償特別措置法目次
第一章
総則
第二章
課税価格、控除、免除及び税率
第三章
申告及び納付
第四章
課税価格の更正及び決定
第五章
審査、訴願及び行政訴訟
第六章
代位納付
第七章
雑則
第八章
罰則
第九章
補則
戦時補償特別措置法
第一章 総則
第一条 この法律において戦時補償請求権とは、政府に対する請求権及び特定機関(国の施策に協力する法人その他の団体で命令で定めるものをいふ。以下同じ。)に対する請求権(政府の財政的保障のある範囲内のものに限る。)で左に掲げるものをいふ。但し、政府又は特定機関の通常の業務に関して生じた請求権を除く。
一 弁済期が昭和二十年八月十五日以前のもので、同日以前に決済(弁済、代物弁済、相殺又は更改をいふ。以下同じ。)がなかつたもの(一部の決済があつた場合には決済があつた部分を除く。)及び同日以前に企業整備資金措置法第五条に規定する更改による決済の方法(これらに準ずる決済の方法で命令で定めるものを含む。)によつて決済があつたもの(決済のため設定された政府特殊借入金、債務者特殊借入金、特殊預金、特殊金銭信託その他命令で定める債権について、同日以前に償還、払戻若しくは解除又は混同に因る消滅があつた金額に相当する部分を除く。)
二 弁済期が昭和二十年八月十五日後のもので、同日以前に生じた損害若しくは損失(同日において現に存した契約に関し同日後に生じたものを含む。)又は同日以前になされた給付(同日において現に存した契約に因り、同日後になされたものを含む。)若しくは施設に因るもの
前項の政府とは、国、都道府県、市町村その他命令で定める公共団体をいふ。
第一項第一号の規定の適用については、政府特殊借入金の債権を銀行に譲渡して命令で定める預金を取得した者の当該預金につき、昭和二十年八月十五日以前に払戻のあつた金額は、これを政府特殊借入金につき同日以前に償還のあつた金額とみなす。
第一項但書の通常の業務に関して生じた請求権の範囲は、命令でこれを定める。
第二条 この法律施行の際現に戦時補償請求権(金銭の給付を目的とするものに限る。以下第六十五条に規定する場合を除く外同じ。)を有し、又はこの法律施行前に戦時補償請求権について決済を受けた者には、この法律により、戦時補償特別税を課する。
第三条 戦時補償特別税は、都道府県、市町村その他命令で定める公共団体には、これを課さない。
第四条 左に掲げる請求権については、戦時補償特別税を課さない。
一 国債、地方債及び特定機関の発行した債券の請求権
二 死亡又は傷害に関する保険金又は補償金の請求権
三 救恤制度に基き生ずる請求権
四 その他命令で定めるもの
第五条 戦時補償請求権について決済を受けた者について、この法律施行前に相続の開始があつた場合においては、被相続人が戦時補償請求権について受けた決済は、相続人がこれを受けたものとみなして、この法律を適用する。
第六条 戦時補償請求権について決済を受けた法人が、この法律施行前に合併に因り消滅した場合においては、合併に因り消滅した法人が戦時補償請求権について受けた決済は、合併後存続する法人又は合併に因り設立された法人が、これを受けたものとみなして、この法律を適用する。
戦時補償請求権について決済を受けた甲法人が、この法律施行前に乙法人となつたときは、甲法人は合併に因り消滅した法人、乙法人は合併に因り設立された法人とみなして、前項の規定を適用する。
戦時補償請求権について決済を受けた法人について、この法律施行前に分割があつた場合においては、命令の定めるところにより、分割に因り消滅した法人が戦時補償請求権について受けた決済は、分割に因り設立された法人が、これを受けたものとみなして、この法律を適用する。
第七条 戦時補償請求権について決済を受けた法人が、この法律施行前に解散に因り消滅した場合においては、その法人から政府特殊借入金(戦時補償請求権の決済のため設定された政府特殊借入金で命令で定めるものをいふ。以下第四十五条及び第六十三条に規定する場合を除く外同じ。)の債権又は特殊預金等(戦時補償請求権の決済のため設立された特殊預金、特殊金銭信託、債務者特殊借入金その他命令で定める債権をいふ。以下同じ。)の譲渡を受けた者が、その譲渡を受けた政府特殊借入金又は特殊預金等の金額の限度において、戦時補償請求権について決済を受けたものとみなして、この法律を適用する。
第二章 課税価格、控除、免除及び税率
第八条 戦時補償特別税は、この法律施行の際現に存する戦時補償請求権の価額又はこの法律施行前に戦時補償請求権について決済のあつた金額を課税価格として、これを賦課する。
この法律施行の際現に存する戦時補償請求権の価額は、請求金額の確定してゐる請求権についてはその金額、請求金額の確定してゐない請求権については権利者の請求しようとする金額の全額による。
前項に規定するものを除く外、戦時補償請求権の価額又は戦時補償請求権について決済のあつた金額の算定について必要な事項は、命令で れを定める。
第九条 別表一、別表二又は別表三に掲げる請求権以外の戦時補償請求権については、この法律施行前に決済のあつた金額(企業整備資金措置法第五条に規定する更改による決済の方法によつて決済があつた場合においては、この法律施行前に政府特殊借入金又は特殊預金等について償還、払戻若しくは解除又は混同に因る消滅があつた金額に限る。)は、これを課税価格に算入しない。
第十条 別表一に掲げる請求権については、一請求権ごとに一万円が課税価格から控除される。
前項の規定は、別表一第十号に掲げる請求権については、課税価格のうち、この法律施行前に決済がなかつた金額には、これを適用しない。
別表二に掲げる請求権については、左に掲げる金額が課税価格から控除される。
一 納税義務者が個人の場合においては 五万円
二 納税義務者が法人の場合においては 一請求権ごとに 一万円
個人が別表二に掲げる請求権の二以上について戦時補償特別税を課せられる場合においては、その請求権の価額又はその請求権について決済のあつた金額を合算し、その総額について、前項第一号の規定を適用する。
前四項の規定により、課税価格から控除される金額は、各納税義務者につき、その総額が十万円を超えることができない。
前項の規定の適用について必要な事項は、命令でこれを定める。
別表三に掲げる請求権については、五万円が課税価格から控除される。
第四項の規定は、個人又は法人が別表三に掲げる請求権の二以上について戦時補償特別税を課せられる場合に、これを準用する。
前二項の規定は、この法律施行の際現に別表一又は別表二に掲げる請求権を有し、又はこの法律施行前に別表一又は別表二に掲げる請求権について決済を受けた者については、第一項乃至第六項の規定による控除金額の総額が五万円以下である場合に限り、これを適用する。この場合における前二項の規定による控除金額は、五万円から第一項乃至第六項の規定による控除金額の総額を控除した金額とする。
第五条又は第六条の場合において、課税価格から控除される金額の算定については、命令で第一項乃至前項の規定に対する特例を定めることができる。
戦時補償請求権の譲渡があつた場合において、課税価格から控除される金額の算定については、第一項乃至第九項の規定にかかはらず命令の定めるところによる。保険の目的の譲渡なくして保険契約に因り生じた権利の譲渡があつた場合において、課税価格から控除される金額の算定についてもまた同じ。
第一項乃至前項の規定は、戦時補償請求権で在外資産たるものには、これを適用しない。
第一項及び第三項第二号の一請求権並びに前項の戦時補償請求権で在外資産たるものの意義は、命令でこれを定める。
第十一条 前条の規定は、第十四条に規定する申告期限内に同条の規定による申告書の提出がない場合には、これを適用しない。但し、課税価格が前条に規定する控除金額以下の場合においては、この法律施行前に戦時補償請求権について、金銭で支払はれた、又は特殊預金等について払戻、解除若しくは償還若しくは混同に因る消滅のあつた金額については、申告書の提出がない場合においても、同条の規定は、これを適用する。
前項但書に規定する場合を除く外、第十四条の規定による申告書の提出なくして、しかも前条の規定を適用すべき場合は、命令でこれを定める。
第十二条 民法第三十四条の規定により設立した法人その他の営利を目的としない法人又は団体で命令で定めるものが、この法律施行の際現に別表二第一号に掲げる請求権を有し、又はこの法律施行前に同号に掲げる請求権について決済を受けた場合においては、政府は、命令の定めるところにより、戦時補償特別税審査委員会の諮問を経て、戦時補償特別税を軽減又は免除することができる。
政府は、前項の場合において、同項の規定による軽減又は免除に関する処分が確定するまで、命令の定めるところにより、税金の納付を猶予することができる。
戦時補償特別税審査委員会に関する規程は、勅令でこれを定める。
第十三条 戦時補償特別税の税率は、百分の百とする。
第三章 申告及び納付
第十四条 納税義務者は、命令の定める日(以下一般申告期限といふ。)までに、命令の定めるところにより、課税価格その他必要な事項を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
納税義務者が左の各号の一に該当するときは、納税義務者は、命令の定めるところにより、当該各号の定める金融機関を経由して、(該当する金融機関が二以上ある場合においては、当該金融機関を経由して各別に、)前項の申告書を提出しなければならない。この場合において、金融機関が申告書を受理したときは、その申告書は、同項の規定により政府に提出されたものとみなす。
一 この法律施行の際現に特殊預金等を有してゐる者であるときは、その特殊預金等の預入先の金融機関(特殊金銭信託については受託者たる金融機関、債務者特殊借入金については債務者たる金融機関をいふ。以下同じ。)
二 この法律施行前に政府特殊借入金の債権又は特殊預金等を金融機関に譲渡した者であるときは、その譲渡先の金融機関
三 第三十四条第一項又は第二項の規定に該当する者であるときは、その者から債務の決済を受けた金融機関
通信、交通その他の状況により、一般申告期限内にその申告書を提出することができない者の申告については、命令で特別の定をなすことができる。
この法律において金融機関とは、銀行、信託会社その他命令で定める法人をいふ。
第十五条 納税義務者は、命令の定めるところにより、前条の規定による申告期限内に、戦時補償特別税を納付しなければならない。
納税義務者が前条第二項の規定により申告書を提出したときは、同項に規定する金融機関は、納税義務者から戦時補償特別税を徴収し、一般申告期限の属する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第十六条 第三十三条又は第三十四条に規定する場合においては、納税義務者が納付すべき税額は、課税価格について第十条乃至第十三条の規定を適用して算出した戦時補償特別税の額から、第三十三条又は第三十四条の規定により戦時補償特別税を納付する義務がある者が納付すべき税額を控除した金額とする。
第十七条 この法律施行の際現に納税義務者の有する戦時補償請求権は、戦時補償特別税額を限度として、第十四条の規定による申告書の提出と同時に、(同条に規定する申告期限内に同条の規定による申告書の提出のなかつた場合においては、同条に規定する申告期限の経過した時において、)消滅する。
前項の場合においては、その消滅した戦時補償請求権については、その消滅と同時に、戦時補償特別税の納付があつたものとみなす。
第十八条 第十五条の場合において、納税義務者がこの法律施行の際現に政府特殊借入金の債権又は特殊預金等を有するときは、納税義務者は、先づ、その政府特殊借入金の債権を政府に譲渡し、これを以て戦時補償特別税の納付に充て、又はその特殊預金等について、期限前の払戻、解除若しくは償還を受け、これにより取得した金銭を以て戦時補償特別税を納付しなければならない。
第十九条 納税義務者が政府特殊借入金の債権を有する場合において、一般申告期限内に第十四条第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、政府は、一般申告期限の翌日に、その政府特殊借入金の債権を以て戦時補償特別税を徴収する。
納税義務者が特殊預金等を有する場合において、一般申告期限内に第十四条第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、特殊預金等の預入先の金融機関は、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、その特殊預金等について期限前の払戻、解除又は償還をなし、これにより納税義務者が取得すべき金銭を以て戦時補償特別税を徴収し、一般申告期限の属する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第二十条 前二条の規定は、政府特殊借入金の債権又は特殊預金等について担保権(国税徴収法第三条に規定する担保権を含む。以下同じ。)が存する場合又は強制執行手続、国税徴収法による強制徴収手続その他これらの手続に準ずるものが進行中である場合においても、その適用を妨げない。
政府特殊借入金の債権について担保権が存する場合において、第十八条又は前条第一項の規定により、その政府特殊借入金の債権が戦時補償特別税の納付に充てられたときは、その担保権は、戦時補償特別税の納付と同時に、消滅する。
前二項に規定するものを除く外、前二条の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十一条 第十四条の規定による申告書を提出した者が、同条に規定する申告期限内に、戦時補償特別税を完納しなかつたときは、政府は、国税徴収法第九条の規定により、これを督促する。
前条の規定は、第十二条第二項の規定により徴収を猶予された戦時補償特別税を、国税徴収法により、特殊預金等を以て徴収する場合について、これを準用する。
第二十二条 第十五条又は第十九条の場合において、金融機関が、別表一第十四号又は別表二第一号若しくは第二号に掲げる請求権の決済に必要な資金を損害保険会社又は損害保険中央会に融通したため、貸付金の債権を有するときは、第十五条第二項又は第十九条第二項の規定により金融機関が納付すべき税額のうち当該請求権に対する税額に相当する金額の貸付金の債権に、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、消滅する。この場合においては、金融機関は、その消滅した貸付金の債権の金額に相当する税額について、第十五条第二項又は第十九条第二項の規定による税金納付の義務を免除される。
前項の規定は、金融機関が、別表三に掲げる請求権の決済に必要な資金を国民更生金庫又は産業設備営団に融通したため、貸付金の債権を有する場合に、これを準用する。
前二項の場合においては、金融機関は、命令の定めるところにより、その消滅した貸付金の債権の金額その他必要な事項を政府に届け出るとともに、損害保険会社若しくは損害保険中央会又は国民更生金庫若しくは産業設備営団にこれを通知しなければならない。
第二十三条 納税義務者が金銭を以て戦時補償特別税の全部又は一部を納付すべき場合において、その完納を困難とするときは、納税義務者は、戦時補償特別税の物納を申請し、又は担保を提供してその延納を申請することができる。
前項の場合において、物納に充てることができる財産の種類その他物納に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第一項の場合において、延納の期間は、これを一般申告期限後二箇年以内とし、担保の種類その他延納に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
政府は、第一項の申請があつた場合において、必要があると認めるときは、税金の納付を猶予することができる。
第一項の規定により延納を許可された場合においては、当該延納税額については、命令の定めるところにより、命令の定める期間に応じ、当該税額に年百分の十の割合を乗じて算出した金額に相当する税額を加算して、これを納付しなければならない。
第二十四条 第五条の場合において、相続人が二人以上あつたときは、相続人は、相続財産の価額(相続に因り債務を承継したときは、相続財産の価額からその債務の金額を控除した金額)のうち、各自その受けた利益の価額の占める割合に応じて、戦時補償特別税を納付しなければならない。
前項の場合において、相続に因り承継した債務の金額が相続財産の価額を超えてゐたときは、各相続人の納付すべき戦時補償特別税の税額は、命令の定めるところによる。
前二項の場合においては、相続人は、他の相続人の納付すべき戦時補償特別税について、連帯納付の責に任ずる。
第五条の場合において、その相続が財産を留保した家督相続であつたときは、被相続人は、相続人の納付すべき戦時補償特別税について、連帯納付の責に任ずる。
分割に因り設立された法人は、分割に因り設立された他の法人が、第六条第三項の規定により、納付すべき戦時補償特別税又は分割後存続する他の法人が、分割前に取得した戦時補償請求権につき、納付すべき戦時補償特別税について、連帯納付の責に任ずる。
前三項の規定は、戦時補償特別税のうち、政府特殊借入金の債権を以て納付すべき額及び特殊預金等につき期限前の払戻、解除又は償還を受け、これにより取得した金銭を以て納付すべき額に相当するものについては、これを適用しない。
第二十五条 納税義務者は、戦時補償特別税を納付するため必要があるときは、命令の定めるところにより、命令で定める預金、貯金その他の債権の全部又は一部について、期限前の払戻を請求し、又はこれらに関する契約を解除し、若しくは変更することができる。
前項の場合において、その契約の相手方が納税義務者に給付すべき金額その他必要な事項は、命令でこれを定める。
第二十六条 第十四条第二項、第十五条第二項、第十九条第二項、第三十五条第二項、第三十六条第二項、第三十八条第二項及び第四十五条の規定の適用については、産業設備営団は、これを金融機関とみなす。
第四章 課税価格の更正及び決定
第二十七条 第十四条の規定による申告書が提出された場合において、その申告された課税価格が政府において調査した課税価格と異るときは、政府は、その調査により、その申告された課税価格を更正する。
政府は、納税義務があると認められる者が第十四条の規定による申告書を提出しなかつた場合においては、政府の調査により、その課税価格(第十七条の規定により消滅した戦時補償請求権の課税価格を除く。)を決定する。
政府は、前二項の規定による課税価格の更正又は決定後、その更正し又は決定した課税価格について脱漏があることを発見したときは、政府の調査により、その課税価格を更正することができる。
前三項の規定による課税価格の更正又は決定は、この法律施行後五年間に限り、これを行ふことができる。
第二十八条 政府は、前条の規定により、課税価格を更正し又は決定したときは、これを納税義務者に通知する。
この法律の施行地に住所及び居所又は営業所若しくは事務所を有しない納税義務者が納税管理人の申告をしてゐないときは、前項の通知に代へて公告をなすことができる。この場合において、公告の初日から七日を経過したときは、その通知があつたものとみなす。
第二十九条 政府は、第二十七条の規定により、課税価格を更正し又は決定した場合においては、前条の通知をなした日から一箇月後を納期限とし、その不足税額又はその決定による税額の戦時補償特別税を徴収する。
前項の場合において、第十九条の規定によつて徴収した税金があるときは、その税額は、前項の規定により徴収すべき戦時補償特別税の税額から、これを控除する。
第五章 審査、訴願及び行政訴訟
第三十条 納税義務者は、第二十七条の規定による課税価格の更正又は決定に対して異議があるときは、その通知を受けた日から一箇月以内に不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
政府は、前項の請求があつた場合においても、税金の徴収を猶予しない。
第三十一条 政府は、前条第一項の請求があつたときは、これを決定し、納税義務者に通知しなければならない。
第三十二条 前条の決定に対し不服がある者は、訴願をなし又は行政裁判所に出訴することができる。
第六章 代位納付
第三十三条 納税義務者以外の者でこの法律施行の際現に政府特殊借入金の債権又は特殊預金等を有するものは、その政府特殊借入金又は特殊預等の金額を限度として、納税義務者に代位して戦時補償特別税を納付する義務がある。
前項の場合において、この法律施行の際現に納税義務者の有する政府特殊借入金の債権又は特殊預金等の金額と、納税義務者に代位して戦時補償特別税を納付する義務がある者(以下代位納付義務者といふ。)の有する政府特殊借入金の債権又は特殊預金等の金額との合計額が、課税価格につき第十条乃至第十三条の規定を適用して算出した戦時補償特別税の額を超える場合においては、代位納付義務者は、戦時補償特別税の額から納税義務者がこの法律施行の際現に有する政府特殊借入金の債権又は特殊預金等の金額を控除した金額について、戦時補償特別税を納付する義務がある。この場合において、代位納付義務者が二人以上あるときは、各代位納付義務者の納付すべき戦時補償特別税の税額は、命令の定めるところによる。
第三十四条 企業整備資金措置法第四条又は臨時資金調整法第十条ノ二の規定の適用があつた場合において、納税義務者が金融機関に対する債務を決済することを理由として、戦時補償請求権について、企業整備資金措置法第五条に規定する更改による決済の方法(これらに準ずる決済の方法で命令で定めるものを含む。)以外の方法により決済を受け、その金融機関に対する債務を決済したときは、その金融機関は、決済を受けた金額を限度として、納税義務者に代位して戦時補償特別税を納付する義務がある。
戦時補償請求権の決済のため特殊預金等の設定を受けた者又はその特殊預金等の譲渡を受けた者が、この法律施行前に、金融機関に対する債務を決済することを理由として、特殊預金等について、期限前の払戻、解除若しくは償還を受け、その金融機関に対する債務を決済し、又は金融機関に対する債務の決済のため、特殊預金等をその金融機関に譲渡した場合においては、その金融機関は、決済を受けた金額(その金融機関が当該特殊預金等を譲渡した場合においては、その譲渡した特殊預金等の金額を除く。)を限度として、納税義務者に代位して戦時補償特別税を納付する義務がある。
前条第一項の規定は、前項に規定する特殊預金等の譲渡を受けた金融機関については、これを適用しない。
前条第二項の規定は、第一項及び第二項の場合に、これを準用する。
第三十五条 代位納付義務者は、一般申告期限内に、命令の定めるところにより、第三十三条第一項に規定する政府特殊借入金の債権又は特殊預金等の金額、前条第一項又は第二項に規定する決済を受けた金額その他必要な事項を記載した申告書を政府に提出しなければならない。
この法律施行の際現に特殊預金等を有する代位納付義務者は、その特殊預金等の預入先の金融機関を経由して、前項の申告書を提出しなければならない。この場合において、預入先の金融機関が申告書を受理したときは、その申告書は、同項の規定により政府に提出されたものとみなす。
第十四条第三項の規定は、第一項の規定による申告について、これを準用する。
第三十六条 代位納付義務者は、命令の定めるところにより、前条の規定による申告期限内に、戦時補償特別税を納付しなければならない。
前項の場合において、代位納付義務者が前条第二項の規定により申告書を提出したときは、同項に規定する金融機関は、代位納付義務者から戦時補償特別税を徴収し、一般申告期限の属する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第三十七条 第十条の規定は、納税義務者が第十四条の規定による申告書を提出しなかつた場合においても、代位納付義務者が第三十五条の規定による申告書を提出した場合においては、代位納付義務者の納付すべき戦時補償特別税の税額の計算について、これを適用する。
第三十八条 この法律施行の際現に政府特殊借入金の債権を有する代位納付義務者が一般申告期限内に第三十五条第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、政府は、一般申告期限の翌日に、その政府特殊借入金の債権を以て戦時補償特別税を徴収する。
この法律施行の際現に特殊預金等を有する代位納付義務者が一般申告期限内に第三十五条第一項の規定による申告書を提出しなかつた場合その他命令で定める場合においては、その特殊預金等の預入先の金融機関は、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、その特殊預金等について期限前の払戻、解除又は償還をなし、これにより代位納付義務者が取得すべき金銭を以て戦時補償特別税を徴収し、一般申告期限の属する月の翌月末日までに、これを政府に納付しなければならない。
第二十条第一項及び第二項の規定は、前二項の場合に、これを準用する。
前項に規定するものを除く外、第一項及び第二項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第三十九条 第三十六条又は前条の場合において、代位納付義務者が、別表一第十四号又は別表二第一号若しくは第二号に掲げる請求権の決済に必要な資金を損害保険会社又は損害保険中央会に融通したため、貸付金の債権を有するときは、第三十六条第二項又は前条第二項の規定により代位納付義務者が納付すべき税額のうち当該請求権に対する税額に相当する金額の貸付金の債権は、命令の定めるところにより、一般申告期限の翌日に、消滅する。この場合においては、代位納付義務者は、その消滅した貸付金の債権の金額に相当する税額について、同条の規定による税金納付の義務を免除される。
前項の規定は、代位納付義務者が、別表三に掲げる請求権の決済に必要な資金を国民更生金庫又は産業設備営団に融通したため、貸付金の債権を有する場合に、これを準用する。
前二項の場合においては、代位納付義務者は、命令の定めるところにより、その消滅した貸付金の債権の金額その他必要な事項を政府に届け出るとともに、損害保険会社若しくは損害保険中央会又は国民更生金庫若しくは産業設備営団にこれを通知しなければならない。
第四十条 第十八条及び第二十一条の規定は、代位納付義務者の納付すべき戦時補償特別税について、これを準用する。
第二十二条の規定は、代位納付義務者が金融機関に特殊預金等を有する場合において、その特殊預金等の預入先の金融機関について、これを準用する。
前二章の規定は、代位納付義務者の納付すべき戦時補償特別税額の更正若しくは決定又は審査、訴願若しくは行政訴訟について、これを準用する。
第四十一条 第三十三条の規定により戦時補償特別税を納付した代位納付義務者が、戦時補償特別税の納付に充てた政府特殊借入金の債権又は戦時補償特別税を納付するため期限前の払戻、解除若しくは償還を受けた特殊預金等を、納税義務者その他の者から有償で取得した者である場合においては、代位納付義務者は、その政府特殊借入金の債権又は特殊預金等を譲渡した者に対し、命令の定めるところにより、その取得に要した対価に相当する金額の範囲内において、求償をなすことができる。
前項の場合において、譲渡人が求償に応じて履行したときは、当該譲渡人は、その政府特殊借入金の債権又は特殊預金等を有償で取得した者である場合に限り、その政府特殊借入金の債権又は特殊預金等を譲渡した者に対し、命令の定めるところにより、その取得に要した対価に相当する金額の範囲内において、求償をなすことができる。
前項の規定は、同項に規定する譲渡人以外の者でその政府特殊借入金の債権又は特殊預金等を譲渡したものが求償に応じて履行した場合について、これを準用する。
第一項の場合においては、代位納付義務者の有する政府特殊借入金の債権又は特殊預金等について存する担保権は、同項の規定による求償権により、代位納付義務者が受くべきものに対しても、これを行ふことができる。
第四十二条 第三十四条の規定により戦時補償特別税を納付した代位納付義務者は、納税義務者その他同条に規定する債務の決済をなした者に対し、命令の定めるところにより、その納付した税額の範囲内において求償をなすことができる。
前条第二項乃至第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第七章 雑則
第四十三条 納税義務者は、第三十三条又は第三十四条に規定する場合においては、命令の定めるところにより、課税価格その他必要な事項を代位納付義務者に通知しなければならない。
代位納付義務者は、命令の定めるところにより、第三十三条第一項に規定する政府特殊借入金又は特殊預金等の金額、第三十四条第一項又は第二項に規定する決済を受けた金額その他必要な事項を納税義務者に通知しなければならない。
第四十四条 法人が解散した場合において、戦時補償特別税を完納しないで残余財産の分配を終了したときは、その税金については、清算人は、連帯して納税の義務があるものとする。
第四十五条 金融機関が、第十五条第二項、第十九条第二項、第三十六条第二項又は第三十八条第二項の規定により、その徴収した戦時補償特別税を政府に納付する場合において、金融上の都合により、金銭による納付を困難とするときは、命令の定めるところにより、金融機関は、政府に申請して、その有する政府特殊借入金の債権を政府に譲渡し、これを以て戦時補償特別税の納付に充てることができる。
第四十六条 命令で定める法人は、命令の定めるところにより、戦時補償請求権に関する調書を政府に提出しなければならない。
第四十七条 収税官吏は、戦時補償特別税に関する調査又は戦時補償特別税の徴収について必要があるときは、納税義務者若しくは納税義務者と認められる者又は代位納付義務者若しくは代位納付義務者と認められる者に質問し、又はその戦時補償請求権に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる。
第四十八条 収税官吏は、戦時補償特別税に関する調査又は戦時補償特別税の徴収について必要があるときは、左に掲げる者に質問し、又はその戦時補償請求権に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる。
一 第四十六条の規定に基く命令により調書を提出すべき者
二 納税義務者又は納税義務者と認められる者に対し、戦時補償請求権に関係のある財産を譲渡したと認められる者
三 納税義務者又は納税義務者と認められる者から、戦時補償請求権に関係のある財産を取得したと認められる者
第四十九条 収税官吏は、戦時補償特別税の調査に関し必要があるときは、官吏その他の公務員又は特定機関の職員であつた者で戦時補償請求権に関係のある事務に従事してゐたものに質問することができる。
政府は、戦時補償特別税の調査に関し必要があるときは、命令の定めるところにより、前項に規定する者の出頭を命ずることができる。
前項の規定による命令に従ひ出頭した者には、命令の定めるところにより、手当及び旅費を給する。
第五十条 戦時補償特別税は、個人についてはその住所地、この法律の施行地に住所のないときは居所地、法人についてはその本店又は主たる事務所の所在地をその納税地とする。但し、個人は、政府に申告して、居所地を納税地とすることができる。
この法律の施行地に住所及び居所のない個人又はこの法律の施行地に本店若しくは主たる事務所を有しない法人は、命令の定めるところにより、納税地を定めて政府に申告しなければならない。その申告のないときは、政府が、その納税地を指定する。
第五十一条 納税義務者若しくは代位納付義務者たる個人が納税地に現住しないとき、又は納税義務者若しくは代位納付義務者たる法人が納税地に営業所若しくは事務所を有しないときは、第十四条又は第三十五条の規定による申告書の提出その他戦時補償特別税に関する一切の事項を処理させるため、納税地に居住する者の中から納税管理人を定め、政府に申告しなければならない。納税義務者又は代位納付義務者たる個人がこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるとき並びに納税義務者又は代位納付義務者たる法人が納税地に営業所又は事務所を有しないこととなるときもまた同じ。
第五十二条 都道府県、市町村その他の公共団体は、戦時補償特別税の附加税を課することができない。
第五十三条 納税義務者が譲渡を受けた戦時補償請求権(保険の目的の譲渡なくして譲渡を受けた保険契約に因り生じた権利に因るものを含む。)について戦時補償特別税を納付した場合又は第四十一条第一項乃至第三項並びに第四十二条第一項及び第二項の規定により、求償に応じて履行した場合において、その戦時補償請求権が有償で取得したものであるときは、納税義務者は、譲渡人に対し、命令の定めるところにより、その取得に要した対価に相当する金額の範囲内において、求償をなすことができる。
第四十一条第二項乃至第四項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第五十四条 個人の所得税法による所得、営業税法による純益又は旧臨時利得税法による利益のうちに、事業の収益で戦時補償請求権に因るものが算入されてゐるときは、命令の定めるところにより、当該年分の所得税、営業税、営業税附加税又は臨時利得税の税額と当該年分の所得、純益又は利益の金額から当該事業の収益の金額を控除した金額により計算した所得税、営業税、営業税附加税又は臨時利得税の額との差額に相当する税額を、所得税、営業税、営業税附加税又は臨時利得税について免除する。
第五十五条 法人の法人税法による各事業年度の普通所得、営業税法による各事業年度の純益、旧臨時利得税法による利益又は特別法人税法による各事業年度の剰余金のうちに、戦時補償請求権に因る益金が算入されてゐるときは、命令の定めるところにより、当該事業年度分の法人税、営業税、営業税附加税、臨時利得税又は特別法人税の税額と、当該事業年度の所得、純益、利益又は剰余金から戦時補償請求権に因る益金を控除した金額により計算した法人税、営業税、営業税附加税、臨時利得税又は特別法人税の額との差額に相当する税額を、法人税、営業税、営業税附加税、臨時利得税又は特別法人税について免除する。
第五十六条 法人の納付すべき戦時補償特別税は、法人税法による各事業年度の普通所得、営業税法による各事業年度の純益又は特別法人税法による各事業年度の剰余金の計算上、これを損金に算入しない。
法人の資産(商品その他命令で定めるものを除く。)の評価換又は譲渡に因る益金、債務の消滅に因る益金、資本の減少に因る益金その他命令で定める益金については、その合計金額が戦時補償特別税額から戦時補償請求権に因る益金の額を控除した金額に達するまでの金額は、命令の定めるところにより、法人税法による各事業年度の普通所得、営業税法による各事業年度の純益又は特別法人税法による各事業年度の剰余金の計算上、これを益金に算入しない。
前二項の規定の適用については、第五十三条第一項の規定により戦時補償請求権の譲渡人が求償される場合において、その求償される金額は、これを戦時補償特別税とみなす。
第五十七条 この法律施行前に相続の開始があつた場合において、相続財産(相続開始前一年以内に被相続人が贈与した財産を含む。以下同じ。)のうちに戦時補償請求権、政府特殊借入金の債権又は特殊預金等が含まれてゐたときは、命令の定めるところにより、当該相続税額と、当該相続税の課税価格から当該戦時補償請求権について課せられる戦時補償特別税額の全部又は一部を控除した金額によつて計算した相続税の額との差額を、当該相続税について免除する。
前項の規定は、この法律施行前に開始した相続の相続財産のうちに、政府特殊借入金の債権又は特殊預金等により取得した財産が含まれてゐた場合について、これを準用する。この場合において、課税価格から控除する戦時補償特別税額は、その取得した財産の課税価格から当該戦時補償請求権について第十条の規定による控除金額を控除した金額を超えることができない。
第五十八条 この法律施行前に相続の開始があつた場合において、その相続財産につき生じた戦時補償請求権について戦時補償特別税が課せられたときは、当該相続について昭和二十年八月十五日後に納期限を定められた相続税に限り、命令の定めるところにより、当該戦時補償特別税額のうち命令で定める金額の、当該相続についての課税価格に対する割合を、当該相続税額に乗じて算出した金額を免除する。
第五十九条 改正前の戦時特殊損害保険法第十六条の規定(損害保険中央会法第五十六条の規定による改正前のものをいふ。)による戦争保険の業務に関する保険会社に対する損失の補償については、第二十二条(第四十条において準用する場合を含む。)又は第三十九条の規定により消滅した貸付金の債権の金額に相当する金額を、その補償すべき損失の額から控除する。
第六十条 国、地方公共団体若しくは特定機関に対して土地若しくは建物(土地又は建物に定着する物を含む。以下本条中同じ。)又は鉱業権若しくは砂鉱権を譲渡し又は国、地方公共団体若しくは特定機関に土地若しくは建物を収用された場合において、その対価の請求権について戦時補償特別税を課せられたときは、国、地方公共団体又は特定機関は、この法律施行の際現に当該土地若しくは建物又は鉱業権若しくは砂鉱権を有する場合に限り、旧所有者又は旧鉱業権者若しくは旧砂鉱権者の請求により、当該土地若しくは建物又は鉱業権若しくは砂鉱権を、現状において、これらの者に対し、譲渡しなければならない。
前項の規定により土地若しくは建物又は鉱業権若しくは砂鉱権の譲渡を受けようとする者は、当該土地若しくは建物又は鉱業権若しくは砂鉱権の譲渡又は収用の対価の価格に相当する金額からその対価の請求権に課せられた戦時補償特別税額を控除した金額に相当する対価を、国、地方公共団体又は特定機関に支払はなければならない。
前項の場合において国、地方公共団体又は特定機関が当該土地又は建物につき有益費を出したときは、旧所有者は、その費用の額に相当する金額を、前項の金額に加算して支払はなければならない。
第一項の規定により地方公共団体又は特定機関が土地若しくは建物又は鉱業権若しくは砂鉱権を旧所有者又は旧鉱業権者若しくは旧砂鉱権者に譲渡した場合においては、政府は、当該土地若しくは建物又は鉱業権若しくは砂鉱権の譲渡又は収用の対価の請求権に課せられた戦時補償特別税に相当する金額の全部又は一部を、地方公共団体又は特定機関に交付しなければならない。
第一項の規定により土地若しくは建物又は鉱業権若しくは砂鉱権の譲渡を受けようとする者は、一般申告期限後三箇月以内に、その旨を国、地方公共団体又は特定機関に申し出なければならない。 前項に規定するものを除く外、第一項乃至第四項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第六十一条 鉱業権又は砂鉱権が国、地方公共団体又は特定機関に譲渡された後に消滅した場合その他命令で定める場合において、その対価の請求権その他命令で定める請求権について、戦時補償特別税を課せられたときは、旧鉱業権者又は旧砂鉱権者は、鉱業法第三十三条の規定にかかはらず、前に鉱区又は砂鉱区の存した土地に関し、同一鉱物を目的とする鉱業又は同一砂鉱を目的とする砂鉱業の出願について優先権を有する。
鉱業又は砂鉱業の出願について前項の規定の適用を受けようとする者は、命令の定めるところにより、一般申告期限後三箇月以内に、政府に出願しなければならない。
前項に規定するものを除く外、第一項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。
第六十二条 双務契約に因り生じた戦時補償請求権について戦時補償特別税を課せられた場合において、その戦時補償請求権の対価たる給付で、この法律施行前すでに履行されたものがあるときは、納税義務者は、前二条に規定する場合を除く外、他の法令又は契約にかかはらず、戦時補償特別税の課税を理由として物の返還その他何等の請求をもなすことができない。
双務契約に因り生じた戦時補償請求権について戦時補償特別税を課せられた場合においては、納税義務者は、他の法令又は契約にかかはらず、その戦時補償請求権の対価たる給付で、この法律施行の際にまだ履行されてゐないものについては、これを履行する必要がない。
納税義務者以外の者で最初に戦時補償請求権を取得したものは、前二項の規定の適用については、これを納税義務者とみなす。
第六十三条 戦時補償特別税の納税義務者又は代位納付義務者が戦時補償特別税の納付後において有する政府特殊借入金の債権(第十条の規定の適用の結果戦時補償特別税を納付しないこととなつた者の有するものを含む。)及び戦時補償特別税の納付の義務のない者が有する政府特殊借入金の債権は、命令の定めるところにより、これを当該債権の金額と同額の登録国債となすものとする。
第六十四条 政府は、命令の定めるところにより、戦時補償特別税の納付後において存する戦時補償請求権(第十条の規定の適用の結果戦時補償特別税を納付しないこととなつた者の有するものを含む。)で政府に対するものの決済を、国債証券の交付により、行ふことができる。
前項の規定による決済のため交付する国債証券の交付価格は、額面金額による。
政府は、第一項の請求権の決済のため必要な金額を限り、公債を発行することができる。
第六十五条 この法律施行の際現に存する戦時補償請求権で金銭の給付以外の給付をその目的とするものは、この法律施行の日に、消滅する。
第六十六条 会社その他の法人が昭和二十年八月十五日以前においてなした資金の融通、有価証券の応募、引受若しくは買入又は債務の引受若しくは保証に因り生じた又は生ずべき損失で、政府において補填すべきものは、他の法令又は契約にかかはらず、これを補填しない。但し、命令で定めるものはこの限りでない。
第六十七条 政府が会社その他の法人のためになした保証(命令で定めるものを除く。)は、この法律施行の日において、その効力を失ふ。
第八章 罰則
第六十八条 詐偽その他不正の行為により、戦時補償特別税を逋脱した者は、これを一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第六十九条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 正当の事由なくして第四十六条の調書を提出せず、又は同条の調書に虚偽の記載をなしてこれを提出した者
二 第四十七条又は第四十八条の規定による帳簿書類その他の物件の検査を拒み、妨げ又は忌避した者
三 前号の帳簿書類で虚偽の記載をなしたものを呈示した者
四 第四十七条、第四十八条又は第四十九条第一項の規定による収税官吏の質問に対し答弁をなさない者
五 前号の質問に対し虚偽の答弁をなした者
第七十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、第六十八条又は前条第一号若しくは第三号乃至第五号の違反行為をなしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。
第七十一条 第六十八条の罪を犯した者には、刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及び第六十六条の規定は、これを適用しない。但し、懲役刑に処するときは、この限りでない。
第七十二条 第十四条又は第三十五条に規定する申告期限内に第十四条又は第三十五条の規定による申告書の提出を怠つた者は、これを五千円以下の過料に処する。
第七十三条 第四十九条第二項の規定により出頭を命ぜられた者が、正当の事由なくして、出頭しないときは、これを千円以下の過料に処する。
第九章 補則
第七十四条 皇室の財産に係る戦時補償請求権の特別措置に関し必要な事項は、この法律の定めるところに準じ、皇室令を以て、これを定める。
附 則
この法律の施行の期日は、勅令で、これを定める。
この法律は、本州、北海道、四国、九州及びその附属島嶼(勅令で定める地域を除く。)に、これを施行する。
(別表一)
一 旧軍需会社法第十三条(同法に基く命令において準用する場合を含む。)の規定に基く補助金、損失補償金又は利益保証の請求権
二 旧国家総動員法第二十七条又は第二十八条の規定に基く補償金(別表二第三号に掲げるものを除く。)又は補助金の請求権
三 旧兵器等製造事業特別助成法第四条の規定に基く設備建設費の請求権
四 旧兵器等製造事業特別助成法第五条の規定に基く設備の買上代金請求権及びこれに代るべき請求権
五 旧防空法第十六条第二項の規定による補助金で工場の疎開に関するものの請求権及び工場の疎開に関する国のその他の補助金の請求権
六 政府(第一条第二項に規定する政府をいふ。以下別表中同じ。)に対する物資、労務若しくは利益の供給又は政府の注文に係る仕事の完成に対する対価の請求権
七 政府に対する物資、労務若しくは利益の供給又は政府の注文に係る仕事の完成に関する契約を政府が解除した場合の損害賠償請求権又は仕掛半製品のまま引き取つた場合その他これに準ずる場合の対価の請求権
八 政府に徴傭された船舶の原状回復及び修理に関する費用の請求権
九 政府に対する損害賠償請求権で財産上の損害に因るもの(別表一のうち別号に掲げるもの及び別表二に掲げるものを除く。)
十 今次の戦争の遂行に関して、政府が法令の特別の規定に基かずに処分をなしたことに因る損失補償請求権
十一 産業設備営団と事業者との間の設備建設契約に基く産業設備営団に対する設備建設費の請求権又は産業設備営団と事業者との間に設備建設契約の予約がある場合において、事業者の建設した設備につき、産業設備営団が予約を履行しないことに因る損害賠償請求権
十二 産業設備営団が終戦に因り船舶、機械等の製造又は購入の契約を解除した場合の損害賠償請求権
十三 日本倉庫統制株式会社に対し倉庫用建築物を譲渡した場合の代金請求権(当該建築物が除却された場合のものに限る。)
十四 旧戦争保険臨時措置法若しくは旧戦時特殊損害保険法又はこれらによる旨を定めた勅令(南洋群島戦争保険臨時措置令を含む。)に基く戦争保険契約による戦争保険金の請求権で、この法律の施行地外にある財産を保険の目的とするもの
(別表二)
一 旧戦争保険臨時措置法又は旧戦時特殊損害保険法に基く戦争保険契約による戦争保険金の請求権(別表一第十四号に掲げるものを除く。)
二 旧損害保険国営再保険法に基く勅令に掲げる戦争保険金の請求権若しくは従前の損害保険中央会法第十八条第一項に掲げる海上保険金(木船保険の保険金を含む。)の請求権又は漁船保険法施行令第二条第二項に掲げる保険金の請求権
三 旧戦時海運管理令第二条の規定により使用された船舶の、戦争に関する事故に因る損失に対する補償金の請求権
四 政府に徴傭された船舶の、戦争に関する事故に因る損害賠償請求権
五 旧防空法第五条ノ五第二項の規定により指定された地区内に存する建築物(工事中のものを含む。以下同じ。)を除却する場合における補償金及び当該建築物(その存する土地を含む。)の売買代金の請求権
(別表三)
国民更生金庫、産業設備営団、帝国鉱業開発株式会社又は日本石炭株式会社その他命令で定める者に対する請求権で企業整備に関するもの