第一條 本法ハ軍需金融其ノ他ノ金融ノ圓滑適正ヲ圖ルト共ニ資金ノ效率的使用ヲ促進スルコトヲ目的トス
第二條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ金融機關ニシテ軍需會社其ノ他命令ヲ以テ定ムル者(以下事業者ト稱ス)ニ對スル資金ノ融通ヲ爲スベキモノ(以下軍需金融機關ト稱ス)ヲ各事業者ニ付指定スルコトヲ得
第三條 前條第一項ノ指定アリタルトキハ軍需金融機關以外ノ金融機關ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外事業者ニ對シ資金ノ融通ヲ爲スコトヲ得ズ軍需金融機關其ノ資金ノ融通ヲ爲スベキ事業者(以下擔當事業者ト稱ス)以外ノ事業者ニ對シ亦同ジ
第四條 軍需金融機關ハ擔當事業者ニ對シ當該事業者ノ事業ノ適實ナル遂行ニ必要ナル資金ヲ簡易適時ニ且當該事業者ノ資金ノ使用ヲ效率的ナラシムル配意ノ下ニ融通スベシ
第五條 軍需金融機關ハ擔當事業者ヨリ資金ノ融通ノ申込ヲ受ケタル場合ニ於テ之ニ應ジ難シト認ムルトキハ遲滯ナク其ノ理由ヲ具シ政府ニ其ノ旨ヲ申出ヅベシ
前項ノ申出アリタル場合ニ於テハ政府ハ當該資金ニ關シ必要ナル措置ヲ講ズベシ
第六條 政府ハ軍需金融機關ニ對シ擔當事業者ニ對スル資金ノ融通ニ付其ノ限度ヲ指定スルコトヲ得
前項ノ指定ヲ受ケタル軍需金融機關ハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外擔當事業者ニ對シ其ノ指定ヲ受ケタル限度ヲ超エテ資金ノ融通ヲ爲スコトヲ得ズ
第七條 軍需金融機關ハ其ノ職員ノ中ヨリ各擔當事業者ニ付軍需金融擔當者ヲ選任スベシ
軍需金融擔當者ハ常時當該軍需金融機關ト擔當事業者トノ間ノ連絡ニ當リ當該事業者ノ事業ノ適實ナル遂行ニ必要ナル資金ノ調達ニ支障ナカラシムルト共ニ其ノ資金ノ效率的使用ノ促進ニ努ムベシ
第八條 軍需金融機關ノ職員ニシテ事業者ニ對スル資金ノ融通ニ關スル事務ニ從事スルモノハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト看做ス
第九條 軍需金融機關ハ擔當事業者ヨリ委託ヲ受ケタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ當該事業者ノ爲賣買代金、前受金、前渡金其ノ他之ニ準ズベキモノノ受拂ニ關スル事務ヲ取扱フベシ
政府ハ必要アリト認ムルトキハ事業者ニ對シ前項ノ事務ヲ其ノ資金ノ融通ヲ受クベキ軍需金融機關ニ委託スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ軍需金融機關ニ對シ擔當事業者ニ對スル資金ノ融通、事業者ヨリノ預金、貯金若ハ金錢信託ノ受入又ハ前條第一項ノ事務ニ付利率、期限、手數料其ノ他ノ條件ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十一條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ軍需金融機關ニ對シ營業所ノ設置若ハ廢止、定款ノ變更其ノ他必要ナル事項ヲ命ジ又ハ政府ノ指定スル營業所ニ於ケル業務ノ執行ヲ制限スルコトヲ得
第十二條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ軍需金融機關ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ擔當事業者ニ對スル資金ノ融通ニ因ル收入金ノ一部ヲ積立ツベキコトヲ命ズルコトヲ得
政府ハ必要アリト認ムルトキハ前項ノ積立金ノ運用又ハ使用ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
軍需金融機關ハ勅令ヲ以テ定ムル目的ノ爲政府ノ許可ヲ受ケタル場合ヲ除クノ外第一項ノ積立金ヲ使用スルコトヲ得ズ但シ前項ノ命令アリタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
政府ハ大東亞戰爭終了後別ニ法律ノ定ムル所ニ依リ第一項ノ積立金ノ一部ヲ政府ニ納付スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第一項ノ規定ニ依リ積立ツル金額ニ關シテハ法人稅法ニ依ル所得、營業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依ル利益ノ計算ニ付勅令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
第十三條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依ル金融機關ニ對シ事業者ヨリノ預金、貯金又ハ金錢信託ノ受入ヲ制限又ハ禁止スルコトヲ得
第十四條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ金融機關ニ對シ軍需金融機關ノ業務ニ協力セシムル爲必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十五條 軍需金融機關ニ對シ擔當事業者ガ設定スル工場財團其ノ他ノ財團ノ抵當權ニ付財團目錄ヲ調製スル場合ニ於テハ其ノ財團ヲ組成スベキ機械、器具、電柱、電線其ノ他ノ物件ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ一括シテ表示スルヲ以テ足ル
民法第百九十二條乃至第百九十四條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ同項ノ財團目錄ニ一括表示セラレタル物件ガ第三者ニ引渡サレタル場合ニ之ヲ準用ス
第十六條 勅令ヲ以テ定ムル金融機關ガ其ノ營業ノ全部若ハ一部ノ讓渡又ハ勅令ヲ以テ定ムル他ノ金融機關ノ營業ノ全部若ハ一部ノ讓受ノ決議ヲ爲シタルトキハ其ノ決議ノ日ヨリ二週間內ニ決議ノ要旨及營業ノ讓渡又ハ讓受ニ異議アル債權者ハ一定ノ期間內ニ之ヲ述ブベキ旨ヲ公吿スルコトヲ得但シ預金者其ノ他勅令ヲ以テ定ムル債權者以外ノ知レタル債權者ニハ各別ニ之ヲ催吿スルコトヲ要ス
債權者ガ第一項ノ期間內ニ異議ヲ述ベザリシトキハ營業ノ讓渡又ハ讓受ヲ承認シタルモノト看做ス
債權者ガ第一項ノ期間內ニ異議ヲ述ベタルトキハ營業ノ讓渡又ハ讓受ヲ爲サントスル同項ノ金融機關ハ辨濟ヲ爲シ若ハ相當ノ擔保ヲ供シ又ハ債權者ニ辨濟ヲ受ケシムルコトヲ目的トシテ信託業務ヲ營ム銀行若ハ信託會社ニ相當ノ財產ヲ信託スルコトヲ要ス
第一項ノ公吿アリタルトキハ營業ノ讓渡ヲ爲シタル金融機關ノ預金者及同項ノ勅令ヲ以テ定ムル債權者ニ對シ民法第四百六十七條ノ規定ニ依ル確定日附アル證書ヲ以テスル通知アリタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テハ其ノ公吿ノ日附ヲ以テ確定日附トス
第十七條 勅令ヲ以テ定ムル金融機關ハ預金契約其ノ他ノ多數人ヲ相手方トスル定型的契約ニ付約款ノ變更ヲ爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受ケ當該變更ニ異議アル相手方ハ一定ノ期間內ニ之ヲ述ブベキ旨ヲ公吿スルコトヲ得但シ其ノ期間ハ一月ヲ下ルコトヲ得ズ
相手方ガ前項ノ期間內ニ異議ヲ述ベザリシトキハ契約ノ變更ヲ承諾シタルモノト看做ス
第十八條 勅令ヲ以テ定ムル金融機關ハ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ社債其ノ他ノ債券ノ償還ニ付勅令ノ定ムル所ニ依リ原契約ニ拘ラズ抽籤ノ方法ニ依ラザルコトヲ得
前項ノ規定ハ勅令ヲ以テ定ムル金融機關ガ擔保附社債信託法第二十三條又ハ第二十八條(第三十條第一項ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ依リ社債ノ償還ヲ爲ス權限ヲ有スル場合ニ於ケル社債ノ償還ニ之ヲ準用ス
第十九條 勅令ヲ以テ定ムル金融機關ノ株主總會ノ招集及決議ニ關シテハ他ノ法律ノ規定ニ拘ラズ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第二十條 勅令ヲ以テ定ムル金融機關ニ關シ必要アルトキハ業務ノ制限、取締等ニ關スル法律ノ規定ニ付勅令ヲ以テ其ノ適用ヲ排除シ又ハ特例ヲ設クルコトヲ得
第二十一條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業者ニ對シ資金ノ調達方法ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十二條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ日本銀行、軍需金融機關又ハ金融統制團體令ニ依ル團體ノ職員ヲシテ臨時資金調整法、軍需會社法其ノ他ノ法律ニ依ル資金又ハ經理ニ關スル檢查ニ關スル事務ニ從事セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ同項ノ檢查ニ關スル職權ニ係ル罰則ノ適用ニ付テハ同項ノ職員ハ之ヲ同項ノ事務ニ從事スル官吏ト看做ス
第二十三條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ第二條第一項ノ規定ニ依ル軍需金融機關ノ指定ヲ取消スコトヲ得
第二十四條 政府ハ本法又ハ本法ニ基キテ爲ス命令若ハ處分ノ效果ノ確保上支障アリト認ムルトキハ金融機關ノ取締役、監查役其ノ他ノ役員ヲ解任スルコトヲ得