戦時特殊損害保険法
法令番号: 法律第十八號
公布年月日: 昭和19年2月15日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル戰時特殊損害保險法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十九年二月十四日
內閣總理大臣 東條英機
大藏大臣 賀屋興宣
內務大臣 安藤紀三郞
法律第十八號
戰時特殊損害保險法
第一條 本法ニ於テ戰爭保險トハ戰爭ノ際ニ於ケル戰鬪行爲又ハ之ニ關聯アル事件ニ因ル火災、損壤其ノ他命令ヲ以テ定ムル事故ノミヲ保險事故トスル損害保險ヲ謂フ
本法ニ於テ地震保險トハ戰爭ノ際ニ於ケル地震(地震ニ因ル津浪ヲ含ム)若ハ噴火又ハ此等ニ關聯アル事件ニ因ル火災、損壤其ノ他命令ヲ以テ定ムル事故ノミヲ保險事故トスル損害保險ヲ謂フ
第二條 戰爭保險又ハ地震保險ノ目的タル物ニ付政府ノ指定スル保險會社ニ對シ保險料ヲ添ヘ戰爭保險契約又ハ地震保險契約ノ申込ヲ爲シタル者アルトキハ申込ノ時ニ於テ其ノ物ニ付申込者ト當該保險會社トノ間ニ戰爭保險契約又ハ地震保險契約成立シタルモノト看做ス
第三條 戰爭保險又ハ地震保險ノ目的タル物ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノニ付命令ヲ以テ定ムル損害保險契約成立シタルトキハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外當該保險契約成立ノ時ニ於テ其ノ物ニ付當該保險契約ノ當事者間ニ戰爭保險契約又ハ地震保險契約成立シタルモノト看做ス
前項ノ命令ヲ以テ定ムル損害保險契約消滅シタルトキハ當該保險契約消滅ノ時ニ於テ前項ノ規定ニ依リ成立シタル戰爭保險契約又ハ地震保險契約モ亦消滅ス
第一項ノ各保險契約ニ付保險料ノ支拂ナキ場合又ハ支拂ハレタル保險料ガ各保險契約ノ保險料ノ合計額ニ滿タザル場合及同項ノ規定ニ依リ成立シタル戰爭保險契約又ハ地震保險契約ノ目的タル物ニ付他ニ戰爭保險契約又ハ地震保險契約存スル場合ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條 政府ハ國家經濟ノ秩序ヲ維持シ又ハ國民生活ノ安定ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ戰爭保險又ハ地震保險ノ目的タル物ノ所有者ニ對シ其ノ物ヲ戰爭保險又ハ地震保險ニ付スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第五條 命令ヲ以テ定ムル運送保險其ノ他ノ損害保險ニ在リテハ保險會社ハ當該保險契約ニ別段ノ定アルトキト雖モ第一條第二項ニ規定スル事故ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノニ因リテ生ジタル損害ヲ塡補スル責ヲ免ルルコトヲ得ズ
第六條 戰爭保險又ハ地震保險ノ被保險者ハ其ノ負擔ニ於テ損害ノ防止ヲ力ムルコトヲ要ス
第七條 保險會社ノ塡補スベキ損害ノ額ガ命令ヲ以テ定ムル額ニ滿タザルトキハ保險會社ハ戰爭保險若ハ地震保險ノ保險金又ハ第五條ノ損害保險ニ付同條ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ニ對スル保險金ノ支拂ノ責ニ任ゼズ
第八條 戰爭保險契約又ハ地震保險契約ニ依リ保險會社ノ塡補スベキ損害ノ額ガ當該保險金額ニ滿タザル場合ニ於テハ當該保險金額ヨリ其ノ損害ノ額ヲ控除シタル殘額ヲ以テ當該保險契約ノ殘存保險期間ノ保險金額トス但シ其ノ殘額ガ命令ヲ以テ定ムル額ニ滿タザルトキハ當該保險契約ハ其ノ效力ヲ失フ
第九條 本法ニ定ムルモノノ外保險ノ目的、保險金額、保險料、保險期間其ノ他戰爭保險及地震保險ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十條 保險會社ガ戰爭保險又ハ地震保險ニ付塡補スベキ損害ノ額トシテ命令ヲ以テ定ムル額ヲ超ユル額ヲ認定セントスルトキハ損害ノ原因及額ニ關シ戰時損害保險審査會ノ審査ヲ經ルコトヲ要ス第五條ノ損害保險ニ付同條ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ヲ塡補スベキ場合ニ於テ塡補スベキ損害ノ額トシテ命令ヲ以テ定ムル額ヲ超ユル額ヲ認定セントスルトキ亦同ジ
第十一條 政府ハ保險事故發生ノ狀況ニ依リ必要アリト認ムルトキハ戰爭保險又ハ地震保險ニ付保險會社ガ塡補スベキ損害ノ原因又ハ額若ハ其ノ査定基準ヲ認定スルコトヲ得第五條ノ損害保險ニ付保險會社ガ同條ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ヲ塡補スベキ場合亦同ジ
政府前項ノ認定ヲ爲サントスルトキハ一定ノ期間內ニ之ヲ爲スベキ旨ヲ吿示スベシ
政府第一項ノ認定ヲ爲シタルトキハ之ヲ保險會社ニ通知スベシ
政府第一項ノ認定ヲ爲スニハ戰時損害保險審査會ノ議ヲ經ルコトヲ要ス
前條ノ規定ハ保險會社ガ第一項ノ認定ニ基キ保險金ノ支拂ヲ爲ス場合ニハ之ヲ適用セズ
第十二條 政府ハ前條第一項ノ認定ヲ爲ス爲必要アリト認ムルトキハ戰時損害保險調査委員ヲシテ損害ノ調査ヲ爲サシムルコトヲ得
戰時損害保險調査委員ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三條 當該官吏又ハ戰時損害保險調査委員ハ第十一條第一項又ハ前條第一項ノ規定ニ依リ損害ノ調査ヲ爲ス爲必要アリト認ムルトキハ保險會社、保險契約者、被保險者其ノ他適當ト認ムル者ニ對シ質問ヲ爲スコトヲ得
第十四條 戰爭保險又ハ地震保險ニ關スル事項ノミヲ記載シタル書類ニハ印紙稅ヲ課セズ
第十五條 政府ハ戰爭保險、地震保險又ハ第五條ノ損害保險ニ關シ必要アリト認ムルトキハ保險會社、保險契約者又ハ被保險者ヲシテ必要ナル報吿ヲ爲サシムルコトヲ得
政府ハ戰爭保險、地震保險又ハ第五條ノ損害保險ニ關シ必要アリト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ當該保險ノ目的ノ所在ノ場所、保險會社ノ營業所其ノ他ノ場所ニ臨檢シ當該物件又ハ帳簿書類ヲ檢査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十六條 政府ハ戰爭保險又ハ地震保險ニ關スル業務ニ因リ保險會社ガ損失ヲ受ケタルトキハ當該保險會社ニ對シ其ノ損失ヲ補償ス
保險會社ハ戰爭保險又ハ地震保險ニ關スル業務ニ因リ利益ヲ得タルトキハ其ノ利益金ヲ政府ニ納付スベシ
前二項ノ損失及利益ヲ決定スル基準其ノ他損失補償及利益金納付ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十七條 第五條ノ損害保險ニ付同條ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ニ關シ保險會社ノ支出シタル金額ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノガ同條ノ損害保險ニ付保險會社ノ收入シタル金額中命令ヲ以テ定ムル額ヲ超ユルトキハ政府ハ其ノ差額ニ相當スル金額ヲ保險會社ニ對シ補償ス
第五條ノ損害保險ニ付保險會社ノ收入シタル金額中命令ヲ以テ定ムル額ガ同條ノ損害保險ニ付同條ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ニ關シ保險會社ノ支出シタル金額ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ超ユルトキハ保險會社ハ其ノ差額ニ相當スル金額ヲ政府ニ納付スベシ
前二項ノ補償金及納付金ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條 法人稅法ニ依ル所得、營業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依ル利益ノ計算ニ付テハ保險會社ノ戰爭保險關係又ハ地震保險關係ニ基キ收入シタル金額、第五條ノ損害保險ニ付收入シタル金額中命令ヲ以テ定ムル額及第十六條第一項又ハ前條第一項ノ規定ニ依ル補償金ハ其ノ總益金ヨリ、保險會社ノ戰爭保險關係又ハ地震保險關係ニ基キ支出シタル金額、第五條ノ損害保險ニ付同條ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ニ關シ支出シタル金額ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノ及第十六條第二項又ハ前條第二項ノ規定ニ依ル納付金ハ其ノ總損金ヨリ之ヲ控除ス
前項ノ規定ハ樺太ニ在リテハ之ヲ適用セズ
第十九條 政府ハ必要アリト認ムルトキハ保險會社其ノ他勅令ヲ以テ定ムル者ヲシテ第十一條第一項若ハ第十二條第一項ノ規定ニ依リ政府若ハ戰時損害保險調査委員ノ行フ損害ノ調査ニ協力セシメ又ハ本法ニ依リ政府ノ行フ事務ノ一部ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第二十條 第四條ノ規定ニ基ク命令ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十一條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十五條第一項ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
二 同條第二項ノ規定ニ依ル臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
第二十二條 法人又ハ人ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第二十條又ハ前條第一號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十條又ハ前條第一號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二十三條 當該官吏、戰時損害保險審査會ノ會長委員幹事、戰時損害保險調査委員、第十九條ノ規定ニ依リ政府若ハ戰時損害保險調査委員ノ行フ損害ノ調査ニ協力シ若ハ政府ノ行フ事務ノ一部ヲ取扱フ者(其ノ者ガ法人ナルトキハ當該事務ニ從事スル職員)又ハ此等ノ職ニ在リタル者本法ニ依ル職務執行ニ關シ知得タル法人又ハ人ノ業務上ノ祕密ヲ漏泄シ又ハ竊用シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
戰爭保險臨時措置法ハ之ヲ廢止ス
舊法ニ依ル戰爭保險契約ニシテ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ本法施行ノ時ニ於テ本法施行ノ時(當該戰爭保險契約ノ保險期間ノ始期ガ本法施行後ナルトキハ其ノ始期)ニ始リ當該戰爭保險契約ノ保險期間ノ終期ニ終ル期間ヲ保險期間トシテ成立シタル本法ニ依ル戰爭保險契約ト看做ス
舊法ニ依ル戰爭保險契約ニ付本法施行前發生シタル事故ニ因ル損害ノ塡補ニ關シテハ仍舊法ニ依ル
第十六條及第十八條第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ舊法ニ依ル戰爭保險ハ之ヲ本法ニ依ル戰爭保險ト看做ス
本法施行前舊法ニ違反シタル者ノ處罰ニ付テハ仍舊法ニ依ル
前四項ニ定ムルモノノ外本法施行ノ際必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル戦時特殊損害保険法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十九年二月十四日
内閣総理大臣 東条英機
大蔵大臣 賀屋興宣
内務大臣 安藤紀三郎
法律第十八号
戦時特殊損害保険法
第一条 本法ニ於テ戦争保険トハ戦争ノ際ニ於ケル戦闘行為又ハ之ニ関連アル事件ニ因ル火災、損壌其ノ他命令ヲ以テ定ムル事故ノミヲ保険事故トスル損害保険ヲ謂フ
本法ニ於テ地震保険トハ戦争ノ際ニ於ケル地震(地震ニ因ル津浪ヲ含ム)若ハ噴火又ハ此等ニ関連アル事件ニ因ル火災、損壌其ノ他命令ヲ以テ定ムル事故ノミヲ保険事故トスル損害保険ヲ謂フ
第二条 戦争保険又ハ地震保険ノ目的タル物ニ付政府ノ指定スル保険会社ニ対シ保険料ヲ添ヘ戦争保険契約又ハ地震保険契約ノ申込ヲ為シタル者アルトキハ申込ノ時ニ於テ其ノ物ニ付申込者ト当該保険会社トノ間ニ戦争保険契約又ハ地震保険契約成立シタルモノト看做ス
第三条 戦争保険又ハ地震保険ノ目的タル物ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノニ付命令ヲ以テ定ムル損害保険契約成立シタルトキハ命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除クノ外当該保険契約成立ノ時ニ於テ其ノ物ニ付当該保険契約ノ当事者間ニ戦争保険契約又ハ地震保険契約成立シタルモノト看做ス
前項ノ命令ヲ以テ定ムル損害保険契約消滅シタルトキハ当該保険契約消滅ノ時ニ於テ前項ノ規定ニ依リ成立シタル戦争保険契約又ハ地震保険契約モ亦消滅ス
第一項ノ各保険契約ニ付保険料ノ支払ナキ場合又ハ支払ハレタル保険料ガ各保険契約ノ保険料ノ合計額ニ満タザル場合及同項ノ規定ニ依リ成立シタル戦争保険契約又ハ地震保険契約ノ目的タル物ニ付他ニ戦争保険契約又ハ地震保険契約存スル場合ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四条 政府ハ国家経済ノ秩序ヲ維持シ又ハ国民生活ノ安定ヲ図ル為必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ戦争保険又ハ地震保険ノ目的タル物ノ所有者ニ対シ其ノ物ヲ戦争保険又ハ地震保険ニ付スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第五条 命令ヲ以テ定ムル運送保険其ノ他ノ損害保険ニ在リテハ保険会社ハ当該保険契約ニ別段ノ定アルトキト雖モ第一条第二項ニ規定スル事故ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノニ因リテ生ジタル損害ヲ填補スル責ヲ免ルルコトヲ得ズ
第六条 戦争保険又ハ地震保険ノ被保険者ハ其ノ負担ニ於テ損害ノ防止ヲ力ムルコトヲ要ス
第七条 保険会社ノ填補スベキ損害ノ額ガ命令ヲ以テ定ムル額ニ満タザルトキハ保険会社ハ戦争保険若ハ地震保険ノ保険金又ハ第五条ノ損害保険ニ付同条ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ニ対スル保険金ノ支払ノ責ニ任ゼズ
第八条 戦争保険契約又ハ地震保険契約ニ依リ保険会社ノ填補スベキ損害ノ額ガ当該保険金額ニ満タザル場合ニ於テハ当該保険金額ヨリ其ノ損害ノ額ヲ控除シタル残額ヲ以テ当該保険契約ノ残存保険期間ノ保険金額トス但シ其ノ残額ガ命令ヲ以テ定ムル額ニ満タザルトキハ当該保険契約ハ其ノ効力ヲ失フ
第九条 本法ニ定ムルモノノ外保険ノ目的、保険金額、保険料、保険期間其ノ他戦争保険及地震保険ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十条 保険会社ガ戦争保険又ハ地震保険ニ付填補スベキ損害ノ額トシテ命令ヲ以テ定ムル額ヲ超ユル額ヲ認定セントスルトキハ損害ノ原因及額ニ関シ戦時損害保険審査会ノ審査ヲ経ルコトヲ要ス第五条ノ損害保険ニ付同条ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ヲ填補スベキ場合ニ於テ填補スベキ損害ノ額トシテ命令ヲ以テ定ムル額ヲ超ユル額ヲ認定セントスルトキ亦同ジ
第十一条 政府ハ保険事故発生ノ状況ニ依リ必要アリト認ムルトキハ戦争保険又ハ地震保険ニ付保険会社ガ填補スベキ損害ノ原因又ハ額若ハ其ノ査定基準ヲ認定スルコトヲ得第五条ノ損害保険ニ付保険会社ガ同条ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ヲ填補スベキ場合亦同ジ
政府前項ノ認定ヲ為サントスルトキハ一定ノ期間内ニ之ヲ為スベキ旨ヲ告示スベシ
政府第一項ノ認定ヲ為シタルトキハ之ヲ保険会社ニ通知スベシ
政府第一項ノ認定ヲ為スニハ戦時損害保険審査会ノ議ヲ経ルコトヲ要ス
前条ノ規定ハ保険会社ガ第一項ノ認定ニ基キ保険金ノ支払ヲ為ス場合ニハ之ヲ適用セズ
第十二条 政府ハ前条第一項ノ認定ヲ為ス為必要アリト認ムルトキハ戦時損害保険調査委員ヲシテ損害ノ調査ヲ為サシムルコトヲ得
戦時損害保険調査委員ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三条 当該官吏又ハ戦時損害保険調査委員ハ第十一条第一項又ハ前条第一項ノ規定ニ依リ損害ノ調査ヲ為ス為必要アリト認ムルトキハ保険会社、保険契約者、被保険者其ノ他適当ト認ムル者ニ対シ質問ヲ為スコトヲ得
第十四条 戦争保険又ハ地震保険ニ関スル事項ノミヲ記載シタル書類ニハ印紙税ヲ課セズ
第十五条 政府ハ戦争保険、地震保険又ハ第五条ノ損害保険ニ関シ必要アリト認ムルトキハ保険会社、保険契約者又ハ被保険者ヲシテ必要ナル報告ヲ為サシムルコトヲ得
政府ハ戦争保険、地震保険又ハ第五条ノ損害保険ニ関シ必要アリト認ムルトキハ当該官吏ヲシテ当該保険ノ目的ノ所在ノ場所、保険会社ノ営業所其ノ他ノ場所ニ臨検シ当該物件又ハ帳簿書類ヲ検査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十六条 政府ハ戦争保険又ハ地震保険ニ関スル業務ニ因リ保険会社ガ損失ヲ受ケタルトキハ当該保険会社ニ対シ其ノ損失ヲ補償ス
保険会社ハ戦争保険又ハ地震保険ニ関スル業務ニ因リ利益ヲ得タルトキハ其ノ利益金ヲ政府ニ納付スベシ
前二項ノ損失及利益ヲ決定スル基準其ノ他損失補償及利益金納付ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十七条 第五条ノ損害保険ニ付同条ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ニ関シ保険会社ノ支出シタル金額ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノガ同条ノ損害保険ニ付保険会社ノ収入シタル金額中命令ヲ以テ定ムル額ヲ超ユルトキハ政府ハ其ノ差額ニ相当スル金額ヲ保険会社ニ対シ補償ス
第五条ノ損害保険ニ付保険会社ノ収入シタル金額中命令ヲ以テ定ムル額ガ同条ノ損害保険ニ付同条ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ニ関シ保険会社ノ支出シタル金額ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ超ユルトキハ保険会社ハ其ノ差額ニ相当スル金額ヲ政府ニ納付スベシ
前二項ノ補償金及納付金ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八条 法人税法ニ依ル所得、営業税法ニ依ル純益及臨時利得税法ニ依ル利益ノ計算ニ付テハ保険会社ノ戦争保険関係又ハ地震保険関係ニ基キ収入シタル金額、第五条ノ損害保険ニ付収入シタル金額中命令ヲ以テ定ムル額及第十六条第一項又ハ前条第一項ノ規定ニ依ル補償金ハ其ノ総益金ヨリ、保険会社ノ戦争保険関係又ハ地震保険関係ニ基キ支出シタル金額、第五条ノ損害保険ニ付同条ニ規定スル事故ニ因リテ生ジタル損害ニ関シ支出シタル金額ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノ及第十六条第二項又ハ前条第二項ノ規定ニ依ル納付金ハ其ノ総損金ヨリ之ヲ控除ス
前項ノ規定ハ樺太ニ在リテハ之ヲ適用セズ
第十九条 政府ハ必要アリト認ムルトキハ保険会社其ノ他勅令ヲ以テ定ムル者ヲシテ第十一条第一項若ハ第十二条第一項ノ規定ニ依リ政府若ハ戦時損害保険調査委員ノ行フ損害ノ調査ニ協力セシメ又ハ本法ニ依リ政府ノ行フ事務ノ一部ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第二十条 第四条ノ規定ニ基ク命令ニ違反シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第二十一条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第十五条第一項ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者
二 同条第二項ノ規定ニ依ル臨検検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
第二十二条 法人又ハ人ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ第二十条又ハ前条第一号ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十条又ハ前条第一号ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二十三条 当該官吏、戦時損害保険審査会ノ会長委員幹事、戦時損害保険調査委員、第十九条ノ規定ニ依リ政府若ハ戦時損害保険調査委員ノ行フ損害ノ調査ニ協力シ若ハ政府ノ行フ事務ノ一部ヲ取扱フ者(其ノ者ガ法人ナルトキハ当該事務ニ従事スル職員)又ハ此等ノ職ニ在リタル者本法ニ依ル職務執行ニ関シ知得タル法人又ハ人ノ業務上ノ秘密ヲ漏泄シ又ハ窃用シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
戦争保険臨時措置法ハ之ヲ廃止ス
旧法ニ依ル戦争保険契約ニシテ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ本法施行ノ時ニ於テ本法施行ノ時(当該戦争保険契約ノ保険期間ノ始期ガ本法施行後ナルトキハ其ノ始期)ニ始リ当該戦争保険契約ノ保険期間ノ終期ニ終ル期間ヲ保険期間トシテ成立シタル本法ニ依ル戦争保険契約ト看做ス
旧法ニ依ル戦争保険契約ニ付本法施行前発生シタル事故ニ因ル損害ノ填補ニ関シテハ仍旧法ニ依ル
第十六条及第十八条第一項ノ規定ノ適用ニ付テハ旧法ニ依ル戦争保険ハ之ヲ本法ニ依ル戦争保険ト看做ス
本法施行前旧法ニ違反シタル者ノ処罰ニ付テハ仍旧法ニ依ル
前四項ニ定ムルモノノ外本法施行ノ際必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム