戦争保険臨時措置法
法令番号: 法律第九十六號
公布年月日: 昭和16年12月19日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル戰爭保險臨時措置法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年十二月十八日
內閣總理大臣 東條英機
大藏大臣 賀屋興宣
法律第九十六號
戰爭保險臨時措置法
第一條 本法ニ於テ戰爭保險トハ戰爭ノ際ニ於ケル戰鬪行爲ニ因ル火災又ハ損壤(消防又ハ避難ニ必要ナル處分ニ因ル損壤ヲ含ム)ノミヲ保險事故トスル損害保險ヲ謂フ
第二條 戰爭保險ノ目的タル物ニ付政府ノ指定スル保險會社ニ對シ保險料ヲ添ヘ戰爭保險契約ノ申込ヲ爲シタル者アルトキハ申込ノ時ニ於テ其ノ物ニ付申込者ト當該保險會社トノ間ニ戰爭保險契約成立シタルモノト看做ス
第三條 被保險者ハ其ノ負擔ニ於テ損害ノ防止ニ力ムルコトヲ要ス
第四條 政府ハ國民經濟上必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ戰爭保險ノ保險金ノ支拂ヲ受クル者ニ對シ其ノ保險金ノ處分ニ關シ必要ナル指示ヲ爲シ又ハ保險會社ニ對シ戰爭保險ノ保險金ノ支拂ヲ延期スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ支拂ヲ延期シタル保險金ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ利息ヲ附スベシ
第五條 左ノ場合ニ於テハ保險會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ戰爭保險ノ保險金ノ全部又ハ一部ノ支拂ノ責ニ任ゼズ
一 被保險者ガ法令又ハ法令ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ保險ノ目的ニ付損害ノ豫防又ハ防止ヲ怠リタルトキ
二 塡補スベキ損害ノ額ガ命令ヲ以テ定ムル額ニ滿タザルトキ
第六條 保險會社ノ塡補スベキ損害ノ額ガ保險金額ニ滿タザル場合ニ於テハ保險金額ヨリ其ノ損害ノ額ヲ控除シタル殘額ヲ以テ殘存保險期間ノ保險金額トス但シ其ノ殘額ガ命令ヲ以テ定ムル額ニ滿タザルトキハ戰爭保險契約ハ其ノ效力ヲ失フ
第七條 本法ニ定ムルモノノ外保險ノ目的、保險金額、保險料、保險期間其ノ他戰爭保險ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條 保險會社ガ塡補スベキ損害ノ額トシテ命令ヲ以テ定ムル額ヲ超ユル額ヲ認定セントスルトキハ損害ノ原因及額ニ關シ戰時損害保險審査會ノ審査ヲ經ルコトヲ要ス
第九條 戰爭保險ニ關スル書類ニハ印紙稅ヲ課セズ
第十條 政府ハ戰爭保險ニ關シ必要アリト認ムルトキハ保險會社、保險契約者又ハ被保險者ヲシテ必要ナル報吿ヲ爲サシムルコトヲ得
政府ハ戰爭保險ニ關シ必要アリト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ戰爭保險ノ目的ノ所在ノ場所、保險會社ノ營業所其ノ他ノ場所ニ臨檢シ當該物件又ハ帳簿書類ヲ檢査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十一條 保險會社ノ戰爭保險關係ニ基ク支拂金額及其ノ支拂ノ爲ニ借入レタル金額ノ利息ノ合計額ガ保險會社ノ戰爭保險關係ニ基ク收入金額及其ノ利息竝ニ戰爭保險ノ保險事故發生シタル保險ノ目的ニ付損害保險契約アルトキハ其ノ保險料中命令ヲ以テ定ムル額ノ合計額ヲ超ユルトキハ政府ハ其ノ差額ニ相當スル金額ヲ保險會社ニ對シ補償ス
保險會社ノ戰爭保險關係ニ基ク支拂金額及其ノ支拂ノ爲ニ借入レタル金額ノ利息ノ合計額ガ保險會社ノ戰爭保險關係ニ基ク收入金額及其ノ利息竝ニ戰爭保險ノ保險事故發生シタル保險ノ目的ニ付損害保險契約アルトキハ其ノ保險料中命令ヲ以テ定ムル額ノ合計額ニ滿タザルトキハ保險會社ハ其ノ差額ニ相當スル金額ヲ政府ニ納付スベシ
第一項ノ規定ニ依ル補償金及前項ノ規定ニ依ル納付金ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ保險會社ニ對シ戰爭保險ノ爲ニ支出シタル經費ノ一部ヲ補助スルコトヲ得
第十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十條第一項ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
二 同條第二項ノ規定ニ依ル臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
法人又ハ人ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ前項第一號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第一項第一號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
戰爭保險ノ目的タル物ニ付本法施行ノ日ヨリ三十日以內ニ政府ノ指定スル保險會社ニ對シ保險料ヲ添ヘ戰爭保險契約ノ申込ヲ爲シタル者アル場合ニ於テ申込ガ保險事故發生後ナルトキハ其ノ發生ノ時ニ遡リテ其ノ物ニ付申込者ト當該保險會社トノ間ニ命令ノ定ムル金額ヲ以テ保險金額トスル戰爭保險契約成立シタルモノト看做ス
前項ノ規定ハ本法施行前保險事故發生シタル場合ニモ之ヲ適用ス
損害保險國營再保險法第十四條中「損害保險國營再保險審査會」ヲ「戰時損害保險審査會」ニ改ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル戦争保険臨時措置法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年十二月十八日
内閣総理大臣 東条英機
大蔵大臣 賀屋興宣
法律第九十六号
戦争保険臨時措置法
第一条 本法ニ於テ戦争保険トハ戦争ノ際ニ於ケル戦闘行為ニ因ル火災又ハ損壌(消防又ハ避難ニ必要ナル処分ニ因ル損壌ヲ含ム)ノミヲ保険事故トスル損害保険ヲ謂フ
第二条 戦争保険ノ目的タル物ニ付政府ノ指定スル保険会社ニ対シ保険料ヲ添ヘ戦争保険契約ノ申込ヲ為シタル者アルトキハ申込ノ時ニ於テ其ノ物ニ付申込者ト当該保険会社トノ間ニ戦争保険契約成立シタルモノト看做ス
第三条 被保険者ハ其ノ負担ニ於テ損害ノ防止ニ力ムルコトヲ要ス
第四条 政府ハ国民経済上必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ戦争保険ノ保険金ノ支払ヲ受クル者ニ対シ其ノ保険金ノ処分ニ関シ必要ナル指示ヲ為シ又ハ保険会社ニ対シ戦争保険ノ保険金ノ支払ヲ延期スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ支払ヲ延期シタル保険金ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ利息ヲ附スベシ
第五条 左ノ場合ニ於テハ保険会社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ戦争保険ノ保険金ノ全部又ハ一部ノ支払ノ責ニ任ゼズ
一 被保険者ガ法令又ハ法令ニ基キテ為ス処分ニ違反シ保険ノ目的ニ付損害ノ予防又ハ防止ヲ怠リタルトキ
二 填補スベキ損害ノ額ガ命令ヲ以テ定ムル額ニ満タザルトキ
第六条 保険会社ノ填補スベキ損害ノ額ガ保険金額ニ満タザル場合ニ於テハ保険金額ヨリ其ノ損害ノ額ヲ控除シタル残額ヲ以テ残存保険期間ノ保険金額トス但シ其ノ残額ガ命令ヲ以テ定ムル額ニ満タザルトキハ戦争保険契約ハ其ノ効力ヲ失フ
第七条 本法ニ定ムルモノノ外保険ノ目的、保険金額、保険料、保険期間其ノ他戦争保険ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八条 保険会社ガ填補スベキ損害ノ額トシテ命令ヲ以テ定ムル額ヲ超ユル額ヲ認定セントスルトキハ損害ノ原因及額ニ関シ戦時損害保険審査会ノ審査ヲ経ルコトヲ要ス
第九条 戦争保険ニ関スル書類ニハ印紙税ヲ課セズ
第十条 政府ハ戦争保険ニ関シ必要アリト認ムルトキハ保険会社、保険契約者又ハ被保険者ヲシテ必要ナル報告ヲ為サシムルコトヲ得
政府ハ戦争保険ニ関シ必要アリト認ムルトキハ当該官吏ヲシテ戦争保険ノ目的ノ所在ノ場所、保険会社ノ営業所其ノ他ノ場所ニ臨検シ当該物件又ハ帳簿書類ヲ検査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十一条 保険会社ノ戦争保険関係ニ基ク支払金額及其ノ支払ノ為ニ借入レタル金額ノ利息ノ合計額ガ保険会社ノ戦争保険関係ニ基ク収入金額及其ノ利息並ニ戦争保険ノ保険事故発生シタル保険ノ目的ニ付損害保険契約アルトキハ其ノ保険料中命令ヲ以テ定ムル額ノ合計額ヲ超ユルトキハ政府ハ其ノ差額ニ相当スル金額ヲ保険会社ニ対シ補償ス
保険会社ノ戦争保険関係ニ基ク支払金額及其ノ支払ノ為ニ借入レタル金額ノ利息ノ合計額ガ保険会社ノ戦争保険関係ニ基ク収入金額及其ノ利息並ニ戦争保険ノ保険事故発生シタル保険ノ目的ニ付損害保険契約アルトキハ其ノ保険料中命令ヲ以テ定ムル額ノ合計額ニ満タザルトキハ保険会社ハ其ノ差額ニ相当スル金額ヲ政府ニ納付スベシ
第一項ノ規定ニ依ル補償金及前項ノ規定ニ依ル納付金ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ保険会社ニ対シ戦争保険ノ為ニ支出シタル経費ノ一部ヲ補助スルコトヲ得
第十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第十条第一項ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者
二 同条第二項ノ規定ニ依ル臨検検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
法人又ハ人ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前項第一号ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第一項第一号ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
戦争保険ノ目的タル物ニ付本法施行ノ日ヨリ三十日以内ニ政府ノ指定スル保険会社ニ対シ保険料ヲ添ヘ戦争保険契約ノ申込ヲ為シタル者アル場合ニ於テ申込ガ保険事故発生後ナルトキハ其ノ発生ノ時ニ遡リテ其ノ物ニ付申込者ト当該保険会社トノ間ニ命令ノ定ムル金額ヲ以テ保険金額トスル戦争保険契約成立シタルモノト看做ス
前項ノ規定ハ本法施行前保険事故発生シタル場合ニモ之ヲ適用ス
損害保険国営再保険法第十四条中「損害保険国営再保険審査会」ヲ「戦時損害保険審査会」ニ改ム