帝国鉱業開発株式会社法
法令番号: 法律第八十二號
公布年月日: 昭和14年4月12日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル帝國鑛業開發株式會社法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年四月十一日
內閣總理大臣 男爵 平沼騏一郞
內務大臣 侯爵 木戶幸一
商工大臣 八田嘉明
大藏大臣 石渡莊太郞
法律第八十二號
帝國鑛業開發株式會社法
第一章 總則
第一條 帝國鑛業開發株式會社ハ重要鑛物(金鑛及砂金ヲ除ク以下之ニ同ジ)ノ資源ノ開發ヲ促進シ其ノ增產ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社トス
第二條 帝國鑛業開發株式會社ハ其ノ本店ヲ東京市ニ置ク
帝國鑛業開發株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ支店又ハ出張所ヲ設クルコトヲ得
第三條 帝國鑛業開發株式會社ノ資本ハ三千萬圓トシ內千五百萬圓ハ政府ノ出資トス
帝國鑛業開發株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第四條 帝國鑛業開發株式會社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ帝國法人ニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第五條 帝國鑛業開發株式會社ノ存立期間ハ設立登記ノ日ヨリ三十年トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ延長スルコトヲ得
第六條 帝國鑛業開發株式會社ニ非ザルモノハ帝國鑛業開發株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第二章 役員
第七條 帝國鑛業開發株式會社ニ社長副社長各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第八條 社長ハ帝國鑛業開發株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ社長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副社長及理事ハ社長ヲ補助シ帝國鑛業開發株式會社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ帝國鑛業開發株式會社ノ業務ヲ監査ス
第九條 社長及副社長ハ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ四年トス
理事ハ株主中ヨリ株主總會ニ於テ二倍ノ候補者ヲ選擧シ政府其ノ中ヨリ之ヲ命ジ其ノ任期ヲ三年トス
監事ハ株主中ヨリ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ二年トス
鑛業ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間帝國鑛業開發株式會社ノ役員ト爲ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十條 社長、副社長及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三章 營業
第十一條 帝國鑛業開發株式會社ハ左ノ事業ヲ營ムモノトス
一 重要鑛物ヲ目的トスル鑛業(砂鑛業ヲ含ム以下之ニ同ジ)
二 重要鑛物ニ關スル鑛床ノ調査
三 重要鑛物ヲ目的トスル鑛業ニ對スル技術ニ關スル指導
四 重要鑛物ノ賣買又ハ其ノ斡旋
五 重要鑛物ヲ目的トスル鑛業又ハ製鍊業ノ爲必要ナル器具、機械、材料又ハ設備ノ賣買
六 重要鑛物ヲ目的トスル鑛業又ハ製鍊業ニ對スル資金ノ融通又ハ投資
帝國鑛業開發株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ノ外本會社ノ目的達成上必要ナル諸事業ヲ營ムコトヲ得
第十二條 日本興業銀行ハ前條第一項第六號ノ事業ニ關シ帝國鑛業開發株式會社ノ業務ノ一部ヲ代理スルコトヲ得
帝國鑛業開發株式會社日本興業銀行ヲシテ業務ノ一部ヲ代理セシメントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第四章 鑛業開發債券
第十三條 帝國鑛業開發株式會社ハ拂込ミタル株金額ノ五倍ヲ限リ鑛業開發債券ヲ發行スルコトヲ得
鑛業開發債券ヲ發行スル場合ニ於ケル株主總會ノ決議ハ資本ノ半額以上ニ當ル株主出席シ其ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
第十四條 鑛業開發債券ヲ發行セントスル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十五條 政府ハ鑛業開發債券ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ得
第十六條 鑛業開發債券ハ無記名式トス但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ因リ記名式ト爲スコトヲ得
第十七條 鑛業開發債券ノ所有者ハ帝國鑛業開發株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
第十八條 帝國鑛業開發株式會社ハ社債借換ノ爲一時第十三條ノ制限ニ依ラズ鑛業開發債券ヲ發行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ發行後一月以內ニ其ノ社債總額ニ相當スル舊鑛業開發債券ヲ償還スベシ
第五章 準備金
第十九條 帝國鑛業開發株式會社ハ每營業年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且利益配當ノ平均ヲ得シムル爲利益金額ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第六章 監督及助成
第二十條 政府ハ帝國鑛業開發株式會社ノ業務ヲ監督ス
第二十一條 帝國鑛業開發株式會社借入金ヲ爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第二十二條 定款ノ變更、利益金ノ處分、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十三條 帝國鑛業開發株式會社ハ每營業年度ノ事業計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第二十四條 政府ハ帝國鑛業開發株式會社ノ業務ニ關シ監督上又ハ重要鑛物ノ增產上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ重要鑛物ノ增產上必要ナル命令ヲ爲シタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二十五條 政府ハ帝國鑛業開發株式會社監理官ヲ置キ帝國鑛業開發株式會社ノ業務ヲ監視セシム
第二十六條 帝國鑛業開發株式會社監理官ハ何時ニテモ帝國鑛業開發株式會社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
帝國鑛業開發株式會社監理官必要ト認ムルトキハ何時ニテモ帝國鑛業開發株式會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
帝國鑛業開發株式會社監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十七條 政府帝國鑛業開發株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十八條 帝國鑛業開發株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
第二十九條 帝國鑛業開發株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ達セザルトキハ政府ハ初營業年度及爾後五年間ヲ限リ之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ但シ其ノ額ハ初營業年度ヲ除キ每營業年度ニ於テハ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ相當スル額竝ニ當該營業年度ニ於テ支拂ヒタル鑛業開發債券及借入金ノ利息額ノ合計額ヲ超ユルコトヲ得ズ
每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
初營業年度及爾後五年間ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ二分ノ一ヲ配當準備ノ爲別ニ積立ツベシ
第二項ノ規定ニ依リ補給金ヲ償還シ尙殘餘アリタルトキハ之ヲ前項ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過シタル當該營業年度ノ利益金ト看做ス
前二項ノ規定ニ依ル積立金ハ後營業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配當シ得ベキ利益金ト看做ス
第三十條 帝國鑛業開發株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ一ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第三十一條 帝國鑛業開發株式會社ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ十年間其ノ事業ニ付所得稅及營業收益稅ヲ免除ス
第三十二條 北海道、府縣及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前條ノ規定ニ依リ所得稅及營業收益稅ヲ免除セラレタル期間帝國鑛業開發株式會社ノ事業ニ對シ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ政府ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七章 罰則
第三十三條 帝國鑛業開發株式會社左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ社長又ハ社長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス副社長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副社長又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
一 本法ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第十一條ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ營ミタルトキ
三 第十三條ノ規定ニ違反シ鑛業開發債券ヲ發行シタルトキ
四 第十八條ノ規定ニ違反シ鑛業開發債券ノ償還ヲ爲サザルトキ
五 第二十四條ノ規定ニ基キテ爲シタル命令ニ違反シタルトキ
第三十四條 帝國鑛業開發株式會社ノ社長、副社長又ハ理事第十條ノ規定ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第三十五條 第六條ノ規定ニ違反シタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第三十六條 非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前三條ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第三十七條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八條 政府ハ設立委員ヲ命ジ帝國鑛業開發株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
第三十九條 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
第四十條 前條ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第四十一條 株式申込證ニハ定款認可ノ年月日竝ニ商法第百二十六條第二項第二號、第四號及第五號ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
第四十二條 設立委員株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第四十三條 設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第四十四條 創立總會ニ於テハ第九條ノ規定ニ準ジ理事候補者ノ選擧及監事ノ選任ヲ行フベシ
第四十五條 創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ帝國鑛業開發株式會社社長ニ引渡スベシ
第四十六條 本法施行ノ際帝國鑛業開發株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ商號ト爲ス會社ハ本法施行後六月以內ニ其ノ商號ヲ變更スルコトヲ要ス
第三十五條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ前項ニ揭グル者ニ適用セズ
第四十七條 
登錄稅法第六條第一項第十一號中「又ハ產金振興債券」ヲ「、產金振興債券又ハ鑛業開發債券」ニ改ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル帝国鉱業開発株式会社法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年四月十一日
内閣総理大臣 男爵 平沼騏一郎
内務大臣 侯爵 木戸幸一
商工大臣 八田嘉明
大蔵大臣 石渡荘太郎
法律第八十二号
帝国鉱業開発株式会社法
第一章 総則
第一条 帝国鉱業開発株式会社ハ重要鉱物(金鉱及砂金ヲ除ク以下之ニ同ジ)ノ資源ノ開発ヲ促進シ其ノ増産ヲ図ル為必要ナル事業ヲ営ムコトヲ目的トスル株式会社トス
第二条 帝国鉱業開発株式会社ハ其ノ本店ヲ東京市ニ置ク
帝国鉱業開発株式会社ハ政府ノ認可ヲ受ケ支店又ハ出張所ヲ設クルコトヲ得
第三条 帝国鉱業開発株式会社ノ資本ハ三千万円トシ内千五百万円ハ政府ノ出資トス
帝国鉱業開発株式会社ハ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ資本ヲ増加スルコトヲ得
第四条 帝国鉱業開発株式会社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共団体、帝国臣民又ハ帝国法人ニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第五条 帝国鉱業開発株式会社ノ存立期間ハ設立登記ノ日ヨリ三十年トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ延長スルコトヲ得
第六条 帝国鉱業開発株式会社ニ非ザルモノハ帝国鉱業開発株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ其ノ商号ト為スコトヲ得ズ
第二章 役員
第七条 帝国鉱業開発株式会社ニ社長副社長各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第八条 社長ハ帝国鉱業開発株式会社ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ社長欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副社長及理事ハ社長ヲ補助シ帝国鉱業開発株式会社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ帝国鉱業開発株式会社ノ業務ヲ監査ス
第九条 社長及副社長ハ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ四年トス
理事ハ株主中ヨリ株主総会ニ於テ二倍ノ候補者ヲ選挙シ政府其ノ中ヨリ之ヲ命ジ其ノ任期ヲ三年トス
監事ハ株主中ヨリ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ二年トス
鉱業ヲ監督スル官庁ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間帝国鉱業開発株式会社ノ役員ト為ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十条 社長、副社長及理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三章 営業
第十一条 帝国鉱業開発株式会社ハ左ノ事業ヲ営ムモノトス
一 重要鉱物ヲ目的トスル鉱業(砂鉱業ヲ含ム以下之ニ同ジ)
二 重要鉱物ニ関スル鉱床ノ調査
三 重要鉱物ヲ目的トスル鉱業ニ対スル技術ニ関スル指導
四 重要鉱物ノ売買又ハ其ノ斡旋
五 重要鉱物ヲ目的トスル鉱業又ハ製錬業ノ為必要ナル器具、機械、材料又ハ設備ノ売買
六 重要鉱物ヲ目的トスル鉱業又ハ製錬業ニ対スル資金ノ融通又ハ投資
帝国鉱業開発株式会社ハ政府ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ノ外本会社ノ目的達成上必要ナル諸事業ヲ営ムコトヲ得
第十二条 日本興業銀行ハ前条第一項第六号ノ事業ニ関シ帝国鉱業開発株式会社ノ業務ノ一部ヲ代理スルコトヲ得
帝国鉱業開発株式会社日本興業銀行ヲシテ業務ノ一部ヲ代理セシメントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第四章 鉱業開発債券
第十三条 帝国鉱業開発株式会社ハ払込ミタル株金額ノ五倍ヲ限リ鉱業開発債券ヲ発行スルコトヲ得
鉱業開発債券ヲ発行スル場合ニ於ケル株主総会ノ決議ハ資本ノ半額以上ニ当ル株主出席シ其ノ議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
第十四条 鉱業開発債券ヲ発行セントスル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十五条 政府ハ鉱業開発債券ノ元本ノ償還及利息ノ支払ニ付保証スルコトヲ得
第十六条 鉱業開発債券ハ無記名式トス但シ応募者又ハ所有者ノ請求ニ因リ記名式ト為スコトヲ得
第十七条 鉱業開発債券ノ所有者ハ帝国鉱業開発株式会社ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
第十八条 帝国鉱業開発株式会社ハ社債借換ノ為一時第十三条ノ制限ニ依ラズ鉱業開発債券ヲ発行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ発行後一月以内ニ其ノ社債総額ニ相当スル旧鉱業開発債券ヲ償還スベシ
第五章 準備金
第十九条 帝国鉱業開発株式会社ハ毎営業年度ニ準備金トシテ資本ノ欠損ヲ補フ為利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且利益配当ノ平均ヲ得シムル為利益金額ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第六章 監督及助成
第二十条 政府ハ帝国鉱業開発株式会社ノ業務ヲ監督ス
第二十一条 帝国鉱業開発株式会社借入金ヲ為サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第二十二条 定款ノ変更、利益金ノ処分、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第二十三条 帝国鉱業開発株式会社ハ毎営業年度ノ事業計画ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第二十四条 政府ハ帝国鉱業開発株式会社ノ業務ニ関シ監督上又ハ重要鉱物ノ増産上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ重要鉱物ノ増産上必要ナル命令ヲ為シタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ要スベキ補償金ノ総額ガ帝国議会ノ協賛ヲ経タル金額ヲ超エザル範囲内ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス
第二十五条 政府ハ帝国鉱業開発株式会社監理官ヲ置キ帝国鉱業開発株式会社ノ業務ヲ監視セシム
第二十六条 帝国鉱業開発株式会社監理官ハ何時ニテモ帝国鉱業開発株式会社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ検査スルコトヲ得
帝国鉱業開発株式会社監理官必要ト認ムルトキハ何時ニテモ帝国鉱業開発株式会社ニ命ジ業務ニ関スル諸般ノ計算及状況ヲ報告セシムルコトヲ得
帝国鉱業開発株式会社監理官ハ株主総会其ノ他諸般ノ会議ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十七条 政府帝国鉱業開発株式会社ノ決議又ハ役員ノ行為ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十八条 帝国鉱業開発株式会社ハ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ対シ利益ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
第二十九条 帝国鉱業開発株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ニ達セザルトキハ政府ハ初営業年度及爾後五年間ヲ限リ之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ但シ其ノ額ハ初営業年度ヲ除キ毎営業年度ニ於テハ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ四ノ割合ニ相当スル額並ニ当該営業年度ニ於テ支払ヒタル鉱業開発債券及借入金ノ利息額ノ合計額ヲ超ユルコトヲ得ズ
毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
初営業年度及爾後五年間ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ二分ノ一ヲ配当準備ノ為別ニ積立ツベシ
第二項ノ規定ニ依リ補給金ヲ償還シ尚残余アリタルトキハ之ヲ前項ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過シタル当該営業年度ノ利益金ト看做ス
前二項ノ規定ニ依ル積立金ハ後営業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配当シ得ベキ利益金ト看做ス
第三十条 帝国鉱業開発株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配当ヲ為サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配当ガ総株式ニ付払込ミタル株金額ニ対シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式ノ払込ミタル株金額ニ対シ一ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ配当スベシ
第三十一条 帝国鉱業開発株式会社ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ十年間其ノ事業ニ付所得税及営業収益税ヲ免除ス
第三十二条 北海道、府県及市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ前条ノ規定ニ依リ所得税及営業収益税ヲ免除セラレタル期間帝国鉱業開発株式会社ノ事業ニ対シ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情ニ基キ政府ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七章 罰則
第三十三条 帝国鉱業開発株式会社左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ社長又ハ社長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ五千円以下ノ過料ニ処ス副社長又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副社長又ハ理事ヲ過料ニ処スルコト亦同ジ
一 本法ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 第十一条ノ規定ニ依ラズシテ業務ヲ営ミタルトキ
三 第十三条ノ規定ニ違反シ鉱業開発債券ヲ発行シタルトキ
四 第十八条ノ規定ニ違反シ鉱業開発債券ノ償還ヲ為サザルトキ
五 第二十四条ノ規定ニ基キテ為シタル命令ニ違反シタルトキ
第三十四条 帝国鉱業開発株式会社ノ社長、副社長又ハ理事第十条ノ規定ニ違反シタルトキハ千円以下ノ過料ニ処ス
第三十五条 第六条ノ規定ニ違反シタル者ハ千円以下ノ過料ニ処ス
第三十六条 非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前三条ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第三十七条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八条 政府ハ設立委員ヲ命ジ帝国鉱業開発株式会社ノ設立ニ関スル一切ノ事務ヲ処理セシム
第三十九条 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
第四十条 前条ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ株式総数ヨリ政府ニ割当ツベキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第四十一条 株式申込証ニハ定款認可ノ年月日並ニ商法第百二十六条第二項第二号、第四号及第五号ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
第四十二条 設立委員株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ政府ニ提出シ其ノ検査ヲ受クベシ
第四十三条 設立委員ハ前条ノ検査ヲ受ケタル後遅滞ナク各株ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムベシ
前項ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スベシ
第四十四条 創立総会ニ於テハ第九条ノ規定ニ準ジ理事候補者ノ選挙及監事ノ選任ヲ行フベシ
第四十五条 創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ帝国鉱業開発株式会社社長ニ引渡スベシ
第四十六条 本法施行ノ際帝国鉱業開発株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ商号ト為ス会社ハ本法施行後六月以内ニ其ノ商号ヲ変更スルコトヲ要ス
第三十五条ノ規定ハ前項ノ期間内之ヲ前項ニ掲グル者ニ適用セズ
第四十七条 
登録税法第六条第一項第十一号中「又ハ産金振興債券」ヲ「、産金振興債券又ハ鉱業開発債券」ニ改ム