中支那振興株式会社法
法令番号: 法律第八十二號
公布年月日: 昭和13年4月30日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル中支那振興株式會社法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年四月二十八日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
外務大臣 廣田弘毅
海軍大臣 米內光政
陸軍大臣 杉山元
大藏大臣 賀屋興宣
法律第八十二號
中支那振興株式會社法
第一章 總則
第一條 中支那振興株式會社ハ中支那ニ於ケル經濟ノ復興及開發ヲ助成スルヲ目的トスル株式會社トシ其ノ本店ヲ上海ニ置ク
第二條 中支那振興株式會社ノ資本ハ一億圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第三條 政府ハ五千萬圓ヲ限リ中支那振興株式會社ニ出資スベシ
政府ハ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目的ト爲スコトヲ得
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第四條 中支那振興株式會社ハ株金全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第五條 中支那振興株式會社ノ株式ハ記名式トス
第六條 中支那振興株式會社ニ非ザルモノハ中支那振興株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第七條 中支那振興株式會社ノ定款ノ變更ハ資本ノ半額以上ニ當ル株主出席シ其ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
第二章 役員
第八條 中支那振興株式會社ニ總裁副總裁各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第九條 總裁ハ中支那振興株式會社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副總裁ハ總裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副總裁及理事ハ總裁ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ從ヒ中支那振興株式會社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
監事ハ中支那振興株式會社ノ業務ヲ監査ス
第十條 總裁及副總裁ハ勅裁ヲ經テ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ政府ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
第十一條 總裁、副總裁及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三章 業務
第十二條 中支那振興株式會社ハ左ノ事業ニ對シ投資又ハ融資ヲ爲スモノトス
一 交通及運輸ニ關スル事業
二 通信ニ關スル事業
三 電氣、瓦斯及水道ニ關スル事業
四 鑛產ニ關スル事業
五 水產ニ關スル事業
六 前各號ノ外中支那ニ於ケル公共ノ利益又ハ產業ノ振興ノ爲必要ナル事業
特殊ノ事情アル場合ニ於テハ中支那振興株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ前項各號ニ揭グル事業ヲ自ラ經營スルコトヲ得
第四章 中支振興債券
第十三條 中支那振興株式會社ハ拂込株金額ノ五倍ヲ限リ中支振興債券ヲ發行スルコトヲ得
中支那振興株式會社ハ中支振興債券借換ノ爲一時前項ノ制限ニ依ラズ中支振興債券ヲ發行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ發行後一月內ニ其ノ發行額面金額ニ相當スル舊中支振興債券ヲ償還スベシ
中支振興債券ヲ發行スル場合ニ於テハ商法第二百九條ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十四條 中支振興債券ヲ發行セントスル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十五條 政府ハ中支振興債券ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ得
第十六條 中支振興債券ノ所有者ハ中支那振興株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
第五章 準備金
第十七條 中支那振興株式會社ハ每營業年度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且利益配當ノ平均ヲ得シムル爲利益金額ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第六章 政府ノ監督及助成
第十八條 政府ハ中支那振興株式會社ノ業務ヲ監督ス
第十九條 中支那振興株式會社借入金ヲ爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第二十條 定款ノ變更、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十一條 中支那振興株式會社ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ利益金ノ處分ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十二條 中支那振興株式會社ハ每營業年度ノ投資及融資竝ニ自營事業ノ計畫ヲ定メ事業開始一月前迄ニ之ヲ政府ニ提出シ認可ヲ受クベシ之ニ重大ナル變更ヲ加ヘントスルトキ亦同ジ
第二十三條 政府ハ中支那振興株式會社ノ業務ニ關シ監督上、國防上又ハ中支那ニ於ケル公共ノ利益若ハ產業ノ振興ノ爲必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ國防上必要ナル命令ヲ爲シタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二十四條 政府ハ中支那振興株式會社監理官ヲ置キ中支那振興株式會社ノ業務ヲ監視セシム
中支那振興株式會社監理官ハ何時ニテモ中支那振興株式會社ノ金庫帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
中支那振興株式會社監理官ハ必要ト認ムルトキハ何時ニテモ中支那振興株式會社ニ命ジテ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
中支那振興株式會社監理官ハ株主總會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十五條 政府ハ中支那振興株式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十六條 中支那振興株式會社ハ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
第二十七條 中支那振興株式會社ノ每營業年度ニ於ケル投資、融資及自營事業ニ因ル收入ノ投資、融資及自營事業資金ノ總額ニ對スル割合(以下收入割合ト稱ス)ガ年百分ノ六ニ達セザルトキハ政府ハ初營業年度及爾後五年間左ノ各號ノ金額ノ合計額ヲ限度トシ配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄其ノ不足額ニ相當スル金額ヲ補給ス
一 投資、融資及自營事業資金ノ總額中政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金ニ依リタル部分ニ百分ノ七ヨリ收入割合ヲ減ジタル差ヲ乘ジテ得ベキ金額
二 投資、融資及自營事業資金ノ總額中社債收入金(社債前借金ヲ含ム以下同ジ)ニ依リタル部分ニ百分ノ五ヨリ收入割合ヲ減ジタル差ヲ乘ジテ得ベキ金額
每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前項ノ補給金ノ償還ニ充ツベシ
第一項ノ投資融資及自營事業ニ因ル收入、投資融資及自營事業資金ノ總額竝ニ其ノ中政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金ニ依リタル部分及社債收入金ニ依リタル部分ノ計算方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八條 中支那振興株式會社ノ每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額及政府ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對シ一ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第七章 罰則
第二十九條 中支那振興株式會社ガ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ總裁又ハ總裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副總裁ヲ百圓以上二千圓以下ノ過料ニ處ス副總裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副總裁又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第三十條 本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第三十一條 政府ハ設立委員ヲ命ジ中支那振興株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
第三十二條 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
政府前項ノ規定ニ依ル認可ヲ爲サントスルトキハ政府ノ出資ノ目的タル金錢以外ノ財產ノ價格及之ニ對シテ與フル株式ノ數ニ付政府出資財產評價委員會ノ議ヲ經ベシ
政府出資財產評價委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十三條 前條ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第三十四條 株式申込證ニハ定款認可ノ年月日竝ニ商法第百二十六條第二項第二號、第四號及第五號ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
第三十五條 設立委員ハ株主ノ募集終リタルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第三十六條 設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第三十七條 創立總會ニ於テハ第十條ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
第三十八條 創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ中支那振興株式會社總裁ニ引渡スベシ
第三十九條 政府ハ中支那振興株式會社ニ對スル出資ノ目的ニ充ツル爲帝國鐵道特別會計ヨリ其ノ所屬物件ヲ無償ニテ一般會計ニ保管換ヲ爲スコトヲ得
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル中支那振興株式会社法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年四月二十八日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
外務大臣 広田弘毅
海軍大臣 米内光政
陸軍大臣 杉山元
大蔵大臣 賀屋興宣
法律第八十二号
中支那振興株式会社法
第一章 総則
第一条 中支那振興株式会社ハ中支那ニ於ケル経済ノ復興及開発ヲ助成スルヲ目的トスル株式会社トシ其ノ本店ヲ上海ニ置ク
第二条 中支那振興株式会社ノ資本ハ一億円トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第三条 政府ハ五千万円ヲ限リ中支那振興株式会社ニ出資スベシ
政府ハ金銭以外ノ財産ヲ以テ出資ノ目的ト為スコトヲ得
政府所有ノ株式ノ株金払込ハ其ノ他ノ株式ノ株金払込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第四条 中支那振興株式会社ハ株金全額払込前ト雖モ其ノ資本ヲ増加スルコトヲ得
第五条 中支那振興株式会社ノ株式ハ記名式トス
第六条 中支那振興株式会社ニ非ザルモノハ中支那振興株式会社又ハ之ニ類似ノ名称ヲ以テ其ノ商号ト為スコトヲ得ズ
第七条 中支那振興株式会社ノ定款ノ変更ハ資本ノ半額以上ニ当ル株主出席シ其ノ議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス
第二章 役員
第八条 中支那振興株式会社ニ総裁副総裁各一人、理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第九条 総裁ハ中支那振興株式会社ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副総裁ハ総裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副総裁及理事ハ総裁ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ従ヒ中支那振興株式会社ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ参与ス
監事ハ中支那振興株式会社ノ業務ヲ監査ス
第十条 総裁及副総裁ハ勅裁ヲ経テ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ政府ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主総会ニ於テ之ヲ選任シ其ノ任期ヲ三年トス
第十一条 総裁、副総裁及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三章 業務
第十二条 中支那振興株式会社ハ左ノ事業ニ対シ投資又ハ融資ヲ為スモノトス
一 交通及運輸ニ関スル事業
二 通信ニ関スル事業
三 電気、瓦斯及水道ニ関スル事業
四 鉱産ニ関スル事業
五 水産ニ関スル事業
六 前各号ノ外中支那ニ於ケル公共ノ利益又ハ産業ノ振興ノ為必要ナル事業
特殊ノ事情アル場合ニ於テハ中支那振興株式会社ハ政府ノ認可ヲ受ケ前項各号ニ掲グル事業ヲ自ラ経営スルコトヲ得
第四章 中支振興債券
第十三条 中支那振興株式会社ハ払込株金額ノ五倍ヲ限リ中支振興債券ヲ発行スルコトヲ得
中支那振興株式会社ハ中支振興債券借換ノ為一時前項ノ制限ニ依ラズ中支振興債券ヲ発行スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ発行後一月内ニ其ノ発行額面金額ニ相当スル旧中支振興債券ヲ償還スベシ
中支振興債券ヲ発行スル場合ニ於テハ商法第二百九条ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十四条 中支振興債券ヲ発行セントスル場合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十五条 政府ハ中支振興債券ノ元本ノ償還及利息ノ支払ニ付保証スルコトヲ得
第十六条 中支振興債券ノ所有者ハ中支那振興株式会社ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
第五章 準備金
第十七条 中支那振興株式会社ハ毎営業年度ニ準備金トシテ資本ノ欠損ヲ補フ為利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立テ且利益配当ノ平均ヲ得シムル為利益金額ノ百分ノ二以上ヲ積立ツベシ
第六章 政府ノ監督及助成
第十八条 政府ハ中支那振興株式会社ノ業務ヲ監督ス
第十九条 中支那振興株式会社借入金ヲ為サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第二十条 定款ノ変更、合併及解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第二十一条 中支那振興株式会社ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ利益金ノ処分ヲ為スコトヲ得ズ
第二十二条 中支那振興株式会社ハ毎営業年度ノ投資及融資並ニ自営事業ノ計画ヲ定メ事業開始一月前迄ニ之ヲ政府ニ提出シ認可ヲ受クベシ之ニ重大ナル変更ヲ加ヘントスルトキ亦同ジ
第二十三条 政府ハ中支那振興株式会社ノ業務ニ関シ監督上、国防上又ハ中支那ニ於ケル公共ノ利益若ハ産業ノ振興ノ為必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ国防上必要ナル命令ヲ為シタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ニ因リ生ジタル損失ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ要スベキ補償金ノ総額ガ帝国議会ノ協賛ヲ経タル金額ヲ超エザル範囲内ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス
第二十四条 政府ハ中支那振興株式会社監理官ヲ置キ中支那振興株式会社ノ業務ヲ監視セシム
中支那振興株式会社監理官ハ何時ニテモ中支那振興株式会社ノ金庫帳簿及諸般ノ文書物件ヲ検査スルコトヲ得
中支那振興株式会社監理官ハ必要ト認ムルトキハ何時ニテモ中支那振興株式会社ニ命ジテ業務ニ関スル諸般ノ計算及状況ヲ報告セシムルコトヲ得
中支那振興株式会社監理官ハ株主総会其ノ他諸般ノ会議ニ出席シテ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十五条 政府ハ中支那振興株式会社ノ決議又ハ役員ノ行為ガ法令、法令ニ基キテ為ス処分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十六条 中支那振興株式会社ハ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ対シ利益ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
第二十七条 中支那振興株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル投資、融資及自営事業ニ因ル収入ノ投資、融資及自営事業資金ノ総額ニ対スル割合(以下収入割合ト称ス)ガ年百分ノ六ニ達セザルトキハ政府ハ初営業年度及爾後五年間左ノ各号ノ金額ノ合計額ヲ限度トシ配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ニ達スル迄其ノ不足額ニ相当スル金額ヲ補給ス
一 投資、融資及自営事業資金ノ総額中政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込金ニ依リタル部分ニ百分ノ七ヨリ収入割合ヲ減ジタル差ヲ乗ジテ得ベキ金額
二 投資、融資及自営事業資金ノ総額中社債収入金(社債前借金ヲ含ム以下同ジ)ニ依リタル部分ニ百分ノ五ヨリ収入割合ヲ減ジタル差ヲ乗ジテ得ベキ金額
毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先ヅ之ヲ前項ノ補給金ノ償還ニ充ツベシ
第一項ノ投資融資及自営事業ニ因ル収入、投資融資及自営事業資金ノ総額並ニ其ノ中政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込金ニ依リタル部分及社債収入金ニ依リタル部分ノ計算方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八条 中支那振興株式会社ノ毎営業年度ニ於ケル配当シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配当ヲ為サントスルトキハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配当ガ総株式ニ付払込ミタル株金額ニ対シ均一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ払込金額及政府ノ所有スル株式ノ払込金額ニ対シ一ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ配当スベシ
第七章 罰則
第二十九条 中支那振興株式会社ガ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ総裁又ハ総裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副総裁ヲ百円以上二千円以下ノ過料ニ処ス副総裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副総裁又ハ理事ヲ過料ニ処スルコト亦同ジ
非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第三十条 本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第三十一条 政府ハ設立委員ヲ命ジ中支那振興株式会社ノ設立ニ関スル一切ノ事務ヲ処理セシム
第三十二条 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
政府前項ノ規定ニ依ル認可ヲ為サントスルトキハ政府ノ出資ノ目的タル金銭以外ノ財産ノ価格及之ニ対シテ与フル株式ノ数ニ付政府出資財産評価委員会ノ議ヲ経ベシ
政府出資財産評価委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十三条 前条ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ株式総数ヨリ政府ニ割当ツベキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付株主ヲ募集スベシ
第三十四条 株式申込証ニハ定款認可ノ年月日並ニ商法第百二十六条第二項第二号、第四号及第五号ニ規定スル事項ヲ記載スベシ
第三十五条 設立委員ハ株主ノ募集終リタルトキハ株式申込証ヲ政府ニ提出シ其ノ検査ヲ受クベシ
第三十六条 設立委員ハ前条ノ検査ヲ受ケタル後遅滞ナク各株ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムベシ
前項ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スベシ
第三十七条 創立総会ニ於テハ第十条ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
第三十八条 創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ中支那振興株式会社総裁ニ引渡スベシ
第三十九条 政府ハ中支那振興株式会社ニ対スル出資ノ目的ニ充ツル為帝国鉄道特別会計ヨリ其ノ所属物件ヲ無償ニテ一般会計ニ保管換ヲ為スコトヲ得