朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル漁船保險法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年三月三十日
內閣總理大臣 林銑十郞
農林大臣 山崎達之輔
商工大臣 伍堂卓雄
法律第二十三號
漁船保險法
第一章 漁船保險組合
第一條 漁船ノ所有者ハ其ノ所有スル漁船(漁具ヲ含ム)ニ付相互保險ヲ爲ス目的ヲ以テ漁船保險組合ヲ設立スルコトヲ得
保險ノ目的タルベキ漁船ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條 漁船保險組合ハ法人トス
第三條 組合ハ其ノ名稱中ニ漁船保險組合ナル文字ヲ用フベシ
漁船保險組合ニ非ザルモノハ其ノ名稱中ニ漁船保險組合ナル文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第四條 本法ニ依リ登記スベキ事項ハ其ノ事實ノ生ジタル後二週間以內ニ之ヲ各事務所ノ所在地ニ於テ登記スベシ
登記スベキ事項ニシテ行政官廳ノ認可ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
本法ニ依リ登記スベキ事項ハ登記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第五條 組合ヲ設立セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ豫メ區域ヲ定メ其ノ區域內ニ於テ組合員タルベキ資格ヲ有スル者ノ同意ヲ得テ創立總會ヲ開キ定款其ノ他必要ナル事項ヲ定メ理事及監事ヲ選任シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六條 組合ノ定款ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 目的
二 名稱
三 區域
四 事務所ノ所在地
五 保險ノ目的及保險料率
六 準備金ノ積立及管理ノ方法
七 剩餘金處分及不足金塡補ノ方法
八 組合員タル資格ニ關スル規定
九 組合員ノ加入及脫退ニ關スル規定
十 事業執行ニ關スル規定
十一 役員ニ關スル規定
十二 組合ガ公吿ヲ爲ス方法
十三 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其ノ時期又ハ事由
第七條 組合ハ第五條ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立ノ登記ヲ爲スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ
一 前條第一號乃至第三號、第十二號及第十三號ニ揭ゲタル事項
二 事務所
三 設立認可ノ年月日
四 理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ揭ゲタル事項中ニ變更ヲ生ジタルトキハ其ノ登記ヲ爲スベシ
第八條 組合ハ組合員ヲシテ一定ノ保險料ヲ醵出セシムルノ外定款ノ定ムル所ニ依リ追徵金ヲ醵出セシムルコトヲ得
前項ノ保險料及追徵金ニ關スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條 組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ保險金額ヲ削減スルコトヲ得
第十條 組合員ハ組合ニ醵出スベキ保險料及追徵金ニ付相殺ヲ以テ組合ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十一條 保險ノ目的ノ讓受人ハ組合ノ承諾ヲ得テ讓渡人ノ權利義務ヲ承繼スルコトヲ得
組合ハ正當ノ事由ナクシテ前項ノ承諾ヲ拒ムコトヲ得ズ
前二項ノ規定ハ保險ノ目的ニ付相續其ノ他ノ包括承繼アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第十二條 組合ハ保險ノ目的タル漁船ニ付滅失、沈沒、損傷其ノ他ノ事故ニ因リテ生ジタル損害ヲ塡補スルモノトス
前項ノ事故及塡補スベキ損害ノ範圍ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三條 組合ノ責任ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外組合ガ保險料ヲ受領シタル日ノ翌日ニ始マル
第十四條 組合員ハ損害ノ防止輕減ヲ力ムルコトヲ要ス但シ之ガ爲必要又ハ有益ナリシ費用ハ命令ノ定ムル所ニ依リ組合之ヲ塡補ス
第十五條 組合員ハ定款ノ定ムル所ニ依リ保險ノ目的タル漁船ノ構造、設備、漁業ノ種類等ニ付重大ナル變更ヲ加ヘントスルトキハ豫メ組合ニ通知スベシ
保險ノ目的タル漁船ノ危險ガ其ノ構造、設備、漁業ノ種類等ノ重大ナル變更ニ因リ著シク增加スル場合ニ於テハ組合ハ組合員ニ對シ其ノ變更ヲ制限シ其ノ他必要ナル處置ヲ爲サシムルコトヲ得
第十六條 組合ハ保險ノ目的タル漁船ニ關シ調査ヲ爲シ又ハ組合員ヲシテ通常ノ修繕其ノ他必要ナル處置ヲ爲サシムルコトヲ得
第十七條 左ノ場合ニ於テハ組合ハ塡補額ノ全部又ハ一部ニ付塡補ノ責ヲ免ルルコトヲ得
一 組合員保險ノ目的タル漁船ニ付損害ノ防止輕減ヲ怠リタルトキ
二 組合員第十五條第一項ノ規定ニ依ル通知ヲ怠リ又ハ同條第二項ノ規定ニ依ル組合ノ指示ニ從ハザルトキ
三 組合員前條ノ規定ニ依ル組合ノ調査ヲ拒ミ又ハ組合ノ指示ニ從ハザルトキ
第十八條 組合ハ組合員ノ故意又ハ重大ナル過失ニ因リテ生ジタル損害ヲ塡補スル責ニ任ゼズ船長其ノ他漁船ヲ指揮スル者ノ故意ニ因リテ生ジタル損害ニ付亦同ジ
第十九條 組合ニハ理事及監事ヲ置クベシ
理事及監事ハ總會ニ於テ組合員中ヨリ之ヲ選任ス但シ特別ノ事由アルトキハ組合員ニ非ザル者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ得
前項但書ノ規定ニ依ル選任ハ行政官廳ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十條 組合員ハ總會ニ於テ各一箇ノ議決權ヲ有ス但シ定款ノ定ムル所ニ依リ一人ニ付議決權總數ノ十分ノ一ヲ超エザル範圍內ニ於テ二箇以上ノ議決權ヲ有セシムルコトヲ得
第二十一條 總會ノ決議ハ本法又ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外出席シタル組合員ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ爲ス
組合員ハ定款ノ定ムル所ニ依リ書面又ハ代理人ヲ以テ議決權ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ之ヲ出席者ト看做ス但シ同居ノ成年者又ハ組合員ニ非ザレバ代理人タルコトヲ得ズ
第二十二條 組合員ハ總組合員五分ノ一以上ノ同意ヲ得テ會議ノ目的及招集ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ理事ニ提出シテ總會ノ招集ヲ請求スルコトヲ得
理事ガ前項ノ規定ニ依ル請求アリタル後二週間以內ニ正當ノ事由ナクシテ總會招集ノ手續ヲ爲サザルトキハ監事其ノ總會ヲ招集スベシ
第二十三條 組合員ハ三月前ニ豫吿ヲ爲スニ非ザレバ脫退スルコトヲ得ズ
第二十四條 組合員ハ左ノ事由ニ因リテ脫退ス但シ第一號ノ場合ニ付テハ定款ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
一 保險關係ノ消滅
二 死亡
三 破產
四 除名
第二十五條 組合員ハ組合ヲ脫退シタルトキト雖モ脫退ノ日ノ屬スル事業年度ノ追徵金及保險金額ノ削減ニ關シテハ其ノ義務ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十六條 行政官廳必要ト認ムルトキハ理事ヲシテ組合ノ事業又ハ財產ニ關スル報吿ヲ爲サシメ、組合ノ事業又ハ財產ノ狀況ヲ檢査シ、定款ノ變更ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第二十七條 組合ノ事業若ハ財產ノ狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難ナリト認ムルトキ又ハ組合ノ行爲若ハ決議ガ法令、定款若ハ行政官廳ノ命令ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スルノ虞アルトキハ行政官廳ハ決議ヲ取消シ、理事若ハ監事ヲ解任シ、組合ノ事業ヲ停止シ又ハ組合ノ解散ヲ命ズルコトヲ得
第二十八條 民法第四十四條第一項、第四十五條第二項第三項、第四十八條、第五十條、第五十二條第二項、第五十三條乃至第五十五條、第五十九條、第六十條、第六十一條第一項、第六十二條、第六十四條、第六十六條、第七十條及第七十三條乃至第八十三條、非訟事件手續法第三十五條第二項、第三十六條、第三十七條ノ二、第百二十二條、第百三十六條乃至第百三十八條、第百四十二條乃至第百五十一條ノ六、第百五十四條乃至第百五十七條、第百七十五條、第百七十六條、第百七十八條及第百九十五條ノ二竝ニ家畜保險法第八條乃至第十條、第十二條第二項、第十四條、第十八條第二項、第三十五條乃至第四十條、第四十二條、第四十四條、第四十七條、第五十一條乃至第五十七條、第六十條、第六十二條乃至第七十二條、第七十四條、第七十九條及第八十一條乃至第八十六條ノ規定ハ漁船保險組合ニ之ヲ準用ス但シ民法第四十五條第三項、第四十八條第一項及第七十七條ノ規定中一週間トアルハ二週間トシ家畜保險法第六十二條乃至第七十條、第七十二條及第八十三條乃至第八十五條ノ規定中組合ノ分割ニ關スル規定ヲ除ク
商法第三百八十六條乃至第三百九十五條、第三百九十七條、第三百九十九條乃至第四百條、第四百三條第一項、第四百十二條、第四百十三條、第四百十五條乃至第四百十七條、第六百七十一條第一號乃至第三號、第六百七十二條第一項、第六百七十四條第一項第二項及第六百七十五條乃至第六百七十九條ノ規定ハ本法ニ依ル漁船保險ニ之ヲ準用ス但シ第六百七十二條第一項ノ規定中六个月間及第六百七十四條第一項ノ規定中三个月トアルハ命令ヲ以テ定ムル期間トス
第二章 漁船再保險
第二十九條 本法ニ依ル漁船保險ノ再保險事業ハ政府之ヲ管掌ス
第三十條 組合ガ漁船保險ノ引受ヲ爲シタルトキハ之ニ因リテ政府ト組合トノ間ニ再保險關係成立スルモノトス
第三十一條 再保險金額及再保險料ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十二條 組合ハ漁船保險ノ引受ヲ爲シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ニ對シテ其ノ旨ヲ通知スベシ
第三十三條 左ノ場合ニ於テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ再保險金額ノ全部又ハ一部ノ支拂ノ責ニ任ゼズ
一 組合ガ法令又ハ定款ニ違反シテ塡補ヲ爲シタルトキ
二 組合ガ塡補額ヲ不當ニ認定シテ塡補ヲ爲シタルトキ
三 組合ガ不正ノ目的ヲ以テ前條ノ規定ニ依ル通知ヲ怠リ又ハ不實ノ通知ヲ爲シタルトキ
第三十四條 組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ委付ニ因リテ取得シタル一切ノ權利ノ行使又ハ處分ニ關スル事項ヲ定メ政府ノ承認ヲ受クベシ
政府ハ前項ノ承認ヲ爲シタルトキハ組合ニ對シ其ノ再保險金額ノ支拂ヲ爲スモノトス
前項ノ規定ニ依リ再保險金額ノ支拂ヲ受ケタル組合ハ委付ニ因リテ取得シタル一切ノ權利ヲ行使シ又ハ處分シテ得タル金額ヨリ之ガ行使又ハ處分ニ要シタル費用ヲ控除シタル殘額ノ中再保險金額ノ保險金額ニ對スル割合ニ依リテ算出シタル金額ヲ遲滯ナク政府ニ還付スベシ
前三項ノ規定ハ第二十八條ノ規定ニ依リ準用シタル商法第四百十五條及第四百十六條ノ規定ニ依リ組合ガ權利ヲ取得シタル場合ニ之ヲ準用ス
第三十五條 組合ガ再保險ニ關スル事項ニ付政府ニ對シテ民事訴訟ヲ提起スルニハ漁船再保險審査會ノ審査ヲ經ルコトヲ要ス
前項ノ審査ノ請求ハ時效ノ中斷ニ關シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
漁船再保險審査會ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十六條 商法第三百九十一條、第三百九十二條、第三百九十九條、第四百條、第四百十二條及第四百十七條竝ニ家畜保險法第九十九條ノ規定ハ本法ニ依ル漁船再保險ニ之ヲ準用ス
第三章 罰則
第三十七條 左ノ場合ニ於テハ漁船保險組合ノ理事、監事又ハ淸算人ヲ五圓以上五百圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ依リ行政官廳ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ依ル登記ヲ爲スコトヲ怠リタルトキ
三 行政官廳又ハ總會若ハ總代會ニ對シテ不實ノ申立ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ
四 本法ニ依リ行政官廳ノ徵スル報吿ヲ差出サズ又ハ其ノ檢査ヲ拒ミ其ノ他行政官廳ノ命令若ハ處分ニ從ハザルトキ
五 本法ニ依ル總會又ハ總代會ノ招集ヲ怠リタルトキ
六 組合ノ目的ニ非ザル事業ヲ爲シタルトキ
七 本法ニ依リ事務所ニ備ヘ置クベキ書類ヲ備ヘズ其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ爲シ又ハ正當ノ理由ナクシテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
八 本法ニ違反シテ破產ノ宣吿ヲ請求セザルトキ
九 第二十八條ノ規定ニ依リ準用シタル家畜保險法第五十四條、第六十四條又ハ第六十五條第二項ノ規定ニ違反シタルトキ
十 本法ニ依ル公吿ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公吿ヲ爲シタルトキ
十一 淸算ノ場合ニ於テ本法ニ違反シテ辨濟ヲ爲シ又ハ組合財產ノ處分ヲ爲シタルトキ
十二 法令又ハ定款ニ違反シテ剩餘金ヲ處分シ又ハ追徵金ヲ取立テ若ハ保險金額ヲ削減シタルトキ
第三十八條 第三條第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ十圓以上二百圓以下ノ過料ニ處ス
第三十九條 非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル漁船保険法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年三月三十日
内閣総理大臣 林銑十郎
農林大臣 山崎達之輔
商工大臣 伍堂卓雄
法律第二十三号
漁船保険法
第一章 漁船保険組合
第一条 漁船ノ所有者ハ其ノ所有スル漁船(漁具ヲ含ム)ニ付相互保険ヲ為ス目的ヲ以テ漁船保険組合ヲ設立スルコトヲ得
保険ノ目的タルベキ漁船ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二条 漁船保険組合ハ法人トス
第三条 組合ハ其ノ名称中ニ漁船保険組合ナル文字ヲ用フベシ
漁船保険組合ニ非ザルモノハ其ノ名称中ニ漁船保険組合ナル文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第四条 本法ニ依リ登記スベキ事項ハ其ノ事実ノ生ジタル後二週間以内ニ之ヲ各事務所ノ所在地ニ於テ登記スベシ
登記スベキ事項ニシテ行政官庁ノ認可ヲ要スルモノハ其ノ認可書ノ到達シタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
本法ニ依リ登記スベキ事項ハ登記前ニ在リテハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第五条 組合ヲ設立セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ予メ区域ヲ定メ其ノ区域内ニ於テ組合員タルベキ資格ヲ有スル者ノ同意ヲ得テ創立総会ヲ開キ定款其ノ他必要ナル事項ヲ定メ理事及監事ヲ選任シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六条 組合ノ定款ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ
一 目的
二 名称
三 区域
四 事務所ノ所在地
五 保険ノ目的及保険料率
六 準備金ノ積立及管理ノ方法
七 剰余金処分及不足金填補ノ方法
八 組合員タル資格ニ関スル規定
九 組合員ノ加入及脱退ニ関スル規定
十 事業執行ニ関スル規定
十一 役員ニ関スル規定
十二 組合ガ公告ヲ為ス方法
十三 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其ノ時期又ハ事由
第七条 組合ハ第五条ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立ノ登記ヲ為スベシ
登記スベキ事項左ノ如シ
一 前条第一号乃至第三号、第十二号及第十三号ニ掲ゲタル事項
二 事務所
三 設立認可ノ年月日
四 理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ掲ゲタル事項中ニ変更ヲ生ジタルトキハ其ノ登記ヲ為スベシ
第八条 組合ハ組合員ヲシテ一定ノ保険料ヲ醵出セシムルノ外定款ノ定ムル所ニ依リ追徴金ヲ醵出セシムルコトヲ得
前項ノ保険料及追徴金ニ関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第九条 組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ保険金額ヲ削減スルコトヲ得
第十条 組合員ハ組合ニ醵出スベキ保険料及追徴金ニ付相殺ヲ以テ組合ニ対抗スルコトヲ得ズ
第十一条 保険ノ目的ノ譲受人ハ組合ノ承諾ヲ得テ譲渡人ノ権利義務ヲ承継スルコトヲ得
組合ハ正当ノ事由ナクシテ前項ノ承諾ヲ拒ムコトヲ得ズ
前二項ノ規定ハ保険ノ目的ニ付相続其ノ他ノ包括承継アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第十二条 組合ハ保険ノ目的タル漁船ニ付滅失、沈没、損傷其ノ他ノ事故ニ因リテ生ジタル損害ヲ填補スルモノトス
前項ノ事故及填補スベキ損害ノ範囲ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三条 組合ノ責任ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外組合ガ保険料ヲ受領シタル日ノ翌日ニ始マル
第十四条 組合員ハ損害ノ防止軽減ヲ力ムルコトヲ要ス但シ之ガ為必要又ハ有益ナリシ費用ハ命令ノ定ムル所ニ依リ組合之ヲ填補ス
第十五条 組合員ハ定款ノ定ムル所ニ依リ保険ノ目的タル漁船ノ構造、設備、漁業ノ種類等ニ付重大ナル変更ヲ加ヘントスルトキハ予メ組合ニ通知スベシ
保険ノ目的タル漁船ノ危険ガ其ノ構造、設備、漁業ノ種類等ノ重大ナル変更ニ因リ著シク増加スル場合ニ於テハ組合ハ組合員ニ対シ其ノ変更ヲ制限シ其ノ他必要ナル処置ヲ為サシムルコトヲ得
第十六条 組合ハ保険ノ目的タル漁船ニ関シ調査ヲ為シ又ハ組合員ヲシテ通常ノ修繕其ノ他必要ナル処置ヲ為サシムルコトヲ得
第十七条 左ノ場合ニ於テハ組合ハ填補額ノ全部又ハ一部ニ付填補ノ責ヲ免ルルコトヲ得
一 組合員保険ノ目的タル漁船ニ付損害ノ防止軽減ヲ怠リタルトキ
二 組合員第十五条第一項ノ規定ニ依ル通知ヲ怠リ又ハ同条第二項ノ規定ニ依ル組合ノ指示ニ従ハザルトキ
三 組合員前条ノ規定ニ依ル組合ノ調査ヲ拒ミ又ハ組合ノ指示ニ従ハザルトキ
第十八条 組合ハ組合員ノ故意又ハ重大ナル過失ニ因リテ生ジタル損害ヲ填補スル責ニ任ゼズ船長其ノ他漁船ヲ指揮スル者ノ故意ニ因リテ生ジタル損害ニ付亦同ジ
第十九条 組合ニハ理事及監事ヲ置クベシ
理事及監事ハ総会ニ於テ組合員中ヨリ之ヲ選任ス但シ特別ノ事由アルトキハ組合員ニ非ザル者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ得
前項但書ノ規定ニ依ル選任ハ行政官庁ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第二十条 組合員ハ総会ニ於テ各一箇ノ議決権ヲ有ス但シ定款ノ定ムル所ニ依リ一人ニ付議決権総数ノ十分ノ一ヲ超エザル範囲内ニ於テ二箇以上ノ議決権ヲ有セシムルコトヲ得
第二十一条 総会ノ決議ハ本法又ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外出席シタル組合員ノ議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ為ス
組合員ハ定款ノ定ムル所ニ依リ書面又ハ代理人ヲ以テ議決権ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ之ヲ出席者ト看做ス但シ同居ノ成年者又ハ組合員ニ非ザレバ代理人タルコトヲ得ズ
第二十二条 組合員ハ総組合員五分ノ一以上ノ同意ヲ得テ会議ノ目的及招集ノ事由ヲ記載シタル書面ヲ理事ニ提出シテ総会ノ招集ヲ請求スルコトヲ得
理事ガ前項ノ規定ニ依ル請求アリタル後二週間以内ニ正当ノ事由ナクシテ総会招集ノ手続ヲ為サザルトキハ監事其ノ総会ヲ招集スベシ
第二十三条 組合員ハ三月前ニ予告ヲ為スニ非ザレバ脱退スルコトヲ得ズ
第二十四条 組合員ハ左ノ事由ニ因リテ脱退ス但シ第一号ノ場合ニ付テハ定款ヲ以テ別段ノ定ヲ為スコトヲ得
一 保険関係ノ消滅
二 死亡
三 破産
四 除名
第二十五条 組合員ハ組合ヲ脱退シタルトキト雖モ脱退ノ日ノ属スル事業年度ノ追徴金及保険金額ノ削減ニ関シテハ其ノ義務ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十六条 行政官庁必要ト認ムルトキハ理事ヲシテ組合ノ事業又ハ財産ニ関スル報告ヲ為サシメ、組合ノ事業又ハ財産ノ状況ヲ検査シ、定款ノ変更ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命令又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第二十七条 組合ノ事業若ハ財産ノ状況ニ依リ其ノ事業ノ継続ヲ困難ナリト認ムルトキ又ハ組合ノ行為若ハ決議ガ法令、定款若ハ行政官庁ノ命令ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スルノ虞アルトキハ行政官庁ハ決議ヲ取消シ、理事若ハ監事ヲ解任シ、組合ノ事業ヲ停止シ又ハ組合ノ解散ヲ命ズルコトヲ得
第二十八条 民法第四十四条第一項、第四十五条第二項第三項、第四十八条、第五十条、第五十二条第二項、第五十三条乃至第五十五条、第五十九条、第六十条、第六十一条第一項、第六十二条、第六十四条、第六十六条、第七十条及第七十三条乃至第八十三条、非訟事件手続法第三十五条第二項、第三十六条、第三十七条ノ二、第百二十二条、第百三十六条乃至第百三十八条、第百四十二条乃至第百五十一条ノ六、第百五十四条乃至第百五十七条、第百七十五条、第百七十六条、第百七十八条及第百九十五条ノ二並ニ家畜保険法第八条乃至第十条、第十二条第二項、第十四条、第十八条第二項、第三十五条乃至第四十条、第四十二条、第四十四条、第四十七条、第五十一条乃至第五十七条、第六十条、第六十二条乃至第七十二条、第七十四条、第七十九条及第八十一条乃至第八十六条ノ規定ハ漁船保険組合ニ之ヲ準用ス但シ民法第四十五条第三項、第四十八条第一項及第七十七条ノ規定中一週間トアルハ二週間トシ家畜保険法第六十二条乃至第七十条、第七十二条及第八十三条乃至第八十五条ノ規定中組合ノ分割ニ関スル規定ヲ除ク
商法第三百八十六条乃至第三百九十五条、第三百九十七条、第三百九十九条乃至第四百条、第四百三条第一項、第四百十二条、第四百十三条、第四百十五条乃至第四百十七条、第六百七十一条第一号乃至第三号、第六百七十二条第一項、第六百七十四条第一項第二項及第六百七十五条乃至第六百七十九条ノ規定ハ本法ニ依ル漁船保険ニ之ヲ準用ス但シ第六百七十二条第一項ノ規定中六个月間及第六百七十四条第一項ノ規定中三个月トアルハ命令ヲ以テ定ムル期間トス
第二章 漁船再保険
第二十九条 本法ニ依ル漁船保険ノ再保険事業ハ政府之ヲ管掌ス
第三十条 組合ガ漁船保険ノ引受ヲ為シタルトキハ之ニ因リテ政府ト組合トノ間ニ再保険関係成立スルモノトス
第三十一条 再保険金額及再保険料ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十二条 組合ハ漁船保険ノ引受ヲ為シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ニ対シテ其ノ旨ヲ通知スベシ
第三十三条 左ノ場合ニ於テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ再保険金額ノ全部又ハ一部ノ支払ノ責ニ任ゼズ
一 組合ガ法令又ハ定款ニ違反シテ填補ヲ為シタルトキ
二 組合ガ填補額ヲ不当ニ認定シテ填補ヲ為シタルトキ
三 組合ガ不正ノ目的ヲ以テ前条ノ規定ニ依ル通知ヲ怠リ又ハ不実ノ通知ヲ為シタルトキ
第三十四条 組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ委付ニ因リテ取得シタル一切ノ権利ノ行使又ハ処分ニ関スル事項ヲ定メ政府ノ承認ヲ受クベシ
政府ハ前項ノ承認ヲ為シタルトキハ組合ニ対シ其ノ再保険金額ノ支払ヲ為スモノトス
前項ノ規定ニ依リ再保険金額ノ支払ヲ受ケタル組合ハ委付ニ因リテ取得シタル一切ノ権利ヲ行使シ又ハ処分シテ得タル金額ヨリ之ガ行使又ハ処分ニ要シタル費用ヲ控除シタル残額ノ中再保険金額ノ保険金額ニ対スル割合ニ依リテ算出シタル金額ヲ遅滞ナク政府ニ還付スベシ
前三項ノ規定ハ第二十八条ノ規定ニ依リ準用シタル商法第四百十五条及第四百十六条ノ規定ニ依リ組合ガ権利ヲ取得シタル場合ニ之ヲ準用ス
第三十五条 組合ガ再保険ニ関スル事項ニ付政府ニ対シテ民事訴訟ヲ提起スルニハ漁船再保険審査会ノ審査ヲ経ルコトヲ要ス
前項ノ審査ノ請求ハ時効ノ中断ニ関シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
漁船再保険審査会ニ関スル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十六条 商法第三百九十一条、第三百九十二条、第三百九十九条、第四百条、第四百十二条及第四百十七条並ニ家畜保険法第九十九条ノ規定ハ本法ニ依ル漁船再保険ニ之ヲ準用ス
第三章 罰則
第三十七条 左ノ場合ニ於テハ漁船保険組合ノ理事、監事又ハ清算人ヲ五円以上五百円以下ノ過料ニ処ス
一 本法ニ依リ行政官庁ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ依ル登記ヲ為スコトヲ怠リタルトキ
三 行政官庁又ハ総会若ハ総代会ニ対シテ不実ノ申立ヲ為シ又ハ事実ヲ隠蔽シタルトキ
四 本法ニ依リ行政官庁ノ徴スル報告ヲ差出サズ又ハ其ノ検査ヲ拒ミ其ノ他行政官庁ノ命令若ハ処分ニ従ハザルトキ
五 本法ニ依ル総会又ハ総代会ノ招集ヲ怠リタルトキ
六 組合ノ目的ニ非ザル事業ヲ為シタルトキ
七 本法ニ依リ事務所ニ備ヘ置クベキ書類ヲ備ヘズ其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ為シ又ハ正当ノ理由ナクシテ其ノ閲覧ヲ拒ミタルトキ
八 本法ニ違反シテ破産ノ宣告ヲ請求セザルトキ
九 第二十八条ノ規定ニ依リ準用シタル家畜保険法第五十四条、第六十四条又ハ第六十五条第二項ノ規定ニ違反シタルトキ
十 本法ニ依ル公告ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公告ヲ為シタルトキ
十一 清算ノ場合ニ於テ本法ニ違反シテ弁済ヲ為シ又ハ組合財産ノ処分ヲ為シタルトキ
十二 法令又ハ定款ニ違反シテ剰余金ヲ処分シ又ハ追徴金ヲ取立テ若ハ保険金額ヲ削減シタルトキ
第三十八条 第三条第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ十円以上二百円以下ノ過料ニ処ス
第三十九条 非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前二条ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム