朕樺太臨時利得稅令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十年四月十二日
內閣總理大臣 岡田啓介
拓務大臣 伯爵 兒玉秀雄
勅令第八十四號
樺太臨時利得稅令
第一條 樺太ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ハ本令ニ依リ臨時利得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第二條 前條ノ規定ニ該當セザル者樺太ニ資產又ハ營業ヲ有スルトキハ其ノ利得ニ付テノミ臨時利得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第三條 臨時利得稅ハ左ノ利得ニ付之ヲ賦課ス
一 法人ノ利得
二 樺太廳長官ノ定ムル營業ニ因ル個人ノ利得
第四條 法人ノ現事業年度ノ利益ガ旣往事業年度ノ平均利益ヲ超過スル場合ニ於テ其ノ超過額ヲ以テ法人ノ利得金額トス
前項利得金額計算ノ場合ニ於テ左記各號ニ該當スルトキハ各其ノ定ムル所ニ依リ旣往事業年度ノ平均利益ヲ計算ス
一 何レノ旣往事業年度ニ於テモ利益ナキトキ又ハ旣往事業年度ノ平均利益ガ旣往事業年度ノ平均資本金額ニ對シ年百分ノ七未滿ナルトキハ旣往事業年度ノ平均資本金額ニ對シ年百分ノ七ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ以テ旣往事業年度ノ平均利益トス
二 法人ノ第一次ノ事業年度ガ昭和七年一月一日以後ニ於テ終了シタルトキハ現事業年度ノ資本金額ニ對シ年百分ノ七ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ以テ旣往事業年度ノ平均利益トス
三 現事業年度ノ資本金額ガ旣往事業年度ノ平均資本金額ニ對シ增減アルトキハ旣往事業年度ノ平均資本金額ニ對スル平均利益ノ割合ヲ現事業年度ノ資本金額ニ乘ジテ算出シタル金額ヲ以テ旣往事業年度ノ平均利益トス此ノ場合ニ於テ第一號ノ規定ノ適用ニ付テハ現事業年度ノ資本金額ヲ旣往事業年度ノ平均資本金額ト看做ス
四 現事業年度ノ期間ガ旣往事業年度ノ期間ト異ルトキハ現事業年度ノ月數ニ應ジ月割ヲ以テ旣往事業年度ノ利益ヲ計算ス
本令ニ於テ現事業年度ト稱スルハ昭和十年一月一日以後ニ於テ終了スル各事業年度ヲ謂ヒ旣往事業年度ト稱スルハ昭和六年十二月三十一日以前三年內ニ終了シタル各事業年度ヲ謂フ
利得金額年千圓未滿ナルトキハ臨時利得稅ヲ課セズ
第五條 法人ノ利益ハ各事業年度ノ總益金ヨリ總損金ヲ控除シタル金額ニ依ル但シ保險會社ニ在リテハ各事業年度ノ利益金又ハ剩餘金ニ依ル
樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セザル法人ノ利益ハ樺太ニ於ケル資產又ハ營業ニ付前項ノ規定ニ準ジ之ヲ計算ス
法人ガ事業年度中ニ解散シ又ハ合併ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テハ其ノ事業年度ノ始ヨリ解散又ハ合併ニ至ル迄ノ期間ヲ以テ一事業年度ト看做ス
第六條 法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ各月末ニ於ケル拂込株式金額、出資金額又ハ基金及積立金額ノ月割平均ヲ以テ之ヲ計算ス
前項ニ於テ積立金額ト稱スルハ積立金其ノ他名義ノ何タルヲ問ハズ法人ノ利益中其ノ留保シタル金額ヲ謂フ
樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セザル法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
昭和七年一月一日以後本令施行ニ至ル迄ノ期間ニ於テ拂込株式金額又ハ出資金額ヲ減少シタル法人ノ現事業年度ノ資本金額ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ其ノ減少ナカリシモノト看做シテ之ヲ計算ス
第七條 法人合併ヲ爲シタル場合ニ於テ合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ノ旣往事業年度ノ平均資本金額及平均利益ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第八條 合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ハ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ利得ニ付臨時利得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第九條 個人ノ利益ガ昭和六年以前三年ノ平均利益ヲ超過スル場合ニ於テ其ノ超過額ヲ以テ個人ノ利得金額トス
個人ノ利益ガ一萬圓未滿ナルトキハ前項ノ超過額中二千圓ヲ控除シタル金額ヲ以テ前項ノ利得金額トス
個人ノ利益一萬圓以上ナル者ノ利得金額千圓未滿ナルトキハ臨時利得稅ヲ課セズ
營業ヲ繼續シ又ハ營業繼續ト認ムベキ事實アルトキハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ前營業者ノ平均利益ヲ其ノ平均利益ト看做ス
營業ノ期間ガ一年未滿ナル場合ニ於ケル平均利益ノ計算ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依ル
利得金額計算ノ場合ニ於テ昭和六年以前三年ノ平均利益三千圓未滿ナルトキ又ハ其ノ平均利益ナキトキハ三千圓ヲ以テ平均利益トス
第十條 個人ノ利益ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額ニ依ル但シ前年一月一日ヨリ引續キ爲シタルニ非ザル營業ニ付テハ其ノ年ノ豫算ニ依リ計算ス
相續シタル營業ニ付テハ相續人ガ引續キ之ヲ爲シタルモノト看做シテ其ノ利益ヲ計算ス
第十一條 個人ノ利益ガ六千圓未滿ナルトキハ臨時利得稅ヲ課セズ
第十二條 營利ヲ目的トセザル法人ニシテ樺太所得稅令其ノ他ノ法令ニ依リ所得稅ヲ課セラレザル者ニハ臨時利得稅ヲ課セズ
第十三條 個人ノ自己ノ收穫シタル農產物、林產物、畜產物若ハ水產物ノ販賣又ハ之ヲ原料トスル製造ノ利益ニ付テハ本令ヲ適用セズ但シ特ニ營業場ヲ設ケテ爲ス販賣又ハ製造ノ利益ハ此ノ限ニ在ラズ
第十四條 臨時利得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
一 法人ノ利得 利得金額百分ノ十
二 個人ノ利得 利得金額百分ノ八
前項ノ規定ニ依リ算出シタル稅額ガ法人ニ在リテハ利得金額中年千圓ヲ控除シタル金額、個人ニ在リテハ利得金額中千圓ヲ控除シタル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ニ相當スル臨時利得稅ヲ免除ス但シ第九條第二項ニ該當スル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十五條 納稅義務アル法人ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ利得金額ヲ政府ニ申吿スベシ
第十六條 納稅義務アル個人ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ每年三月十五日迄ニ利得金額ヲ政府ニ申吿スベシ
第十七條 法人ノ利得金額ハ第十五條ノ申吿ニ依リ、申吿ナキトキ又ハ申吿ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ノ調查ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定シ個人ノ利得金額ハ樺太所得稅令ノ所得調查委員會ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得調查委員會閉會後個人ノ利得金額ノ決定ニ付脫漏アルコトヲ發見シタルトキハ其ノ決定ヲ爲スベカリシ年ノ翌年ニ於ケル所得調查委員會ニ諮問シ政府ニ於テ其ノ利得金額ヲ決定スルコトヲ得
所得調查委員會閉會後個人ノ利得ニ付納稅義務アルコトヲ申出デ又ハ利得金額ノ增加アルコトヲ申出デタルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラズ政府ニ於テ其ノ利得金額ヲ決定ス
第十八條 樺太廳支廳長ハ每年個人ノ利得ニ付納稅義務アリト認ムル者ノ利得金額ヲ調查シ其ノ調查書ヲ所得調查委員會ニ送付スベシ
前項ノ規定ハ前條第二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十九條 樺太所得稅令第三十六條ノ規定ハ利得金額ノ決定ニ付之ヲ準用ス
第二十條 第十七條又ハ前條ノ規定ニ依リ利得金額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納稅義務者ニ通知スベシ
第二十一條 納稅義務者前條ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル利得金額ニ對シテ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審查ノ請求ヲ爲スコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ト雖モ政府ハ稅金ノ徵收ヲ猶豫セズ
第二十二條 前條第一項ノ請求アリタルトキハ樺太所得稅令ノ所得審查委員會ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
樺太所得稅令第四十二條ノ三第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三條 利得ニ付納稅義務アル個人ハ利得金額ニ減損アルトキハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ政府ニ利得金額ノ更訂ヲ請求スルコトヲ得但シ利益二分ノ一以上減損セザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
利得金額決定後營業繼續ニ因リ利得金額ノ減損シタル場合ハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第二十四條 前條第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ利益ヲ查覈シ二分ノ一以上ノ減損アルトキハ利得金額ヲ更訂ス
第二十五條 法人ノ利得ニ付テハ事業年度每ニ臨時利得稅ヲ徵收ス
個人ノ利得ニ付テハ臨時利得稅ノ年額ヲ四分シ左ノ四期ニ於テ之ヲ徵收ス但シ納稅義務者納稅管理人ノ申吿ヲ爲サズシテ樺太外ニ住所又ハ居所ヲ移ストキハ直ニ其ノ臨時利得稅ヲ徵收スルコトヲ得
第一期 其ノ年七月一日ヨリ三十一日限
第二期 其ノ年十月一日ヨリ三十一日限
第三期 翌年一月一日ヨリ三十一日限
第四期 翌年三月一日ヨリ三十一旦限
第二十六條 樺太所得稅令第十三條、第十九條、第四十條、第四十一條、第四十八條及第五十條乃至第五十二條ノ二ノ規定ハ臨時利得稅ニ付之ヲ準用ス
臨時利得稅法施行地又ハ臺灣ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル個人ノ利得ニ付テハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ臨時利得稅ヲ課セズ
第二十七條 樺太ニ住所ヲ有セザル外國人又ハ外國法人ノ外國ノ船籍ヲ有スル船舶ノ所得及純益ニシテ所得稅及營業收益稅ヲ免除セラルルモノニ付テハ本令ヲ適用セズ
第二十八條 町村ハ臨時利得稅ノ附加稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第二十九條 本令ニ定ムルモノノ外臨時利得稅ニ關シ必要ナル規定ハ樺太廳長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ法人ニ付テハ昭和十年一月一日ヲ含ム事業年度分ヨリ、個人ニ付テハ昭和十年分ヨリ之ヲ適用ス
本令ニ依ル臨時利得稅ノ賦課ハ法人ニ付テハ昭和十二年十二月三十一日ヲ含ム事業年度分限リ、個人ニ付テハ昭和十二年分限リトス
第十六條ノ規定中三月十五日トアルハ昭和十年ニ限リ四月二十五日トス
朕樺太臨時利得税令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十年四月十二日
内閣総理大臣 岡田啓介
拓務大臣 伯爵 児玉秀雄
勅令第八十四号
樺太臨時利得税令
第一条 樺太ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ハ本令ニ依リ臨時利得税ヲ納ムル義務アルモノトス
第二条 前条ノ規定ニ該当セザル者樺太ニ資産又ハ営業ヲ有スルトキハ其ノ利得ニ付テノミ臨時利得税ヲ納ムル義務アルモノトス
第三条 臨時利得税ハ左ノ利得ニ付之ヲ賦課ス
一 法人ノ利得
二 樺太庁長官ノ定ムル営業ニ因ル個人ノ利得
第四条 法人ノ現事業年度ノ利益ガ既往事業年度ノ平均利益ヲ超過スル場合ニ於テ其ノ超過額ヲ以テ法人ノ利得金額トス
前項利得金額計算ノ場合ニ於テ左記各号ニ該当スルトキハ各其ノ定ムル所ニ依リ既往事業年度ノ平均利益ヲ計算ス
一 何レノ既往事業年度ニ於テモ利益ナキトキ又ハ既往事業年度ノ平均利益ガ既往事業年度ノ平均資本金額ニ対シ年百分ノ七未満ナルトキハ既往事業年度ノ平均資本金額ニ対シ年百分ノ七ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ以テ既往事業年度ノ平均利益トス
二 法人ノ第一次ノ事業年度ガ昭和七年一月一日以後ニ於テ終了シタルトキハ現事業年度ノ資本金額ニ対シ年百分ノ七ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ以テ既往事業年度ノ平均利益トス
三 現事業年度ノ資本金額ガ既往事業年度ノ平均資本金額ニ対シ増減アルトキハ既往事業年度ノ平均資本金額ニ対スル平均利益ノ割合ヲ現事業年度ノ資本金額ニ乗ジテ算出シタル金額ヲ以テ既往事業年度ノ平均利益トス此ノ場合ニ於テ第一号ノ規定ノ適用ニ付テハ現事業年度ノ資本金額ヲ既往事業年度ノ平均資本金額ト看做ス
四 現事業年度ノ期間ガ既往事業年度ノ期間ト異ルトキハ現事業年度ノ月数ニ応ジ月割ヲ以テ既往事業年度ノ利益ヲ計算ス
本令ニ於テ現事業年度ト称スルハ昭和十年一月一日以後ニ於テ終了スル各事業年度ヲ謂ヒ既往事業年度ト称スルハ昭和六年十二月三十一日以前三年内ニ終了シタル各事業年度ヲ謂フ
利得金額年千円未満ナルトキハ臨時利得税ヲ課セズ
第五条 法人ノ利益ハ各事業年度ノ総益金ヨリ総損金ヲ控除シタル金額ニ依ル但シ保険会社ニ在リテハ各事業年度ノ利益金又ハ剰余金ニ依ル
樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セザル法人ノ利益ハ樺太ニ於ケル資産又ハ営業ニ付前項ノ規定ニ準ジ之ヲ計算ス
法人ガ事業年度中ニ解散シ又ハ合併ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テハ其ノ事業年度ノ始ヨリ解散又ハ合併ニ至ル迄ノ期間ヲ以テ一事業年度ト看做ス
第六条 法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ各月末ニ於ケル払込株式金額、出資金額又ハ基金及積立金額ノ月割平均ヲ以テ之ヲ計算ス
前項ニ於テ積立金額ト称スルハ積立金其ノ他名義ノ何タルヲ問ハズ法人ノ利益中其ノ留保シタル金額ヲ謂フ
樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セザル法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
昭和七年一月一日以後本令施行ニ至ル迄ノ期間ニ於テ払込株式金額又ハ出資金額ヲ減少シタル法人ノ現事業年度ノ資本金額ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ其ノ減少ナカリシモノト看做シテ之ヲ計算ス
第七条 法人合併ヲ為シタル場合ニ於テ合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ノ既往事業年度ノ平均資本金額及平均利益ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第八条 合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ハ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ利得ニ付臨時利得税ヲ納ムル義務アルモノトス
第九条 個人ノ利益ガ昭和六年以前三年ノ平均利益ヲ超過スル場合ニ於テ其ノ超過額ヲ以テ個人ノ利得金額トス
個人ノ利益ガ一万円未満ナルトキハ前項ノ超過額中二千円ヲ控除シタル金額ヲ以テ前項ノ利得金額トス
個人ノ利益一万円以上ナル者ノ利得金額千円未満ナルトキハ臨時利得税ヲ課セズ
営業ヲ継続シ又ハ営業継続ト認ムベキ事実アルトキハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ前営業者ノ平均利益ヲ其ノ平均利益ト看做ス
営業ノ期間ガ一年未満ナル場合ニ於ケル平均利益ノ計算ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依ル
利得金額計算ノ場合ニ於テ昭和六年以前三年ノ平均利益三千円未満ナルトキ又ハ其ノ平均利益ナキトキハ三千円ヲ以テ平均利益トス
第十条 個人ノ利益ハ前年中ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額ニ依ル但シ前年一月一日ヨリ引続キ為シタルニ非ザル営業ニ付テハ其ノ年ノ予算ニ依リ計算ス
相続シタル営業ニ付テハ相続人ガ引続キ之ヲ為シタルモノト看做シテ其ノ利益ヲ計算ス
第十一条 個人ノ利益ガ六千円未満ナルトキハ臨時利得税ヲ課セズ
第十二条 営利ヲ目的トセザル法人ニシテ樺太所得税令其ノ他ノ法令ニ依リ所得税ヲ課セラレザル者ニハ臨時利得税ヲ課セズ
第十三条 個人ノ自己ノ収穫シタル農産物、林産物、畜産物若ハ水産物ノ販売又ハ之ヲ原料トスル製造ノ利益ニ付テハ本令ヲ適用セズ但シ特ニ営業場ヲ設ケテ為ス販売又ハ製造ノ利益ハ此ノ限ニ在ラズ
第十四条 臨時利得税ハ左ノ税率ニ依リ之ヲ賦課ス
一 法人ノ利得 利得金額百分ノ十
二 個人ノ利得 利得金額百分ノ八
前項ノ規定ニ依リ算出シタル税額ガ法人ニ在リテハ利得金額中年千円ヲ控除シタル金額、個人ニ在リテハ利得金額中千円ヲ控除シタル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ニ相当スル臨時利得税ヲ免除ス但シ第九条第二項ニ該当スル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十五条 納税義務アル法人ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ利得金額ヲ政府ニ申告スベシ
第十六条 納税義務アル個人ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ毎年三月十五日迄ニ利得金額ヲ政府ニ申告スベシ
第十七条 法人ノ利得金額ハ第十五条ノ申告ニ依リ、申告ナキトキ又ハ申告ヲ不相当ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定シ個人ノ利得金額ハ樺太所得税令ノ所得調査委員会ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得調査委員会閉会後個人ノ利得金額ノ決定ニ付脱漏アルコトヲ発見シタルトキハ其ノ決定ヲ為スベカリシ年ノ翌年ニ於ケル所得調査委員会ニ諮問シ政府ニ於テ其ノ利得金額ヲ決定スルコトヲ得
所得調査委員会閉会後個人ノ利得ニ付納税義務アルコトヲ申出デ又ハ利得金額ノ増加アルコトヲ申出デタルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラズ政府ニ於テ其ノ利得金額ヲ決定ス
第十八条 樺太庁支庁長ハ毎年個人ノ利得ニ付納税義務アリト認ムル者ノ利得金額ヲ調査シ其ノ調査書ヲ所得調査委員会ニ送付スベシ
前項ノ規定ハ前条第二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十九条 樺太所得税令第三十六条ノ規定ハ利得金額ノ決定ニ付之ヲ準用ス
第二十条 第十七条又ハ前条ノ規定ニ依リ利得金額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納税義務者ニ通知スベシ
第二十一条 納税義務者前条ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル利得金額ニ対シテ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ審査ノ請求ヲ為スコトヲ得
前項ノ請求アリタル場合ト雖モ政府ハ税金ノ徴収ヲ猶予セズ
第二十二条 前条第一項ノ請求アリタルトキハ樺太所得税令ノ所得審査委員会ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
樺太所得税令第四十二条ノ三第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三条 利得ニ付納税義務アル個人ハ利得金額ニ減損アルトキハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ政府ニ利得金額ノ更訂ヲ請求スルコトヲ得但シ利益二分ノ一以上減損セザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
利得金額決定後営業継続ニ因リ利得金額ノ減損シタル場合ハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第二十四条 前条第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ利益ヲ査覈シ二分ノ一以上ノ減損アルトキハ利得金額ヲ更訂ス
第二十五条 法人ノ利得ニ付テハ事業年度毎ニ臨時利得税ヲ徴収ス
個人ノ利得ニ付テハ臨時利得税ノ年額ヲ四分シ左ノ四期ニ於テ之ヲ徴収ス但シ納税義務者納税管理人ノ申告ヲ為サズシテ樺太外ニ住所又ハ居所ヲ移ストキハ直ニ其ノ臨時利得税ヲ徴収スルコトヲ得
第一期 其ノ年七月一日ヨリ三十一日限
第二期 其ノ年十月一日ヨリ三十一日限
第三期 翌年一月一日ヨリ三十一日限
第四期 翌年三月一日ヨリ三十一旦限
第二十六条 樺太所得税令第十三条、第十九条、第四十条、第四十一条、第四十八条及第五十条乃至第五十二条ノ二ノ規定ハ臨時利得税ニ付之ヲ準用ス
臨時利得税法施行地又ハ台湾ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル個人ノ利得ニ付テハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ臨時利得税ヲ課セズ
第二十七条 樺太ニ住所ヲ有セザル外国人又ハ外国法人ノ外国ノ船籍ヲ有スル船舶ノ所得及純益ニシテ所得税及営業収益税ヲ免除セラルルモノニ付テハ本令ヲ適用セズ
第二十八条 町村ハ臨時利得税ノ附加税ヲ課スルコトヲ得ズ
第二十九条 本令ニ定ムルモノノ外臨時利得税ニ関シ必要ナル規定ハ樺太庁長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ法人ニ付テハ昭和十年一月一日ヲ含ム事業年度分ヨリ、個人ニ付テハ昭和十年分ヨリ之ヲ適用ス
本令ニ依ル臨時利得税ノ賦課ハ法人ニ付テハ昭和十二年十二月三十一日ヲ含ム事業年度分限リ、個人ニ付テハ昭和十二年分限リトス
第十六条ノ規定中三月十五日トアルハ昭和十年ニ限リ四月二十五日トス