朕石油業法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和九年六月二十六日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
拓務大臣 永井柳太郞
商工大臣 松本烝治
勅令第百九十六號
石油業法施行令
第一條 石油業法第一條ノ石油精製業ハ鑛物性ノ原料油(含油屑ト密接ノ關係アル可燃質天然瓦斯ヲ含ム)ヨリ鑛物性ノ揮發油、燈油、輕油、機械油又ハ重油ヲ精製スル事業トス但シ石炭又ハ油母頁岩ヨリ製造シタル原料油ヨリ鑛物性ノ揮發油、燈油、輕油、機械油又ハ重油ヲ精製スル事業ヲ除ク
石油業法第一條ノ石油輸入業ハ鑛物性ノ揮發油、燈油、輕油、機械油、重油又ハ原油ヲ輸入スル事業トス但シ鑵、樽其ノ他之ニ準ズル容器ニ入レタル鑛物性ノ燈油、輕油又ハ機械油ノミヲ輸入スル事業ヲ除ク
第二條 石油業法第一條ノ石油精製業ノ許可ハ石油精製工場每ニ之ヲ爲スモノトス
石油精製工場ニシテ輸入シタル原料油ノ精製ヲ爲スモノハ一基ニ付一年五萬キロリットル以上ノ原料油處理能力ヲ有スル直溜裝置及一基ニ付一年二萬五千キロリットル以上ノ原料油處理能力ヲ有スル分解蒸溜裝置ヲ備ヘ又ハ一基ニ付一年五萬キロリットル以上ノ原料油處理能力ヲ有スル分解蒸溜裝置ヲ備フルコトヲ要ス
第三條 商工大臣ハ石油ノ需要供給ヲ參酌シ石油業ノ健全ナル發達ニ支障アリト認ムルトキハ石油業法第一條ノ石油精製業又ハ石油輸入業ノ許可ヲ爲サザルコトヲ得
第四條 石油業法第四條ノ規定ニ依リ石油輸入業者ニ非ザレバ輸入ヲ爲スコトヲ得ザル石油ノ種類ハ鑛物性ノ揮發油、燈油、輕油、機械油、重油及原油トシ同條ノ規定ニ依リ石油精製業者ノ輸入ヲ爲スコトヲ得ル石油ノ種類ハ鑛物性ノ重油及原油トス
第五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル石油ヲ輸入スル場合ニ於テハ其ノ輸入者ハ石油輸入業者タルコトヲ要セズ
一 政府ノ輸入ニ係ル石油
二 見本、標本又ハ旅客ノ携帶品タル石油
三 船用品、航空機ノ機用品又ハ自動車ノ車用品タル石油
四 鑵、樽其ノ他之ニ準ズル容器ニ入レタル石油(鑛物性ノ揮發油、重油及原油ヲ除ク)
第六條 石油業法第五條ノ規定ニ依リ石油精製業者又ハ石油輸入業者ノ保有スベキ石油ハ輸入シタル鑛物性ノ揮發油、重油又ハ原油トシ其ノ保有スベキ數量ハ種別每ニ一年間ニ輸入シタル數量ノ二分ノ一ヲ下ルコトヲ得ズ但シ石油業法第六條ノ規定ニ依リ石油ヲ購入シ、同法第七條ノ規定ニ依リ石油ノ需給ヲ調節スル爲必要ナル事項ヲ命ジ又ハ天災事變其ノ他已ムコトヲ得ザル事由アリタルニ因リ其ノ保有量ガ保有スベキ數量ヲ下リタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ保有スベキ數量ノ計算方法及前項但書ノ場合ニ於テ保有スベキ數量ニ充タザル數量ノ補充方法竝ニ石油精製業者若ハ石油輸入業者ガ其ノ事業ヲ讓渡シ又ハ石油精製業若ハ石油輸入業ヲ營ム會社合併ヲ爲シタル場合ノ保有ニ關シ必要ナル事項ハ商工大臣之ヲ定ム
第七條 石油業法第五條ノ規定ニ依ル石油ノ保有ハ命令ヲ以テ定ムル容量以上ノ石油タンクニ依リ之ヲ爲スベシ但シ商工大臣ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
陸軍大臣、海軍大臣又ハ商工大臣軍事上其ノ他公益上必要アリト認ムルトキハ石油ノ保有ノ場所ヲ指定スルコトヲ得
第八條 政府ハ軍事上其ノ他公益上緊急ノ必要アルトキハ石油業法第六條ノ規定ニ依リ石油精製業者又ハ石油輸入業者ノ所有スル石油ヲ購入スルコトヲ得
前項ノ石油ノ購入ニ付テハ隨意契約ニ依ルコトヲ得
第九條 陸軍大臣又ハ海軍大臣軍事上必要アリト認メ石油業法第七條ノ命令又ハ第七條第二項ノ指定ヲ爲サントスルトキハ商工大臣ニ協議スベシ
商工大臣石油業法第七條ノ命令又ハ第七條第二項ノ指定ヲ爲サントスル場合ニ於テ其ノ命令又ハ指定ガ軍事上ニ影響ヲ及ボスベキモノナルトキハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ニ協議スベシ
第十條 本令中商工大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督、樺太ニ在リテハ樺太廳長官トス
附 則
本令ハ石油業法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
石油精製業ヲ營ム者ニシテ石油業法附則第二項ノ規定ニ依リ同法ニ依ル許可ヲ受ケタル者ト看做サレタルモノニ付テハ本令施行後十年間第二條第二項ノ規定ヲ適用セズ
朕石油業法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和九年六月二十六日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
拓務大臣 永井柳太郎
商工大臣 松本烝治
勅令第百九十六号
石油業法施行令
第一条 石油業法第一条ノ石油精製業ハ鉱物性ノ原料油(含油屑ト密接ノ関係アル可燃質天然瓦斯ヲ含ム)ヨリ鉱物性ノ揮発油、灯油、軽油、機械油又ハ重油ヲ精製スル事業トス但シ石炭又ハ油母頁岩ヨリ製造シタル原料油ヨリ鉱物性ノ揮発油、灯油、軽油、機械油又ハ重油ヲ精製スル事業ヲ除ク
石油業法第一条ノ石油輸入業ハ鉱物性ノ揮発油、灯油、軽油、機械油、重油又ハ原油ヲ輸入スル事業トス但シ鑵、樽其ノ他之ニ準ズル容器ニ入レタル鉱物性ノ灯油、軽油又ハ機械油ノミヲ輸入スル事業ヲ除ク
第二条 石油業法第一条ノ石油精製業ノ許可ハ石油精製工場毎ニ之ヲ為スモノトス
石油精製工場ニシテ輸入シタル原料油ノ精製ヲ為スモノハ一基ニ付一年五万キロリットル以上ノ原料油処理能力ヲ有スル直溜装置及一基ニ付一年二万五千キロリットル以上ノ原料油処理能力ヲ有スル分解蒸溜装置ヲ備ヘ又ハ一基ニ付一年五万キロリットル以上ノ原料油処理能力ヲ有スル分解蒸溜装置ヲ備フルコトヲ要ス
第三条 商工大臣ハ石油ノ需要供給ヲ参酌シ石油業ノ健全ナル発達ニ支障アリト認ムルトキハ石油業法第一条ノ石油精製業又ハ石油輸入業ノ許可ヲ為サザルコトヲ得
第四条 石油業法第四条ノ規定ニ依リ石油輸入業者ニ非ザレバ輸入ヲ為スコトヲ得ザル石油ノ種類ハ鉱物性ノ揮発油、灯油、軽油、機械油、重油及原油トシ同条ノ規定ニ依リ石油精製業者ノ輸入ヲ為スコトヲ得ル石油ノ種類ハ鉱物性ノ重油及原油トス
第五条 左ノ各号ノ一ニ該当スル石油ヲ輸入スル場合ニ於テハ其ノ輸入者ハ石油輸入業者タルコトヲ要セズ
一 政府ノ輸入ニ係ル石油
二 見本、標本又ハ旅客ノ携帯品タル石油
三 船用品、航空機ノ機用品又ハ自動車ノ車用品タル石油
四 鑵、樽其ノ他之ニ準ズル容器ニ入レタル石油(鉱物性ノ揮発油、重油及原油ヲ除ク)
第六条 石油業法第五条ノ規定ニ依リ石油精製業者又ハ石油輸入業者ノ保有スベキ石油ハ輸入シタル鉱物性ノ揮発油、重油又ハ原油トシ其ノ保有スベキ数量ハ種別毎ニ一年間ニ輸入シタル数量ノ二分ノ一ヲ下ルコトヲ得ズ但シ石油業法第六条ノ規定ニ依リ石油ヲ購入シ、同法第七条ノ規定ニ依リ石油ノ需給ヲ調節スル為必要ナル事項ヲ命ジ又ハ天災事変其ノ他已ムコトヲ得ザル事由アリタルニ因リ其ノ保有量ガ保有スベキ数量ヲ下リタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ保有スベキ数量ノ計算方法及前項但書ノ場合ニ於テ保有スベキ数量ニ充タザル数量ノ補充方法並ニ石油精製業者若ハ石油輸入業者ガ其ノ事業ヲ譲渡シ又ハ石油精製業若ハ石油輸入業ヲ営ム会社合併ヲ為シタル場合ノ保有ニ関シ必要ナル事項ハ商工大臣之ヲ定ム
第七条 石油業法第五条ノ規定ニ依ル石油ノ保有ハ命令ヲ以テ定ムル容量以上ノ石油タンクニ依リ之ヲ為スベシ但シ商工大臣ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
陸軍大臣、海軍大臣又ハ商工大臣軍事上其ノ他公益上必要アリト認ムルトキハ石油ノ保有ノ場所ヲ指定スルコトヲ得
第八条 政府ハ軍事上其ノ他公益上緊急ノ必要アルトキハ石油業法第六条ノ規定ニ依リ石油精製業者又ハ石油輸入業者ノ所有スル石油ヲ購入スルコトヲ得
前項ノ石油ノ購入ニ付テハ随意契約ニ依ルコトヲ得
第九条 陸軍大臣又ハ海軍大臣軍事上必要アリト認メ石油業法第七条ノ命令又ハ第七条第二項ノ指定ヲ為サントスルトキハ商工大臣ニ協議スベシ
商工大臣石油業法第七条ノ命令又ハ第七条第二項ノ指定ヲ為サントスル場合ニ於テ其ノ命令又ハ指定ガ軍事上ニ影響ヲ及ボスベキモノナルトキハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ニ協議スベシ
第十条 本令中商工大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督、台湾ニ在リテハ台湾総督、樺太ニ在リテハ樺太庁長官トス
附 則
本令ハ石油業法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
石油精製業ヲ営ム者ニシテ石油業法附則第二項ノ規定ニ依リ同法ニ依ル許可ヲ受ケタル者ト看做サレタルモノニ付テハ本令施行後十年間第二条第二項ノ規定ヲ適用セズ