石油業法
法令番号: 法律第二十六號
公布年月日: 昭和9年3月28日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル石油業法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和九年三月二十七日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
商工大臣 松本烝治
法律第二十六號
石油業法
第一條 石油精製業又ハ石油輸入業ヲ營マントスル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ
前項ノ石油精製業及石油輸入業ノ範圍竝ニ許可ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條 石油精製業者又ハ石油輸入業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第三條 石油精製業者又ハ石油輸入業者其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ讓渡シ、廢止シ又ハ休止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受クベシ石油精製業又ハ石油輸入業ヲ營ム會社合併ヲ爲シ又ハ解散セントスルトキ亦同ジ
第四條 石油ノ輸入ハ石油精製業者ガ其ノ精製ニ必要ナル石油ヲ輸入スル場合ヲ除クノ外石油輸入業者ニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ但シ勅令ニ別段ノ規定アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ石油ノ種類ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 石油精製業者又ハ石油輸入業者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ者ノ輸入數量ヲ標準トシテ算定シタル數量ノ石油ヲ常時保有スベシ
第六條 石油精製業者又ハ石油輸入業者ハ其ノ所有スル石油ヲ政府ガ命令ノ定ムル所ニ依リ時價ヲ標準トシテ購入セントスルトキハ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
第七條 政府ハ公益上必要アリト認ムルトキハ石油精製業者又ハ石油輸入業者ニ對シ石油ノ販賣價格ノ變更、石油供給量ノ確保其ノ他石油ノ需給ヲ調節スル爲必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
政府ハ公益上必要アリト認ムルトキハ石油精製業者又ハ石油輸入業者ニ對シ其ノ設備ノ擴張又ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
第八條 政府第一條ノ許可又ハ前條ノ命令ヲ爲サントスルトキハ勅令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外石油業委員會ノ議ヲ經ベシ
石油業委員會ノ組織ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條 石油精製業者又ハ石油輸入業者本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シ又ハ政府ノ命ジタル事項ヲ執行セザルトキハ政府ハ第一條ノ許可ヲ取消シ又ハ法人ノ役員ノ解任ヲ爲スコトヲ得
第十條 行政官廳ハ石油精製業者又ハ石油輸入業者ニ對シ其ノ業務ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
行政官廳監督上必要アリト認ムルトキハ當該官吏ヲシテ石油精製業者又ハ石油輸入業者ノ事務所、營業所、工場、貯油所其ノ他ノ場所ニ臨檢シ業務ノ狀況又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢查セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第十一條 政府ノ許可ヲ受ケズシテ石油精製業又ハ石油輸入業ヲ營ミタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十二條 第四條ノ規定ニ違反シタル者ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十三條 石油精製業者又ハ石油輸入業者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第五條ノ規定ニ違反シタルトキ
二 第七條ノ命令ニ違反シタルトキ
第十四條 石油精製業者又ハ石油輸入業者第二條又ハ第三條ノ規定ニ違反シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第十條第一項ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シ又ハ監督上必要ナル命令若ハ處分ニ違反シタル者
二 第十條第二項ノ規定ニ依ル當該官吏ノ臨檢檢查ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シタル者
第十六條 石油精製業者又ハ石油輸入業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十七條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ石油精製業者又ハ石油輸入業者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ石油精製業ヲ營ム者又ハ石油輸入業ヲ營ム者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法施行ノ日ヨリ之ヲ本法ニ依リ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
本法施行ノ際輸入ノ爲輸送ノ途ニ在ル石油又ハ本法施行前注文ヲ發シタル石油ヲ輸入セントスル場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ政府ニ屆出デタルトキハ第四條ノ規定ニ拘ラズ輸入ヲ爲スコトヲ得
第五條ノ規定ハ本法施行後六月間之ヲ適用セズ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル石油業法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和九年三月二十七日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
商工大臣 松本烝治
法律第二十六号
石油業法
第一条 石油精製業又ハ石油輸入業ヲ営マントスル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ
前項ノ石油精製業及石油輸入業ノ範囲並ニ許可ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二条 石油精製業者又ハ石油輸入業者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ事業計画ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第三条 石油精製業者又ハ石油輸入業者其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ譲渡シ、廃止シ又ハ休止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受クベシ石油精製業又ハ石油輸入業ヲ営ム会社合併ヲ為シ又ハ解散セントスルトキ亦同ジ
第四条 石油ノ輸入ハ石油精製業者ガ其ノ精製ニ必要ナル石油ヲ輸入スル場合ヲ除クノ外石油輸入業者ニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ但シ勅令ニ別段ノ規定アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ石油ノ種類ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 石油精製業者又ハ石油輸入業者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ者ノ輸入数量ヲ標準トシテ算定シタル数量ノ石油ヲ常時保有スベシ
第六条 石油精製業者又ハ石油輸入業者ハ其ノ所有スル石油ヲ政府ガ命令ノ定ムル所ニ依リ時価ヲ標準トシテ購入セントスルトキハ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
第七条 政府ハ公益上必要アリト認ムルトキハ石油精製業者又ハ石油輸入業者ニ対シ石油ノ販売価格ノ変更、石油供給量ノ確保其ノ他石油ノ需給ヲ調節スル為必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
政府ハ公益上必要アリト認ムルトキハ石油精製業者又ハ石油輸入業者ニ対シ其ノ設備ノ拡張又ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
第八条 政府第一条ノ許可又ハ前条ノ命令ヲ為サントスルトキハ勅令ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外石油業委員会ノ議ヲ経ベシ
石油業委員会ノ組織ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九条 石油精製業者又ハ石油輸入業者本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シ又ハ政府ノ命ジタル事項ヲ執行セザルトキハ政府ハ第一条ノ許可ヲ取消シ又ハ法人ノ役員ノ解任ヲ為スコトヲ得
第十条 行政官庁ハ石油精製業者又ハ石油輸入業者ニ対シ其ノ業務ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
行政官庁監督上必要アリト認ムルトキハ当該官吏ヲシテ石油精製業者又ハ石油輸入業者ノ事務所、営業所、工場、貯油所其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務ノ状況又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第十一条 政府ノ許可ヲ受ケズシテ石油精製業又ハ石油輸入業ヲ営ミタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第十二条 第四条ノ規定ニ違反シタル者ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
第十三条 石油精製業者又ハ石油輸入業者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第五条ノ規定ニ違反シタルトキ
二 第七条ノ命令ニ違反シタルトキ
第十四条 石油精製業者又ハ石油輸入業者第二条又ハ第三条ノ規定ニ違反シタルトキハ千円以下ノ罰金ニ処ス
第十五条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第十条第一項ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ若ハ虚偽ノ報告ヲ為シ又ハ監督上必要ナル命令若ハ処分ニ違反シタル者
二 第十条第二項ノ規定ニ依ル当該官吏ノ臨検検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者
第十六条 石油精製業者又ハ石油輸入業者ハ其ノ代理人、戸主、家族、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十七条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ石油精製業者又ハ石油輸入業者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ石油精製業ヲ営ム者又ハ石油輸入業ヲ営ム者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法施行ノ日ヨリ之ヲ本法ニ依リ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
本法施行ノ際輸入ノ為輸送ノ途ニ在ル石油又ハ本法施行前注文ヲ発シタル石油ヲ輸入セントスル場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ政府ニ届出デタルトキハ第四条ノ規定ニ拘ラズ輸入ヲ為スコトヲ得
第五条ノ規定ハ本法施行後六月間之ヲ適用セズ