不動産融資及損失補償法
法令番号: 法律第二十四號
公布年月日: 昭和7年9月6日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル不動產融資及損失補償法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和七年九月五日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
大藏大臣 高橋是淸
法律第二十四號
不動產融資及損失補償法
第一條 日本勸業銀行、農工銀行又ハ北海道拓殖銀行(以下融資銀行ト稱ス)ハ銀行ヨリ左ノ方法ニ依ル不動產資金融通ノ請求アリタル場合ニ於テ金融ノ疏通ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ大藏大臣ノ定ムル所ニ依リ當該銀行又ハ其ノ債務者ニ對シ資金ノ融通ヲ爲スコトヲ得
一 當該銀行ノ不動產又ハ不動產抵當附債權(抵當證券ヲ含ム)ヲ擔保トスル貸付
二 當該銀行ニ對スル不動產ヲ抵當トスル債務ノ辨濟ノ爲ニ當該不動產ヲ抵當トスル貸付
第二條 融資銀行ガ前條ノ規定ニ依ル融通ヲ爲スハ本法施行ノ日ヨリ三年トシ其ノ融通ノ期限ハ本法施行ノ日ヨリ十五年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三條 融資銀行ガ第一條ノ規定ニ依ル融通ヲ爲ス場合ニ於ケル貸付金額ハ日本勸業銀行法第十八條及第三十一條ノ二第二項中第十八條ヲ準用シタル規定又ハ農工銀行法第十條及第七條ノ三第二項中第十條ヲ準用シタル規定ニ拘ラズ其ノ擔保タル不動產又ハ其ノ擔保タル債權ニ附隨スル抵當權ノ目的タル不動產ニ付鑑定シタル價格以內トス
第四條 日本勸業銀行法第十四條第三項及第十四條ノ二ノ規定、同法第十四條第二項及第三十一條ノ二第一項ノ規定中貸付年限及償還方法ニ關スルモノ、農工銀行法第六條ノ二及第七條ノ規定、同法第六條第二號及第七條ノ三第一項ノ規定中貸付金額貸付年限及償還方法ニ關スルモノ竝ニ北海道拓殖銀行法第七條第一項第二號及第七條ノ二ノ規定中貸付年限及償還方法ニ關スルモノハ第一條ノ規定ニ依ル融通ニハ之ヲ適用セズ
融資銀行ガ第一條ノ規定ニ依ル融通以外ノ融通ヲ爲ス場合ニ於テ第一條ノ規定ニ依ル融通ノ額ハ日本勸業銀行法又ハ農工銀行法ニ規定スル貸付金額ノ制限ノ計算上之ヲ算入セズ
第五條 融資銀行ハ第一條ノ規定ニ依ル融通ヲ爲ス爲必要アルトキハ日本勸業銀行法第三十四條第一項、農工銀行法第二十六條第一項又ハ北海道拓殖銀行法第十二條第一項ノ制限ニ拘ラズ債券ヲ發行スルコトヲ得
融資銀行ガ第一條ノ規定ニ依ル融通以外ノ融通ヲ爲ス爲債券ヲ發行スル場合ニ於テ第一條ノ規定ニ依ル融通ヲ爲ス爲發行スル債券ノ額ハ日本勸業銀行法、農工銀行法又ハ北海道拓殖銀行法ニ規定スル債券發行額ノ制限ノ計算上之ヲ算入セズ
第六條 政府ハ第一條ノ規定ニ依ル融通ヲ爲シタルニ因リテ融資銀行ガ損失ヲ受ケタルトキハ融資銀行ニ對シ一億圓ヲ限リ其ノ損失ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
前項ノ損失ヲ決定スル基準ハ大藏大臣之ヲ定ム
第七條 第一條ノ規定ニ依ル融通ヲ爲シタルニ因リテ融資銀行ノ受ケタル損失及其ノ額ハ不動產融資損失審査會之ヲ決定ス
不動產融資損失審査會ノ組織及權限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條 第六條第一項ノ契約ニ基キ政府ガ融資銀行ニ對シテ支拂フベキ損失補償金ハ國債證券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
第九條 政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付スル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
第十條 本法ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前大藏省預金部ノ引受ニ係ル債券資金ヲ以テ融資銀行ノ爲シタル資金ノ融通ニシテ第一條ノ規定ニ依ル融通ニ相當スルモノハ之ヲ第一條ノ規定ニ依ル融通ト看做ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル不動産融資及損失補償法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和七年九月五日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
大蔵大臣 高橋是清
法律第二十四号
不動産融資及損失補償法
第一条 日本勧業銀行、農工銀行又ハ北海道拓殖銀行(以下融資銀行ト称ス)ハ銀行ヨリ左ノ方法ニ依ル不動産資金融通ノ請求アリタル場合ニ於テ金融ノ疏通ヲ図ル為必要アリト認ムルトキハ大蔵大臣ノ定ムル所ニ依リ当該銀行又ハ其ノ債務者ニ対シ資金ノ融通ヲ為スコトヲ得
一 当該銀行ノ不動産又ハ不動産抵当附債権(抵当証券ヲ含ム)ヲ担保トスル貸付
二 当該銀行ニ対スル不動産ヲ抵当トスル債務ノ弁済ノ為ニ当該不動産ヲ抵当トスル貸付
第二条 融資銀行ガ前条ノ規定ニ依ル融通ヲ為スハ本法施行ノ日ヨリ三年トシ其ノ融通ノ期限ハ本法施行ノ日ヨリ十五年ヲ超ユルコトヲ得ズ
第三条 融資銀行ガ第一条ノ規定ニ依ル融通ヲ為ス場合ニ於ケル貸付金額ハ日本勧業銀行法第十八条及第三十一条ノ二第二項中第十八条ヲ準用シタル規定又ハ農工銀行法第十条及第七条ノ三第二項中第十条ヲ準用シタル規定ニ拘ラズ其ノ担保タル不動産又ハ其ノ担保タル債権ニ附随スル抵当権ノ目的タル不動産ニ付鑑定シタル価格以内トス
第四条 日本勧業銀行法第十四条第三項及第十四条ノ二ノ規定、同法第十四条第二項及第三十一条ノ二第一項ノ規定中貸付年限及償還方法ニ関スルモノ、農工銀行法第六条ノ二及第七条ノ規定、同法第六条第二号及第七条ノ三第一項ノ規定中貸付金額貸付年限及償還方法ニ関スルモノ並ニ北海道拓殖銀行法第七条第一項第二号及第七条ノ二ノ規定中貸付年限及償還方法ニ関スルモノハ第一条ノ規定ニ依ル融通ニハ之ヲ適用セズ
融資銀行ガ第一条ノ規定ニ依ル融通以外ノ融通ヲ為ス場合ニ於テ第一条ノ規定ニ依ル融通ノ額ハ日本勧業銀行法又ハ農工銀行法ニ規定スル貸付金額ノ制限ノ計算上之ヲ算入セズ
第五条 融資銀行ハ第一条ノ規定ニ依ル融通ヲ為ス為必要アルトキハ日本勧業銀行法第三十四条第一項、農工銀行法第二十六条第一項又ハ北海道拓殖銀行法第十二条第一項ノ制限ニ拘ラズ債券ヲ発行スルコトヲ得
融資銀行ガ第一条ノ規定ニ依ル融通以外ノ融通ヲ為ス為債券ヲ発行スル場合ニ於テ第一条ノ規定ニ依ル融通ヲ為ス為発行スル債券ノ額ハ日本勧業銀行法、農工銀行法又ハ北海道拓殖銀行法ニ規定スル債券発行額ノ制限ノ計算上之ヲ算入セズ
第六条 政府ハ第一条ノ規定ニ依ル融通ヲ為シタルニ因リテ融資銀行ガ損失ヲ受ケタルトキハ融資銀行ニ対シ一億円ヲ限リ其ノ損失ヲ補償スルノ契約ヲ為スコトヲ得
前項ノ損失ヲ決定スル基準ハ大蔵大臣之ヲ定ム
第七条 第一条ノ規定ニ依ル融通ヲ為シタルニ因リテ融資銀行ノ受ケタル損失及其ノ額ハ不動産融資損失審査会之ヲ決定ス
不動産融資損失審査会ノ組織及権限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八条 第六条第一項ノ契約ニ基キ政府ガ融資銀行ニ対シテ支払フベキ損失補償金ハ国債証券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
第九条 政府ハ前条ノ規定ニ依リ交付スル為必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ発行スルコトヲ得
第十条 本法ニ依リ交付スル国債証券ノ交付価格ハ時価ヲ参酌シテ大蔵大臣之ヲ定ム
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前大蔵省預金部ノ引受ニ係ル債券資金ヲ以テ融資銀行ノ為シタル資金ノ融通ニシテ第一条ノ規定ニ依ル融通ニ相当スルモノハ之ヲ第一条ノ規定ニ依ル融通ト看做ス