郵便年金法
法令番号: 法律第三十九號
公布年月日: 大正15年3月30日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル郵便年金法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十五年三月二十九日
內閣總理大臣 若槻禮次郞
大藏大臣 濱口雄幸
遞信大臣 安達謙藏
法律第三十九號
郵便年金法
第一條 郵便年金事業ハ政府之ヲ管掌ス
第二條 郵便年金契約ハ政府カ契約者又ハ第三者ノ生存ニ關シテ其ノ者ニ年金ヲ支拂フヘキコトヲ約シ契約者カ對償トシテ政府ニ掛金ヲ拂込ムヘキコトヲ約スルモノトス
年金契約ノ種類、年金受取人ノ年齡、掛金及年金受取人ノ爲ニ積立ツヘキ金額ノ計算ノ基礎ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條 年金ノ額ハ年金受取人一人ニ付年額二千四百圓以下トス
第四條 年金契約ノ申込ヲ承諾シタルトキハ郵便年金證書ヲ年金契約者ニ交付ス
郵便年金證書ニ記載スヘキ事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 年金契約ノ效力ハ掛金ヲ拂込ミタル日ニ始マル
第六條 年金受取人カ第三者ナルトキハ其ノ第三者ハ當然年金契約ノ利益ヲ享受ス
第七條 年金契約者ハ年金契約申込ノ際年金受取人ノ死亡又ハ年金契約ノ解除若ハ變更ノ場合ニ於テ拂込掛金ノ返還ヲ請求スル權利ヲ自己又ハ年金受取人タル第三者ノ爲ニ留保スルコトヲ得
返還ヲ請求シ得ヘキ拂込掛金ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條 自己ヲ以テ拂込掛金ノ受取人ト爲シタルトキハ年金契約者ハ年金受取人タル第三者ヲ以テ拂込掛金ノ受取人ト爲スコトヲ得
年金受取人タル第三者ヲ以テ拂込掛金ノ受取人ト爲シタルトキハ年金契約者ハ之ヲ變更スルコトヲ得ス
第九條 年金又ハ第七條ニ規定スル拂込掛金ヲ受取ルヘキ權利ハ之ヲ讓渡スコトヲ得ス
第十條 年金ヲ受取ルヘキ權利ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス但シ年額二百五十圓ヲ超ユル金額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十一條 年金契約者ハ第三者ヲシテ年金契約者トシテノ權利義務ヲ承繼セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テ年金契約者カ年金受取人ニ非サルトキハ年金受取人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ承繼ハ政府ニ通知スルニ非サレハ之ヲ以テ政府ニ對抗スルコトヲ得ス
第十二條 年金契約者ハ年金支拂ノ事由發生スル迄ハ年金契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得
前項ノ解除ハ將來ニ向テノミ其ノ效力ヲ生ス
第十三條 年金契約者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ年金契約ノ變更ヲ請求スルコトヲ得
第十四條 年金契約者掛金ヲ拂込マスシテ命令ノ定ムル猶豫期間ヲ經過シタルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ年金契約ヲ旣ニ拂込ミタル掛金ニ依ル掛金拂濟年金契約ニ變更スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ掛金拂濟年金契約ニ變更セラレサル年金契約ハ解除セラレタルモノト看做ス
第十二條第二項ノ規定ハ前項ノ解除ニ之ヲ凖用ス
第十五條 第七條ノ規定ニ依リテ拂込掛金ノ返還ヲ請求スル權利ヲ留保シタル場合ニ於テハ年金契約者又ハ年金受取人ハ命令ノ定ムル所ニ依リ拂込掛金ノ範圍內ニ於テ貸付ヲ請求スルコトヲ得
第十六條 年金又ハ第七條ニ規定スル拂込掛金ヲ支拂フヘキ場合ニ於テ其ノ年金契約又ハ之ニ基キテ爲シタル貸付ニ付政府カ辨濟ヲ受クヘキ金額アルトキハ支拂金額ヨリ之ヲ控除ス
第十七條 當該官署カ命令ノ定ムル所ニ依リ年金又ハ年金契約者若ハ年金受取人ニ返還スヘキ金額ヲ支拂ヒタルトキハ其ノ支拂ハ之ヲ有效トス
第十八條 年金支拂ノ義務及拂込掛金返還ノ義務ハ二年、掛金拂込ノ義務ハ一年ヲ經過シタルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
第十九條 年金契約者又ハ年金受取人カ郵便年金ニ關スル事項ニ付政府ニ對シテ民事訴訟ヲ提起スルニハ簡易生命保險審査會ノ審査ヲ經ルコトヲ要ス
第二十條 前條ノ審査ノ請求ハ時效ノ中斷ニ關シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
第二十一條 郵便年金ニ關スル書類ニハ印紙稅ヲ課セス
第二十二條 郵便年金ノ事務ニ關スル郵便物ハ命令ノ定ムル所ニ依リ無料ト爲スコトヲ得
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル郵便年金法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十五年三月二十九日
内閣総理大臣 若槻礼次郎
大蔵大臣 浜口雄幸
逓信大臣 安達謙蔵
法律第三十九号
郵便年金法
第一条 郵便年金事業ハ政府之ヲ管掌ス
第二条 郵便年金契約ハ政府カ契約者又ハ第三者ノ生存ニ関シテ其ノ者ニ年金ヲ支払フヘキコトヲ約シ契約者カ対償トシテ政府ニ掛金ヲ払込ムヘキコトヲ約スルモノトス
年金契約ノ種類、年金受取人ノ年齢、掛金及年金受取人ノ為ニ積立ツヘキ金額ノ計算ノ基礎ニ関スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三条 年金ノ額ハ年金受取人一人ニ付年額二千四百円以下トス
第四条 年金契約ノ申込ヲ承諾シタルトキハ郵便年金証書ヲ年金契約者ニ交付ス
郵便年金証書ニ記載スヘキ事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 年金契約ノ効力ハ掛金ヲ払込ミタル日ニ始マル
第六条 年金受取人カ第三者ナルトキハ其ノ第三者ハ当然年金契約ノ利益ヲ享受ス
第七条 年金契約者ハ年金契約申込ノ際年金受取人ノ死亡又ハ年金契約ノ解除若ハ変更ノ場合ニ於テ払込掛金ノ返還ヲ請求スル権利ヲ自己又ハ年金受取人タル第三者ノ為ニ留保スルコトヲ得
返還ヲ請求シ得ヘキ払込掛金ニ関スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八条 自己ヲ以テ払込掛金ノ受取人ト為シタルトキハ年金契約者ハ年金受取人タル第三者ヲ以テ払込掛金ノ受取人ト為スコトヲ得
年金受取人タル第三者ヲ以テ払込掛金ノ受取人ト為シタルトキハ年金契約者ハ之ヲ変更スルコトヲ得ス
第九条 年金又ハ第七条ニ規定スル払込掛金ヲ受取ルヘキ権利ハ之ヲ譲渡スコトヲ得ス
第十条 年金ヲ受取ルヘキ権利ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス但シ年額二百五十円ヲ超ユル金額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十一条 年金契約者ハ第三者ヲシテ年金契約者トシテノ権利義務ヲ承継セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テ年金契約者カ年金受取人ニ非サルトキハ年金受取人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ承継ハ政府ニ通知スルニ非サレハ之ヲ以テ政府ニ対抗スルコトヲ得ス
第十二条 年金契約者ハ年金支払ノ事由発生スル迄ハ年金契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
前項ノ解除ハ将来ニ向テノミ其ノ効力ヲ生ス
第十三条 年金契約者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ年金契約ノ変更ヲ請求スルコトヲ得
第十四条 年金契約者掛金ヲ払込マスシテ命令ノ定ムル猶予期間ヲ経過シタルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ年金契約ヲ既ニ払込ミタル掛金ニ依ル掛金払済年金契約ニ変更スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ掛金払済年金契約ニ変更セラレサル年金契約ハ解除セラレタルモノト看做ス
第十二条第二項ノ規定ハ前項ノ解除ニ之ヲ準用ス
第十五条 第七条ノ規定ニ依リテ払込掛金ノ返還ヲ請求スル権利ヲ留保シタル場合ニ於テハ年金契約者又ハ年金受取人ハ命令ノ定ムル所ニ依リ払込掛金ノ範囲内ニ於テ貸付ヲ請求スルコトヲ得
第十六条 年金又ハ第七条ニ規定スル払込掛金ヲ支払フヘキ場合ニ於テ其ノ年金契約又ハ之ニ基キテ為シタル貸付ニ付政府カ弁済ヲ受クヘキ金額アルトキハ支払金額ヨリ之ヲ控除ス
第十七条 当該官署カ命令ノ定ムル所ニ依リ年金又ハ年金契約者若ハ年金受取人ニ返還スヘキ金額ヲ支払ヒタルトキハ其ノ支払ハ之ヲ有効トス
第十八条 年金支払ノ義務及払込掛金返還ノ義務ハ二年、掛金払込ノ義務ハ一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス
第十九条 年金契約者又ハ年金受取人カ郵便年金ニ関スル事項ニ付政府ニ対シテ民事訴訟ヲ提起スルニハ簡易生命保険審査会ノ審査ヲ経ルコトヲ要ス
第二十条 前条ノ審査ノ請求ハ時効ノ中断ニ関シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
第二十一条 郵便年金ニ関スル書類ニハ印紙税ヲ課セス
第二十二条 郵便年金ノ事務ニ関スル郵便物ハ命令ノ定ムル所ニ依リ無料ト為スコトヲ得
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム