日本無線電信株式会社法
法令番号: 法律第三十號
公布年月日: 大正14年3月30日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル日本無線電信株式會社法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十四年三月二十八日
內閣總理大臣 子爵 加藤高明
遞信大臣 犬養毅
大藏大臣 濱口雄幸
法律第三十號
日本無線電信株式會社法
第一條 日本無線電信株式會社ハ外國無線電報ノ取扱ノ爲ニスル無線電信ノ設備及其ノ附屬設備ヲ爲シ之ヲ政府ノ用ニ供スルコトヲ目的トスル株式會社トス
第二條 日本無線電信株式會社ハ前條ニ定ムルモノノ外主務大臣ノ命令ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケ左ノ事業ヲ營ムコトヲ得
一 外國ニ於ケル無線電信事業及無線電話事業ノ經營
二 外國ニ於ケル無線電信又ハ無線電話ノ設備ノ貸付及工事ノ請負
三 無線電信又ハ無線電話ノ用品ノ製造及販賣
四 前三號ニ揭クル事業ニ對スル投資
第三條 日本無線電信株式會社ノ資本金ハ二千萬圓トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第四條 日本無線電信株式會社ノ存立期間ハ設立登記ノ日ヨリ五十年トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ延長スルコトヲ得
第五條 日本無線電信株式會社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ帝國法令ニ依リテ設立シタル法人ニシテ其ノ議決權ノ過半數カ外國人又ハ外國法人ニ屬セサルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第六條 政府ハ外國無線電報ノ取扱ノ爲ニスル國有ノ無線電信局設備及其ノ附屬設備竝無線電信局設置ノ爲購入シタル土地ヲ以テ出資ノ目的ト爲スコトヲ得
第七條 第一條ニ揭クル設備ニ依リテ取扱ハルヘキ電報ノ受付、配達及機械上ノ送受信ノ事務ハ政府之ヲ行フ
第八條 政府ハ日本無線電信株式會社ノ設備ヲ使用シ之ニ依リテ取扱ヒタル電報ノ料金中本邦收得分ニ當ルモノノ一部ヲ勅令ノ定ムル所ニ依リ該設備使用ニ對シ日本無線電信株式會社ニ交付ス
第九條 每營業期ニ於テ配當シ得ヘキ利益金額カ拂込資本金額ニ對シ一年百分ノ十二ノ割合ヲ超過スルトキハ日本無線電信株式會社ハ該超過額ノ二分ノ一ヲ政府ニ納付スヘシ
第十條 日本無線電信株式會社ハ其ノ創立初期ヨリ十年間政府持株ニ對シ利益配當ヲ爲スコトヲ要セス
每營業期ニ於テ配當シ得ヘキ利益金額カ政府持株以外ノ株式ノ拂込資本金額ニ對シ一年百分ノ八ノ割合ヲ超過スルトキハ該超過額ニ付テハ前項ノ規定ニ拘ラス政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ持株ニ對シ利益配當ヲ爲サシムルコトヲ得但シ創立初期ヨリノ配當シ得ヘキ利益金額ヲ通算シ政府持株以外ノ株式ノ拂込資本金額ニ對シ一年百分ノ八ノ割合ニ達セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ニ規定スル利益金額中政府持株ニ對シ配當シタル金額アルトキハ之ヲ控除シテ計算ス
第十一條 政府ハ日本無線電信株式會社ノ業務ヲ監督ス
第十二條 主務大臣ハ日本無線電信株式會社ノ業務ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ爲シ又ハ外國無線電報ノ取扱上必要ナル無線電信ノ設備若ハ其ノ附屬設備ヲ爲スヘキコトヲ命スルコトヲ得
日本無線電信株式會社カ前項ノ規定ニ依リテ主務大臣ノ命シタル設備ヲ爲スコトヲ怠リタルトキハ第八條ノ規定ニ依ル交付金ノ一部ヲ交付セサルコトヲ得
第十三條 取締役及監査役ノ選任及解任、定款ノ變更、利益金ノ處分、社債ノ募集、合併竝解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
主務大臣ハ取締役カ法令、定款又ハ主務大臣ノ命令ニ違反シタルトキハ之ヲ解任スルコトヲ得
第十四條 日本無線電信株式會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ所有スル無線電信ノ設備又ハ其ノ附屬設備ニ屬スル物件ヲ讓渡シ又ハ擔保ニ供スルコトヲ得ス
第十五條 政府カ勅令ノ定ムル所ニ依リ相當ノ價格ヲ以テ日本無線電信株式會社ノ所有スル無線電信ノ設備及其ノ附屬設備ノ全部又ハ一部ヲ買收セムトスルトキハ會社ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第十六條 日本無線電信株式會社左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ取締役又ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ヲ百圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
一 主務大臣ノ命令ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケタルニ非スシテ第二條ニ揭クル事業ヲ營ミタルトキ
二 主務大臣ノ命令ニ違反シタルトキ
三 本法ニ規定セサル事業ヲ營ミタルトキ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第十七條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條 政府ハ設立委員ヲ命シ日本無線電信株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ事務ヲ處理セシム
第十九條 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル後株式總數ヨリ政府ニ割當ツヘキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株主ヲ募集スヘシ
第二十條 株式申込證ニハ定款認可ノ年月日竝商法第百二十六條第二項第二號、第四號及第五號ニ規定スル事項ヲ記載スヘシ
第二十一條 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込證ヲ主務大臣ニ提出シ其ノ檢査ヲ受クヘシ
第二十二條 設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受ケタル後遲滯ナク各株式ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシムルコトヲ要ス
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集スヘシ
第二十三條 創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ日本無線電信株式會社ノ取締役ニ引渡スヘシ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル日本無線電信株式会社法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十四年三月二十八日
内閣総理大臣 子爵 加藤高明
逓信大臣 犬養毅
大蔵大臣 浜口雄幸
法律第三十号
日本無線電信株式会社法
第一条 日本無線電信株式会社ハ外国無線電報ノ取扱ノ為ニスル無線電信ノ設備及其ノ附属設備ヲ為シ之ヲ政府ノ用ニ供スルコトヲ目的トスル株式会社トス
第二条 日本無線電信株式会社ハ前条ニ定ムルモノノ外主務大臣ノ命令ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケ左ノ事業ヲ営ムコトヲ得
一 外国ニ於ケル無線電信事業及無線電話事業ノ経営
二 外国ニ於ケル無線電信又ハ無線電話ノ設備ノ貸付及工事ノ請負
三 無線電信又ハ無線電話ノ用品ノ製造及販売
四 前三号ニ掲クル事業ニ対スル投資
第三条 日本無線電信株式会社ノ資本金ハ二千万円トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第四条 日本無線電信株式会社ノ存立期間ハ設立登記ノ日ヨリ五十年トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ延長スルコトヲ得
第五条 日本無線電信株式会社ノ株式ハ記名式トシ政府、公共団体、帝国臣民又ハ帝国法令ニ依リテ設立シタル法人ニシテ其ノ議決権ノ過半数カ外国人又ハ外国法人ニ属セサルモノニ限リ之ヲ所有スルコトヲ得
第六条 政府ハ外国無線電報ノ取扱ノ為ニスル国有ノ無線電信局設備及其ノ附属設備並無線電信局設置ノ為購入シタル土地ヲ以テ出資ノ目的ト為スコトヲ得
第七条 第一条ニ掲クル設備ニ依リテ取扱ハルヘキ電報ノ受付、配達及機械上ノ送受信ノ事務ハ政府之ヲ行フ
第八条 政府ハ日本無線電信株式会社ノ設備ヲ使用シ之ニ依リテ取扱ヒタル電報ノ料金中本邦収得分ニ当ルモノノ一部ヲ勅令ノ定ムル所ニ依リ該設備使用ニ対シ日本無線電信株式会社ニ交付ス
第九条 毎営業期ニ於テ配当シ得ヘキ利益金額カ払込資本金額ニ対シ一年百分ノ十二ノ割合ヲ超過スルトキハ日本無線電信株式会社ハ該超過額ノ二分ノ一ヲ政府ニ納付スヘシ
第十条 日本無線電信株式会社ハ其ノ創立初期ヨリ十年間政府持株ニ対シ利益配当ヲ為スコトヲ要セス
毎営業期ニ於テ配当シ得ヘキ利益金額カ政府持株以外ノ株式ノ払込資本金額ニ対シ一年百分ノ八ノ割合ヲ超過スルトキハ該超過額ニ付テハ前項ノ規定ニ拘ラス政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ持株ニ対シ利益配当ヲ為サシムルコトヲ得但シ創立初期ヨリノ配当シ得ヘキ利益金額ヲ通算シ政府持株以外ノ株式ノ払込資本金額ニ対シ一年百分ノ八ノ割合ニ達セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ニ規定スル利益金額中政府持株ニ対シ配当シタル金額アルトキハ之ヲ控除シテ計算ス
第十一条 政府ハ日本無線電信株式会社ノ業務ヲ監督ス
第十二条 主務大臣ハ日本無線電信株式会社ノ業務ニ関シ監督上必要ナル命令ヲ為シ又ハ外国無線電報ノ取扱上必要ナル無線電信ノ設備若ハ其ノ附属設備ヲ為スヘキコトヲ命スルコトヲ得
日本無線電信株式会社カ前項ノ規定ニ依リテ主務大臣ノ命シタル設備ヲ為スコトヲ怠リタルトキハ第八条ノ規定ニ依ル交付金ノ一部ヲ交付セサルコトヲ得
第十三条 取締役及監査役ノ選任及解任、定款ノ変更、利益金ノ処分、社債ノ募集、合併並解散ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
主務大臣ハ取締役カ法令、定款又ハ主務大臣ノ命令ニ違反シタルトキハ之ヲ解任スルコトヲ得
第十四条 日本無線電信株式会社ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ所有スル無線電信ノ設備又ハ其ノ附属設備ニ属スル物件ヲ譲渡シ又ハ担保ニ供スルコトヲ得ス
第十五条 政府カ勅令ノ定ムル所ニ依リ相当ノ価格ヲ以テ日本無線電信株式会社ノ所有スル無線電信ノ設備及其ノ附属設備ノ全部又ハ一部ヲ買収セムトスルトキハ会社ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第十六条 日本無線電信株式会社左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ取締役又ハ其ノ職務ヲ行フ監査役ヲ百円以上千円以下ノ過料ニ処ス
一 主務大臣ノ命令ニ依リ又ハ其ノ認可ヲ受ケタルニ非スシテ第二条ニ掲クル事業ヲ営ミタルトキ
二 主務大臣ノ命令ニ違反シタルトキ
三 本法ニ規定セサル事業ヲ営ミタルトキ
非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第十七条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八条 政府ハ設立委員ヲ命シ日本無線電信株式会社ノ設立ニ関スル一切ノ事務ヲ処理セシム
第十九条 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル後株式総数ヨリ政府ニ割当ツヘキ株式ヲ控除シタル残余ノ株式ニ付株主ヲ募集スヘシ
第二十条 株式申込証ニハ定款認可ノ年月日並商法第百二十六条第二項第二号、第四号及第五号ニ規定スル事項ヲ記載スヘシ
第二十一条 設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキハ株式申込証ヲ主務大臣ニ提出シ其ノ検査ヲ受クヘシ
第二十二条 設立委員ハ前条ノ検査ヲ受ケタル後遅滞ナク各株式ニ付第一回ノ払込ヲ為サシムルコトヲ要ス
前項ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク創立総会ヲ招集スヘシ
第二十三条 創立総会終結シタルトキハ設立委員ハ其ノ事務ヲ日本無線電信株式会社ノ取締役ニ引渡スヘシ