(関税法、関税定率法、保税倉庫法及仮置場法等ノ朝鮮ニ於ケル特例ニ関スル法律)
法令番号: 法律第五十三號
公布年月日: 大正9年8月7日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル關稅法關稅定率法保稅倉庫法及假置場法等ノ朝鮮ニ於ケル特例ニ關スル法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正九年八月六日
內閣總理大臣 原敬
大藏大臣 男爵 高橋是淸
法律第五十三號
第一條 朝鮮ニ輸入スル物品ニシテ別表ニ揭クルモノニハ別表ニ依リ輸入稅ヲ課ス
第二條 朝鮮ニ輸入スル左ノ物品ニハ輸入稅ヲ免除ス
一 國、道、府、面其ノ他ノ公共團體又ハ朝鮮總督ノ指定スル產業ニ關スル法人ノ輸入スル播種用ノ種子
二 朝鮮ニ於ケル金、銀、銅ノ掘採、採取又ハ製鍊ノ事業ニ必要ナル器具、機械、爆發藥、鎔解劑トシテ使用スル鹽基性鑛物又ハ化學藥料ニシテ自己ノ使用ニ供スル爲鑛業者又ハ製鍊業者ノ輸入スルモノ但シ稅關カ相當ト認メタルモノニ限ル
三 朝鮮ニ於ケル鐵、石炭ノ掘採ノ事業ニ必要ナル器具、機械、爆發藥又ハ化學藥料ニシテ自己ノ使用ニ供スル爲鑛業者ノ輸入スルモノ但シ稅關カ相當ト認メタルモノニ限ル
四 旅客又ハ貨物ヲ運搬スル爲國境ヲ出入スル車輛其ノ他ノ運搬具及其ノ備品、附屬品
五 前號ノ車輛內ニ於テ消費スル食料品、燃料其ノ他ノ消耗品但シ稅關カ相當ト認メタルモノニ限ル
六 朝鮮ニ於テ從來關稅免除ノ特許ヲ受ケタル者ノ輸入スル免稅品
第三條 朝鮮ニ於ケル製鐵業者一ノ場所ニ於テ一年三萬五千佛噸以上ノ製銑能力若ハ製鋼能力ヲ有スル設備ヲ爲ス爲又ハ一ノ場所ニ於テ一年三萬五千佛噸以上ノ製銑能力若ハ製鋼能力ヲ增加スル設備ヲ爲ス爲必要ナル器具、機械其ノ他ノ材料ヲ朝鮮ニ輸入スルトキハ朝鮮總督ノ定ムル所ニ依リ輸入稅ヲ免除ス
前項ノ設備ヲ爲ス者朝鮮總督ノ指定シタル副生物製造ノ設備ヲ爲ス爲必要ナル器具、機械其ノ他ノ材料ヲ朝鮮ニ輸入スルトキ亦前項ニ同シ
第四條 朝鮮總督ハ凶作其ノ他已ムコトヲ得サル事由アルトキハ期間ヲ指定シ朝鮮ニ輸入スル米、籾、大麥、小麥、小麥粉、粟、高粱、大豆、小豆、玉蜀黍及稗ノ輸入稅ヲ低減又ハ免除スルコトヲ得
第五條 平安北道新義州停車場ヨリ咸鏡北道豆滿江口ニ至ル陸接國境ニ於テハ朝鮮總督ノ指定スル地點ニ由ルノ外貨物ノ輸出又ハ輸入ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ陸接國境ニ於ケル貨物ノ輸出入、積戾又ハ運送ニ關スル手續ハ朝鮮總督ノ指定スル場合ヲ除クノ外最初ノ到著地ニ於テ之ヲ爲スヘシ
第六條 左ニ揭クル物品ハ平安北道義州郡水口鎭ヨリ咸鏡北道豆滿江口ニ至ル陸接國境ニ於テハ前條ノ規定ニ拘ラス之カ輸出又ハ輸入ヲ爲スコトヲ得但シ朝鮮總督ニ於テ別段ノ定ヲ爲シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 鐵道旅客以外ノ旅客ノ用品及職業上必要ナル器具
二 朝鮮總督ノ定ムル陸接國境隣接地域內ノ住民カ其ノ地域內ニ於テ收穫又ハ生產シタル物品ニシテ自ラ輸出又ハ輸入スルモノ
三 前號ノ住民カ前號ノ地域內ニ於テ爲ス作業ニ必要ナル物品ニシテ自ラ輸出又ハ輸入スルモノ
第七條 前條ノ規定ニ依リ輸出又ハ輸入スル物品ニ付テハ關稅法ヲ適用セス
第八條 朝鮮ニ於テハ關稅法、保稅倉庫法又ハ假置場法中大藏大臣又ハ主務大臣トアルハ朝鮮總督、市町村役場トアルハ府廳又ハ面事務所、市町村吏員トアルハ府ノ官吏若ハ吏員又ハ面ノ吏員、國稅徵收法トアルハ國稅徵收令トス
第九條 從來ノ開港ノ外開港ト爲スヘキ場所及開港ニ於テ輸出若ハ輸入スヘキ貨物ノ種類ハ朝鮮ニ於テハ朝鮮總督之ヲ定ム
附 則
第十條 本法ハ大正九年八月二十九日ヨリ之ヲ施行ス
第十一條 本法施行前朝鮮ニ於ケル保稅倉庫ニ庫入シタル外國貨物ニハ仍從前ノ輸入稅ヲ課ス
第十二條 本法施行前朝鮮關稅令、朝鮮保稅倉庫令又ハ朝鮮陸接國境關稅令ニ依リ爲シタル處分、手續其ノ他ノ行爲ハ關稅法、保稅倉庫法又ハ本法ニ依リ之ヲ爲シタルモノト看做ス
本法施行前朝鮮關稅定率令第三條第十六號、第四條、第四條ノ二及第八條ノ規定ニ依リ輸入稅又ハ移入稅ノ免除ヲ受ケタル物品ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
(別表)
輸入稅表
品名
單位
稅率
馬(生活力ヲ有スルモノ)
無稅
綿羊(生活力ヲ有スルモノ)
無稅
 天日鹽(碎カサルモノ)
每百斤
〇・一〇
 其ノ他
從價
三割
煙草
 葉煙草
從價
二割
 葉卷煙草、紙卷煙草及刻煙草
從價
四割
 咀嚼煙草
每斤
〇・二五
 嗅煙草
每斤
〇・五八
 其ノ他
從價
四割
礦油(關稅定率法別表輸入稅表第一一二號二ノ乙ニ該當スルモノ)
每十ガロン
〇・一九
コークス
無稅
木材(關稅定率法別表輸入稅表第六一二號一ノ己及癸ニ該當スルモノ)
無稅
備考 從量稅率ノ單位ハ圓トス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル関税法関税定率法保税倉庫法及仮置場法等ノ朝鮮ニ於ケル特例ニ関スル法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正九年八月六日
内閣総理大臣 原敬
大蔵大臣 男爵 高橋是清
法律第五十三号
第一条 朝鮮ニ輸入スル物品ニシテ別表ニ掲クルモノニハ別表ニ依リ輸入税ヲ課ス
第二条 朝鮮ニ輸入スル左ノ物品ニハ輸入税ヲ免除ス
一 国、道、府、面其ノ他ノ公共団体又ハ朝鮮総督ノ指定スル産業ニ関スル法人ノ輸入スル播種用ノ種子
二 朝鮮ニ於ケル金、銀、銅ノ掘採、採取又ハ製錬ノ事業ニ必要ナル器具、機械、爆発薬、鎔解剤トシテ使用スル塩基性鉱物又ハ化学薬料ニシテ自己ノ使用ニ供スル為鉱業者又ハ製錬業者ノ輸入スルモノ但シ税関カ相当ト認メタルモノニ限ル
三 朝鮮ニ於ケル鉄、石炭ノ掘採ノ事業ニ必要ナル器具、機械、爆発薬又ハ化学薬料ニシテ自己ノ使用ニ供スル為鉱業者ノ輸入スルモノ但シ税関カ相当ト認メタルモノニ限ル
四 旅客又ハ貨物ヲ運搬スル為国境ヲ出入スル車輛其ノ他ノ運搬具及其ノ備品、附属品
五 前号ノ車輛内ニ於テ消費スル食料品、燃料其ノ他ノ消耗品但シ税関カ相当ト認メタルモノニ限ル
六 朝鮮ニ於テ従来関税免除ノ特許ヲ受ケタル者ノ輸入スル免税品
第三条 朝鮮ニ於ケル製鉄業者一ノ場所ニ於テ一年三万五千仏噸以上ノ製銑能力若ハ製鋼能力ヲ有スル設備ヲ為ス為又ハ一ノ場所ニ於テ一年三万五千仏噸以上ノ製銑能力若ハ製鋼能力ヲ増加スル設備ヲ為ス為必要ナル器具、機械其ノ他ノ材料ヲ朝鮮ニ輸入スルトキハ朝鮮総督ノ定ムル所ニ依リ輸入税ヲ免除ス
前項ノ設備ヲ為ス者朝鮮総督ノ指定シタル副生物製造ノ設備ヲ為ス為必要ナル器具、機械其ノ他ノ材料ヲ朝鮮ニ輸入スルトキ亦前項ニ同シ
第四条 朝鮮総督ハ凶作其ノ他已ムコトヲ得サル事由アルトキハ期間ヲ指定シ朝鮮ニ輸入スル米、籾、大麦、小麦、小麦粉、粟、高粱、大豆、小豆、玉蜀黍及稗ノ輸入税ヲ低減又ハ免除スルコトヲ得
第五条 平安北道新義州停車場ヨリ咸鏡北道豆満江口ニ至ル陸接国境ニ於テハ朝鮮総督ノ指定スル地点ニ由ルノ外貨物ノ輸出又ハ輸入ヲ為スコトヲ得ス
前項ノ陸接国境ニ於ケル貨物ノ輸出入、積戻又ハ運送ニ関スル手続ハ朝鮮総督ノ指定スル場合ヲ除クノ外最初ノ到著地ニ於テ之ヲ為スヘシ
第六条 左ニ掲クル物品ハ平安北道義州郡水口鎮ヨリ咸鏡北道豆満江口ニ至ル陸接国境ニ於テハ前条ノ規定ニ拘ラス之カ輸出又ハ輸入ヲ為スコトヲ得但シ朝鮮総督ニ於テ別段ノ定ヲ為シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 鉄道旅客以外ノ旅客ノ用品及職業上必要ナル器具
二 朝鮮総督ノ定ムル陸接国境隣接地域内ノ住民カ其ノ地域内ニ於テ収穫又ハ生産シタル物品ニシテ自ラ輸出又ハ輸入スルモノ
三 前号ノ住民カ前号ノ地域内ニ於テ為ス作業ニ必要ナル物品ニシテ自ラ輸出又ハ輸入スルモノ
第七条 前条ノ規定ニ依リ輸出又ハ輸入スル物品ニ付テハ関税法ヲ適用セス
第八条 朝鮮ニ於テハ関税法、保税倉庫法又ハ仮置場法中大蔵大臣又ハ主務大臣トアルハ朝鮮総督、市町村役場トアルハ府庁又ハ面事務所、市町村吏員トアルハ府ノ官吏若ハ吏員又ハ面ノ吏員、国税徴収法トアルハ国税徴収令トス
第九条 従来ノ開港ノ外開港ト為スヘキ場所及開港ニ於テ輸出若ハ輸入スヘキ貨物ノ種類ハ朝鮮ニ於テハ朝鮮総督之ヲ定ム
附 則
第十条 本法ハ大正九年八月二十九日ヨリ之ヲ施行ス
第十一条 本法施行前朝鮮ニ於ケル保税倉庫ニ庫入シタル外国貨物ニハ仍従前ノ輸入税ヲ課ス
第十二条 本法施行前朝鮮関税令、朝鮮保税倉庫令又ハ朝鮮陸接国境関税令ニ依リ為シタル処分、手続其ノ他ノ行為ハ関税法、保税倉庫法又ハ本法ニ依リ之ヲ為シタルモノト看做ス
本法施行前朝鮮関税定率令第三条第十六号、第四条、第四条ノ二及第八条ノ規定ニ依リ輸入税又ハ移入税ノ免除ヲ受ケタル物品ニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル
(別表)
輸入税表
品名
単位
税率
馬(生活力ヲ有スルモノ)
無税
綿羊(生活力ヲ有スルモノ)
無税
 天日塩(砕カサルモノ)
毎百斤
〇・一〇
 其ノ他
従価
三割
煙草
 葉煙草
従価
二割
 葉巻煙草、紙巻煙草及刻煙草
従価
四割
 咀嚼煙草
毎斤
〇・二五
 嗅煙草
毎斤
〇・五八
 其ノ他
従価
四割
礦油(関税定率法別表輸入税表第一一二号二ノ乙ニ該当スルモノ)
毎十ガロン
〇・一九
コークス
無税
木材(関税定率法別表輸入税表第六一二号一ノ己及癸ニ該当スルモノ)
無税
備考 従量税率ノ単位ハ円トス