朕傭人扶助令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正七年十一月二十日
內閣總理大臣 原敬
大藏大臣 男爵 高橋是淸
農商務大臣 山本達雄
勅令第三百八十二號
傭人扶助令
第一條 政府ハ其ノ雇傭スル職工、鑛夫其ノ他ノ傭人業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又ハ死亡シタル場合ニ於テハ本令ニ依リ扶助金ヲ支給ス但シ傭人自己ノ重大ナル過失ニ因ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
扶助金ノ支給ヲ受クヘキ者法令ニ依リ同一ノ原因ニ付損害賠償ヲ受ケタルトキハ其ノ金額ハ扶助金ノ額ヨリ之ヲ控除ス
扶助金ノ支給ハ傭人ヲ解雇スルモ變更スルコトナシ
第二條 扶助金ハ療治料、休業扶助料、障害扶助料、一時扶助料、遺族扶助料及葬祭料ノ六種トシ左ノ區別ニ從ヒ別表ニ依リ之ヲ支給ス
一 療治料ハ負傷シ又ハ疾病ニ罹リ療養ヲ要スル者ニシテ官費治療ヲ受ケサルモノニ之ヲ支給ス
二 休業扶助料ハ療養ノ爲勞務ニ服スルコト能ハサルニ因リ賃金ヲ受ケサル者ニ之ヲ支給ス
三 障害扶助料ハ負傷又ハ疾病ノ治癒シタル時ニ於テ仍身體ニ障害ヲ存スル者ニ之ヲ支給ス
四 一時扶助料ハ療養開始後三年ヲ經過スルモ負傷又ハ疾病ノ治癒セサル者ニ之ヲ支給ス
五 遺族扶助料ハ死亡シタル者ノ遺族ニ之ヲ支給ス
六 葬祭料ハ葬祭ヲ行フ遺族ニ之ヲ支給ス葬祭ヲ行フ遺族ナキ場合ニ於テハ葬祭ヲ行フ者ニ之ヲ支給スルコトヲ得
一時扶助料ヲ支給スルトキハ以後本令ニ依ル他ノ扶助金ハ之ヲ支給セス
第三條 障害扶助料、一時扶助料、遺族扶助料又ハ葬祭料ノ額ハ別表金額ノ範圍內ニ於テ負傷、疾病又ハ死亡ノ原因、身體障害ノ輕重、勤務年限ノ長短其ノ他各種ノ事情ヲ斟酌シテ之ヲ定ム
第四條 療治料又ハ休業扶助料ハ每月一囘以上之ヲ拂渡スモノトス
第五條 負傷又ハ疾病ノ再發ニ因リ身體障害ノ程度ヲ加重シタル場合ニ於テハ障害扶助料ノ額ハ新ニ之ヲ定メ旣ニ支給シタル障害扶助料ノ金額ヲ控除シテ之ヲ支給ス
第六條 遺族扶助料ノ支給ヲ受クヘキ者ニ關シテハ工場法施行令第十條乃至第十二條ノ規定ヲ準用ス
第七條 負傷又ハ疾病カ傭人ノ解雇後ニ再發シタル場合ニ於テハ扶助金ハ之ヲ支給セス
第八條 解雇後一年ヲ經過シタルトキハ本令ニ依ル扶助金ハ之ヲ請求スルコトヲ得ス但シ解雇前ニ又ハ解雇後一年內ニ請求シタル扶助ノ原因タル負傷又ハ疾病ニ基キ扶助金ヲ請求スルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九條 扶助金算出ノ標準タル賃金ノ額ヲ定ムル方法ニ關シテハ工場法施行令第十六條第一號及第二號ノ規定ヲ準用ス
前項ノ規定ニ依リテ金額ヲ算出スルコトヲ得サル場合ニ於テハ主務官廳之ヲ定ム
第十條 政府ヨリ給與金ヲ受クル相互救濟ヲ目的トスル組合ノ組合員タル傭人ニハ本令ヲ適用セス
附 則
本令ハ大正八年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際官役職工人夫扶助令ニ依リ療治料又ハ給助料ヲ受ケ又ハ受クヘキ者ニハ本令施行ノ日ヨリ本令ニ依ル扶助金ヲ支給ス
官役職工人夫扶助令ハ之ヲ廢止ス
(別表)
種別
金額
療治料
實費
休業扶助料
休業三月以內一日ニ付
賃金日額二分ノ一
休業三月ヲ超ユル日數一日ニ付
賃金日額三分ノ一
障害扶助料
終身自用ヲ辨スルコト能ハサル者
賃金百七十日分以上三百日分以下
終身勞務ニ服スルコト能ハサル者
賃金百五十日分以上二百五十日分以下
從來ノ勞務ニ服スルコト能ハサル者、健康舊ニ復スルコト能ハサル者又ハ女子ニシテ其ノ外貌ニ醜痕ヲ殘シタル者
賃金百日分以上二百日分以下
身體ニ障害ヲ存スト雖引續キ從來ノ勞務ニ服スルコトヲ得ル者
賃金三十日分以上百二十日分以下
一時扶助料
賃金百七十日分以上三百日分以下
遺族扶助料
賃金百七十日分以上三百日分以下
葬祭料
十圓以上三十圓以下
朕傭人扶助令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正七年十一月二十日
内閣総理大臣 原敬
大蔵大臣 男爵 高橋是清
農商務大臣 山本達雄
勅令第三百八十二号
傭人扶助令
第一条 政府ハ其ノ雇傭スル職工、鉱夫其ノ他ノ傭人業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又ハ死亡シタル場合ニ於テハ本令ニ依リ扶助金ヲ支給ス但シ傭人自己ノ重大ナル過失ニ因ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
扶助金ノ支給ヲ受クヘキ者法令ニ依リ同一ノ原因ニ付損害賠償ヲ受ケタルトキハ其ノ金額ハ扶助金ノ額ヨリ之ヲ控除ス
扶助金ノ支給ハ傭人ヲ解雇スルモ変更スルコトナシ
第二条 扶助金ハ療治料、休業扶助料、障害扶助料、一時扶助料、遺族扶助料及葬祭料ノ六種トシ左ノ区別ニ従ヒ別表ニ依リ之ヲ支給ス
一 療治料ハ負傷シ又ハ疾病ニ罹リ療養ヲ要スル者ニシテ官費治療ヲ受ケサルモノニ之ヲ支給ス
二 休業扶助料ハ療養ノ為労務ニ服スルコト能ハサルニ因リ賃金ヲ受ケサル者ニ之ヲ支給ス
三 障害扶助料ハ負傷又ハ疾病ノ治癒シタル時ニ於テ仍身体ニ障害ヲ存スル者ニ之ヲ支給ス
四 一時扶助料ハ療養開始後三年ヲ経過スルモ負傷又ハ疾病ノ治癒セサル者ニ之ヲ支給ス
五 遺族扶助料ハ死亡シタル者ノ遺族ニ之ヲ支給ス
六 葬祭料ハ葬祭ヲ行フ遺族ニ之ヲ支給ス葬祭ヲ行フ遺族ナキ場合ニ於テハ葬祭ヲ行フ者ニ之ヲ支給スルコトヲ得
一時扶助料ヲ支給スルトキハ以後本令ニ依ル他ノ扶助金ハ之ヲ支給セス
第三条 障害扶助料、一時扶助料、遺族扶助料又ハ葬祭料ノ額ハ別表金額ノ範囲内ニ於テ負傷、疾病又ハ死亡ノ原因、身体障害ノ軽重、勤務年限ノ長短其ノ他各種ノ事情ヲ斟酌シテ之ヲ定ム
第四条 療治料又ハ休業扶助料ハ毎月一回以上之ヲ払渡スモノトス
第五条 負傷又ハ疾病ノ再発ニ因リ身体障害ノ程度ヲ加重シタル場合ニ於テハ障害扶助料ノ額ハ新ニ之ヲ定メ既ニ支給シタル障害扶助料ノ金額ヲ控除シテ之ヲ支給ス
第六条 遺族扶助料ノ支給ヲ受クヘキ者ニ関シテハ工場法施行令第十条乃至第十二条ノ規定ヲ準用ス
第七条 負傷又ハ疾病カ傭人ノ解雇後ニ再発シタル場合ニ於テハ扶助金ハ之ヲ支給セス
第八条 解雇後一年ヲ経過シタルトキハ本令ニ依ル扶助金ハ之ヲ請求スルコトヲ得ス但シ解雇前ニ又ハ解雇後一年内ニ請求シタル扶助ノ原因タル負傷又ハ疾病ニ基キ扶助金ヲ請求スルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九条 扶助金算出ノ標準タル賃金ノ額ヲ定ムル方法ニ関シテハ工場法施行令第十六条第一号及第二号ノ規定ヲ準用ス
前項ノ規定ニ依リテ金額ヲ算出スルコトヲ得サル場合ニ於テハ主務官庁之ヲ定ム
第十条 政府ヨリ給与金ヲ受クル相互救済ヲ目的トスル組合ノ組合員タル傭人ニハ本令ヲ適用セス
附 則
本令ハ大正八年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
本令施行ノ際官役職工人夫扶助令ニ依リ療治料又ハ給助料ヲ受ケ又ハ受クヘキ者ニハ本令施行ノ日ヨリ本令ニ依ル扶助金ヲ支給ス
官役職工人夫扶助令ハ之ヲ廃止ス
(別表)
種別
金額
療治料
実費
休業扶助料
休業三月以内一日ニ付
賃金日額二分ノ一
休業三月ヲ超ユル日数一日ニ付
賃金日額三分ノ一
障害扶助料
終身自用ヲ弁スルコト能ハサル者
賃金百七十日分以上三百日分以下
終身労務ニ服スルコト能ハサル者
賃金百五十日分以上二百五十日分以下
従来ノ労務ニ服スルコト能ハサル者、健康旧ニ復スルコト能ハサル者又ハ女子ニシテ其ノ外貌ニ醜痕ヲ残シタル者
賃金百日分以上二百日分以下
身体ニ障害ヲ存スト雖引続キ従来ノ労務ニ服スルコトヲ得ル者
賃金三十日分以上百二十日分以下
一時扶助料
賃金百七十日分以上三百日分以下
遺族扶助料
賃金百七十日分以上三百日分以下
葬祭料
十円以上三十円以下