朕取引所令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年六月二十七日
內閣總理大臣 伯爵 大隈重信
農商務大臣 子爵 大浦兼武
勅令第百三十七號
取引所令
第一條 株式會社組織ノ取引所ノ資本金ハ十萬圓以上トス
農商務大臣必要ト認ムルトキハ資本金ノ變更又ハ株金ノ拂込ヲ命スルコトヲ得
株式會社組織ノ取引所ハ資本金ノ半額以上ニシテ少クトモ十萬圓ノ拂込ヲ終リタル後ニ非サレハ業務ヲ行フコトヲ得ス
第二條 會員組織ノ取引所ノ資本金ハ會員ノ醵金ヲ以テ之ニ充ツ解散ノ場合ニ於テ其ノ債務ヲ完濟シタル後殘餘財產アルトキハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外解散當時ノ會員ニ之ヲ平分スヘシ
第三條 株式會社組織ノ取引所ハ資本金ノ五分ノ一ニ相當スル營業保證金ヲ供託スヘシ
株式會社組織ノ取引所ハ前項ノ供託ヲ爲シタル後ニ非サレハ其ノ業務ヲ行フコトヲ得ス營業保證金ニ不足ヲ生シタル場合ニ於テ農商務大臣ノ指定シタル期間內ニ其ノ不足額ヲ供託セサルトキ亦同シ
營業保證金ハ有價證券ヲ以テ之ニ代用スルコトヲ得其ノ種類及代用價格ハ農商務大臣之ヲ指定ス
第四條 會員組織ノ取引所ハ營利ノ目的ヲ以テ手數料ヲ徵收スルコトヲ得ス
第五條 取引所ニ於テ徵收スル賣買手數料ノ率ノ決定方法ハ之ヲ定款ニ規定スヘシ
農商務大臣必要ト認ムルトキハ前項賣買手數料ノ率ヲ變更セシムルコトヲ得
第六條 身元保證金ノ額ハ定款ヲ以テ之ヲ定ムヘシ但シ會員ニ付テハ二千圓、仲買人ニ付テハ五千圓ヲ下ルコトヲ得ス
身元保證金ハ取引所ノ定ムル所ニ從ヒ有價證券ヲ以テ之ニ代用スルコトヲ得
農商務大臣必要ト認ムルトキハ前項ノ有價證券ノ種類又ハ其ノ代用價格ヲ變更セシムルコトヲ得
取引所身元保證金ヲ受取リタルトキハ遲滯ナク之ヲ供託スヘシ
第七條 取引所ハ每日一定ノ時ニ於テ市場ヲ開クヘシ
開市及休業ニ關スル事項ハ營業細則ニ之ヲ規定スヘシ
第八條 取引所ハ營業細則ノ定ムル所ニ依リ立會ノ停止又ハ會員若ハ仲買人ノ市場ニ於ケル賣買取引ノ差止ヲ爲スコトヲ得
第九條 直取引ハ其ノ契約成立ノ日ヨリ起算シ二日內、延取引ハ三日以上百五十日內約定ノ日ニ於テ受渡ヲ爲スヘシ
受渡ヲ爲スヘキ日カ休日ニ當ルトキハ其ノ翌日ニ於テ受渡ヲ爲スヘシ
第十條 定期取引ハ三月內ニ於テ取引所ノ定メタル限月ニ依ルヘシ但シ棉花、綿絲又ハ蠶絲ノ定期取引ニ限リ農商務大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ニ於テハ六月內ノ限月ニ依ルコトヲ得
國債證券ノ定期取引ハ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ限月ニ依ラサルコトヲ得
第十一條 直取引、延取引及會員組織ノ取引所ノ定期取引ハ競賣買ノ方法ニ依ルコトヲ得ス
轉賣買戾ハ競賣買ノ方法ニ依ル定期取引ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
第十二條 賣買取引ハ現物、見本又ハ銘柄ニ依リテ之ヲ爲スヘシ
米、棉花、綿絲又ハ蠶絲ノ定期取引ニ限リ營業細則ノ定ムル所ニ依リ標準物ヲ定メ格付受渡ノ方法ヲ用ウルコトヲ得
前項ノ標準物ハ之ニ依リテ爲シタル定期取引ノ受渡期日ヲ經過シタル後六月間取引所之ヲ保管スヘシ
第十三條 株式會社組織ノ取引所ノ定期取引ニ於ケル賣買取引ノ單位ハ營業細則ノ定ムル所ニ依ル但シ米ニ付テハ百石、株式ニ付テハ十株、國債地方債又ハ社債ニ付テハ額面千圓ヲ下ルコトヲ得ス
直取引、延取引又ハ會員組織ノ取引所ノ定期取引ニ於ケル賣買取引ニ付單位ヲ定メムトスルトキハ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十四條 受渡ハ營業細則ノ定ムル所ニ依リ取引所ヲ經テ之ヲ爲スヘシ
受渡場所ハ營業細則ノ定ムル所ニ依ル
第十五條 取引所ハ營業細則ヲ設ケ賣買取引ノ方法ニ關スル細則ヲ規定スヘシ
營業細則ハ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
農商務大臣必要ト認ムルトキハ營業細則ヲ變更セシムルコトヲ得
第十六條 仲買人ノ免許料ハ百圓トス
附 則
第十七條 本令ハ大正三年九月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十八條 明治二十六年勅令第七十四號ハ之ヲ廢止ス
第十九條 本令施行ノ際現ニ政府ニ納メタル營業保證金ハ本令施行後十日內ニ其ノ返還ヲ受ケ其ノ返還ヲ受ケタル日又ハ其ノ翌日ニ於テ第三條ノ規定ニ依リ供託ヲ爲スヘシ
第二十條 取引所ノ定ムル身元保證金ノ額カ第六條第一項ノ金額ニ達セサルトキハ本令施行後六月內ニ之ヲ改定スヘシ
前項ノ改定ヲ爲ス迄ノ間ニ於テ會員又ハ仲買人ト爲リタル者ニ對シテハ取引所ハ第六條第一項ノ金額ヲ下ラサル身元保證金ヲ納メシムヘシ
第一項ノ改定ニ依リ增納セシムヘキ身元保證金ハ本令施行後三年內其ノ增納ヲ猶豫スルコトヲ得但シ本令施行後一年內ニ其ノ金額ノ三分ノ一以上、二年內ニ三分ノ二以上ヲ納メシムヘシ
第二十一條 取引所ハ本令施行後六月內ニ本令ニ依リ營業細則ヲ定メ農商務大臣ノ認可ヲ申請スヘシ
前項ノ認可ヲ受クル迄從前ノ營業細則ハ本令ニ依リ認可ヲ受ケタルモノト看做シ受渡ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
朕取引所令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年六月二十七日
内閣総理大臣 伯爵 大隈重信
農商務大臣 子爵 大浦兼武
勅令第百三十七号
取引所令
第一条 株式会社組織ノ取引所ノ資本金ハ十万円以上トス
農商務大臣必要ト認ムルトキハ資本金ノ変更又ハ株金ノ払込ヲ命スルコトヲ得
株式会社組織ノ取引所ハ資本金ノ半額以上ニシテ少クトモ十万円ノ払込ヲ終リタル後ニ非サレハ業務ヲ行フコトヲ得ス
第二条 会員組織ノ取引所ノ資本金ハ会員ノ醵金ヲ以テ之ニ充ツ解散ノ場合ニ於テ其ノ債務ヲ完済シタル後残余財産アルトキハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外解散当時ノ会員ニ之ヲ平分スヘシ
第三条 株式会社組織ノ取引所ハ資本金ノ五分ノ一ニ相当スル営業保証金ヲ供託スヘシ
株式会社組織ノ取引所ハ前項ノ供託ヲ為シタル後ニ非サレハ其ノ業務ヲ行フコトヲ得ス営業保証金ニ不足ヲ生シタル場合ニ於テ農商務大臣ノ指定シタル期間内ニ其ノ不足額ヲ供託セサルトキ亦同シ
営業保証金ハ有価証券ヲ以テ之ニ代用スルコトヲ得其ノ種類及代用価格ハ農商務大臣之ヲ指定ス
第四条 会員組織ノ取引所ハ営利ノ目的ヲ以テ手数料ヲ徴収スルコトヲ得ス
第五条 取引所ニ於テ徴収スル売買手数料ノ率ノ決定方法ハ之ヲ定款ニ規定スヘシ
農商務大臣必要ト認ムルトキハ前項売買手数料ノ率ヲ変更セシムルコトヲ得
第六条 身元保証金ノ額ハ定款ヲ以テ之ヲ定ムヘシ但シ会員ニ付テハ二千円、仲買人ニ付テハ五千円ヲ下ルコトヲ得ス
身元保証金ハ取引所ノ定ムル所ニ従ヒ有価証券ヲ以テ之ニ代用スルコトヲ得
農商務大臣必要ト認ムルトキハ前項ノ有価証券ノ種類又ハ其ノ代用価格ヲ変更セシムルコトヲ得
取引所身元保証金ヲ受取リタルトキハ遅滞ナク之ヲ供託スヘシ
第七条 取引所ハ毎日一定ノ時ニ於テ市場ヲ開クヘシ
開市及休業ニ関スル事項ハ営業細則ニ之ヲ規定スヘシ
第八条 取引所ハ営業細則ノ定ムル所ニ依リ立会ノ停止又ハ会員若ハ仲買人ノ市場ニ於ケル売買取引ノ差止ヲ為スコトヲ得
第九条 直取引ハ其ノ契約成立ノ日ヨリ起算シ二日内、延取引ハ三日以上百五十日内約定ノ日ニ於テ受渡ヲ為スヘシ
受渡ヲ為スヘキ日カ休日ニ当ルトキハ其ノ翌日ニ於テ受渡ヲ為スヘシ
第十条 定期取引ハ三月内ニ於テ取引所ノ定メタル限月ニ依ルヘシ但シ棉花、綿糸又ハ蚕糸ノ定期取引ニ限リ農商務大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ニ於テハ六月内ノ限月ニ依ルコトヲ得
国債証券ノ定期取引ハ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ限月ニ依ラサルコトヲ得
第十一条 直取引、延取引及会員組織ノ取引所ノ定期取引ハ競売買ノ方法ニ依ルコトヲ得ス
転売買戻ハ競売買ノ方法ニ依ル定期取引ニ限リ之ヲ為スコトヲ得
第十二条 売買取引ハ現物、見本又ハ銘柄ニ依リテ之ヲ為スヘシ
米、棉花、綿糸又ハ蚕糸ノ定期取引ニ限リ営業細則ノ定ムル所ニ依リ標準物ヲ定メ格付受渡ノ方法ヲ用ウルコトヲ得
前項ノ標準物ハ之ニ依リテ為シタル定期取引ノ受渡期日ヲ経過シタル後六月間取引所之ヲ保管スヘシ
第十三条 株式会社組織ノ取引所ノ定期取引ニ於ケル売買取引ノ単位ハ営業細則ノ定ムル所ニ依ル但シ米ニ付テハ百石、株式ニ付テハ十株、国債地方債又ハ社債ニ付テハ額面千円ヲ下ルコトヲ得ス
直取引、延取引又ハ会員組織ノ取引所ノ定期取引ニ於ケル売買取引ニ付単位ヲ定メムトスルトキハ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第十四条 受渡ハ営業細則ノ定ムル所ニ依リ取引所ヲ経テ之ヲ為スヘシ
受渡場所ハ営業細則ノ定ムル所ニ依ル
第十五条 取引所ハ営業細則ヲ設ケ売買取引ノ方法ニ関スル細則ヲ規定スヘシ
営業細則ハ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
農商務大臣必要ト認ムルトキハ営業細則ヲ変更セシムルコトヲ得
第十六条 仲買人ノ免許料ハ百円トス
附 則
第十七条 本令ハ大正三年九月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十八条 明治二十六年勅令第七十四号ハ之ヲ廃止ス
第十九条 本令施行ノ際現ニ政府ニ納メタル営業保証金ハ本令施行後十日内ニ其ノ返還ヲ受ケ其ノ返還ヲ受ケタル日又ハ其ノ翌日ニ於テ第三条ノ規定ニ依リ供託ヲ為スヘシ
第二十条 取引所ノ定ムル身元保証金ノ額カ第六条第一項ノ金額ニ達セサルトキハ本令施行後六月内ニ之ヲ改定スヘシ
前項ノ改定ヲ為ス迄ノ間ニ於テ会員又ハ仲買人ト為リタル者ニ対シテハ取引所ハ第六条第一項ノ金額ヲ下ラサル身元保証金ヲ納メシムヘシ
第一項ノ改定ニ依リ増納セシムヘキ身元保証金ハ本令施行後三年内其ノ増納ヲ猶予スルコトヲ得但シ本令施行後一年内ニ其ノ金額ノ三分ノ一以上、二年内ニ三分ノ二以上ヲ納メシムヘシ
第二十一条 取引所ハ本令施行後六月内ニ本令ニ依リ営業細則ヲ定メ農商務大臣ノ認可ヲ申請スヘシ
前項ノ認可ヲ受クル迄従前ノ営業細則ハ本令ニ依リ認可ヲ受ケタルモノト看做シ受渡ニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル