朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル國債ニ關スル法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年四月十日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
大藏大臣 法學博士 阪谷芳郞
法律第三十四號
第一條 國債ノ起債、元金償還、利子仕拂、證券及登錄ニ關スル取扱手續ハ大藏大臣之ヲ定メ日本銀行ヲシテ其ノ事務ヲ取扱ハシム
第二條 國債ニ對シテハ無記名利札付證券ヲ發行ス
國債ノ登錄ハ債權者ノ請求ニ因リ之ヲ爲ス此ノ場合ニ於テハ證券ヲ發行セス但シ債權者ノ請求アルトキハ記名利札付證券ヲ發行ス
第三條 登錄國債ヲ移轉シ又ハ登錄國債ヲ以テ質權ノ目的ト爲シタルトキハ登錄ヲ受クルニ非サレハ之ヲ以テ政府其ノ他ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第四條 相續、遺贈及强制執行ノ場合ヲ除クノ外權利ノ移轉ニ因ル國債ノ登錄ハ其ノ利子仕拂期前一箇月間之ヲ停止ス
第五條 記名國債證券又ハ其ノ利札ヲ滅失又ハ紛失シタルトキハ其ノ記名者ヨリ直ニ之ヲ所管取扱銀行ニ屆出ツヘシ之ヲ發見シタルトキ亦同シ
前項ノ規定ニ依リ滅失又ハ紛失ノ屆出ヲ爲シタル者ハ屆出ヲ爲シタル後三箇月ヲ經過シテ仍發見セサルトキハ代證券又ハ代利札ノ交付ヲ請求スルコトヲ得但シ其ノ元金ノ償還期又ハ利子ノ仕拂期開始以後ハ代證券又ハ代利札ノ交付ヲ爲サス
滅失又ハ紛失ノ屆出アリタル記名國債證券又ハ其ノ利札ハ代證券又ハ代利札ノ交付ニ因リ其ノ效力ヲ失フ
第六條 無記名國債證券又ハ其ノ利札ヲ滅失又ハ紛失シタル者ハ其ノ證券又ハ利札ノ持參人カ償還又ハ仕拂ヲ受ケタル場合ニハ其ノ金額及其ノ仕拂ノ日以後ノ利子ヲ辨償スヘキ旨ヲ約シテ擔保ヲ提供シ其ノ元金ノ償還又ハ利子ノ仕拂ヲ請求スルコトヲ得但シ取扱銀行ノ確實ト認メタル保證人ヲ立テ擔保ノ提供ニ代フルコトヲ得
擔保ヲ提供シタル者カ債務ノ履行ヲ爲ササルトキハ擔保ヲ以テ之ニ充テ過剩額アルトキハ之ヲ還付ス
金錢以外ノ擔保ハ之ヲ公賣ニ付ス
公賣ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 無記名國債證券ニ對シ元金ヲ償還スル場合ニ於テ其ノ證券ニ附屬スル利札中欠缺セルモノアルトキハ之ニ相當スル金額ヲ元金ノ內ヨリ控除ス但シ旣ニ利子仕拂期ノ開始シタル利札ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
前項利札ノ所持人ハ何時ト雖其ノ利札ヲ提出シテ控除金額ノ仕拂ヲ請求スルコトヲ得
第八條 民法施行法第五十七條ノ規定ハ國債證券及其ノ利札ニ之ヲ適用セス
第九條 國債ノ消滅時效ハ元金ニ在リテハ十箇年、利子ニ在リテハ五箇年ヲ以テ完成ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
新舊公債證書發行條例ニ依ル舊公債ノ賦金ニハ本法中利子ノ規定ヲ、賦札ニハ本法中利札ノ規定ヲ準用ス
國債ニ關スル現行法令中本法ノ規定ニ牴觸スルモノハ其ノ效力ヲ失フ但シ時效ニ關スル規定ハ此ノ限ニ在ラス
本法施行前ニ整理公債條例ノ規定ニ依リ滅失又ハ紛失ノ屆出ヲ爲シタル無記名國債證券及其ノ利札ノ處分ニ付テハ仍整理公債條例ニ依ル
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル国債ニ関スル法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年四月十日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
大蔵大臣 法学博士 阪谷芳郎
法律第三十四号
第一条 国債ノ起債、元金償還、利子仕払、証券及登録ニ関スル取扱手続ハ大蔵大臣之ヲ定メ日本銀行ヲシテ其ノ事務ヲ取扱ハシム
第二条 国債ニ対シテハ無記名利札付証券ヲ発行ス
国債ノ登録ハ債権者ノ請求ニ因リ之ヲ為ス此ノ場合ニ於テハ証券ヲ発行セス但シ債権者ノ請求アルトキハ記名利札付証券ヲ発行ス
第三条 登録国債ヲ移転シ又ハ登録国債ヲ以テ質権ノ目的ト為シタルトキハ登録ヲ受クルニ非サレハ之ヲ以テ政府其ノ他ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第四条 相続、遺贈及強制執行ノ場合ヲ除クノ外権利ノ移転ニ因ル国債ノ登録ハ其ノ利子仕払期前一箇月間之ヲ停止ス
第五条 記名国債証券又ハ其ノ利札ヲ滅失又ハ紛失シタルトキハ其ノ記名者ヨリ直ニ之ヲ所管取扱銀行ニ届出ツヘシ之ヲ発見シタルトキ亦同シ
前項ノ規定ニ依リ滅失又ハ紛失ノ届出ヲ為シタル者ハ届出ヲ為シタル後三箇月ヲ経過シテ仍発見セサルトキハ代証券又ハ代利札ノ交付ヲ請求スルコトヲ得但シ其ノ元金ノ償還期又ハ利子ノ仕払期開始以後ハ代証券又ハ代利札ノ交付ヲ為サス
滅失又ハ紛失ノ届出アリタル記名国債証券又ハ其ノ利札ハ代証券又ハ代利札ノ交付ニ因リ其ノ効力ヲ失フ
第六条 無記名国債証券又ハ其ノ利札ヲ滅失又ハ紛失シタル者ハ其ノ証券又ハ利札ノ持参人カ償還又ハ仕払ヲ受ケタル場合ニハ其ノ金額及其ノ仕払ノ日以後ノ利子ヲ弁償スヘキ旨ヲ約シテ担保ヲ提供シ其ノ元金ノ償還又ハ利子ノ仕払ヲ請求スルコトヲ得但シ取扱銀行ノ確実ト認メタル保証人ヲ立テ担保ノ提供ニ代フルコトヲ得
担保ヲ提供シタル者カ債務ノ履行ヲ為ササルトキハ担保ヲ以テ之ニ充テ過剰額アルトキハ之ヲ還付ス
金銭以外ノ担保ハ之ヲ公売ニ付ス
公売ニ関スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七条 無記名国債証券ニ対シ元金ヲ償還スル場合ニ於テ其ノ証券ニ附属スル利札中欠欠セルモノアルトキハ之ニ相当スル金額ヲ元金ノ内ヨリ控除ス但シ既ニ利子仕払期ノ開始シタル利札ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
前項利札ノ所持人ハ何時ト雖其ノ利札ヲ提出シテ控除金額ノ仕払ヲ請求スルコトヲ得
第八条 民法施行法第五十七条ノ規定ハ国債証券及其ノ利札ニ之ヲ適用セス
第九条 国債ノ消滅時効ハ元金ニ在リテハ十箇年、利子ニ在リテハ五箇年ヲ以テ完成ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
新旧公債証書発行条例ニ依ル旧公債ノ賦金ニハ本法中利子ノ規定ヲ、賦札ニハ本法中利札ノ規定ヲ準用ス
国債ニ関スル現行法令中本法ノ規定ニ牴触スルモノハ其ノ効力ヲ失フ但シ時効ニ関スル規定ハ此ノ限ニ在ラス
本法施行前ニ整理公債条例ノ規定ニ依リ滅失又ハ紛失ノ届出ヲ為シタル無記名国債証券及其ノ利札ノ処分ニ付テハ仍整理公債条例ニ依ル