文官分限令
法令番号: 勅令第六十二號
公布年月日: 明治32年3月28日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ文官分限令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月二十七日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
勅令第六十二號
文官分限令
第一條 本令ハ親任式ヲ以テ敍任スル官、公使、祕書官及法令ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外一般ノ文官ニ適用ス
第二條 官吏ハ刑法ノ宣吿、懲戒ノ處分又ハ本令ニ依ルニ非サレハ其ノ官ヲ免セラルルコトナシ
第三條 官吏左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ官ヲ免スルコトヲ得
一 不具、廢疾ニ因リ又ハ身體若ハ精神ノ衰弱ニ因リ職務ヲ執ルニ堪ヘサルトキ
二 傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リ其ノ職ニ堪ヘサルニ因リ又ハ自己ノ便宜ニ因リ免官ヲ願出タルトキ
三 官制又ハ定員ノ改正ニ因リ過員ヲ生シタルトキ
前項第一號ニ依リ其ノ官ヲ免スルトキハ高等官ニ在テハ文官高等懲戒委員會、判任官ニ在テハ文官普通懲戒委員會ノ審査ニ付ス
第四條 官吏ハ廢官若ハ廢廳ノ場合ニ於テハ當然退官者トス
第五條 第十一條第一項第三號及第四號ニ依リ休職ヲ命セラレ滿期ニ至リタルトキハ當然退官者トス
第六條 官吏ハ其ノ意ニ反シテ同等官以下ニ轉官セラルルコトナシ
第七條 文官高等懲戒委員會ニ顧問醫二人ヲ置ク
審査上必要ノ場合ニ於テハ臨時顧問醫ヲ加フルコトヲ得
第八條 文官普通懲戒委員會ニ臨時顧問醫ヲ置ク
第九條 懲戒委員會ハ本令ニ依ル審査ヲ爲ス前豫メ顧問醫ノ意見ヲ徵スヘシ
第十條 第三條第二項ニ依ル懲戒委員會ノ審査ニ關シテハ文官懲戒令第十二條第十三條第二十四條第二十五條第二十九條乃至第三十四條ノ規定ヲ準用ス
第十一條 官吏左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ休職ヲ命スルコトヲ得
一 懲戒令ノ規定ニ依リ懲戒委員會ノ審査ニ付セラレタルトキ
二 刑事事件ニ關シ吿訴若ハ吿發セラレタルトキ
三 官制又ハ定員ノ改正ニ因リ過員ヲ生シタルトキ
四 官廳事務ノ都合ニ依リ必要ナルトキ
前項休職ノ期間ハ第一號及第二號ノ場合ニ在テハ其ノ事件ノ懲戒委員會又ハ裁判所ニ繫屬中トシ第三號及第四號ノ場合ニ在テハ滿三年トス
第十二條 休職者ハ其ノ本官ヲ奉シテ職務ニ從事セス其ノ他總テ在職官吏ト異ナルコトナシ
前條第一項第三號及第四號ニ依リ休職ヲ命セラレタル者ニハ本屬長官ハ事務ノ都合ニ依リ何時ニテモ復職ヲ命スルコトヲ得
第十三條 第十一條ニ依リ休職ヲ命セラレタル者ニハ其ノ休職中俸給ノ三分ノ一ヲ給ス
第十四條 免官ハ勅任官ニ在テハ內閣總理大臣、奏任官ニ在テハ內閣總理大臣ヲ經テ本屬長官奏請シ裁可ニ依リ之ヲ行フ
休職ハ勅任官ニ在テハ內閣總理大臣奏請シ裁可ニ依リ之ヲ行ヒ奏任官ニ在テハ內閣總理大臣ノ認可ヲ經テ本屬長官之ヲ命ス其ノ復職ヲ命スルトキ亦同シ
附 則
第十五條 本令ハ明治三十二年四月十日ヨリ施行ス
官吏非職條例、明治二十三年勅令第二百八十六號其ノ他從前ノ命令ニシテ本令ノ規定ニ牴觸スルモノハ本令施行ノ日ヨリ廢止ス
第十六條 本令施行前官吏非職條例又ハ明治二十三年勅令第二百八十六號ニ依リ非職又ハ休職ヲ命セラレ未タ滿期ニ至ラサル者ハ本令第十一條第一項第四號ノ休職者ニ關スル規定ヲ適用ス但シ本令第十三條ハ此ノ限ニ在ラス
第十七條 本令中休職トアルハ他ノ法令ニ於テ規定スル非職ト看做ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ文官分限令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月二十七日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
勅令第六十二号
文官分限令
第一条 本令ハ親任式ヲ以テ叙任スル官、公使、秘書官及法令ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外一般ノ文官ニ適用ス
第二条 官吏ハ刑法ノ宣告、懲戒ノ処分又ハ本令ニ依ルニ非サレハ其ノ官ヲ免セラルルコトナシ
第三条 官吏左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ官ヲ免スルコトヲ得
一 不具、廃疾ニ因リ又ハ身体若ハ精神ノ衰弱ニ因リ職務ヲ執ルニ堪ヘサルトキ
二 傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リ其ノ職ニ堪ヘサルニ因リ又ハ自己ノ便宜ニ因リ免官ヲ願出タルトキ
三 官制又ハ定員ノ改正ニ因リ過員ヲ生シタルトキ
前項第一号ニ依リ其ノ官ヲ免スルトキハ高等官ニ在テハ文官高等懲戒委員会、判任官ニ在テハ文官普通懲戒委員会ノ審査ニ付ス
第四条 官吏ハ廃官若ハ廃庁ノ場合ニ於テハ当然退官者トス
第五条 第十一条第一項第三号及第四号ニ依リ休職ヲ命セラレ満期ニ至リタルトキハ当然退官者トス
第六条 官吏ハ其ノ意ニ反シテ同等官以下ニ転官セラルルコトナシ
第七条 文官高等懲戒委員会ニ顧問医二人ヲ置ク
審査上必要ノ場合ニ於テハ臨時顧問医ヲ加フルコトヲ得
第八条 文官普通懲戒委員会ニ臨時顧問医ヲ置ク
第九条 懲戒委員会ハ本令ニ依ル審査ヲ為ス前予メ顧問医ノ意見ヲ徴スヘシ
第十条 第三条第二項ニ依ル懲戒委員会ノ審査ニ関シテハ文官懲戒令第十二条第十三条第二十四条第二十五条第二十九条乃至第三十四条ノ規定ヲ準用ス
第十一条 官吏左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ休職ヲ命スルコトヲ得
一 懲戒令ノ規定ニ依リ懲戒委員会ノ審査ニ付セラレタルトキ
二 刑事事件ニ関シ告訴若ハ告発セラレタルトキ
三 官制又ハ定員ノ改正ニ因リ過員ヲ生シタルトキ
四 官庁事務ノ都合ニ依リ必要ナルトキ
前項休職ノ期間ハ第一号及第二号ノ場合ニ在テハ其ノ事件ノ懲戒委員会又ハ裁判所ニ繋属中トシ第三号及第四号ノ場合ニ在テハ満三年トス
第十二条 休職者ハ其ノ本官ヲ奉シテ職務ニ従事セス其ノ他総テ在職官吏ト異ナルコトナシ
前条第一項第三号及第四号ニ依リ休職ヲ命セラレタル者ニハ本属長官ハ事務ノ都合ニ依リ何時ニテモ復職ヲ命スルコトヲ得
第十三条 第十一条ニ依リ休職ヲ命セラレタル者ニハ其ノ休職中俸給ノ三分ノ一ヲ給ス
第十四条 免官ハ勅任官ニ在テハ内閣総理大臣、奏任官ニ在テハ内閣総理大臣ヲ経テ本属長官奏請シ裁可ニ依リ之ヲ行フ
休職ハ勅任官ニ在テハ内閣総理大臣奏請シ裁可ニ依リ之ヲ行ヒ奏任官ニ在テハ内閣総理大臣ノ認可ヲ経テ本属長官之ヲ命ス其ノ復職ヲ命スルトキ亦同シ
附 則
第十五条 本令ハ明治三十二年四月十日ヨリ施行ス
官吏非職条例、明治二十三年勅令第二百八十六号其ノ他従前ノ命令ニシテ本令ノ規定ニ牴触スルモノハ本令施行ノ日ヨリ廃止ス
第十六条 本令施行前官吏非職条例又ハ明治二十三年勅令第二百八十六号ニ依リ非職又ハ休職ヲ命セラレ未タ満期ニ至ラサル者ハ本令第十一条第一項第四号ノ休職者ニ関スル規定ヲ適用ス但シ本令第十三条ハ此ノ限ニ在ラス
第十七条 本令中休職トアルハ他ノ法令ニ於テ規定スル非職ト看做ス