朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル船舶職員法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年四月六日
內閣總理大臣 侯爵 伊藤博文
遞信大臣 白根專一
法律第六十八號
船舶職員法
第一條 日本船舶ニハ此ノ法律ノ規程ニ依リ船舶職員ヲ乘組マシムヘシ
船舶職員ト稱スルハ船長、一等運轉士、二等運轉士、機關長及一等機關士ヲ謂フ
第二條 海技免狀ヲ有スル者ニアラサレハ船舶職員タルコトヲ得ス
第三條 海技免狀ハ左ノ十二種トス
甲種船長
甲種一等運轉士
甲種二等運轉士
乙種船長
乙種一等運轉士
乙種二等運轉士
丙種船長
丙種運轉士
機關長
一等機關士
二等機關士
三等機關士
第四條 各船舶ニ乘組マシムヘキ船舶職員ノ定員及其ノ免狀ノ種類ハ第一號表ニ依ル
第五條 海技免狀ハ遞信大臣ノ定ムル試驗規程ニ依リ試驗ヲ受ケ合格シ且海員名簿ニ登錄ヲ受ケタル者ニ授與ス
海軍艦船艇ニ乘組ミ運航若ハ機關運轉ニ從事シ又ハ商船學校全科卒業證書ヲ有シ遞信大臣ニ於テ海員試驗規程ニ合格スト認ムル者ニハ試驗ヲ用井スシテ相當ノ免狀ヲ授與スルコトヲ得
第六條 左ニ記載スル事項ニ該當スル者ハ海員試驗ヲ受クルコトヲ得ス又船舶職員タルコトヲ得ス
一 公權ヲ剝奪セラレ復權セサル者及公權停止中ノ者
二 家資分散又ハ破產ノ宣吿ヲ受ケ復權セサル者及身代限ノ處分ヲ受ケ債務ノ辨償ヲ終ヘサル者
三 瘋癲白痴者若ハ身體不具ニシテ執職ニ不適當ナル者
四 海技免狀ノ行使ヲ禁止セラレタル者及其ノ行使停止中ノ者
第七條 高等ノ免狀ハ下等ノ免狀ニ代用スルコトヲ得
甲種船長ノ免狀ハ他ノ船長及運轉士ノ免狀ニ對シ、甲種一等運轉士ノ免狀ハ他ノ運轉士ノ免狀ニ對シ、甲種二等運轉士ノ免狀ハ乙種各運轉士及丙種運轉士ノ免狀ニ對シ、乙種船長ノ免狀ハ乙種各運轉士ノ免狀ニ對シ、乙種一等運轉士ノ免狀ハ乙種二等運轉士ノ免狀ニ對シ、丙種船長ノ免狀ハ丙種運轉士ノ免狀ニ對シ各高等ノ免狀トス
機關長ノ免狀ハ一等機關士以下ノ免狀ニ對シ、一等機關士ノ免狀ハ二等機關士以下ノ免狀ニ對シ、二等機關士ノ免狀ハ三等機關士ノ免狀ニ對シ各高等ノ免狀トス
第八條 左ニ揭クル者ハ二十圓以上二百五十圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第四條ニ違背シ相當ノ船舶職員ヲ乘組マシメサル者
二 第二條及第四條ニ違背シ相當ノ海技免狀ヲ受有セスシテ船舶職員ト爲リタル者
三 第六條ニ違背シ船舶職員ト爲リタル者
四 海技免狀ヲ貸付シ之ヲ行使セシメタル者
五 海技免狀行使ノ假停止若ハ差押ヲ受ケ其ノ職務ヲ執リタル者
第九條 前條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ數罪俱發ノ例ヲ用井ス
前條ノ罰則ハ商事會社ニ在テハ其ノ所爲ヲ爲シタル業務擔當ノ任アル社員取締役若ハ使用人ニ之ヲ適用ス
附 則
第十條 此ノ法律ハ明治三十年七月一日ヨリ施行ス
第十一條 明治十三年第二十八號布吿及明治十四年第七十五號布吿ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ廢止ス
第十二條 明治九年第八十二號布吿、同年第九十四號布吿及明治十四年第七十五號布吿ニ依リ授與シタル免狀ハ第二號表ニ依リ各相當ノ免狀ト交換スヘシ其ノ交換ノ手續及時期ハ遞信大臣之ヲ定ム
前項ニ揭ケタル各種ノ舊免狀ハ新免狀ト交換スルマテ之ニ代用スルコトヲ得
第十三條 此ノ法律ハ施行ノ日ヨリ一箇年ヲ限リ積石數百五十石以上ノ帆船ニハ之ヲ適用セス
第十四條 遞信大臣ハ積石數百五十石以上ノ帆船ニ乘組ミ三箇年以來其ノ運航ヲ掌リ且此ノ法律施行ノ際現ニ船長ノ職ヲ執リ年齡二十歲以上ノ者ニハ此ノ法律施行ノ日ヨリ一箇年ヲ限リ試驗ヲ用井スシテ相當ノ海技免狀ヲ授與スルコトヲ得
第十五條 遞信大臣ハ第一號表中近海航船ニシテ登簿噸數五百噸未滿ノ汽船及沿海航船ニシテ登簿噸數二百噸以上ノ汽船ニハ此ノ法律施行ノ日ヨリ一箇年ヲ限リ二等機關士ノ免狀ヲ有スル者ニ機關長ノ職ヲ執ラシメ又一等機關士ヲ乘組マシメサルコトヲ得
第一號表
【表】
第二號表
【表】
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル船舶職員法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年四月六日
内閣総理大臣 侯爵 伊藤博文
逓信大臣 白根専一
法律第六十八号
船舶職員法
第一条 日本船舶ニハ此ノ法律ノ規程ニ依リ船舶職員ヲ乗組マシムヘシ
船舶職員ト称スルハ船長、一等運転士、二等運転士、機関長及一等機関士ヲ謂フ
第二条 海技免状ヲ有スル者ニアラサレハ船舶職員タルコトヲ得ス
第三条 海技免状ハ左ノ十二種トス
甲種船長
甲種一等運転士
甲種二等運転士
乙種船長
乙種一等運転士
乙種二等運転士
丙種船長
丙種運転士
機関長
一等機関士
二等機関士
三等機関士
第四条 各船舶ニ乗組マシムヘキ船舶職員ノ定員及其ノ免状ノ種類ハ第一号表ニ依ル
第五条 海技免状ハ逓信大臣ノ定ムル試験規程ニ依リ試験ヲ受ケ合格シ且海員名簿ニ登録ヲ受ケタル者ニ授与ス
海軍艦船艇ニ乗組ミ運航若ハ機関運転ニ従事シ又ハ商船学校全科卒業証書ヲ有シ逓信大臣ニ於テ海員試験規程ニ合格スト認ムル者ニハ試験ヲ用井スシテ相当ノ免状ヲ授与スルコトヲ得
第六条 左ニ記載スル事項ニ該当スル者ハ海員試験ヲ受クルコトヲ得ス又船舶職員タルコトヲ得ス
一 公権ヲ剥奪セラレ復権セサル者及公権停止中ノ者
二 家資分散又ハ破産ノ宣告ヲ受ケ復権セサル者及身代限ノ処分ヲ受ケ債務ノ弁償ヲ終ヘサル者
三 瘋癲白痴者若ハ身体不具ニシテ執職ニ不適当ナル者
四 海技免状ノ行使ヲ禁止セラレタル者及其ノ行使停止中ノ者
第七条 高等ノ免状ハ下等ノ免状ニ代用スルコトヲ得
甲種船長ノ免状ハ他ノ船長及運転士ノ免状ニ対シ、甲種一等運転士ノ免状ハ他ノ運転士ノ免状ニ対シ、甲種二等運転士ノ免状ハ乙種各運転士及丙種運転士ノ免状ニ対シ、乙種船長ノ免状ハ乙種各運転士ノ免状ニ対シ、乙種一等運転士ノ免状ハ乙種二等運転士ノ免状ニ対シ、丙種船長ノ免状ハ丙種運転士ノ免状ニ対シ各高等ノ免状トス
機関長ノ免状ハ一等機関士以下ノ免状ニ対シ、一等機関士ノ免状ハ二等機関士以下ノ免状ニ対シ、二等機関士ノ免状ハ三等機関士ノ免状ニ対シ各高等ノ免状トス
第八条 左ニ掲クル者ハ二十円以上二百五十円以下ノ罰金ニ処ス
一 第四条ニ違背シ相当ノ船舶職員ヲ乗組マシメサル者
二 第二条及第四条ニ違背シ相当ノ海技免状ヲ受有セスシテ船舶職員ト為リタル者
三 第六条ニ違背シ船舶職員ト為リタル者
四 海技免状ヲ貸付シ之ヲ行使セシメタル者
五 海技免状行使ノ仮停止若ハ差押ヲ受ケ其ノ職務ヲ執リタル者
第九条 前条ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ数罪俱発ノ例ヲ用井ス
前条ノ罰則ハ商事会社ニ在テハ其ノ所為ヲ為シタル業務担当ノ任アル社員取締役若ハ使用人ニ之ヲ適用ス
附 則
第十条 此ノ法律ハ明治三十年七月一日ヨリ施行ス
第十一条 明治十三年第二十八号布告及明治十四年第七十五号布告ハ此ノ法律施行ノ日ヨリ廃止ス
第十二条 明治九年第八十二号布告、同年第九十四号布告及明治十四年第七十五号布告ニ依リ授与シタル免状ハ第二号表ニ依リ各相当ノ免状ト交換スヘシ其ノ交換ノ手続及時期ハ逓信大臣之ヲ定ム
前項ニ掲ケタル各種ノ旧免状ハ新免状ト交換スルマテ之ニ代用スルコトヲ得
第十三条 此ノ法律ハ施行ノ日ヨリ一箇年ヲ限リ積石数百五十石以上ノ帆船ニハ之ヲ適用セス
第十四条 逓信大臣ハ積石数百五十石以上ノ帆船ニ乗組ミ三箇年以来其ノ運航ヲ掌リ且此ノ法律施行ノ際現ニ船長ノ職ヲ執リ年齢二十歳以上ノ者ニハ此ノ法律施行ノ日ヨリ一箇年ヲ限リ試験ヲ用井スシテ相当ノ海技免状ヲ授与スルコトヲ得
第十五条 逓信大臣ハ第一号表中近海航船ニシテ登簿噸数五百噸未満ノ汽船及沿海航船ニシテ登簿噸数二百噸以上ノ汽船ニハ此ノ法律施行ノ日ヨリ一箇年ヲ限リ二等機関士ノ免状ヲ有スル者ニ機関長ノ職ヲ執ラシメ又一等機関士ヲ乗組マシメサルコトヲ得
第一号表
【表】
第二号表
【表】