朕北海道廳官制ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十四年七月二十四日
內閣總理大臣 伯爵 松方正義
內務大臣 子爵 品川彌二郞
勅令第百十一號
北海道廳官制
第一條 北海道廳ニ左ノ職員ヲ置ク
長官
書記官
警部長
財務長
參事官
技師
典獄
技手
警部
監獄書記
看守長
監獄醫
第二條 長官一人勅任トス
第三條 書記官二人警部長一人財務長一人參事官二人典獄一人奏任トス
第四條 屬警部監獄書記看守長監獄醫ハ判任トス郡區書記ヲ通シテ四百十五人ヲ以テ定員トス
前項各官ノ定員ハ內務大臣ノ認可ヲ經テ之ヲ定ム
第五條 技師技手ハ道廳ノ須要ニ依リ判任官豫算定額內ニ於テ本年勅令第八十四號技術官俸給令ニ依リ之ヲ置クコトヲ得
第六條 長官ハ內務大臣ノ指揮監督ニ屬シ各省ノ主務ニ就テハ各省大臣ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ執行シ北海道ノ拓地殖民竝部內ノ行政事務ヲ總理ス
第七條 長官ハ屯田兵ノ開墾授產ノ事ヲ監督シ竝北海道集治監ヲ管理ス
第八條 長官ハ北海道ノ事務ニ付其職權若クハ特別ノ委任ニ依リ法律命令ノ範圍內ニ於テ管內一般又ハ其一部ニ廳令ヲ發スルコトヲ得
第九條 廳令ハ內務大臣其他主務ノ大臣ニ於テ公益ヲ害シ成規ニ違ヒ又ハ權限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ之ヲ取消シ又ハ中止スルコトアルヘシ
第十條 長官ハ非常急變ノ場合ニ臨ミ兵力ヲ要シ又ハ警護ノ爲メ兵備ヲ要スルトキハ師團長旅團長及屯田兵司令官ニ移牒シ出兵ヲ請フコトヲ得
第十一條 長官ハ所部ノ官吏ヲ統督シ奏任官ノ進退ハ內務大臣ニ具狀シ判任官以下ハ之ヲ專行ス
第十二條 長官ハ法律命令ノ定ムル所ニ從ヒ所部ノ官吏ヲ懲戒ス其奏任官ニ係ルモノハ之ヲ內務大臣ニ具狀シ判任官以下ハ之ヲ專行ス
第十三條 長官ハ豫算定額內ニ於テ奏任官以下特別ノ勤勞アルモノヲ賞與スルコトヲ得其奏任官ニ係ルモノハ之ヲ內務大臣ニ具狀シ判任官以下ハ之ヲ專行ス
第十四條 長官ハ須要ニ從ヒ判任官俸給豫算定額內ニ於テ雇員ヲ使用スルコトヲ得
第十五條 長官ハ廳中及其所轄官廳ノ處務細則ヲ定ムルコトヲ得
第十六條 北海道廳ニ長官官房ヲ置ク
長官官房ニ書記若干名ヲ置ク屬ヲ以テ之ニ充ツ
第十七條 長官官房ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル
一 官吏ノ進退身分ニ關スル事項
二 文書ノ往復
三 官印廳印ノ管守
四 記錄編輯統計報吿ニ關スル事項
五 外國人ニ關スル事項
第十八條 長官事故アルトキハ上席書記官其職務ヲ代理ス
第十九條 道廳ノ事務ヲ分掌セシムル爲メニ左ノ三部一署ヲ置ク
內務部
一 學務衞生社寺ニ關スル事項
二 兵事戶籍褒賞賑恤及區町村費ニ關スル事項
三 農工商務ニ關スル事項
四 地理山林ニ關スル事項
五 水陸運輸ニ關スル事項
六 漁獵ニ關スル事項
七 河港堤防道路鐵道橋梁排水溝渠ニ關スル事項
八 官衙ノ建築修繕ニ關スル事項
九 他部ノ主掌ニ屬セサル事項
警察部
一 高等警察及行政警察ニ關スル事項
財務部
一 金錢物品ノ管理出納ニ關スル事項
二 豫算決算ニ關スル事項
三 租稅ノ賦課徵收ニ關スル事項
監獄署
一 道廳監獄ニ關スル事項
第二十條 書記官ハ內務部長、警部長ハ警察部長、財務長ハ財務部長、典獄ハ監獄署長ト爲リ各長官ノ指揮ヲ承ケ部下ノ官吏ヲ監督シ所部ノ事務ヲ掌理ス
第二十一條 參事官ハ長官ノ諮詢ニ應シ意見ヲ具ヘ及審議立案ヲ掌ル
參事官ハ長官ノ命ヲ承ケ內務部各課長トナリ又ハ臨時各部課ノ事務ヲ助クルコトアルヘシ
第二十二條 技師ハ長官又ハ部長ノ指揮ヲ承ケ技術ニ從事ス
第二十三條 各部署中便宜課ヲ設ケ各課ニ課長一人ヲ置キ部署長ノ指揮ヲ承ケ課務ヲ掌理ス
課長ハ屬ヲ以テ之ニ充ツ但技師ヲ以テ之ニ充ツルコトアルヘシ
第二十四條 屬ハ上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ從事ス
第二十五條 技手ハ上官ノ指揮ヲ承ケ技術ニ從事ス
第二十六條 警部ハ上官ノ指揮ヲ承ケ警察事務ヲ分掌シ部下ノ巡査ヲ指揮監督ス
第二十七條 監獄書記ハ典獄ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ從事ス
典獄事故アルトキハ上席書記長官ノ命ヲ承ケ其職務ヲ代理ス
第二十八條 看守長ハ典獄ノ指揮ヲ承ケ監獄ノ戒護ヲ掌リ看守ヲ指揮監督ス
第二十九條 監獄醫ハ典獄ノ指揮ヲ承ケ監獄ニ係ル醫務ニ從事ス
第三十條 道廳職員ノ外敎誨師ヲ置ク判任ノ待遇トス其定員ハ長官之ヲ定メ內務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第三十一條 巡査及看守ニ關スル規定ハ別ニ定ムル所ニ依ル
第三十二條 每郡若クハ數郡及每區ニ警察署ヲ置キ各警察署ノ部內ニ警察分署ヲ配置ス
警察署長ハ郡區長ヲ以テ之ニ充テ警察分署長ハ戶長ヲ以テ之ニ充ツ但土地ノ情況ニ依リ特ニ警察署又ハ分署ヲ設置シ警部ヲ以テ其署長ニ充ツルコトヲ得
第三十三條 監獄支署若干ヲ置キ書記ヲ以テ其長ニ充ツ
第三十四條 各郡區職員ヲ置ク左ノ如シ
郡長
區長
郡書記
區書記
第三十五條 郡長ハ每郡若クハ數郡ニ一人、區長ハ每區ニ一人ヲ置ク但函館區長ハ書記官ノ內一人之ヲ兼任ス
第三十六條 郡長區長ハ奏任トス長官ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ部內ニ執行シ部內ノ行政事務ヲ掌理ス
第三十七條 郡區書記ハ判任トス郡區長ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ從事ス
第三十八條 地方官官制中警察官及郡長郡書記ニ係ル條項ニシテ本令ニ牴觸セサルモノハ北海道廳警察官及郡區長竝郡區書記ニモ之ヲ適用ス
附 則
第三十九條 本令ハ明治二十四年八月十六日ヨリ施行ス
朕北海道庁官制ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十四年七月二十四日
内閣総理大臣 伯爵 松方正義
内務大臣 子爵 品川弥二郎
勅令第百十一号
北海道庁官制
第一条 北海道庁ニ左ノ職員ヲ置ク
長官
書記官
警部長
財務長
参事官
技師
典獄
技手
警部
監獄書記
看守長
監獄医
第二条 長官一人勅任トス
第三条 書記官二人警部長一人財務長一人参事官二人典獄一人奏任トス
第四条 属警部監獄書記看守長監獄医ハ判任トス郡区書記ヲ通シテ四百十五人ヲ以テ定員トス
前項各官ノ定員ハ内務大臣ノ認可ヲ経テ之ヲ定ム
第五条 技師技手ハ道庁ノ須要ニ依リ判任官予算定額内ニ於テ本年勅令第八十四号技術官俸給令ニ依リ之ヲ置クコトヲ得
第六条 長官ハ内務大臣ノ指揮監督ニ属シ各省ノ主務ニ就テハ各省大臣ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ執行シ北海道ノ拓地殖民並部内ノ行政事務ヲ総理ス
第七条 長官ハ屯田兵ノ開墾授産ノ事ヲ監督シ並北海道集治監ヲ管理ス
第八条 長官ハ北海道ノ事務ニ付其職権若クハ特別ノ委任ニ依リ法律命令ノ範囲内ニ於テ管内一般又ハ其一部ニ庁令ヲ発スルコトヲ得
第九条 庁令ハ内務大臣其他主務ノ大臣ニ於テ公益ヲ害シ成規ニ違ヒ又ハ権限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ之ヲ取消シ又ハ中止スルコトアルヘシ
第十条 長官ハ非常急変ノ場合ニ臨ミ兵力ヲ要シ又ハ警護ノ為メ兵備ヲ要スルトキハ師団長旅団長及屯田兵司令官ニ移牒シ出兵ヲ請フコトヲ得
第十一条 長官ハ所部ノ官吏ヲ統督シ奏任官ノ進退ハ内務大臣ニ具状シ判任官以下ハ之ヲ専行ス
第十二条 長官ハ法律命令ノ定ムル所ニ従ヒ所部ノ官吏ヲ懲戒ス其奏任官ニ係ルモノハ之ヲ内務大臣ニ具状シ判任官以下ハ之ヲ専行ス
第十三条 長官ハ予算定額内ニ於テ奏任官以下特別ノ勤労アルモノヲ賞与スルコトヲ得其奏任官ニ係ルモノハ之ヲ内務大臣ニ具状シ判任官以下ハ之ヲ専行ス
第十四条 長官ハ須要ニ従ヒ判任官俸給予算定額内ニ於テ雇員ヲ使用スルコトヲ得
第十五条 長官ハ庁中及其所轄官庁ノ処務細則ヲ定ムルコトヲ得
第十六条 北海道庁ニ長官官房ヲ置ク
長官官房ニ書記若干名ヲ置ク属ヲ以テ之ニ充ツ
第十七条 長官官房ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル
一 官吏ノ進退身分ニ関スル事項
二 文書ノ往復
三 官印庁印ノ管守
四 記録編輯統計報告ニ関スル事項
五 外国人ニ関スル事項
第十八条 長官事故アルトキハ上席書記官其職務ヲ代理ス
第十九条 道庁ノ事務ヲ分掌セシムル為メニ左ノ三部一署ヲ置ク
内務部
一 学務衛生社寺ニ関スル事項
二 兵事戸籍褒賞賑恤及区町村費ニ関スル事項
三 農工商務ニ関スル事項
四 地理山林ニ関スル事項
五 水陸運輸ニ関スル事項
六 漁猟ニ関スル事項
七 河港堤防道路鉄道橋梁排水溝渠ニ関スル事項
八 官衙ノ建築修繕ニ関スル事項
九 他部ノ主掌ニ属セサル事項
警察部
一 高等警察及行政警察ニ関スル事項
財務部
一 金銭物品ノ管理出納ニ関スル事項
二 予算決算ニ関スル事項
三 租税ノ賦課徴収ニ関スル事項
監獄署
一 道庁監獄ニ関スル事項
第二十条 書記官ハ内務部長、警部長ハ警察部長、財務長ハ財務部長、典獄ハ監獄署長ト為リ各長官ノ指揮ヲ承ケ部下ノ官吏ヲ監督シ所部ノ事務ヲ掌理ス
第二十一条 参事官ハ長官ノ諮詢ニ応シ意見ヲ具ヘ及審議立案ヲ掌ル
参事官ハ長官ノ命ヲ承ケ内務部各課長トナリ又ハ臨時各部課ノ事務ヲ助クルコトアルヘシ
第二十二条 技師ハ長官又ハ部長ノ指揮ヲ承ケ技術ニ従事ス
第二十三条 各部署中便宜課ヲ設ケ各課ニ課長一人ヲ置キ部署長ノ指揮ヲ承ケ課務ヲ掌理ス
課長ハ属ヲ以テ之ニ充ツ但技師ヲ以テ之ニ充ツルコトアルヘシ
第二十四条 属ハ上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第二十五条 技手ハ上官ノ指揮ヲ承ケ技術ニ従事ス
第二十六条 警部ハ上官ノ指揮ヲ承ケ警察事務ヲ分掌シ部下ノ巡査ヲ指揮監督ス
第二十七条 監獄書記ハ典獄ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
典獄事故アルトキハ上席書記長官ノ命ヲ承ケ其職務ヲ代理ス
第二十八条 看守長ハ典獄ノ指揮ヲ承ケ監獄ノ戒護ヲ掌リ看守ヲ指揮監督ス
第二十九条 監獄医ハ典獄ノ指揮ヲ承ケ監獄ニ係ル医務ニ従事ス
第三十条 道庁職員ノ外教誨師ヲ置ク判任ノ待遇トス其定員ハ長官之ヲ定メ内務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第三十一条 巡査及看守ニ関スル規定ハ別ニ定ムル所ニ依ル
第三十二条 毎郡若クハ数郡及毎区ニ警察署ヲ置キ各警察署ノ部内ニ警察分署ヲ配置ス
警察署長ハ郡区長ヲ以テ之ニ充テ警察分署長ハ戸長ヲ以テ之ニ充ツ但土地ノ情況ニ依リ特ニ警察署又ハ分署ヲ設置シ警部ヲ以テ其署長ニ充ツルコトヲ得
第三十三条 監獄支署若干ヲ置キ書記ヲ以テ其長ニ充ツ
第三十四条 各郡区職員ヲ置ク左ノ如シ
郡長
区長
郡書記
区書記
第三十五条 郡長ハ毎郡若クハ数郡ニ一人、区長ハ毎区ニ一人ヲ置ク但函館区長ハ書記官ノ内一人之ヲ兼任ス
第三十六条 郡長区長ハ奏任トス長官ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ部内ニ執行シ部内ノ行政事務ヲ掌理ス
第三十七条 郡区書記ハ判任トス郡区長ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第三十八条 地方官官制中警察官及郡長郡書記ニ係ル条項ニシテ本令ニ牴触セサルモノハ北海道庁警察官及郡区長並郡区書記ニモ之ヲ適用ス
附 則
第三十九条 本令ハ明治二十四年八月十六日ヨリ施行ス