朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ會計法ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年二月十一日
內閣總理大臣 伯爵 黑田淸隆
樞密院議長 伯爵 伊藤博文
外務大臣 伯爵 大隈重信
海軍大臣 伯爵 西鄕從道
農商務大臣 伯爵 井上馨
司法大臣 伯爵 山田顯義
大藏大臣兼內務大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山巖
文部大臣 子爵 森有禮
遞信大臣 子爵 榎本武揚
法律第四號
會計法
第一章 總則
第一條 政府ノ會計年度ハ每年四月一日ニ始マリ翌年三月三十一日ニ終ル
一會計年度所屬ノ歲入歲出ノ出納ニ關ル事務ハ翌年度十一月三十日マテニ悉皆完結スヘシ
第二條 租稅及其ノ他一切ノ收納ヲ歲入トシ一切ノ經費ヲ歲出トシ歲入歲出ハ總豫算ニ編入スヘシ
第三條 各年度ニ於テ決定シタル經費ノ定額ヲ以テ他ノ年度ニ屬スヘキ經費ニ充ツルコトヲ得ス
第四條 各官廳ニ於テハ法律勅令ヲ以テ規定シタルモノヽ外特別ノ資金ヲ有スルコトヲ得ス
第二章 豫算
第五條 歲入歲出ノ總豫算ハ前年ノ帝國議會集會ノ始ニ於テ之ヲ提出スヘシ
第六條 歲入歲出ノ總豫算ハ之ヲ經常臨時ノ二部ニ大別シ各部中ニ於テ之ヲ款項ニ區分スヘシ
總豫算ニハ帝國議會參考ノ爲ニ左ノ文書ヲ添附スヘシ
第一 各省ノ豫定經費要求書但シ各項中各目ノ明細ヲ記入スヘシ
第二 其ノ年三月三十一日ニ終リタル會計年度ノ歲入歲出現計書
第七條 豫算中ニ設クヘキ豫備費ハ左ノ二項ニ分ツ
第一豫備金
第二豫備金
第一豫備金ハ避クヘカラサル豫算ノ不足ヲ補フモノトス
第二豫備金ハ豫算外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツルモノトス
第八條 豫備金ヲ以テ支辨シタルモノハ年度經過後帝國議會ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第九條 每年度大藏省證券發行ノ最高額ハ帝國議會ノ協贊ヲ經テ之ヲ定ム
第三章 收入
第十條 租稅及其ノ他ノ歲入ハ法律命令ノ規程ニ從ヒ之ヲ徵收スヘシ
法律命令ニ依リ當該官吏ノ資格アル者ニ非サレハ租稅ヲ徵收シ又ハ其ノ他ノ歲入ヲ收納スルコトヲ得ス
第四章 支出
第十一條 每會計年度ニ於テ政府ノ經費ニ充ツル所ノ定額ハ其ノ年度ノ歲入ヲ以テ之ヲ支辨スヘシ
第十二條 國務大臣ハ豫算ニ定メタル目的ノ外ニ定額ヲ使用シ又ハ各項ノ金額ヲ彼此流用スルコトヲ得ス
國務大臣ハ其ノ所管ニ屬スル收入ヲ國庫ニ納ムヘシ直ニ之ヲ使用スルコトヲ得ス
第十三條 國務大臣ハ其ノ所管定額ヲ使用スル爲ニ國庫ニ向ヒテ仕拂命令ヲ發スヘシ但シ別ニ定ムル所ノ規程ニ從ヒ他ノ官吏ニ委任シテ仕拂命令ヲ發セシムルコトヲ得
第十四條 國庫ハ法律命令ニ反スル仕拂命令ニ對シテ仕拂ヲ爲スコトヲ得ス
第十五條 國務大臣ハ政府ニ對シ正當ナル債主若ハ其ノ代理人ノ爲ニスルニ非サレハ仕拂命令ヲ發スルコトヲ得ス
左ノ諸項ノ經費ニ限リ國務大臣ハ主任ノ官吏ニ委任シ又ハ政府ノ命シタル銀行ニ委任シテ現金支拂ヲ爲サシムル爲ニ現金前渡ノ仕拂命令ヲ發スルコトヲ得
第一 國債ノ元利拂
第二 軍隊軍艦及官船ニ屬スル經費
第三 在外各廳ノ經費
第四 前項ノ外總テ外國ニ於テ仕拂ヲ爲ス經費
第五 運輸通信ノ不便ナル內國ノ地方ニ於テ仕拂ヲ爲ス經費
第六 廳中常用雜費ニシテ一箇年ノ總費額五百圓ニ滿タサルモノ
第七 場所ノ一定セサル事務所ノ經費
第八 各廳ニ於テ直接ニ從事スル工事ノ經費但シ一主任官ニ付三千圓マテヲ限ル
第五章 決算
第十六條 會計檢査院ノ檢査ヲ經テ政府ヨリ帝國議會ニ提出スル總決算ハ總豫算ト同一ノ樣式ヲ用井左ノ事項ノ計算ヲ明記スヘシ
歲入ノ部
歲入豫算額
調定濟歲入額
收入濟歲入額
收入未濟歲入額
歲出ノ部
歲出豫算額
豫算決定後增加歲出額
仕拂命令濟歲出額
翌年度繰越額
第十七條 前條ノ總決算ニハ會計檢査院ノ檢査報吿ト倶ニ左ノ文書ヲ添附スヘシ
第一 各省決算報吿書
第二 國債計算書
第三 特別會計計算書
第六章 期滿免除
第十八條 政府ノ負債ニシテ其ノ仕拂フヘキ年度經過後滿五箇年內ニ債主ヨリ支出ノ請求若ハ仕拂ノ請求ヲ爲サヽルモノハ期滿免除トシテ政府ハ其ノ義務ヲ免ルヽモノトス但シ特別ノ法律ヲ以テ期滿免除ノ期限ヲ定メタルモノハ各〻其ノ定ムル所ニ依ル
第十九條 政府ニ納ムヘキ金額ニシテ其ノ納ムヘキ年度經過後滿五箇年內ニ上納ノ吿知ヲ受ケサルモノハ其ノ義務ヲ免ルヽモノトス但シ特別ノ法律ヲ以テ期滿免除ノ期限ヲ定メタルモノハ各〻其ノ定ムル所ニ依ル
第七章 歲計剩餘定額繰越豫算外收入及定額戾入
第二十條 各年度ニ於テ歲計ニ剩餘アルトキハ其ノ翌年度ノ歲入ニ繰入ルヘシ
第二十一條 豫算ニ於テ特ニ明許シタルモノ及一年度內ニ終ルヘキ工事又ハ製造ニシテ避クヘカラサル事故ノ爲ニ事業ヲ遲延シ年度內ニ其ノ經費ノ支出ヲ終ラサリシモノハ之ヲ翌年度ニ繰越シ使用スルコトヲ得
第二十二條 數年ヲ期シテ竣功スヘキ工事製造及其ノ他ノ事業ニシテ繼續費トシテ總額ヲ定メタルモノハ每年度ノ仕拂殘額ヲ竣功年度マテ遞次繰越使用スルコトヲ得
第二十三條 誤拂過渡トナリタル金額ノ返納出納ノ完結シタル年度ニ屬スル收入及其ノ他一切豫算外ノ收入ハ總テ現年度ノ歲入ニ組入ルヘシ但シ法律勅令ニ依リ前金渡槪算渡繰替拂ヲ爲シタル場合ニ於ケル返納金ハ各〻之ヲ仕拂ヒタル經費ノ定額ニ戾入ルヽコトヲ得
第八章 政府ノ工事及物件ノ賣買貸借
第二十四條 法律勅令ヲ以テ定メタル場合ノ外政府ノ工事又ハ物件ノ賣買貸借ハ總テ公吿シテ競爭ニ付スヘシ但シ左ノ場合ニ於テハ競爭ニ付セス隨意ノ約定ニ依ルコトヲ得ヘシ
第一 一人又ハ一會社ニテ專有スル物品ヲ買入レ又ハ借入ルヽトキ
第二 政府ノ所爲ヲ祕密ニスヘキ場合ニ於テ命スル工事又ハ物品ノ賣買貸借ヲ爲ストキ
第三 非常急遽ノ際工事又ハ物品ノ買入借入ヲ爲スニ競爭ニ付スル暇ナキトキ
第四 特種ノ物質又ハ特別使用ノ目的アルニ由リ生產製造ノ場所又ハ生產者製造者ヨリ直接ニ物品ノ買入ヲ要スルトキ
第五 特別ノ技術家ニ命スルニ非サレハ製造シ得ヘカラサル製造品及機械ヲ買入ルヽトキ
第六 土地家屋ノ買入又ハ借入ヲ爲スニ當リ其ノ位置又ハ構造等ニ限アル場合
第七 五百圓ヲ超エサル工事又ハ物品ノ買入借入ノ契約ヲ爲ストキ
第八 見積價格二百圓ヲ超エサル動產ヲ賣拂フトキ
第九 軍艦ヲ買入ルヽトキ
第十 軍馬ヲ買入ルヽトキ
第十一 試驗ノ爲ニ工作製造ヲ命シ又ハ物品ヲ買入ルヽトキ
第十二 慈惠ノ爲ニ設立セル救育所ノ貧民ヲ傭役シ及其ノ生產又ハ製造物品ヲ直接ニ買入ルヽトキ
第十三 囚徒ヲ傭役シ又ハ囚徒ノ製造物品ヲ直接ニ買入ルヽトキ及政府ノ設立ニ係ル農工業場ヨリ直接ニ其ノ生產又ハ製造物品ヲ買入ルヽトキ
第十四 政府ノ設立シタル農工業場又ハ慈惠敎育ニ係ル各所ノ生產製造物品及囚徒ノ製造物品ヲ賣拂フトキ
第二十五條 軍艦兵器彈藥ヲ除ク外工事製造又ハ物件買入ノ爲ニ前金拂ヲ爲スコトヲ得ス
第九章 出納官吏
第二十六條 政府ニ屬スル現金若ハ物品ノ出納ヲ掌ル所ノ官吏ハ其ノ現金若ハ物品ニ付一切ノ責任ヲ負ヒ會計檢査院ノ檢査判決ヲ受クヘシ
第二十七條 前條ノ官吏水火盜難又ハ其ノ他ノ事故ニ由リ其ノ保管スル所ノ現金若ハ物品ヲ紛失毀損シタル場合ニ於テハ其ノ保管上避ケ得ヘカラサリシ事實ヲ會計檢査院ニ證明シ責任解除ノ判決ヲ受クルニ非サレハ其ノ負擔ノ責ヲ免ルヽコトヲ得ス
第二十八條 現金又ハ物品ノ出納ヲ掌ルニ付身元保證金ヲ納メシムルコトヲ要スルモノハ勅令ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
第二十九條 仕拂命令ノ職務ハ現金出納ノ職務ト相兼ヌルコトヲ得ス
第十章 雜則
第三十條 特別ノ須要ニ因リ本法ニ準據シ難キモノアルトキハ特別會計ヲ設置スルコトヲ得
特別會計ヲ設置スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
第三十一條 政府ハ國庫金ノ取扱ヲ日本銀行ニ命スルコトヲ得
第十一章 附則
第三十二條 本法ノ條項帝國議會ニ關涉セサルモノハ明治二十三年四月一日ヨリ施行シ其ノ關涉スルモノハ帝國議會開會ノ時ヨリ施行ス
決算ニ係ル條項ハ帝國議會ノ議定ヲ經タル年度ノ歲計ヨリ施行ス
第三十三條 本法ノ條項ト牴觸スル法令ハ各〻其ノ條項施行ノ日ヨリ廢止ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ会計法ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年二月十一日
内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
枢密院議長 伯爵 伊藤博文
外務大臣 伯爵 大隈重信
海軍大臣 伯爵 西郷従道
農商務大臣 伯爵 井上馨
司法大臣 伯爵 山田顕義
大蔵大臣兼内務大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山巌
文部大臣 子爵 森有礼
逓信大臣 子爵 榎本武揚
法律第四号
会計法
第一章 総則
第一条 政府ノ会計年度ハ毎年四月一日ニ始マリ翌年三月三十一日ニ終ル
一会計年度所属ノ歳入歳出ノ出納ニ関ル事務ハ翌年度十一月三十日マテニ悉皆完結スヘシ
第二条 租税及其ノ他一切ノ収納ヲ歳入トシ一切ノ経費ヲ歳出トシ歳入歳出ハ総予算ニ編入スヘシ
第三条 各年度ニ於テ決定シタル経費ノ定額ヲ以テ他ノ年度ニ属スヘキ経費ニ充ツルコトヲ得ス
第四条 各官庁ニ於テハ法律勅令ヲ以テ規定シタルモノヽ外特別ノ資金ヲ有スルコトヲ得ス
第二章 予算
第五条 歳入歳出ノ総予算ハ前年ノ帝国議会集会ノ始ニ於テ之ヲ提出スヘシ
第六条 歳入歳出ノ総予算ハ之ヲ経常臨時ノ二部ニ大別シ各部中ニ於テ之ヲ款項ニ区分スヘシ
総予算ニハ帝国議会参考ノ為ニ左ノ文書ヲ添附スヘシ
第一 各省ノ予定経費要求書但シ各項中各目ノ明細ヲ記入スヘシ
第二 其ノ年三月三十一日ニ終リタル会計年度ノ歳入歳出現計書
第七条 予算中ニ設クヘキ予備費ハ左ノ二項ニ分ツ
第一予備金
第二予備金
第一予備金ハ避クヘカラサル予算ノ不足ヲ補フモノトス
第二予備金ハ予算外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツルモノトス
第八条 予備金ヲ以テ支弁シタルモノハ年度経過後帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第九条 毎年度大蔵省証券発行ノ最高額ハ帝国議会ノ協賛ヲ経テ之ヲ定ム
第三章 収入
第十条 租税及其ノ他ノ歳入ハ法律命令ノ規程ニ従ヒ之ヲ徴収スヘシ
法律命令ニ依リ当該官吏ノ資格アル者ニ非サレハ租税ヲ徴収シ又ハ其ノ他ノ歳入ヲ収納スルコトヲ得ス
第四章 支出
第十一条 毎会計年度ニ於テ政府ノ経費ニ充ツル所ノ定額ハ其ノ年度ノ歳入ヲ以テ之ヲ支弁スヘシ
第十二条 国務大臣ハ予算ニ定メタル目的ノ外ニ定額ヲ使用シ又ハ各項ノ金額ヲ彼此流用スルコトヲ得ス
国務大臣ハ其ノ所管ニ属スル収入ヲ国庫ニ納ムヘシ直ニ之ヲ使用スルコトヲ得ス
第十三条 国務大臣ハ其ノ所管定額ヲ使用スル為ニ国庫ニ向ヒテ仕払命令ヲ発スヘシ但シ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ他ノ官吏ニ委任シテ仕払命令ヲ発セシムルコトヲ得
第十四条 国庫ハ法律命令ニ反スル仕払命令ニ対シテ仕払ヲ為スコトヲ得ス
第十五条 国務大臣ハ政府ニ対シ正当ナル債主若ハ其ノ代理人ノ為ニスルニ非サレハ仕払命令ヲ発スルコトヲ得ス
左ノ諸項ノ経費ニ限リ国務大臣ハ主任ノ官吏ニ委任シ又ハ政府ノ命シタル銀行ニ委任シテ現金支払ヲ為サシムル為ニ現金前渡ノ仕払命令ヲ発スルコトヲ得
第一 国債ノ元利払
第二 軍隊軍艦及官船ニ属スル経費
第三 在外各庁ノ経費
第四 前項ノ外総テ外国ニ於テ仕払ヲ為ス経費
第五 運輸通信ノ不便ナル内国ノ地方ニ於テ仕払ヲ為ス経費
第六 庁中常用雑費ニシテ一箇年ノ総費額五百円ニ満タサルモノ
第七 場所ノ一定セサル事務所ノ経費
第八 各庁ニ於テ直接ニ従事スル工事ノ経費但シ一主任官ニ付三千円マテヲ限ル
第五章 決算
第十六条 会計検査院ノ検査ヲ経テ政府ヨリ帝国議会ニ提出スル総決算ハ総予算ト同一ノ様式ヲ用井左ノ事項ノ計算ヲ明記スヘシ
歳入ノ部
歳入予算額
調定済歳入額
収入済歳入額
収入未済歳入額
歳出ノ部
歳出予算額
予算決定後増加歳出額
仕払命令済歳出額
翌年度繰越額
第十七条 前条ノ総決算ニハ会計検査院ノ検査報告ト倶ニ左ノ文書ヲ添附スヘシ
第一 各省決算報告書
第二 国債計算書
第三 特別会計計算書
第六章 期満免除
第十八条 政府ノ負債ニシテ其ノ仕払フヘキ年度経過後満五箇年内ニ債主ヨリ支出ノ請求若ハ仕払ノ請求ヲ為サヽルモノハ期満免除トシテ政府ハ其ノ義務ヲ免ルヽモノトス但シ特別ノ法律ヲ以テ期満免除ノ期限ヲ定メタルモノハ各々其ノ定ムル所ニ依ル
第十九条 政府ニ納ムヘキ金額ニシテ其ノ納ムヘキ年度経過後満五箇年内ニ上納ノ告知ヲ受ケサルモノハ其ノ義務ヲ免ルヽモノトス但シ特別ノ法律ヲ以テ期満免除ノ期限ヲ定メタルモノハ各々其ノ定ムル所ニ依ル
第七章 歳計剰余定額繰越予算外収入及定額戻入
第二十条 各年度ニ於テ歳計ニ剰余アルトキハ其ノ翌年度ノ歳入ニ繰入ルヘシ
第二十一条 予算ニ於テ特ニ明許シタルモノ及一年度内ニ終ルヘキ工事又ハ製造ニシテ避クヘカラサル事故ノ為ニ事業ヲ遅延シ年度内ニ其ノ経費ノ支出ヲ終ラサリシモノハ之ヲ翌年度ニ繰越シ使用スルコトヲ得
第二十二条 数年ヲ期シテ竣功スヘキ工事製造及其ノ他ノ事業ニシテ継続費トシテ総額ヲ定メタルモノハ毎年度ノ仕払残額ヲ竣功年度マテ逓次繰越使用スルコトヲ得
第二十三条 誤払過渡トナリタル金額ノ返納出納ノ完結シタル年度ニ属スル収入及其ノ他一切予算外ノ収入ハ総テ現年度ノ歳入ニ組入ルヘシ但シ法律勅令ニ依リ前金渡概算渡繰替払ヲ為シタル場合ニ於ケル返納金ハ各々之ヲ仕払ヒタル経費ノ定額ニ戻入ルヽコトヲ得
第八章 政府ノ工事及物件ノ売買貸借
第二十四条 法律勅令ヲ以テ定メタル場合ノ外政府ノ工事又ハ物件ノ売買貸借ハ総テ公告シテ競争ニ付スヘシ但シ左ノ場合ニ於テハ競争ニ付セス随意ノ約定ニ依ルコトヲ得ヘシ
第一 一人又ハ一会社ニテ専有スル物品ヲ買入レ又ハ借入ルヽトキ
第二 政府ノ所為ヲ秘密ニスヘキ場合ニ於テ命スル工事又ハ物品ノ売買貸借ヲ為ストキ
第三 非常急遽ノ際工事又ハ物品ノ買入借入ヲ為スニ競争ニ付スル暇ナキトキ
第四 特種ノ物質又ハ特別使用ノ目的アルニ由リ生産製造ノ場所又ハ生産者製造者ヨリ直接ニ物品ノ買入ヲ要スルトキ
第五 特別ノ技術家ニ命スルニ非サレハ製造シ得ヘカラサル製造品及機械ヲ買入ルヽトキ
第六 土地家屋ノ買入又ハ借入ヲ為スニ当リ其ノ位置又ハ構造等ニ限アル場合
第七 五百円ヲ超エサル工事又ハ物品ノ買入借入ノ契約ヲ為ストキ
第八 見積価格二百円ヲ超エサル動産ヲ売払フトキ
第九 軍艦ヲ買入ルヽトキ
第十 軍馬ヲ買入ルヽトキ
第十一 試験ノ為ニ工作製造ヲ命シ又ハ物品ヲ買入ルヽトキ
第十二 慈恵ノ為ニ設立セル救育所ノ貧民ヲ傭役シ及其ノ生産又ハ製造物品ヲ直接ニ買入ルヽトキ
第十三 囚徒ヲ傭役シ又ハ囚徒ノ製造物品ヲ直接ニ買入ルヽトキ及政府ノ設立ニ係ル農工業場ヨリ直接ニ其ノ生産又ハ製造物品ヲ買入ルヽトキ
第十四 政府ノ設立シタル農工業場又ハ慈恵教育ニ係ル各所ノ生産製造物品及囚徒ノ製造物品ヲ売払フトキ
第二十五条 軍艦兵器弾薬ヲ除ク外工事製造又ハ物件買入ノ為ニ前金払ヲ為スコトヲ得ス
第九章 出納官吏
第二十六条 政府ニ属スル現金若ハ物品ノ出納ヲ掌ル所ノ官吏ハ其ノ現金若ハ物品ニ付一切ノ責任ヲ負ヒ会計検査院ノ検査判決ヲ受クヘシ
第二十七条 前条ノ官吏水火盗難又ハ其ノ他ノ事故ニ由リ其ノ保管スル所ノ現金若ハ物品ヲ紛失毀損シタル場合ニ於テハ其ノ保管上避ケ得ヘカラサリシ事実ヲ会計検査院ニ証明シ責任解除ノ判決ヲ受クルニ非サレハ其ノ負担ノ責ヲ免ルヽコトヲ得ス
第二十八条 現金又ハ物品ノ出納ヲ掌ルニ付身元保証金ヲ納メシムルコトヲ要スルモノハ勅令ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
第二十九条 仕払命令ノ職務ハ現金出納ノ職務ト相兼ヌルコトヲ得ス
第十章 雑則
第三十条 特別ノ須要ニ因リ本法ニ準拠シ難キモノアルトキハ特別会計ヲ設置スルコトヲ得
特別会計ヲ設置スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
第三十一条 政府ハ国庫金ノ取扱ヲ日本銀行ニ命スルコトヲ得
第十一章 附則
第三十二条 本法ノ条項帝国議会ニ関渉セサルモノハ明治二十三年四月一日ヨリ施行シ其ノ関渉スルモノハ帝国議会開会ノ時ヨリ施行ス
決算ニ係ル条項ハ帝国議会ノ議定ヲ経タル年度ノ歳計ヨリ施行ス
第三十三条 本法ノ条項ト牴触スル法令ハ各々其ノ条項施行ノ日ヨリ廃止ス