国会等の移転に関する法律
法令番号: 法律第百九号
公布年月日: 平成4年12月24日
法令の形式: 法律
国会等の移転に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成四年十二月二十四日
内閣総理大臣 宮澤喜一
法律第百九号
国会等の移転に関する法律
目次
前文
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
検討指針(第三条―第十一条)
第三章
国会等移転調査会(第十二条―第十九条)
附則
我が国は、国民のたゆみない努力により今次の大戦による荒廃の中から立ち上がり、かつてない経済的繁栄を築き上げてきた。そして今日、精神的充足を求める気運の増大、多様な地域文化をはぐくむことや全世界との連携を強化することについての認識の高まりに見られるように、時代は大きく変わろうとしている。
しかるに、我が国の現状は、政治、経済、文化等の中枢機能が東京圏に過度に集中したことにより、人口の過密、地価の高騰、生活環境の悪化、大規模災害時における危険の増大等の問題が深刻化する一方で、地方における過疎、経済的停滞、文化の画一化等の問題が生じるに至っている。これらの諸問題は、単に国土の適正な利用を図るという観点からのみでなく、時代の変化に対応した新しい社会を築く上で、大きな桎梏となっている。
このような状況にかんがみ、一極集中を排除し、多極分散型国土の形成に資するとともに、地震等の大規模災害に対する脆弱性を克服するため、世界都市としての東京都の整備に配慮しつつ、国会等の東京圏外への移転の具体化について積極的に検討を進めることは、我が国が新しい社会を建設するため、極めて緊要なことである。
もとより、国会等の移転のみで問題が解決するものではなく、これと併せ、地方分権その他の行財政の改革等を推進することにより、自主的で創造的な地域社会の実現を図っていくことが肝要であり、また国会等の移転をそのような改革の契機として活用していくことが重要であると確信する。
ここに、国会等の移転を目指して、その具体化のために積極的な検討を行うべきことを明らかにし、そのための国の責務、検討指針、検討体制等について定めるため、この法律を制定する。
第一章 総則
(国の責務)
第一条 国は、国会並びに行政及び司法に関する機能のうち中枢的なもの(以下「国会等」という。)の東京圏以外の地域への移転(以下「国会等の移転」という。)の具体化に向けて積極的な検討を行う責務を有する。
(定義)
第二条 この法律において「多極分散型国土」とは、多極分散型国土形成促進法(昭和六十三年法律第八十三号)第一条に規定する多極分散型国土をいう。
2 この法律において「東京圏」とは、多極分散型国土形成促進法第二十二条第一項に規定する東京圏をいう。
第二章 検討指針
第三条 国は、国会等の移転について検討を行うに当たっては、広く国民の意見を聴き、その合意形成を図るとともに、この章に定めるところにより、広範かつ多角的にこれを行うものとする。
第四条 地方への権限の委譲の積極的推進、国による規制の合理化等行財政の改革と的確に関連付けるものとする。
第五条 国会等の移転と多極分散型国土の形成の促進に関する施策との一体性を確保するものとする。
第六条 経済及び文化における国際的中枢機能並びに良好な居住環境等を備える都市としての東京都の整備との調和を図るとともに、国会等の移転先(以下「移転先」という。)の新都市と東京都との機能面での連携を確保するものとする。
第七条 移転先について、災害に対する安全性、地形の良好性、水の供給の安定性、交通の利便性、土地取得の容易性等の条件を配慮するものとする。
第八条 移転先の新都市が、交通通信体系の整備等により、世界及び我が国の各地域との交流が容易であり、かつ、良好な居住環境等を備えた都市となるようにするものとする。
第九条 国会等の移転の計画は、社会経済情勢の変化に弾力的に対応することができる段階的なものとするものとする。
第十条 移転先の新都市の整備に際し、適切な土地対策を講じるものとする。
第十一条 地震等の大規模災害に対処する上での緊急性、東京都の災害対策の充実等に配慮するものとする。
第三章 国会等移転調査会
(国会等移転調査会の設置)
第十二条 総理府に、国会等移転調査会(以下「調査会」という。)を置く。
(所掌事務等)
第十三条 調査会は、国会等の移転に関し、次に掲げる事項について調査審議し、その結果を内閣総理大臣に報告するものとする。
一 移転の対象の範囲
二 移転先の選定基準
三 移転の時期の目標
四 移転先の新都市の整備に関する基本的事項
五 移転に伴う東京都の整備に関する基本的事項
六 前各号に掲げる事項に関連する事項
2 調査会は、前項の調査審議を行うに当たっては、行財政の改革の推進との関連に留意しなければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項の規定による報告を受けたときは、これを国会に報告するものとする。
(組織)
第十四条 調査会は、委員三十二人以内で組織する。
2 委員は、次に掲げる者について、内閣総理大臣が任命する。
 一 衆議院議員のうちから衆議院が指名する者
八人
 二 参議院議員のうちから参議院が指名する者
六人
 三 学識経験のある者
十八人以内
3 委員は、非常勤とする。
(会長)
第十五条 調査会に、会長を置き、委員の互選によりこれを定める。
2 会長は、会務を総理し、調査会を代表する。
3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(専門委員)
第十六条 調査会に、専門の事項を調査審議させるため、専門委員を置くことができる。
2 専門委員は、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 専門委員は、当該専門の事項に関する調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
4 専門委員は、非常勤とする。
(幹事)
第十七条 調査会に、幹事を置く。
2 幹事は、学識経験のある者及び関係機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 幹事は、調査会の所掌事務について、委員を補佐する。
4 幹事は、非常勤とする。
(協力依頼等)
第十八条 調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係機関に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
2 調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、公聴会を開くことができる。
(政令への委任)
第十九条 この法律に定めるもののほか、調査会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
内閣総理大臣 宮澤喜一
国会等の移転に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成四年十二月二十四日
内閣総理大臣 宮沢喜一
法律第百九号
国会等の移転に関する法律
目次
前文
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
検討指針(第三条―第十一条)
第三章
国会等移転調査会(第十二条―第十九条)
附則
我が国は、国民のたゆみない努力により今次の大戦による荒廃の中から立ち上がり、かつてない経済的繁栄を築き上げてきた。そして今日、精神的充足を求める気運の増大、多様な地域文化をはぐくむことや全世界との連携を強化することについての認識の高まりに見られるように、時代は大きく変わろうとしている。
しかるに、我が国の現状は、政治、経済、文化等の中枢機能が東京圏に過度に集中したことにより、人口の過密、地価の高騰、生活環境の悪化、大規模災害時における危険の増大等の問題が深刻化する一方で、地方における過疎、経済的停滞、文化の画一化等の問題が生じるに至っている。これらの諸問題は、単に国土の適正な利用を図るという観点からのみでなく、時代の変化に対応した新しい社会を築く上で、大きな桎梏となっている。
このような状況にかんがみ、一極集中を排除し、多極分散型国土の形成に資するとともに、地震等の大規模災害に対する脆弱性を克服するため、世界都市としての東京都の整備に配慮しつつ、国会等の東京圏外への移転の具体化について積極的に検討を進めることは、我が国が新しい社会を建設するため、極めて緊要なことである。
もとより、国会等の移転のみで問題が解決するものではなく、これと併せ、地方分権その他の行財政の改革等を推進することにより、自主的で創造的な地域社会の実現を図っていくことが肝要であり、また国会等の移転をそのような改革の契機として活用していくことが重要であると確信する。
ここに、国会等の移転を目指して、その具体化のために積極的な検討を行うべきことを明らかにし、そのための国の責務、検討指針、検討体制等について定めるため、この法律を制定する。
第一章 総則
(国の責務)
第一条 国は、国会並びに行政及び司法に関する機能のうち中枢的なもの(以下「国会等」という。)の東京圏以外の地域への移転(以下「国会等の移転」という。)の具体化に向けて積極的な検討を行う責務を有する。
(定義)
第二条 この法律において「多極分散型国土」とは、多極分散型国土形成促進法(昭和六十三年法律第八十三号)第一条に規定する多極分散型国土をいう。
2 この法律において「東京圏」とは、多極分散型国土形成促進法第二十二条第一項に規定する東京圏をいう。
第二章 検討指針
第三条 国は、国会等の移転について検討を行うに当たっては、広く国民の意見を聴き、その合意形成を図るとともに、この章に定めるところにより、広範かつ多角的にこれを行うものとする。
第四条 地方への権限の委譲の積極的推進、国による規制の合理化等行財政の改革と的確に関連付けるものとする。
第五条 国会等の移転と多極分散型国土の形成の促進に関する施策との一体性を確保するものとする。
第六条 経済及び文化における国際的中枢機能並びに良好な居住環境等を備える都市としての東京都の整備との調和を図るとともに、国会等の移転先(以下「移転先」という。)の新都市と東京都との機能面での連携を確保するものとする。
第七条 移転先について、災害に対する安全性、地形の良好性、水の供給の安定性、交通の利便性、土地取得の容易性等の条件を配慮するものとする。
第八条 移転先の新都市が、交通通信体系の整備等により、世界及び我が国の各地域との交流が容易であり、かつ、良好な居住環境等を備えた都市となるようにするものとする。
第九条 国会等の移転の計画は、社会経済情勢の変化に弾力的に対応することができる段階的なものとするものとする。
第十条 移転先の新都市の整備に際し、適切な土地対策を講じるものとする。
第十一条 地震等の大規模災害に対処する上での緊急性、東京都の災害対策の充実等に配慮するものとする。
第三章 国会等移転調査会
(国会等移転調査会の設置)
第十二条 総理府に、国会等移転調査会(以下「調査会」という。)を置く。
(所掌事務等)
第十三条 調査会は、国会等の移転に関し、次に掲げる事項について調査審議し、その結果を内閣総理大臣に報告するものとする。
一 移転の対象の範囲
二 移転先の選定基準
三 移転の時期の目標
四 移転先の新都市の整備に関する基本的事項
五 移転に伴う東京都の整備に関する基本的事項
六 前各号に掲げる事項に関連する事項
2 調査会は、前項の調査審議を行うに当たっては、行財政の改革の推進との関連に留意しなければならない。
3 内閣総理大臣は、第一項の規定による報告を受けたときは、これを国会に報告するものとする。
(組織)
第十四条 調査会は、委員三十二人以内で組織する。
2 委員は、次に掲げる者について、内閣総理大臣が任命する。
 一 衆議院議員のうちから衆議院が指名する者
八人
 二 参議院議員のうちから参議院が指名する者
六人
 三 学識経験のある者
十八人以内
3 委員は、非常勤とする。
(会長)
第十五条 調査会に、会長を置き、委員の互選によりこれを定める。
2 会長は、会務を総理し、調査会を代表する。
3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(専門委員)
第十六条 調査会に、専門の事項を調査審議させるため、専門委員を置くことができる。
2 専門委員は、学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 専門委員は、当該専門の事項に関する調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
4 専門委員は、非常勤とする。
(幹事)
第十七条 調査会に、幹事を置く。
2 幹事は、学識経験のある者及び関係機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
3 幹事は、調査会の所掌事務について、委員を補佐する。
4 幹事は、非常勤とする。
(協力依頼等)
第十八条 調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係機関に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
2 調査会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、公聴会を開くことができる。
(政令への委任)
第十九条 この法律に定めるもののほか、調査会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
内閣総理大臣 宮沢喜一