特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法
法令番号: 法律第4号
公布年月日: 昭和61年2月25日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

近年の中小企業は、新興工業国の競争力向上や諸外国の保護主義の高まりにより、国際面で厳しい状況にある。国内でも技術革新や情報化が進展し、さらに円高により輸出型産地中小企業への影響が懸念される。政府は中小企業の活力発揮と環境変化への対応を支援するため、特別融資制度による経営安定対策を実施してきた。しかし、より一層の対策強化が必要と判断し、中小企業の経営安定化に時間的余裕を与え、人材養成等の近代化施策を推進するとともに、事業転換への自主的努力を支援するため、本法案を提案するものである。

参照した発言:
第104回国会 衆議院 商工委員会 第2号

審議経過

第104回国会

衆議院
(昭和61年2月12日)
(昭和61年2月13日)
参議院
(昭和61年2月14日)
(昭和61年2月15日)
特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和六十一年二月二十五日
内閣総理大臣 中曽根康弘
法律第四号
特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
事業転換対策(第三条―第八条)
第三章
緊急経営安定対策(第九条―第十二条)
第四章
その他の特定中小企業者に対する措置等(第十三条―第十八条)
第五章
雑則(第十九条―第二十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、近年における貿易構造その他の経済的事情の著しい変化にかんがみ、特定中小企業者に対し、その事業の転換を円滑にするための措置を講じ、あわせて特定中小企業者のうち最近の貿易事情その他の国際経済に係る事情の急激な変化により事業活動に支障を生じているものに対する経営の安定のための緊急の措置を講ずること等により、特定中小企業者の国際経済環境等の変化への適応を円滑化し、もつて国民経済の国際経済環境と調和のある健全な発展に資することを目的とする。
(定義等)
第二条 この法律において「中小企業者」とは、次の各号の一に該当する者をいう。
一 資本の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、工業、鉱業、運送業その他の業種(次号に掲げる業種及び第三号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本の額又は出資の総額が千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であつて、小売業又はサービス業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの並びに資本の額又は出資の総額が三千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であつて、卸売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であつて、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
四 企業組合
五 協業組合
六 事業協同組合、協同組合連合会その他の特別の法律により設立された組合及びその連合会であつて、政令で定めるもの
2 この法律において「特定中小企業者」とは、中小企業者であつて次の各号の一に該当するものをいう。
一 その業種に属する事業の目的物たる物品の輸出が貿易構造の著しい変化により減少することその他の経済的事情の著しい変化によつて生ずる事態であつて政令で定めるものに起因して、当該事業を行う相当数の中小企業者の事業活動に支障を生じ、又は生ずるおそれがあると認められる業種として主務大臣が指定するものに属する事業を行うもの
二 前号の規定により主務大臣が指定する業種以外の業種であつて次の要件に該当する業種として主務大臣が地域を限つて指定するものに属する事業を行うもの
イ その業種に属する中小企業者の事業活動の一部が特定の地域に集中して行われていること。
ロ 前号の政令で定める事態に起因して、その地域内においてその業種に属する事業を行う相当数の中小企業者の事業活動に支障を生じ、又は生ずるおそれがあると認められること。
三 前二号の規定により主務大臣が指定する業種以外の業種に属する事業を行う中小企業者であつて、その者と同一の業種に属する相当数の中小企業者につきその事業の目的物たる物品の特定の仕向地への輸出が当該仕向地に係る貿易構造の著しい変化により減少することその他の経済的事情の著しい変化によつて生ずる事態であつて政令で定めるものが生じていると認められるもの
3 主務大臣は、前項第一号の規定による指定をしようとするときは、通商産業大臣に協議し、かつ、中小企業近代化審議会の意見を聴かなければならない。
4 主務大臣は、第二項第二号の規定による指定をしようとするときは、通商産業大臣に協議し、かつ、当該地域を管轄する都道府県知事及び中小企業近代化審議会の意見を聴かなければならない。
第二章 事業転換対策
(事業転換計画の承認)
第三条 特定中小企業者であつてその事業活動の状況が主務省令で定める基準に該当するものは、その事業の転換を行おうとするときは、当該事業の転換に関する計画(以下「事業転換計画」という。)を作成し、これをその住所地を管轄する都道府県知事に提出して、その事業転換計画が適当である旨の承認を受けることができる。
2 事業転換計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 事業の転換の内容
二 事業の転換の実施時期
三 事業の転換に伴う設備の設置又は廃棄若しくは譲渡に関する事項
四 事業の転換に伴う労務に関する事項
五 事業の転換を行うのに必要な資金の額及びその調達方法
3 都道府県知事は、第一項の承認の申請があつた場合において、その事業転換計画が、当該事業の転換を行う特定中小企業者の能力を有効かつ適切に発揮することができるものであることその他の政令で定める基準に該当するものであると認めるときは、その承認をするものとする。
4 都道府県知事は、第一項の承認に際し、主務省令で定めるところにより、その申請をした者が特定中小企業者に該当する旨を確認するものとする。
(事業転換計画の変更等)
第四条 前条第一項の承認を受けた特定中小企業者(以下「承認特定中小企業者」という。)は、当該承認に係る事業転換計画を変更しようとするときは、同項の承認をした都道府県知事の承認を受けなければならない。
2 都道府県知事は、承認特定中小企業者が承認に係る事業転換計画(前項の規定による変更の承認があつたときは、その変更後のもの。以下「承認事業転換計画」という。)に従つて事業の転換を行つていないと認めるときは、その承認を取り消すことができる。
3 前条第三項の規定は、第一項の承認について準用する。
(事業転換円滑化計画の承認)
第五条 商工組合その他の政令で定める法人であつて、相当数の特定中小企業者を直接又は間接の構成員(以下単に「構成員」という。)とするもの(以下「特定商工組合等」という。)は、新商品又は新技術の研究開発、需要の開拓、研修、情報の提供その他の事業であつて構成員たる中小企業者の事業の転換の円滑化を図るためのもの(以下「事業転換円滑化事業」という。)を実施しようとするときは、その事業転換円滑化事業に関する計画(以下「事業転換円滑化計画」という。)を作成し、これを当該特定商工組合等の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事に提出して、その事業転換円滑化計画が適当である旨の承認を受けることができる。
2 事業転換円滑化計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 事業転換円滑化事業の目標
二 事業転換円滑化事業の内容及び実施時期
三 事業転換円滑化事業を実施するのに必要な資金の額及びその調達方法
四 特定商工組合等が、その構成員たる中小企業者の事業の転換の円滑化を図るために行う新商品又は新技術の研究開発に係る試験研究のための費用に充てるため、その構成員に対し負担金の賦課をしようとする場合にあつては、その賦課の基準
3 都道府県知事は、第一項の承認の申請があつた場合において、その事業転換円滑化計画が、当該特定商工組合等の構成員たる中小企業者の事業の転換の円滑化を図るために有効かつ適切なものであることその他の政令で定める基準に該当するものであると認めるときは、その承認をするものとする。
(事業転換円滑化計画の変更等)
第六条 前条第一項の承認を受けた特定商工組合等(以下「承認特定商工組合等」という。)は、当該承認に係る事業転換円滑化計画を変更しようとするときは、同項の承認をした都道府県知事の承認を受けなければならない。
2 都道府県知事は、承認特定商工組合等が承認に係る事業転換円滑化計画(前項の規定による変更の承認があつたときは、その変更後のもの。以下「承認事業転換円滑化計画」という。)に従つて事業転換円滑化事業を実施していないと認めるときは、その承認を取り消すことができる。
3 前条第三項の規定は、第一項の承認について準用する。
(転換関連保証についての中小企業信用保険法の特例)
第七条 中小企業信用保険法(昭和二十五年法律第二百六十四号)第三条第一項に規定する普通保険(以下「普通保険」という。)、同法第三条の二第一項に規定する無担保保険(以下「無担保保険」という。)又は同法第三条の三第一項に規定する特別小口保険(以下「特別小口保険」という。)の保険関係であつて、転換関連保証(同法第三条第一項、第三条の二第一項又は第三条の三第一項に規定する債務の保証であつて、承認特定中小企業者が承認事業転換計画に従つて事業の転換を行うのに必要な資金に係るもの又は承認特定商工組合等が承認事業転換円滑化計画に従つて事業転換円滑化事業を実施するのに必要な資金に係るものをいう。以下同じ。)を受けた中小企業者に係るものについての次の表の上欄に掲げる同法の規定の適用については、これらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。
第三条第一項
保険価額の合計額が
特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法第七条第一項に規定する転換関連保証(以下「転換関連保証」という。)に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ
第三条の二第一項、第三条の三第一項
保険価額の合計額が
転換関連保証に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ
第三条の二第三項、第三条の三第二項
当該保証をした
転換関連保証及びその他の保証ごとに、それぞれ当該保証をした
当該債務者
転換関連保証及びその他の保証ごとに、当該債務者
2 普通保険の保険関係であつて、転換関連保証に係るものについての中小企業信用保険法第三条第二項及び同法第五条の規定の適用については、同法第三条第二項中「百分の七十」とあり、及び同法第五条中「百分の七十(無担保保険、特別小口保険、公害防止保険、エネルギー対策保険及び新技術企業化保険にあつては、百分の八十)」とあるのは、「百分の八十」とする。
3 普通保険、無担保保険又は特別小口保険の保険関係であつて、転換関連保証に係るものについての保険料の額は、中小企業信用保険法第四条の規定にかかわらず、保険金額に年百分の二以内において政令で定める率を乗じて得た額とする。
(課税の特例)
第八条 承認特定商工組合等が、承認事業転換円滑化計画で定める賦課の基準に基づいて、その構成員たる中小企業者に対し、当該承認事業転換円滑化計画で定める新商品又は新技術の研究開発に係る試験研究(以下「承認事業転換円滑化計画に係る試験研究」という。)に必要な機械装置(工具、器具及び備品を含む。)を取得し、又は製作するための費用に充てるための負担金を賦課した場合において、当該中小企業者が当該負担金を納付したときは、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、当該負担金について特別償却を行うことができる。
2 承認特定商工組合等が、承認事業転換円滑化計画で定める賦課の基準に基づいてその構成員に対し承認事業転換円滑化計画に係る試験研究のための費用に充てるための負担金を賦課した場合において、その構成員が当該負担金を納付したときは、租税特別措置法で定めるところにより、当該負担金について試験研究費の額が増加した場合等の課税の特例の適用があるものとする。
3 承認特定商工組合等が、承認事業転換円滑化計画で定める賦課の基準に基づいてその構成員に対し賦課した負担金の全部又は一部をもつて、承認事業転換円滑化計画に係る試験研究の用に直接供する固定資産を取得し、又は製作したときは、租税特別措置法で定めるところにより、所得の金額の計算について特別の措置を講ずる。
第三章 緊急経営安定対策
(認定)
第九条 特定中小企業者は、事業の転換を行おうとすることその他の事情のため緊急に経営の安定を図る必要がある場合には、次の各号の一に該当することについてその住所地を管轄する都道府県知事の認定を受けることができる。
一 第二条第二項第一号の規定により主務大臣が指定する業種のうち、最近の貿易事情その他の国際経済に係る事情の急激な変化であつて政令で定めるものにより、その業種に属する事業の目的物たる物品若しくはこれを使用した物品の輸出が減少し、若しくは減少する見通しがあり、又はその業種に属する事業の目的物たる物品に対する需要がこれと競争関係にある物品の輸入の増加により減少し、若しくは減少する見通しがあるため、当該事業を行う相当数の特定中小企業者の事業活動に支障を生じていると認められる業種として主務大臣が指定するものに属する事業を行い、かつ、主務省令で定める基準に該当するものであること。
二 第二条第二項第一号の規定により主務大臣が指定する業種であつて前号の規定により主務大臣が指定する業種以外のもの及び同項第二号の規定により主務大臣が地域を限つて指定する業種のうち、次の要件に該当する業種として主務大臣が地域を限つて指定するものに属する事業を行い、かつ、主務省令で定める基準に該当するものであること。
イ その業種に属する事業の事業活動の一部が特定の地域に集中して行われていること。
ロ 前号の政令で定める変化により、その地域内においてその業種に属する事業を行う事業者の事業の目的物たる物品若しくはこれを使用した物品の輸出が減少し、若しくは減少する見通しがあり、又はその地域内においてその業種に属する事業を行う事業者の事業の目的物たる物品に対する需要がこれと競争関係にある物品の輸入の増加により減少し、若しくは減少する見通しがあるため、その地域内において当該事業を行う相当数の特定中小企業者の事業活動に支障を生じていると認められること。
三 前二号の規定により主務大臣が指定する業種以外の業種に属する事業を行う特定中小企業者であつて、第一号の政令で定める変化により、その事業の目的物たる物品若しくはこれを使用した物品の輸出が減少し、若しくは減少する見通しがあり、若しくはその事業の目的物たる物品に対する需要がこれと競争関係にある物品の輸入の増加により減少し、若しくは減少する見通しがあり、又はその事業につきこれらに準ずる事態として政令で定める事態が生じたため、その事業活動に支障を生じていると認められ、かつ、主務省令で定める基準に該当するものであること。
2 主務大臣は、前項第二号の規定による指定をしようとするときは、当該地域を管轄する都道府県知事の意見を聴かなければならない。
3 第一項の認定の申請は、主務省令で定める日までに行われなければならない。
4 第三条第四項の規定は、第一項の認定について準用する。
(中小企業近代化資金等助成法による貸付金の償還期間の延長)
第十条 都道府県は、中小企業近代化資金等助成法(昭和三十一年法律第百十五号)第三条第一項に規定する貸付けに係る貸付金であつて、前条第一項の認定を受けた特定中小企業者(以下「認定特定中小企業者」という。)に対しこの法律の施行の日前に貸し付けたもの(同法第三条第一項第二号の貸与機関が同日前に認定特定中小企業者に対しその事業の用に供する設備を譲り渡し、又は貸し付けた場合における当該設備の譲渡し又は貸付けに充てるための資金として当該貸与機関に貸し付けたものを含む。)については、同法第五条の規定にかかわらず、その償還期間を三年を超えない範囲内において延長することができる。
(国際経済関連保証についての中小企業信用保険法の特例)
第十一条 普通保険、無担保保険又は特別小口保険の保険関係であつて、国際経済関連保証(中小企業信用保険法第三条第一項、第三条の二第一項又は第三条の三第一項に規定する債務の保証であつて、認定特定中小企業者がその経営の安定を図るのに必要な資金に係るもの又は第二条第一項第六号に掲げる者(認定特定中小企業者であるもの又はその構成員の三分の二以上が認定特定中小企業者であるものに限る。)がその構成員たる認定特定中小企業者に対してその経営の安定を図るのに必要な資金を貸し付けるために必要な資金に係るもので、政令で定める日までに受けたものをいう。以下同じ。)を受けた中小企業者に係るものについての次の表の上欄に掲げる同法の規定の適用については、これらの規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。
第三条第一項
保険価額の合計額が
特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法第十一条第一項に規定する国際経済関連保証(以下「国際経済関連保証」という。)に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ
第三条の二第一項、第三条の三第一項
保険価額の合計額が
国際経済関連保証に係る保険関係の保険価額の合計額とその他の保険関係の保険価額の合計額とがそれぞれ
第三条の二第三項、第三条の三第二項
当該保証をした
国際経済関連保証及びその他の保証ごとに、それぞれ当該保証をした
当該債務者
国際経済関連保証及びその他の保証ごとに、当該債務者
2 普通保険の保険関係であつて、国際経済関連保証に係るものについての中小企業信用保険法第三条第二項及び同法第五条の規定の適用については、同法第三条第二項中「百分の七十」とあり、及び同法第五条中「百分の七十(無担保保険、特別小口保険、公害防止保険、エネルギー対策保険及び新技術企業化保険にあつては、百分の八十)」とあるのは、「百分の八十」とする。
3 普通保険、無担保保険又は特別小口保険の保険関係であつて、国際経済関連保証に係るものについての保険料の額は、中小企業信用保険法第四条の規定にかかわらず、保険金額に年百分の二以内において政令で定める率を乗じて得た額とする。
4 認定特定中小企業者が、昭和六十一年一月三十一日から第九条第一項の認定を受けた日(同項の認定を第一項の政令で定める日以後に受けたときは、その政令で定める日)までの間に、その経営の安定を図るのに必要な資金につき中小企業信用保険法第三条第一項、第三条の二第一項又は第三条の三第一項に規定する債務の保証を受けたときは、その債務の保証を国際経済関連保証とみなして、前三項の規定を適用する。
(欠損金の繰戻しによる法人税の還付)
第十二条 認定特定中小企業者について欠損金が生じた場合には、租税特別措置法で定めるところにより、法人税法による法人税の欠損金の繰戻しによる還付の措置の適用があるものとする。
第四章 その他の特定中小企業者に対する措置等
(近代化施策の推進)
第十三条 国及び都道府県は、特定中小企業者が行う事業の転換を円滑にするための措置及び特定中小企業者に対する経営の安定を図るための緊急の措置と併せて、特定中小企業者の国際経済環境等の変化への適応を円滑にするため、技術の研究開発の推進、人材の養成その他の中小企業の近代化の促進に必要な措置を適切に講ずるよう努めるものとする。
(資金の確保)
第十四条 国は、承認特定中小企業者が承認事業転換計画に従つて事業の転換を行うのに必要な資金、承認特定商工組合等が承認事業転換円滑化計画に従つて事業転換円滑化事業を実施するのに必要な資金及び認定特定中小企業者がその経営の安定を図るのに必要な資金の確保に努めるものとする。
(雇用の安定等)
第十五条 国は、特定中小企業者が貿易構造その他の経済的事情の著しい変化により事業活動の縮小を余儀なくされた場合においては、その特定中小企業者の雇用する労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 国及び都道府県は、特定中小企業者が事業の転換を行う場合又は事業活動の縮小を余儀なくされた場合においては、その特定中小企業者に雇用されていた労働者について、職業訓練の実施、就職のあつせんその他その者の職業及び生活の安定に資するため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(指導及び助言)
第十六条 国及び都道府県は、承認特定中小企業者又は認定特定中小企業者に対し、その事業の転換の実施について必要な指導及び助言を行なうものとする。
2 国及び都道府県は、特定商工組合等又は特定中小企業者に対し、特定商工組合等が行うその構成員たる中小企業者の事業の転換の円滑化を図るための事業又は特定中小企業者が国際経済環境等の変化に適応するための事業を円滑に行うことができるよう必要な指導及び助言を行うものとする。
(産地への配慮)
第十七条 国及び都道府県は、特定中小企業者に対する施策の実施に当たつては、同一の業種に属する相当数の特定中小企業者が集中しており、近年における貿易構造その他の経済的事情の著しい変化又は最近の貿易事情その他の国際経済に係る事情の急激な変化によりこれらの特定中小企業者が事業活動に支障を生じているため経済活動が衰退している地域について、特にその施策の推進に配慮するものとする。
(国際経済環境等の考慮)
第十八条 国及び都道府県は、この法律に基づく事業転換対策、緊急経営安定対策その他の措置を実施するに当たつては、これらの措置が必要とされる国際経済環境その他の経済環境を考慮し、特定中小企業者がこれらの環境の変化に即してその事業の転換その他の事業を適切に実施することができるように努めるものとする。
第五章 雑則
(報告の徴収)
第十九条 都道府県知事は、承認特定中小企業者又は承認特定商工組合等に対し、承認事業転換計画又は承認事業転換円滑化計画の実施状況について報告を求めることができる。
(事務の委任)
第二十条 この法律の規定により都道府県知事の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、市町村長又は特別区の長に委任することができる。
(主務大臣等)
第二十一条 この法律における主務大臣は、次のとおりとする。
一 第二条第二項の規定による業種の指定に関する事項については、当該業種に属する事業を所管する大臣
二 第九条第一項の規定による業種の指定に関する事項については、通商産業大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣
2 この法律における主務省令は、通商産業大臣及び中小企業者の事業を所管する大臣の発する命令とする。
(罰則)
第二十二条 第十九条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(この法律の失効)
第二条 この法律は、この法律の施行の日から起算して七年を経過した日に、その効力を失う。ただし、第三章の規定は、昭和六十三年三月三十一日限り、その効力を失う。
2 前項の規定にかかわらず、この法律の施行の日から起算して七年を経過した時までに第七条の規定の適用を受けて成立している保険関係については、なお従前の例によるものとし、その時までにした行為に対する罰則の適用については、この法律は、その時以後も、なおその効力を有する。
3 第一項の規定にかかわらず、昭和六十三年三月三十一日までに第十一条の規定の適用を受けて成立している保険関係については、なお従前の例による。
(中小企業事業転換対策臨時措置法の廃止)
第三条 中小企業事業転換対策臨時措置法(昭和五十一年法律第八十四号)は、廃止する。
(中小企業事業転換対策臨時措置法の廃止に伴う経過措置)
第四条 前条の規定による廃止前の中小企業事業転換対策臨時措置法(以下「旧事業転換法」という。)第三条第一項の認定を受けた中小企業者に関する計画の変更の認定及び取消し、転換関連保証についての中小企業信用保険法の特例並びに報告の徴収については、なお従前の例による。
2 旧事業転換法附則第四条の規定は、この法律の施行後も、なおその効力を有する。
3 この法律の施行前にした行為及び第一項の規定により従前の例によることとされる報告の徴収に係る行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(地方税法の一部改正)
第五条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第五百八十六条第二項第十三号を次のように改める。
十三 特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法(昭和六十一年法律第四号)第三条第一項の規定による承認を受けた同法第二条第二項に規定する特定中小企業者が当該承認に係る同法第三条第一項の事業転換計画に従つて行う事業の転換後の事業の用に供する土地
附則第三十二条の三第四項中「中小企業事業転換対策臨時措置法第三条第一項の規定による認定を受けた同項の計画」を「特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法第三条第一項の規定による承認を受けた同項の事業転換計画」に、「認定計画」を「承認事業転換計画」に、「昭和六十一年十二月十四日」を「昭和六十三年三月三十一日」に改める。
(地方税法の一部改正に伴う経過措置)
第六条 前条の規定による改正前の地方税法第五百八十六条第二項第十三号に規定する旧事業転換法第三条第一項の規定による認定を受けた同項の計画(次項において「認定計画」という。)に係る事業の転換後の事業の用に供する土地又はその取得に対して課する特別土地保有税については、なお従前の例による。
2 前条の規定による改正前の地方税法附則第三十二条の三第四項に規定する認定計画に係る事業の転換後の事業及び認定計画に基づく事業の転換のための事業の用に供する施設に係る地方税法第七百一条の三十二第一項に規定する事業に係る事業所税及び同条第二項に規定する新増設に係る事業所税については、なお従前の例による。
(産地中小企業対策臨時措置法の一部改正)
第七条 産地中小企業対策臨時措置法(昭和五十四年法律第五十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第三項第三号を次のように改める。
三 事業の転換にあつては、特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法(昭和六十一年法律第四号)第二条第二項に規定する特定中小企業者であつて同法第三条第一項の主務省令で定める基準に該当するものが行うものであり、かつ、その計画が同条第三項の政令で定める基準に該当するものであること。
(中小企業庁設置法の一部改正)
第八条 中小企業庁設置法(昭和二十三年法律第八十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第七号の五を次のように改める。
七の五 特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法(昭和六十一年法律第四号)の施行に関すること。
内閣総理大臣 中曽根康弘
大蔵大臣 竹下登
厚生大臣 今井勇
農林水産大臣 羽田孜
通商産業大臣 渡辺美智雄
運輸大臣 三塚博
建設大臣 江藤隆美
自治大臣 小沢一郎