日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法
法令番号: 法律第50号
公布年月日: 昭和58年5月20日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

国鉄の経営は年間1兆円の欠損と16兆円の長期債務を抱え危機的状況にある。臨時行政調査会の第三次答申で示された抜本的改革と国鉄再建監理委員会設置の提言を踏まえ、政府は5年以内の事業再建全体構想実現を閣議決定した。本法案は、国鉄事業再建推進のための国の施策と再建監理委員会設置等について定めるものである。効率的な経営形態の確立、長期債務の償還等に関する施策を講じ、総理府に設置する再建監理委員会が重要事項を企画・審議・決定し、内閣総理大臣に意見を述べることができる制度を整備する。

参照した発言:
第98回国会 衆議院 運輸委員会 第4号

審議経過

第98回国会

衆議院
(昭和58年3月22日)
(昭和58年3月22日)
(昭和58年3月25日)
(昭和58年4月5日)
(昭和58年4月6日)
(昭和58年4月12日)
(昭和58年4月13日)
(昭和58年4月15日)
参議院
(昭和58年4月20日)
(昭和58年4月21日)
(昭和58年4月26日)
(昭和58年5月10日)
(昭和58年5月12日)
(昭和58年5月13日)
日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和五十八年五月二十日
内閣総理大臣 中曽根康弘
法律第五十号
日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法
目次
第一章
日本国有鉄道の経営する事業の再建(第一条―第三条)
第二章
日本国有鉄道再建監理委員会(第四条―第十四条)
第三章
補則(第十五条)
附則
第一章 日本国有鉄道の経営する事業の再建
(基本方針)
第一条 国は、日本国有鉄道の経営の現状にかんがみ、昭和五十七年七月三十日に行われた臨時行政調査会の答申を尊重して日本国有鉄道の経営する事業の適切かつ健全な運営を実現するための体制を整備することにより、当該事業の再建を推進するものとする。
(国の施策)
第二条 国は、前条に規定する体制整備を図るため、次に掲げる事項に関し必要な施策を講ずるものとする。
一 日本国有鉄道の経営する事業に関する効率的な経営形態の確立及び当該経営形態の下における適正な運営の確保に関すること。
二 日本国有鉄道の長期の資金に係る債務の償還等に関することその他前号に掲げる事項の実施の円滑化に関すること。
(緊急に講ずべき措置)
第三条 国及び日本国有鉄道は、第一条に規定する体制整備に資するため、日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために緊急に措置を講ずる必要があると認められる事項に関し、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(昭和五十五年法律第百十一号)に基づく措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
第二章 日本国有鉄道再建監理委員会
(設置)
第四条 第二条の国の施策の策定及びその計画的かつ円滑な実施に資するため、総理府に、日本国有鉄道再建監理委員会(以下「委員会」という。)を置く。
(所掌事務)
第五条 委員会は、次に掲げる事項に関し、企画し、審議し、及び決定し、その決定に基づいて内閣総理大臣に意見を述べる。
一 日本国有鉄道の経営する事業に関する効率的な経営形態の確立及び当該経営形態の下における適正な運営の確保のために必要な重要事項に関すること。
二 日本国有鉄道の長期の資金に係る債務の償還等に関する事項その他前号に掲げる事項の実施の円滑化のために必要な重要事項に関すること。
2 委員会は、第三条の規定により講ぜられるべき措置であつて前項各号に掲げる事項に密接に関連するものの基本的な実施方針に関し、内閣総理大臣に意見を述べることができる。
3 委員会は、その所掌事務を遂行するに当たつては、第一条の基本方針に従い、これを行うものとする。
(意見の尊重)
第六条 内閣総理大臣は、委員会から前条第一項又は第二項の意見を受けたときは、これを尊重しなければならない。
(通知)
第七条 内閣総理大臣は、第五条第一項又は第二項の意見を受けて講ぜられる施策又は措置の内容及びこれらの実施状況に関し、必要に応じ、委員会に通知するものとする。
(勧告)
第八条 委員会は、必要があると認めるときは、第五条第一項又は第二項の意見を受けて講ぜられる施策又は措置に関し、内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告することができる。
(組織)
第九条 委員会は、委員五人をもつて組織する。
(委員)
第十条 委員は、優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
2 前項の場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、同項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができる。
3 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員を罷免しなければならない。
4 内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認める場合又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。
5 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
6 委員は、非常勤とする。
(委員長)
第十一条 委員会に、委員長を置き、委員の互選によつてこれを定める。
2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
3 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(資料の提出その他の協力等)
第十二条 委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び日本国有鉄道総裁に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
2 委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、日本国有鉄道の経営する事業の運営状況を調査し、又は委員にこれを調査させることができる。
(事務局)
第十三条 委員会の事務を処理させるため、委員会に、事務局を置く。
2 事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置く。
3 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。
(政令への委任)
第十四条 この章に定めるもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。
第三章 補則
(施策の実施)
第十五条 第一条に規定する体制整備を図るための施策は、昭和六十二年七月三十一日までに講ぜられるものとする。
附 則
(施行期日等)
1 この法律は、公布の日から起算して四月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第十条第一項の規定中両議院の同意を得ることに関する部分は、公布の日から施行する。
2 附則第五項の規定による改正後の日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)附則第四項の規定は、日本国有鉄道の昭和五十九年度の予算から適用する。
(総理府設置法の一部改正)
3 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第十五条第一項の表臨時行政調査会の項の次に次のように加える。
日本国有鉄道再建監理委員会
日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法(昭和五十八年法律第五十号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
4 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十九号の七の次に次の一号を加える。
十九の八 日本国有鉄道再建監理委員会委員
(日本国有鉄道法の一部改正)
5 日本国有鉄道法の一部を次のように改正する。
附則に次の一項を加える。
(日本国有鉄道再建監理委員会への付議)
4 運輸大臣は、第三十九条の二第一項の規定により日本国有鉄道から提出を受けた毎事業年度の予算について同条第二項の規定による調整を開始しようとするときは、当該予算及び当該事業年度の事業計画、資金計画その他予算の参考となる事項の内容について、日本国有鉄道再建監理委員会の意見を聴かなければならない。
(日本国有鉄道経営再建促進特別措置法の一部改正)
6 日本国有鉄道経営再建促進特別措置法の一部を次のように改正する。
附則第一条の次に次の一条を加える。
(日本国有鉄道再建監理委員会への付議)
第一条の二 運輸大臣は、第四条第五項の変更の承認又は第七条の経営改善計画の変更の指示をしようとするときは、日本国有鉄道再建監理委員会の意見を聴かなければならない。
内閣総理大臣 中曽根康弘
運輸大臣 長谷川峻