雇用保険法等の一部を改正する法律
法令番号: 法律第43号
公布年月日: 昭和52年5月20日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

経済成長率の低下に伴う景気変動や産業構造の変化が雇用に与える影響が増大することが予想される中、従来の失業者対策から進んで、積極的な失業予防による労働者の雇用安定確保が重要課題となっている。このため、雇用安定事業の実施とその財源確保のための雇用安定資金の設置等について関係審議会に諮り、その答申に基づき本法案を提案した。主な内容は、雇用保険事業の一環として雇用安定事業を新設し、事業活動縮小時の休業助成や教育訓練への支援を行うほか、事業主負担の保険料率引き上げ、雇用安定資金の設置等を行うものである。

参照した発言:
第80回国会 衆議院 本会議 第10号

審議経過

第80回国会

衆議院
(昭和52年3月11日)
(昭和52年3月15日)
(昭和52年4月6日)
(昭和52年4月13日)
(昭和52年4月19日)
(昭和52年4月19日)
参議院
(昭和52年4月22日)
(昭和52年4月26日)
(昭和52年5月12日)
(昭和52年5月13日)
雇用保険法等の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和五十二年五月二十日
内閣総理大臣 福田赳夫
法律第四十三号
雇用保険法等の一部を改正する法律
(雇用保険法の一部改正)
第一条 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)の一部を次のように改正する。
目次中「第四章 雇用改善事業、能力開発事業及び雇用福祉事業(第六十二条―第六十五条)」を「第四章 雇用安定事業等(第六十一条の二―第六十五条)」に改める。
第一条中「資するため」の下に「、失業の予防」を加える。
第三条中「行うほか」の下に「、雇用安定事業」を加える。
「第四章 雇用改善事業、能力開発事業及び雇用福祉事業」を「第四章 雇用安定事業等」に改める。
第四章中第六十二条の前に次の一条を加える。
(雇用安定事業)
第六十一条の二 政府は、被保険者及び被保険者であつた者(以下この章において「被保険者等」という。)に関し、景気の変動その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合における失業の予防その他雇用の安定を図るため、雇用安定事業として、次の事業を行うことができる。
一 事業活動の縮小を余儀なくされ、その雇用する労働者を休業させる事業主に対して、当該休業に必要な助成及び援助を行うこと。
二 事業活動の縮小を余儀なくされる間においてその雇用する労働者に職業に関する教育訓練を受けさせる事業主に対して、当該教育訓練に必要な助成及び援助を行うこと。
三 前二号に掲げるもののほか、被保険者等の雇用の安定を図るために必要な事業であつて、労働省令で定めるものを行うこと。
2 政府は、前項に規定する事業のほか、被保険者等に関し、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業の転換又は事業規模の縮小(以下この項において「事業転換等」という。)を余儀なくされた場合における失業の予防その他雇用の安定を図るため、雇用安定事業として、次の事業を行うことができる。
一 事業転換等を余儀なくされ、当該事業転換等に伴い必要となる教育訓練をその雇用する労働者に受けさせる事業主に対して、当該教育訓練に必要な助成及び援助を行うこと。
二 事業転換等を余儀なくされ、当該事業転換等のための施設又は設備の設置、整備等に伴いその雇用する労働者を休業させる事業主に対して、当該休業に必要な助成及び援助を行うこと。
三 前二号に掲げるもののほか、被保険者等の雇用の安定を図るために必要な事業であつて、労働省令で定めるものを行うこと。
3 前二項に規定する事業の実施に関して必要な基準は、労働省令で定める。この場合において、前項各号に掲げる事業の対象となる事業主をその行う事業の属する業種の種別により定めようとするときは、あらかじめ、労働大臣は、当該業種に属する事業を所管する大臣と協議するものとする。
第六十二条第一項中「被保険者及び被保険者であつた者(以下この章において「被保険者等」という。)」を「被保険者等」に改め、同項第四号を削り、同項第五号中「前各号」を「前三号」に改め、同号を同項第四号とする。
第六十五条中「前三条の」を「第六十一条の二から前条までの規定による」に改める。
第六十六条第三項第三号中「千分の三」を「千分の三・五」に、「三事業率」を「四事業率」に改め、同条第四項第一号ロ中「三事業率」を「四事業率」に改める。
第六十八条第二項中「三事業率」を「四事業率」に改め、「得た額は」の下に「、雇用安定事業」を加える。
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正)
第二条 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)の一部を次のように改正する。
第十二条第四項中「千分の十三」を「千分の十三・五」に、「千分の十五」を「千分の十五・五」に改め、同条第五項中「並びに雇用改善事業、能力開発事業及び雇用福祉事業に要した費用の額(翌年度への繰越額を含む。)の合計額」を削り、「千分の十一から千分の十五まで」を「千分の十一・五から千分の十五・五まで」に、「千分の十三から千分の十七まで」を「千分の十三・五から千分の十七・五まで」に改め、同条第六項中「、同項第三号の事業に係る一般保険料の額の総額」を「と第一項第三号の事業に係る一般保険料の額の総額とを合計した額から当該合計した額に四事業率(千分の三・五の率を雇用保険率で除して得た率をいう。同条第一項において同じ。)を乗じて得た額を減じた額」に改める。
第三十条第一項第一号ロ中「千分の三の率を雇用保険率で除して得た率(次号において「三事業率」という。)」を「四事業率」に改め、同項第二号ロ中「三事業率」を「四事業率」に改める。
(労働保険特別会計法の一部改正)
第三条 労働保険特別会計法(昭和四十七年法律第十八号)の一部を次のように改正する。
第五条中「一般会計からの受入金」の下に「、雇用安定資金からの受入金」を、「積立金からの受入金」の下に「、雇用安定資金から生ずる収入」を、「失業給付費」の下に「、雇用安定事業費」を、「繰入金」の下に「、第八条の二第一項の規定による雇用安定資金への繰入金」を加える。
第八条の次に次の二条を加える。
(雇用安定資金の設置)
第八条の二 雇用勘定に雇用安定資金を置き、同勘定からの繰入金及び第十八条第三項の規定による組入金をもつてこれに充てる。
2 前項に規定する雇用勘定からの繰入金は、予算の定めるところにより、繰り入れるものとする。
3 雇用安定資金は、雇用安定事業費及び前条の規定による雇用勘定からの徴収勘定への繰入金(労働保険料の返還金の財源に充てるための額に相当する額の繰入金に限る。)を支弁するため必要があるときは、予算の定めるところにより、使用することができる。
(雇用安定資金の経理方法)
第八条の三 雇用安定資金の受払は、大蔵大臣の定めるところにより、雇用勘定の歳入歳出外として経理するものとする。
第九条に次の一項を加える。
3 雇用勘定にあつては、前項の書類のほか、当該年度の雇用安定資金の増減に関する計画表を添付しなければならない。
第十一条第二項中「及び同条第二項」を「並びに同条第二項及び第三項」に、「添附」を「添付」に改める。
第十六条に次の一項を加える。
3 雇用勘定にあつては、前項の書類のほか、当該年度の雇用安定資金の増減に関する実績表を添付しなければならない。
第十七条第二項中「及び同条第二項」を「並びに同条第二項及び第三項」に、「添附」を「添付」に改める。
第十八条の見出し中「剰余金」を「剰余金等」に改め、同条第一項中「又は雇用勘定」を削り、「、これを当該各勘定」を「これを同勘定」に、「なければならない」を「、不足を生じたときは同勘定の積立金からこれを補足するものとする」に改め、同条第二項を次のように改める。
2 雇用勘定において、毎会計年度の歳入額(雇用安定事業、雇用改善事業、能力開発事業及び雇用福祉事業に係る歳入額(次項において「四事業費充当歳入額」という。)を控除した残りの額とする。)から当該年度の歳出額(雇用安定事業、雇用改善事業、能力開発事業及び雇用福祉事業に係る歳出額(次項において「四事業費充当歳出額」という。)を控除した残りの額とする。)を控除して残余があるときはこれを同勘定の積立金として積み立て、不足があるときは同勘定の積立金からこれを補足するものとする。
第十八条中第三項を第四項とし、第二項の次に次の一項を加える。
3 雇用勘定において、毎会計年度の四事業費充当歳入額から当該年度の四事業費充当歳出額を控除して残余があるときはこれを雇用安定資金に組み入れ、不足があるときは雇用安定資金からこれを補足するものとする。
第十九条中「、雇用改善事業費、能力開発事業費及び雇用福祉事業費並びに」を「及び」に改める。
第二十一条の見出し中「積立金」を「雇用安定資金及び積立金」に改め、同条中「労災勘定」を「雇用安定資金並びに労災勘定」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、昭和五十二年十月一日から施行する。ただし、第一条中雇用保険法第六十六条第三項第三号の改正規定(「千分の三」を「千分の三・五」に改める部分に限る。)、第二条中労働保険の保険料の徴収等に関する法律第十二条第四項の改正規定及び同条第五項の改正規定(「千分の十一から千分の十五まで」を「千分の十一・五から千分の十五・五まで」に改める部分及び「千分の十三から千分の十七まで」を「千分の十三・五から千分の十七・五まで」に改める部分に限る。)、次条第一項の規定並びに附則第五条中建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和五十一年法律第三十三号)附則第四条から第六条までの改正規定は、昭和五十三年四月一日から施行する。
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正に伴う経過措置)
第二条 第二条の規定による改正後の労働保険の保険料の徴収等に関する法律(次項において「新徴収法」という。)第十二条第四項の規定は、昭和五十三年四月一日以後の期間に係る労働保険料について適用し、同日前の期間に係る労働保険料については、なお従前の例による。
2 昭和五十三年三月三十一日までの間は、新徴収法第十二条第六項中「千分の三・五」とあるのは、「千分の三」とする。
(労働保険特別会計法の一部改正に伴う経過措置)
第三条 この法律の施行の際における労働保険特別会計の雇用勘定に所属する積立金の額のうち第一条の規定による改正前の雇用保険法第六十八条第二項の規定により雇用改善事業、能力開発事業及び雇用福祉事業に要する費用に充てるものとされていた額に相当する額は、雇用安定資金に組み入れるものとする。
(その他の経過措置の政令への委任)
第四条 前二条に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
(建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部改正)
第五条 建設労働者の雇用の改善等に関する法律の一部を次のように改正する。
第九条第一項中「第六十二条第一項」を「第六十一条の二第一項」に改める。
第十条中「三事業率」を「四事業率」に改める。
附則第四条のうち、労働保険の保険料の徴収等に関する法律第十二条の改正規定中「千分の十五」を「千分の十五・五」に、「千分の十六」を「千分の十六・五」に、「千分の十三から千分の十七まで」を「千分の十三・五から千分の十七・五まで」に、「千分の十四から千分の十八まで」を「千分の十四・五から千分の十八・五まで」に、「改める」を「改め、同条第六項中「千分の三・五の率」の下に「(第四項第三号に掲げる事業については、千分の四・五の率)」を加える」に改め、同法第三十条第一項第一号ロの改正規定を削る。
附則第五条第一項中「並びに第三十条第一項」を削る。
附則第六条のうち、雇用保険法第六十六条第三項第三号の改正規定中「千分の三」を「千分の三・五」に、「千分の四」を「千分の四・五」に改める。
(労働省設置法の一部改正)
第六条 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第四条第四十号中「基づいて」の下に「、雇用安定事業」を加える。
大蔵大臣 坊秀男
労働大臣 石田博英
内閣総理大臣 福田赳夫