石炭鉱山保安臨時措置法
法令番号: 法律第194号
公布年月日: 昭和36年11月7日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

最近の炭鉱における重大災害の続発を受け、人命尊重の観点から、より徹底した保安対策が必要となった。衆参両院での炭鉱災害防止決議や中央鉱山保安協議会等の意見を踏まえ、政府は鉱山保安確保のための具体的対策を閣議決定した。本法案は、中小炭鉱の実情に即した抜本的施策として、石炭鉱山の実態を総合的に調査し、その結果に基づいて保安設備の整備促進を図るとともに、保安確保が困難な炭鉱に対して円滑な廃業を促す措置を講じることを目的としている。また、廃業に伴う労働者保護や賃金・鉱害賠償債務の処理についても規定し、さらに保安確保が困難な炭鉱の再開を防止する措置も盛り込んでいる。これらの緊急対策として、2年間の時限立法とする。

参照した発言:
第39回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第2号

審議経過

第39回国会

参議院
(昭和36年10月5日)
衆議院
(昭和36年10月7日)
(昭和36年10月12日)
(昭和36年10月17日)
(昭和36年10月18日)
(昭和36年10月19日)
(昭和36年10月20日)
参議院
(昭和36年10月26日)
(昭和36年10月30日)
衆議院
(昭和36年10月31日)
参議院
(昭和36年10月31日)
(昭和36年10月31日)
(昭和36年10月31日)
石炭鉱山保安臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十六年十一月七日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百九十四号
石炭鉱山保安臨時措置法
(目的)
第一条 この法律は、石炭鉱山の実態を総合的に調査して、その保安に関する設備の整備の促進を図るとともに、保安を確保することが困難なため鉱業を廃止する石炭鉱山に対しその廃止を円滑に行なわせるための措置を講じ、もつて石炭鉱山における保安を確保することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「鉱業権」、「採掘権」又は「租鉱権」とは、石炭を目的とする鉱業権、採掘権又は租鉱権をいい、「鉱業権者」、「採掘権者」又は「租鉱権者」とは、石炭を目的とする鉱業権、採掘権又は租鉱権を有する者をいい、「鉱区」又は「租鉱区」とは、石炭を目的とする鉱業権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区をいう。
2 この法律において「石炭鉱山」とは、石炭鉱業を行なう事業場をいう。
(行為の効力)
第三条 この法律の規定によつてした処分及び採掘権者、租鉱権者又は関係人がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、これらの者の承継人に対しても、その効力を有する。
(調査)
第四条 通商産業大臣は、石炭鉱山における保安を確保するため、この法律の施行の際現に鉱業を行なつている採掘権者又は租鉱権者について、石炭の鉱量及び品位、鉱床の状態その他の自然条件に関する事項、経理的基礎及び技術的能力に関する事項並びに保安に関する設備、保安教育その他の保安に関する事項に関し総合的調査を行なうものとする。
(保安に関する事項の改善の勧告)
第五条 通商産業大臣は、前条の調査の結果に基づき、必要があると認めるときは、採掘権者又は租鉱権者に対し、その石炭鉱山における保安に関する事項の改善に関し勧告をすることができる。
2 採掘権者又は租鉱権者は、前項の勧告を受けたときは、直ちに、その勧告の内容を鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第十九条第一項の規定によりその石炭鉱山に設けられた保安委員会に通知しなければならない。
(鉱業の廃止の勧告)
第六条 通商産業大臣は、第四条の調査の結果に基づき、保安を確保することが困難であると認められる石炭鉱山の採掘権者又は租鉱権者であつて通商産業省令で定める基準に該当するものに対し、その石炭鉱山における鉱業の廃止の勧告をすることができる。
2 前条第二項の規定は、前項の勧告に準用する。
(資金の確保)
第七条 政府は、石炭鉱山における保安に関する設備の整備に必要な資金の確保に努めるものとする。
(石炭鉱山整理交付金の交付)
第八条 国は、政令で定めるところにより、第六条第一項の勧告を受けた採掘権者又は租鉱権者がその石炭鉱山における鉱業を廃止して当該採掘権又は租鉱権の放棄による消滅の登録を受けた場合は、当該採掘権者又は租鉱権者に対し、石炭鉱山整理交付金(以下「交付金」という。)を交付することができる。
2 交付金は、前項の規定によりその交付を受けることとなつた者(以下「廃止事業者」という。)のために、石炭鉱業合理化事業団(以下「事業団」という。)に対し交付するものとする。
(公示)
第九条 通商産業大臣は、廃止事業者に係る採掘権又は租鉱権の消滅の登録が行なわれたときは、すみやかに、当該廃止事業者について交付金を交付する旨及び当該鉱区又は租鉱区に関する鉱害について賠償請求権を有する者は、六十日以上の一定期間内に事業団に対し権利の申出をすべき旨を公示しなければならない。
2 前項の賠償請求権を有する者が同項の期間内に同項の申出をしなかつたときは、当該鉱区又は租鉱区に関する鉱害について有する当該賠償請求権については、次条第一項の規定による債務の弁済を請求することができない。
(債務の弁済)
第十条 事業団は、廃止事業者に代理して、第八条第二項の規定により交付を受けた交付金の額(以下「交付金額」という。)をこえない範囲内において、通商産業省令で定めるところにより、次に掲げる債務の弁済を行なう。
一 廃止事業者が放棄した採掘権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区における石炭の掘採及びこれに附属する選炭その他の業務に従事していた鉱山労働者に対し当該廃止事業者が負担する賃金の支払の債務であつて当該採掘権又は租鉱権を放棄した日までに弁済期の到来しているもの
二 廃止事業者が放棄した採掘権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区に関する鉱害の賠償債務
2 前項の通商産業省令には、同項各号に掲げる債務の弁済が公平に行なわれることを確保するために必要な事項及び同項各号に掲げる債務の合計額が交付金額をこえる場合における同項第一号に掲げる債務が同項第二号に掲げる債務に優先する限度を定めておかなければならない。
3 事業団は、廃止事業者が破産法(大正十一年法律第七十一号)その他の法令の規定によりその債務の弁済を制限されている場合においても、これらの法令の規定にかかわらず、第一項各号に掲げる債務の弁済を行なうことができる。
(交付金の引渡し)
第十一条 事業団は、前条第一項の規定により一の廃止事業者に係る同項各号に掲げる債務の全部を弁済した場合において、当該廃止事業者に係る交付金額に残余があるときは、遅滞なく、通商産業大臣の承認を受けて、その残余に相当する金額を当該廃止事業者に引き渡さなければならない。一の廃止事業者に係る交付金額に残余があることが確実であると認められる場合も、同様とする。
(交付金を受ける権利の保護)
第十二条 廃止事業者が交付金の交付を受ける権利は、譲り渡し、、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、廃止事業者が前条の規定により交付金の引渡しを受ける権利については、この限りでない。
(政令への委任)
第十三条 前五条に規定するもののほか、交付金に関し必要な事項は、政令で定める。
(事業団の業務)
第十四条 事業団は、石炭鉱業合理化臨時措置法(昭和三十年法律第百五十六号)第二十五条第一項に規定する業務のほか、次の業務を行なう。
一 第八条第二項及び第十条第一項の規定による廃止事業者の代理並びに第十一条の規定による交付金の引渡しに関する業務
二 前号の業務に附帯する業務
2 事業団は、石炭鉱業合理化臨時措置法第二十六条第一項の業務の方法には、前項各号に掲げる業務に関する業務の方法を定めておかなければならない。
3 事業団が第八条第二項の規定により交付を受けた交付金を運用した場合に生ずる利子は、第一項各号に掲げる業務の執行に必要な経費にあてるものとする。
4 事業団は、第一項各号に掲げる業務に係る経理については、政令で定めるところにより、その他の経理と区分し、特別の勘定を設けて整理しなければならない。
5 石炭鉱業合理化臨時措置法第五十二条第二項、第五十三条並びに第八十九条第四号及び第五号の規定は、第一項各号に掲げる業務について準用する。
6 第一項各号に掲げる業務は、石炭鉱業合理化臨時措置法第八十九条第二号の規定の適用については、同法第二十五条第一項に規定する業務とみなす。
(鉱業権の設定の出願の不許可等)
第十五条 通商産業局長は、廃止事業者が放棄した採掘権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区の区域について鉱業権の設定若しくは鉱区の増加の出願又は租鉱権の設定若しくは租鉱区の増加の認可の申請があつたときは、当該区域については、その出願を許可し、又はその申請の認可をしてはならない。
2 廃止事業者は、その放棄した採掘権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区の区域と重複する鉱区に係る鉱業権を譲り受けてはならない。
(鉱山労働者に対する金銭の支払)
第十六条 国は、政令で定めるところにより、廃止事業者が放棄した採掘権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区における石炭の掘採及びこれに附属する選炭その他の業務に徒事していた鉱山労働者であつて当該廃止事業者がその石炭鉱山における鉱業を廃止したことにより解雇されたものに対し、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十二条の平均賃金の三十日分に相当する金額を支払わなければならない。
2 前項の規定による支払の義務は、二年を経過したときは、時効により消滅する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して二月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(この法律の失効)
2 この法律は、この法律の施行後二年を経過した日に、その効力を失う。ただし、この法律の失効前に第六条第一項の規定による鉱業の廃止の勧告を受けた採掘権者又は租鉱権者に係る交付金及び当該交付金に係る事業団の業務、廃止事業者が放棄した採掘権若しくは租鉱権の鉱区若しくは租鉱区の区域についての鉱業権の設定若しくは鉱区の増加の出願の許可若しくは租鉱権の設定若しくは租鉱区の増加の申請の認可又は廃止事業者に係る鉱業権の譲受け並びに廃止事業者がその石炭鉱山における鉱業を廃止したことにより解雇された鉱山労働者に対する金銭の支払に関しては、なお従前の例による。
(労働省設置法の一部改正)
3 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第二十二条の表中「二三、四九三人」を「二三、五〇五人」に、「二三、七一〇人」を「二三、七二二人」に改める。
(通商産業省設置法の一部改正)
4 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第五十条第一項の表中「一一、〇六五人」を「一一、一〇五人」に、「一二、三一七人」を「一二、三五七人」に改める。
(石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正)
5 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を次のように改正する。
目次中「坑口の開設」を「坑口の開設等」に改める。
第一条中「坑口の開設」を「坑口の開設等」に改める。
第二条の二第一項中「この法律の規定によつてした処分」を「この法律の規定(第五十四条を除く。以下この条において同じ。)によつてした処分」に改める。
第四章の章名中「坑口の開設」を「坑口の開設等」に改める。
第五十四条の見出しを「(開設の工事等の許可)」に改め、同条に次の一項を加える。
2 鉱業権者又は租鉱権者は、石炭の掘採のために坑口を使用しようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。ただし、次の各号の一に該当するときは、この限りでない。
一 前項の許可を受けて開設された坑口を当該許可を受けた鉱業権者又は租鉱権者が使用するとき。
二 鉱山保安法第二十五条第一項の規定による鉱山保安監督部長の命令に基づいて開設された坑口を当該命令を受けた鉱業権者又は租鉱権者が使用するとき。
第五十五条第一項を次のように改める。
通商産業大臣は、前条第一項の許可の申請があつた場合において、その申請が次の各号に適合すると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 その申請に係る坑口を使用して石炭を掘採しようとする鉱区又は租鉱区の石炭の鉱量、品位その他の自然条件及びその鉱区又は租鉱区の立地条件上その坑口を使用して掘採する石炭の生産能率が通商産業省令で定める基準をこえることとなること。ただし、通商産業省令で定める種類の坑口であつて、現に存する石炭坑における石炭の生産条件を著しく改善することとなるものであるときは、この限りでない。
二 その申請に係る鉱業権者又は租鉱権者が当該鉱区又は租鉱区における保安を確保するに足りる経理的基礎及び技術的能力を有すること。
第五十五条第二項中「前項」を「第一項第一号」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 前項第二号の規定は、前条第二項の許可に準用する。
第五十六条第一項中「坑口の開設の工事をしたとき」を「坑口の開設工事をし、若しくは坑口を使用したとき」に改める。
第八十四条中「坑口の開設の工事をした者」を「坑口の開設の工事をし、又は坑口を使用した者」に改める。
(石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正に伴う経過措置)
6 この法律の施行の際現に石炭の掘採のために使用されている坑口については、当該坑口を石炭の掘採のために使用すべき鉱区又は租鉱区の鉱業権者又は租鉱権者がその使用について改正後の石炭鉱業合理化臨時措置法第五十四条第二項の許可を受けたものとみなす。ただし、同項の許可を受けることを要しない場合については、この限りでない。
法務大臣 植木庚子郎
大蔵大臣 水田三喜男
通商産業大臣 佐藤榮作
労働大臣 福永健司
内閣総理大臣 池田勇人
石炭鉱山保安臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十六年十一月七日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百九十四号
石炭鉱山保安臨時措置法
(目的)
第一条 この法律は、石炭鉱山の実態を総合的に調査して、その保安に関する設備の整備の促進を図るとともに、保安を確保することが困難なため鉱業を廃止する石炭鉱山に対しその廃止を円滑に行なわせるための措置を講じ、もつて石炭鉱山における保安を確保することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「鉱業権」、「採掘権」又は「租鉱権」とは、石炭を目的とする鉱業権、採掘権又は租鉱権をいい、「鉱業権者」、「採掘権者」又は「租鉱権者」とは、石炭を目的とする鉱業権、採掘権又は租鉱権を有する者をいい、「鉱区」又は「租鉱区」とは、石炭を目的とする鉱業権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区をいう。
2 この法律において「石炭鉱山」とは、石炭鉱業を行なう事業場をいう。
(行為の効力)
第三条 この法律の規定によつてした処分及び採掘権者、租鉱権者又は関係人がこの法律の規定によつてした手続その他の行為は、これらの者の承継人に対しても、その効力を有する。
(調査)
第四条 通商産業大臣は、石炭鉱山における保安を確保するため、この法律の施行の際現に鉱業を行なつている採掘権者又は租鉱権者について、石炭の鉱量及び品位、鉱床の状態その他の自然条件に関する事項、経理的基礎及び技術的能力に関する事項並びに保安に関する設備、保安教育その他の保安に関する事項に関し総合的調査を行なうものとする。
(保安に関する事項の改善の勧告)
第五条 通商産業大臣は、前条の調査の結果に基づき、必要があると認めるときは、採掘権者又は租鉱権者に対し、その石炭鉱山における保安に関する事項の改善に関し勧告をすることができる。
2 採掘権者又は租鉱権者は、前項の勧告を受けたときは、直ちに、その勧告の内容を鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第十九条第一項の規定によりその石炭鉱山に設けられた保安委員会に通知しなければならない。
(鉱業の廃止の勧告)
第六条 通商産業大臣は、第四条の調査の結果に基づき、保安を確保することが困難であると認められる石炭鉱山の採掘権者又は租鉱権者であつて通商産業省令で定める基準に該当するものに対し、その石炭鉱山における鉱業の廃止の勧告をすることができる。
2 前条第二項の規定は、前項の勧告に準用する。
(資金の確保)
第七条 政府は、石炭鉱山における保安に関する設備の整備に必要な資金の確保に努めるものとする。
(石炭鉱山整理交付金の交付)
第八条 国は、政令で定めるところにより、第六条第一項の勧告を受けた採掘権者又は租鉱権者がその石炭鉱山における鉱業を廃止して当該採掘権又は租鉱権の放棄による消滅の登録を受けた場合は、当該採掘権者又は租鉱権者に対し、石炭鉱山整理交付金(以下「交付金」という。)を交付することができる。
2 交付金は、前項の規定によりその交付を受けることとなつた者(以下「廃止事業者」という。)のために、石炭鉱業合理化事業団(以下「事業団」という。)に対し交付するものとする。
(公示)
第九条 通商産業大臣は、廃止事業者に係る採掘権又は租鉱権の消滅の登録が行なわれたときは、すみやかに、当該廃止事業者について交付金を交付する旨及び当該鉱区又は租鉱区に関する鉱害について賠償請求権を有する者は、六十日以上の一定期間内に事業団に対し権利の申出をすべき旨を公示しなければならない。
2 前項の賠償請求権を有する者が同項の期間内に同項の申出をしなかつたときは、当該鉱区又は租鉱区に関する鉱害について有する当該賠償請求権については、次条第一項の規定による債務の弁済を請求することができない。
(債務の弁済)
第十条 事業団は、廃止事業者に代理して、第八条第二項の規定により交付を受けた交付金の額(以下「交付金額」という。)をこえない範囲内において、通商産業省令で定めるところにより、次に掲げる債務の弁済を行なう。
一 廃止事業者が放棄した採掘権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区における石炭の掘採及びこれに附属する選炭その他の業務に従事していた鉱山労働者に対し当該廃止事業者が負担する賃金の支払の債務であつて当該採掘権又は租鉱権を放棄した日までに弁済期の到来しているもの
二 廃止事業者が放棄した採掘権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区に関する鉱害の賠償債務
2 前項の通商産業省令には、同項各号に掲げる債務の弁済が公平に行なわれることを確保するために必要な事項及び同項各号に掲げる債務の合計額が交付金額をこえる場合における同項第一号に掲げる債務が同項第二号に掲げる債務に優先する限度を定めておかなければならない。
3 事業団は、廃止事業者が破産法(大正十一年法律第七十一号)その他の法令の規定によりその債務の弁済を制限されている場合においても、これらの法令の規定にかかわらず、第一項各号に掲げる債務の弁済を行なうことができる。
(交付金の引渡し)
第十一条 事業団は、前条第一項の規定により一の廃止事業者に係る同項各号に掲げる債務の全部を弁済した場合において、当該廃止事業者に係る交付金額に残余があるときは、遅滞なく、通商産業大臣の承認を受けて、その残余に相当する金額を当該廃止事業者に引き渡さなければならない。一の廃止事業者に係る交付金額に残余があることが確実であると認められる場合も、同様とする。
(交付金を受ける権利の保護)
第十二条 廃止事業者が交付金の交付を受ける権利は、譲り渡し、、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、廃止事業者が前条の規定により交付金の引渡しを受ける権利については、この限りでない。
(政令への委任)
第十三条 前五条に規定するもののほか、交付金に関し必要な事項は、政令で定める。
(事業団の業務)
第十四条 事業団は、石炭鉱業合理化臨時措置法(昭和三十年法律第百五十六号)第二十五条第一項に規定する業務のほか、次の業務を行なう。
一 第八条第二項及び第十条第一項の規定による廃止事業者の代理並びに第十一条の規定による交付金の引渡しに関する業務
二 前号の業務に附帯する業務
2 事業団は、石炭鉱業合理化臨時措置法第二十六条第一項の業務の方法には、前項各号に掲げる業務に関する業務の方法を定めておかなければならない。
3 事業団が第八条第二項の規定により交付を受けた交付金を運用した場合に生ずる利子は、第一項各号に掲げる業務の執行に必要な経費にあてるものとする。
4 事業団は、第一項各号に掲げる業務に係る経理については、政令で定めるところにより、その他の経理と区分し、特別の勘定を設けて整理しなければならない。
5 石炭鉱業合理化臨時措置法第五十二条第二項、第五十三条並びに第八十九条第四号及び第五号の規定は、第一項各号に掲げる業務について準用する。
6 第一項各号に掲げる業務は、石炭鉱業合理化臨時措置法第八十九条第二号の規定の適用については、同法第二十五条第一項に規定する業務とみなす。
(鉱業権の設定の出願の不許可等)
第十五条 通商産業局長は、廃止事業者が放棄した採掘権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区の区域について鉱業権の設定若しくは鉱区の増加の出願又は租鉱権の設定若しくは租鉱区の増加の認可の申請があつたときは、当該区域については、その出願を許可し、又はその申請の認可をしてはならない。
2 廃止事業者は、その放棄した採掘権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区の区域と重複する鉱区に係る鉱業権を譲り受けてはならない。
(鉱山労働者に対する金銭の支払)
第十六条 国は、政令で定めるところにより、廃止事業者が放棄した採掘権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区における石炭の掘採及びこれに附属する選炭その他の業務に徒事していた鉱山労働者であつて当該廃止事業者がその石炭鉱山における鉱業を廃止したことにより解雇されたものに対し、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十二条の平均賃金の三十日分に相当する金額を支払わなければならない。
2 前項の規定による支払の義務は、二年を経過したときは、時効により消滅する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して二月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
(この法律の失効)
2 この法律は、この法律の施行後二年を経過した日に、その効力を失う。ただし、この法律の失効前に第六条第一項の規定による鉱業の廃止の勧告を受けた採掘権者又は租鉱権者に係る交付金及び当該交付金に係る事業団の業務、廃止事業者が放棄した採掘権若しくは租鉱権の鉱区若しくは租鉱区の区域についての鉱業権の設定若しくは鉱区の増加の出願の許可若しくは租鉱権の設定若しくは租鉱区の増加の申請の認可又は廃止事業者に係る鉱業権の譲受け並びに廃止事業者がその石炭鉱山における鉱業を廃止したことにより解雇された鉱山労働者に対する金銭の支払に関しては、なお従前の例による。
(労働省設置法の一部改正)
3 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第二十二条の表中「二三、四九三人」を「二三、五〇五人」に、「二三、七一〇人」を「二三、七二二人」に改める。
(通商産業省設置法の一部改正)
4 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。
第五十条第一項の表中「一一、〇六五人」を「一一、一〇五人」に、「一二、三一七人」を「一二、三五七人」に改める。
(石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正)
5 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を次のように改正する。
目次中「坑口の開設」を「坑口の開設等」に改める。
第一条中「坑口の開設」を「坑口の開設等」に改める。
第二条の二第一項中「この法律の規定によつてした処分」を「この法律の規定(第五十四条を除く。以下この条において同じ。)によつてした処分」に改める。
第四章の章名中「坑口の開設」を「坑口の開設等」に改める。
第五十四条の見出しを「(開設の工事等の許可)」に改め、同条に次の一項を加える。
2 鉱業権者又は租鉱権者は、石炭の掘採のために坑口を使用しようとするときは、通商産業大臣の許可を受けなければならない。ただし、次の各号の一に該当するときは、この限りでない。
一 前項の許可を受けて開設された坑口を当該許可を受けた鉱業権者又は租鉱権者が使用するとき。
二 鉱山保安法第二十五条第一項の規定による鉱山保安監督部長の命令に基づいて開設された坑口を当該命令を受けた鉱業権者又は租鉱権者が使用するとき。
第五十五条第一項を次のように改める。
通商産業大臣は、前条第一項の許可の申請があつた場合において、その申請が次の各号に適合すると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 その申請に係る坑口を使用して石炭を掘採しようとする鉱区又は租鉱区の石炭の鉱量、品位その他の自然条件及びその鉱区又は租鉱区の立地条件上その坑口を使用して掘採する石炭の生産能率が通商産業省令で定める基準をこえることとなること。ただし、通商産業省令で定める種類の坑口であつて、現に存する石炭坑における石炭の生産条件を著しく改善することとなるものであるときは、この限りでない。
二 その申請に係る鉱業権者又は租鉱権者が当該鉱区又は租鉱区における保安を確保するに足りる経理的基礎及び技術的能力を有すること。
第五十五条第二項中「前項」を「第一項第一号」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 前項第二号の規定は、前条第二項の許可に準用する。
第五十六条第一項中「坑口の開設の工事をしたとき」を「坑口の開設工事をし、若しくは坑口を使用したとき」に改める。
第八十四条中「坑口の開設の工事をした者」を「坑口の開設の工事をし、又は坑口を使用した者」に改める。
(石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正に伴う経過措置)
6 この法律の施行の際現に石炭の掘採のために使用されている坑口については、当該坑口を石炭の掘採のために使用すべき鉱区又は租鉱区の鉱業権者又は租鉱権者がその使用について改正後の石炭鉱業合理化臨時措置法第五十四条第二項の許可を受けたものとみなす。ただし、同項の許可を受けることを要しない場合については、この限りでない。
法務大臣 植木庚子郎
大蔵大臣 水田三喜男
通商産業大臣 佐藤栄作
労働大臣 福永健司
内閣総理大臣 池田勇人