国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律
法令番号: 法律第236号
公布年月日: 昭和28年8月18日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

引揚者以外の在外国民が、経済的困窮や退去強制処分により帰国を余儀なくされる場合、自己負担での帰国が困難な際に、領事官が帰国援助等の措置を行うことを定める法律である。平和条約発効後、政府による援助措置が必要な在外国民の事例が発生し、今後も増加が予想されることから、援助措置の内容や費用償還等について法的整備が必要となった。

参照した発言:
第16回国会 衆議院 外務委員会 第6号

審議経過

第16回国会

衆議院
(昭和28年6月24日)
参議院
(昭和28年6月25日)
衆議院
(昭和28年7月4日)
(昭和28年7月7日)
参議院
(昭和28年7月14日)
(昭和28年7月16日)
(昭和28年7月20日)
衆議院
(昭和28年8月10日)
参議院
(昭和28年8月10日)
国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年八月十八日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百三十六号
国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律
(この法律の目的)
第一条 この法律は、生活の困窮のため帰国を希望する日本国民又は在留する国の官憲から退去強制等の処分を受けて帰国しなければならない日本国民で、自己の負担において帰国することができず、且つ、領事官がその帰国を援助し、又はその退去強制等の処分の執行に関し当該国の官憲に協力する必要があると認めるもの(以下「帰国者」という。)について、船員法(昭和二十二年法律第百号)第四十七条に規定する場合を除く外、領事官がその帰国のため講ずべき措置等を定めることを目的とする。
(船長に対する送還命令)
第二条 領事官は、帰国者が船舶(船員法第一条に規定する船舶をいう。以下同じ。)により帰国する場合には、当該船舶に乗り組む船長に対し、帰国者の本邦までの送還を命ずることができる。
(帰国費の貸付)
第三条 領事官は、前条の規定により船長に対し帰国者の送還を命ずることができない場合には、帰国者に対し、外務大臣の承認を経て、その帰国のため必要な旅費(以下「帰国費」という。)を貸し付けることができる。
2 前項の規定により帰国費の貸付を受けようとする帰国者は、政令で定めるところにより、領事官に対し、帰国費の貸付を申請しなければならない。
3 第一項の規定において帰国費とは、領事官の駐在する国から本邦までの船賃、航空賃、鉄道賃、車賃並びに旅行中必要と認められる宿泊料及び食費で、帰国者が帰国するため必要な最低限度のものをいい、当該国から帰国のため出発するまでの間において帰国者の生活又は医療処置のため必要があると認められる場合にあつては、帰国者のその間における生活費又は緊急を要する医療処置のため必要な最低限度の費用を含むものとする。
(帰郷費の貸付)
第四条 厚生大臣は、帰国者に対し、その帰国の際、政令で定めるところにより、その帰郷のため必要な旅費(以下「帰郷費」という。)を貸し付けることができる。
(帰国費及び帰郷費に対する利息)
第五条 第三条第一項の規定により貸し付ける帰国費及び前条の規定により貸し付ける帰郷費には、利息を附さないことができる。
(帰国費、送還費及び帰郷費の償還)
第六条 第三条の規定により帰国費の貸付を受けた帰国者は、帰国後すみやかに、その貸付を受けた帰国費を外務大臣に償還しなければならない。
2 第二条の規定により本邦に送還された帰国者は、帰国後すみやかに、その送還に要した費用(以下「送還費」という。)を、当該船舶の船舶所有者(船員法の適用を受ける船舶所有者をいう。以下同じ。)に償還しなければならない。
3 第四条の規定により帰郷費の貸付を受けた帰国者は、帰郷後すみやかに、その貸付を受けた帰郷費を厚生大臣に償還しなければならない。
4 帰国者が帰国費、送還費又は帰郷費の全部又は一部を償還することができないときは、その帰国者の扶養義務者(民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百七十七条に規定する扶養義務者をいう。以下同じ。)は、その帰国費、送還費又は帰郷費のうち償還されなかつた部分を償還しなければならない。
5 前項に規定する場合には、外務大臣、船舶所有者又は厚生大臣は、帰国者の扶養義務者中の何人に対しても、それぞれ帰国費、送還費又は帰郷費の償還の請求をすることができる。
6 前項の規定は、第四項の規定により帰国費、送還費又は帰郷費を償還した扶養義務者が、民法第八百七十八条及び第八百七十九条の規定により扶養の義務を履行すべき者に対し求償することを妨げるものではない。
7 外務大臣は、船舶所有者が第二項、第四項及び第五項の規定により帰国者又はその扶養義務者から送還費の全部又は一部の償還を受けることができなかつた場合には、改令で定めるところにより、その帰国者又はその扶養義務者に代つて、その船舶所有者に対し、償還されなかつた金額を償還することができる。
8 外務大臣は、前項の規定により、送還費の全部又は一部を船舶所有者に償還したときは、その償還した金額の限度において、船舶所有者に代位するものとする。
(帰国費、送還費又は帰郷費の償還請求権の整理)
第七条 外務大臣が前条第一項、第四項及び第五項の規定により帰国費の償還を受けることができなかつた場合若しくは同条第八項の規定により船舶所有者に代位した場合又は厚生大臣が同条第三項、第四項及び第五項の規定により帰郷費の償還を受けることができなかつた場合において、外務大臣又は厚生大臣は、帰国者又はその扶養義務者が無資力のため、帰国費若しくは送還費又は帰郷費を償還することが著しく困難であると認めるときは、それぞれ当該帰国費若しくは送還費又は帰郷費の償還請求権を、分割して定期に返済させる貸付金債権(以下「定期貸債権」という。)又はそれらの者の資力が回復した時に返済させる貸付金債権(以下「すえ置貸債権」という。)とすることができる。
2 租税債権及び貸付金債権以外の国の債権の整理に関する法律(昭和二十六年法律第百九十七号)第三条第一項、第四条第一項及び第五条から第七条までの規定は、前項の規定により定期貸債権又はすえ置貸債権とされた帰国費若しくは送還費又は帰郷費の償還請求権の整理について、準用する。
(実施規定)
第八条 この法律の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、政令で定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 領事官の職務に関する法律(明治三十二年法律第七十号)は、廃止する。
3 船員法の一部を次のように改正する。
第十七条第二項を削る。
外務大臣 岡崎勝男
大蔵大臣 小笠原三九郎
厚生大臣 山県勝見
運輸大臣 石井光次郎
内閣総理大臣 吉田茂