(目的)
第一條 この法律は、中小企業の占める重要性が極めて高い工業部門について、製品の需給が著しく均衡を失した場合において、適切な需給調整措置を講ずることができるようにし、もつて中小企業の安定を確保し、国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
(適用業種の指定及び中小企業者の定義)
第二條 この法律の適用を受ける業種は、工業部門に属する業種であつて、当該業種に属する事業を営む者の総数のおおむね三分の二以上が中小企業者であり、且つ、当該業種に係る製品(加工品を含む。以下同じ。)の過去一年間の総生産数量のおおむね二分の一以上が中小企業者によつて生産されている業種について、左の各号に掲げる事態が生じた場合に、別表において指定するものとする。
一 当該業種に係る製品の価格がその原材料の価格に照して著しく低いため、当該業種に属する事業の経営において相当の損失が生じていること。
二 当該業種に属する事業の経営の不振が相当長期間にわたる虞があり、企業の合理化のみによつてはこれを克服することが困難であり、当該業種に係る産業及び関連産業の存立に重大な影響を及ぼす虞があること。
2 この法律で「中小企業者」とは、常時使用する従業員の数が三百人以下の事業者をいう。
(調整組合)
第三條 別表に掲げる業種(以下「指定業種」という。)に属する事業を営む者は、その共同の利益を増進するため、調整組合を組織することができる。
(原則)
第五條 調整組合は、左の要件を備えなければならない。
二 組合員が任意に加入し又は脱退することができること。
(名称)
第六條 調整組合は、その名称中に調整組合という文字を用いなければならない。
2 調整組合でない者は、その名称中に調整組合という文字を用いてはならない。
(地区の重複禁止)
第七條 調整組合の地区は、相互に重複するものがあつてはならない。但し、業種を異にするものは、この限りでない。
(組合員の資格)
第八條 調整組合の組合員たる資格を有する者は、組合の地区内において指定業種に属する事業を営む者とする。
(組合の構成要件)
第九條 調整組合は、その組合員の総数がその地区内において定款で定める組合員たる資格に係る業種に属する事業を営む者の総数の二分の一以上であり、且つ、その総組合員の三分の二以上が中小企業者であるものでなければ、これを設立することができない。
(設立の認可)
第十條 発起人は、創立総会の終了後遅滞なく、定款その他必要な事項を記載した書類を通商産業大臣に提出して、設立の認可を受けなければならない。
2 通商産業大臣は、前項の認可の申請があつた場合において、設立しようとする調整組合が左の各号に適合していると認めるときは、認可をしなければならない。
一 第二條第一項各号に掲げる事態を克服するためその設立が必要であること。
四 設立手続及び定款の内容が法令に違反しないこと。
五 その地区及び構成がその事業を行うのに適正なものであること。
(定款)
第十一條 調整組合の定款には、少くとも左に掲げる事項を記載しなければならない。
2 調整組合の定款には、前項の事項の外、調整組合の存立時期又は解散の事由を定めたときは、その時期又は事由を記載しなければならない。
(定款の変更)
第十二條 定款の変更は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(合併)
第十三條 調整組合の合併は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(解散)
第十四條 通商産業大臣は、調整組合が左の各号の一に該当すると認めるときは、その調整組合の解散を命ずることができる。
2 通商産業大臣が調整組合の解散を命じた場合における第二十八條において準用する中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第八十八條の規定による解散の登記は、通商産業大臣の嘱託によつてする。
(事業)
第十五條 調整組合は、左に掲げる事業を行うことができる。
一 組合員が生産(製造又は加工をいう。)をする指定業種に係る製品の生産数量若しくは出荷数量又はその生産設備に関する制限
二 組合員の事業(指定業種に係るものに限る。)の経営の合理化に関する指導及びあつ旋
三 組合員に対する生産調整及び経営合理化のための資金の貸付並びに組合員のためにするその借入
四 前三号に掲げる事業を行うために必要な調査、研究、製品の検査その他の事業
(調整規定の認可)
第十六條 調整組合は、前條第一号に掲げる事業を行おうとするときは、調整規程(制限の内容及びその実施に関する定をいう。以下同じ。)を定めて通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 通商産業大臣は、前項の認可の申請があつた場合において、当該調整規程の内容が左の各号の一に該当すると認めるときは、認可をしてはならない。
一 第二條第一項各号に掲げる事態を克服するための必要且つ最小限度の範囲をこえること。
(調整規程の実施の予告)
第十七條 調整組合の組合員たる事業主は、調整規程の実施の期日の少くとも十五日前に、その従業員に対し、当該調整規程の実施について予告をしなければならない。但し、緊急やむを得ない場合は、この限りでない。
(調整規程の変更命令及び認可の取消)
第十八條 通商産業大臣は、第十六條第一項の認可をした後において、当該調整規程の内容が同條第二項各号の一に該当するに至つたと認めるときは、当該調整組合に対し、これを変更すべきことを命じなければならない。
2 通商産業大臣は、第十六條第一項の認可をした後において、当該調整組合が前項の命令に従わないとき、又は当該調整規程の内容が同條第二項各号の一に該当するに至つたと認めるときは、同條第一項の認可を取り消すことができる。
(調整規程の廃止の届出)
第十九條 調整組合は、調整規程を廃止したときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。
(過怠金)
第二十條 調整組合は、定款の定めるところにより、第十六條第一項の認可を受けた調整規程に違反した組合員に対し、過怠金を課することができる。
(検査員)
第二十一條 調整組合は、定款の定めるところにより、調整規程の実施を検査するために、検査員を置くことができる。
2 検査員は、前項の規定により検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(調整規程の設定等に関する決議)
第二十二條 調整規程の設定、変更又は廃止は、総会の決議によらなければならない。
2 前項の決議は、総組合員の半数以上が出席し、その三分の二以上の多数をもつてしなければならない。
(離職従業員の優先雇用)
第二十三條 調整組合の組合員たる事業主は、調整規程の実施がその従業員の離職を招来した場合においては、その後の従業員の採用については、当該離職者の希望によりその者を優先的に雇い入れるように努めなければならない。
(調整組合連合会)
第二十四條 同一の業種に係る調整組合は、調整組合連合会(以下「連合会」という。)を組織することができる。
(連合会の会員の議決権及び選挙権)
第二十五條 連合会の会員の議決権及び選挙権は、会員たる調整組合の組合員の員数に応じて、定款で定めるものとする。
(連合会の事業)
第二十六條 連合会は、左に掲げる事業を行うことができる。
一 会員たる調整組合が行うその組合員に対する指定業種に係る製品の生産数量若しくは出荷数量又はその生産設備に関する制限についての総合調整計画の設定及びその実施
二 会員たる調整組合が行う経営の合理化に関する事業の総合調整
三 会員たる調整組合及びその組合員に対する生産調整及び経営合理化のための資金の貸付並びに会員たる調整組合及びその組合員のためにするその借入
四 前三号に掲げる事業を行うために必要な調査、研究、製品の検査その他の事業
(準用)
第二十七條 第四條、第五條(第三号を除く。)、第六條、第十條、第十一條(第一項第三号を除く。)から第十四條まで、第十六條及び第十八條から第二十二條までの規定は、連合会に準用する。この場合において、第二十二條第二項中「総組合員の半数以上」とあるのは「議決権の総数の半数以上に相当する議決権を有する会員」と、「その三分の二」とあるのは「その議決権の三分の二」と読み替えるものとする。
(生産数量等の制限に関する勧告及び命令)
第二十九條 同一の業種に属する事業を営む者の大部分が一の連合会の総合調整計画又は一の調整組合の調整規程の適用を受けることとなつた場合において、当該連合会又は調整組合の申出があつたときは、通商産業大臣は、左の各号の一に掲げる事態が生じ、且つ、かような事態を放置しては当該業種に係る産業及びその関連産業の存立に及ぼす重大な悪影響を除去することができないと認めるときに限り、当該総合調整計画又は調整規程の内容を参しやくして当該業種に係る製品の生産数量若しくは出荷数量又はその生産設備に関する制限を定め、当該業種に属する事業を営む者のすべてに対し、これに従うべき旨の勧告をすることができる。
一 当該業種に属する事業者で当該総合調整計画又は調整規程の適用を受けないものの事業活動が当該業種に係る製品の需給調整を阻害しているとき。
二 当該連合会又は調整組合の自主的活動をもつてしては当該業種に係る製品の需給調整の目的を達成することができないとき。
2 通商産業大臣は、前項の勧告をした後において、なお当該業種に係る製品の需給調整の目的が達成されていないと認めるときは、通商産業省令をもつて、当該業種に属する事業の経営に関し、一般的に同項の勧告の内容と同一の内容の制限をすることができる。
3 第一項の勧告は、個々の事業者に対する勧告に代えて、官報をもつて当該業種及び勧告の内容を公告して、これをすることができる。
(公正取引委員会との関係)
第三十條 通商産業大臣は、第十條第一項又は第十三條(第二十七條においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の認可をしようとするときは、あらかじめ、公正取引委員会に協議しなければならない。
2 通商産業大臣は、第十六條第一項(第二十七條において準用する場合を含む。)の認可、第十八條第一項(第二十七條において準用する場合を含む。)の命令又は前條第一項の勧告をしようとするときは、あらかじめ、公正取引委員会の同意を得なければならない。
3 公正取引委員会は、第十六條第一項(第二十七條において準用する場合を含む。)の認可を受けた調整規程又は総合調整計画の内容が第十六條第二項各号の一(第二十七條において準用する場合を含む。)に該当するに至つたと認めるときは、通商産業大臣に対し、第十八條(第二十七條において準用する場合を含む。)の規定による処分をすべき旨を請求することができる。
(報告及び検査)
第三十一條 通商産業大臣は、この法律に規定する権限を実施するため必要な限度において、指定業種に属する事業を営む者若しくはその団体から必要な報告を徴し、又はその職員をしてその事業所若しくは事務所に立ち入り、業務の状況、帳簿書類、設備若しくは製品の検査をさせることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律等の適用除外)
第三十二條 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)及び事業者団体法(昭和二十三年法律第百九十一号)の規定は、調整組合若しくはその組合員又は連合会若しくはその会員が認可を受けた調整規程又は総合調整計画に基いて行う行為及び第二十九條第一項の規程による勧告を受けた者が当該勧告に基いて行う行為には、適用しない。
(中小企業安定審議会)
第三十三條 この法律の規定により通商産業大臣が行う認可、命令及び勧告その他この法律の施行に関する重要事項を調査審議するため、通商産業省に、中小企業安定審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、会長一人及び委員五十人以内で組織する。
3 会長及び委員は、指定業種に属する事業を営む者、指定業種に属する事業の従業員の利益を代表する者、その製品に係る販売業者及び消費者、指定業種に関連する事業を営む者、金融機関の役職員並びに学識経験者のうちから、通商産業大臣が任命する。
4 前各項に定めるものの外、審議会の事務をつかさどる機関、審議会の組織、議事及び運営その他審議会に関し必要な事項は、政令で定める。
(審議会の付議事項)
第三十四條 通商産業大臣は、第十條、第十三條若しくは第十六條第一項(第二十七條においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の認可、第二十九條第一項の勧告又は第十八條第一項(第二十七條において準用する場合を含む。)若しくは第二十九條第二項の命令をしようとするときは、審議会の議に付し、その意見を尊重してこれをしなければならない。
(関係都道府県知事の意見の聴取)
第三十五條 通商産業大臣は、第十六條第一項又は第十八條第一項(第二十七條においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の認可又は命令をしようとする場合において、当該調整規程又は総合調整計画の実施が関係都道府県における産業に著しい影響を及ぼすと認めるときは、あらかじめ、当該都道府県知事の意見を聞かなければならない。
(実施規定)
第三十六條 この法律に規定するものの外、この法律の実施のための手続その他その施行について必要な事項は、通商産業省令で定める。
(罰則)
第三十七條 第二十九條第二項の規定による命令に違反した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第三十八條 第十六條第一項(第二十七條において準用する場合を含む。)の規定による認可を受けないで調整規程又は総合調整計画を実施した調整組合又は連合会の理事は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第三十九條 第三十一條第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は立入を拒み、若しくは検査を妨げた者は、六月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第四十條 第六條第二項(第二十七條において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、三万円以下の罰金に処する。
第四十一條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前四條の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対して、各本條の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。