(目的)
第一條 この法律は、設備を本邦から輸出する者が外国為替相場の変更に伴つて受ける損失を補償する制度を確立することによつて、本邦経済の維持及び発展に寄与する重要物資の輸入の確保に貢献する設備輸出の促進を図ることを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において、左の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 本邦通貨 外国為替及び外国貿易管理法(昭和二十四年法律第二百二十八号。以下「法」という。)第六條第一項第三号に規定する本邦通貨をいう。
二 外国通貨 法第六條第一項第四号に規定する外国通貨をいう。
三 外国為替相場 法第七條第一項に規定する基準外国為替相場又は同條第二項に規定する裁定外国為替相場をいう。
四 設備輸出 設備(船舶及び車両を含む。)並びにその部分品及び附属品で本邦で生産されるものの本邦からの輸出及びこれに伴つてなされる本邦法人又は本邦人からの技術の提供をいう。
五 設備輸出者 設備輸出を行う者をいい、設備輸出に伴う損益がその輸出に係る設備等の製造業者に属する場合には、当該製造業者を含む。
(為替損失補償契約)
第三條 政府は、設備輸出が重要物資の輸入市場を、国際収支上有利な地域に開拓し、又は国際収支上より有利な地域へ転換することに役立つと認められる場合その他政令で定めるこれに準ずる場合においては、設備輸出者を相手方として、その者が当該設備輸出に伴つて受領すべき対価(当該対価のうちに受領期日の異なる部分があるときは、そのそれぞれの受領期日の異なる部分の対価)の全部又は一部につき外国為替相場の変更によつて一定の日において受けるべき損失を補償する契約を締結することができる。
2 設備輸出者は、前項の契約(以下「補償契約」という。)を締結する場合においては、当該契約において、当該契約に係る設備輸出に伴つて受領すべき対価(当該契約に係る部分に限る。以下「補償契約に係る対価」という。)の当該契約の締結の日において定められている受領期日を、同項に規定する一定の日(以下「損失確定予定日」という。)として定めておかなければならない。
3 補償契約を締結する場合においては、その締結の結果、その締結の日から当該契約に定める損失確定予定日までの期間が五年をこえることとなつてはならず、且つ、締結したすべての補償契約についてのそれぞれの補償契約に係る対価を表示する外国通貨の額をそれぞれの補償契約の締結の日における外国為替相場により換算して得た本邦通貨の額の合計額が、百億円をこえることとなつてはならない。
(補償料)
第四條 補償契約を締結した設備輸出者は、補償契約に係る対価を表示する外国通貨の額を当該契約の締結の日における外国為替相場により換算して得た本邦通貨の額(以下「契約締結日における本邦通貨額」という。)に、当該契約の締結の日から当該契約に定められている損失確定予定日までの期間に応じ、外国為替の相場の変動の見込、補償契約に関する国の事務取扱費等を勘案して政令で定める料率を乗じて得た金額に相当する金額を、補償料として国庫に納付しなければならない。
(損失の発生及び補償金の額)
第五條 補償契約に係る対価を表示する外国通貨の額を当該契約に定められている損失確定予定日(当該対価の全部又は一部が当該日前に受領されたときは、その受領された部分については、その受領の日)における外国為替相場により換算して得た本邦通貨の額(以下「損失確定日における本邦通貨額」という。)が当該対価についての契約締結日における本邦通貨額に満たないときは、当該対価について損失が発生したものとし、政府は、当該契約に基いて、その満たない額に相当する金額を補償する。
(為替利益の納付)
第六條 補償契約に係る対価についての損失確定日における本邦通貨額が当該対価についての契約締結日における本邦通貨額をこえるときは、当該契約を締結した設備輸出者は、そのこえる額に相当する金額を国庫に納付しなければならない。
(輸出信用保険法との関係)
第七條 補償契約を締結した設備輸出者が、当該契約に係る設備輸出の契約に関しその者が受ける損失のてん補のための輸出信用保険法(昭和二十五年法律第六十七号)の規定による輸出信用保険の保険金を受け取ることとなつた場合には、前二條の規定は、補償契約に係る対価(当該損失の発生の原因となつた保険事故の生じた部分に限る。)については適用しない。
(補償金の交付並びに補償料及び納付金の納付等の手続)
第八條 第五條の規定による補償金の交付の時期並びに第四條の規定による補償料及び第六條の規定による納付金の納付の時期その他当該交付及び納付に関し必要な手続は、政令で定める。
(損失確定予定日の延期)
第九條 設備輸出者は、その締結した補償契約(当該契約の締結の日から損失確定予定日までの期間が五年に満たないものに限る。)について損失確定予定日を延期しようとするときは、大蔵大臣に対し、その旨の申込をすることができる。
2 大蔵大臣は、補償契約について前項の申込を受けた場合において、必要があると認めたときは、その申込に応ずることができる。この場合において、その申込に応じた結果、当該契約の締結の日から損失確定予定日までの期間が五年をこえることとなつてはならない。
(補償契約の解除)
第十條 補償契約に係る設備輸出の契約が当該補償契約を締結した設備輸出者の責に帰することのできない事由により解除された場合又は補償契約に係る対価を当該契約を締結した設備輸出者の責に帰することのできない事由により損失確定予定日までに受領することができないことが明らかになつた場合においては、大蔵大臣は、当該補償契約の解除の申込に応ずることができる。
(外国為替の売予約の禁止)
第十一條 補償契約を締結した設備輸出者は、補償契約に係る対価について外国為替の売予約を行つてはならない。
(制裁)
第十二條 大蔵大臣は、設備輸出者がこの法律、この法律に基く命令若しくは法の規定又は補償契約の條項に違反したときは、補償金の全部若しくは一部を支払わず、その全部若しくは一部を返還させ、又は補償契約を解除することができる。
(補償契約の解除の効力)
第十三條 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百二十條(賃貸借の解除の効力)の規定は、第十條及び前條に規定する補償契約の解除について準用する。
(不服の申立)
第十四條 設備輸出者は、第五條の規定による補償金、第四條の規定による補償料若しくは第六條の規定による納付金の額の決定又は第十二條の規定による措置について不服があるときは、大蔵大臣に対し、その旨を申し立てることができる。
2 大蔵大臣は、不服の申立を受けたときは、大蔵省令で定める手続に従い、公開による聴聞を行い、申立を受けた日から五十日以内に決定し、申立人に対してその旨を通知しなければならない。
(事務の一部委任)
第十五條 大蔵大臣は、政令で定めるところにより、補償契約の締結に関する事務その他この法律の規定に基く事務の一部を日本輸出入銀行に取り扱わせることができる。
2 日本輸出入銀行は、日本輸出入銀行法(昭和二十五年法律第二百六十八号)第十八條の規定にかかわらず、前項の事務を行うことができる。