(施設又は区域内の逮捕等)
第十條 合衆国軍隊の使用する施設又は区域内における逮捕、勾引状又は勾留状の執行その他人身を拘束する処分は、合衆国軍隊の権限ある者の承認を受けて行い、又は検察官若しくは司法警察職員からその合衆国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。
(施設又は区域外で逮捕された合衆国軍隊要員の引渡)
第十一條 検察官又は司法警察員は、合衆国軍隊の使用する施設又は区域外で逮捕された者が合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族(以下「合衆国軍隊要員」という。)であることを確認したときは、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定にかかわらず、直ちに被疑者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。
2 司法警察員は、前項の規定により被疑者を合衆国軍隊に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、すみやかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。
(合衆国軍隊によつて逮捕された者の受領)
第十二條 検察官又は司法警察員は、行政協定第十七條第三項(b)又は(c)による引渡の通知があつた場合には、裁判官の発する逮捕状を示して被疑者の引渡を受け、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその引渡を受けさせなければならない。
2 検察官又は司法警察員は、引き渡されるべき者が日本国の法令による罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があつて、急速を要し、あらかじめ裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げてその者の引渡を受け、又は受けさせなければならない。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。
3 前二項の場合を除く外、検察官又は司法警察員は、引き渡される者を受け取つた後、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による引渡があつた場合には、刑事訴訟法第百九十九條の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。但し、同法第二百三條、第二百四條及び第二百五條第二項に規定する時間は、引渡があつた時から起算する。
(施設又は区域内の差押、捜索等)
第十三條 合衆国軍隊の使用する施設若しくは区域内における、又は合衆国軍隊の財産についての捜索(捜索状の執行を含む。以下同じ。)、差押(差押状の執行を含む。以下同じ。)又は検証は、合衆国軍隊の権限ある者の承認を受けて行い、又は検察官若しくは司法警察員からその合衆国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。但し、裁判所又は裁判官が必要とする検証の嘱託は、その裁判所又は裁判官からするものとする。
2 合衆国軍隊の使用する施設又は区域外にある合衆国軍隊要員の身体又は財産についても、前項と同様である。但し、被疑者を逮捕するため捜索する場合、逮捕の現場で差押、捜索若しくは検証をする場合、又は行政協定第十七條第三項(a)に従つて逮捕することができる合衆国軍隊要員についてその事件の証拠を収集するため差押、捜索若しくは検証をする場合は、この限りでない。
(日本国の法令による罪に係る事件についての捜査)
第十四條 行政協定により合衆国軍事裁判所が裁判権を行使する事件であつても、日本国の法令による罪に係る事件については、検察官、検察事務官又は司法警察職員(鉄道公安職員を含む。)は、捜査をすることができる。
2 前項の捜査に関しては、裁判所又は裁判官は、令状の発付その他刑事訴訟に関する法令に定める権限を行使することができる。
(証人の出頭等の義務)
第十五條 合衆国軍事裁判所の嘱託により、裁判官から合衆国軍事裁判所に証人として出頭すべき旨を命ぜられ、又は合衆国軍事裁判所において宣誓若しくは証言を求められた者は、これに応じなければならない。
2 前項の者が、正当な理由がないのに、出頭せず、又は宣誓若しくは証言を拒んだときは、一万円以下の過料に処する。
(証人の勾引についての協力)
第十六條 正当な理由がないのに、前條第一項の規定による裁判官の出頭命令に応じない証人について合衆国軍事裁判所から嘱託があつたときは、裁判官は、その証人に対して勾引状を発して、これを合衆国軍事裁判所に勾引することができる。
2 前項の勾引状には、合衆国軍事裁判所の嘱託の趣旨を記載しなければならない。
3 第一項の勾引状は、検察官の指揮により、司法警察職員が執行する。
4 刑事訴訟法第七十一條及び第七十三條第一項前段の規定は、第一項の規定による勾引に準用する。
(書類又は証拠物の提供等)
第十七條 裁判所、検察官又は司法警察員は、その保管する書類又は証拠物について、合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊から、刑事事件の審判又は捜査のため必要があるものとして申出があつたときは、その閲覧若しくは謄写を許し、謄本を作成して交付し、又はこれを一時貸与し、若しくは引き渡すことができる。
(日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件についての協力)
第十八條 検察官又は司法警察員は、合衆国軍隊から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、合衆国軍隊要員の逮捕の要請を受けたときは、これを逮捕し、又は検察事務官若しくは司法警察職員に逮捕させることができる。
2 合衆国軍隊から逮捕の要請があつた者が、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内にいることを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官の許可を得て、その場所に入りその者を捜索することができる。但し、追跡されている者がその場所に入つたことが明らかであつて、急速を要し裁判官の許可を得ることができないときは、その許可を得ることを要しない。
3 第一項の規定により合衆国軍隊要員を逮捕したときは、直ちに検察官又は司法警察員から、その者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。
4 司法警察員は、前項の規定により合衆国軍隊要員を引き渡したときは、その旨を検察官に通報しなければならない。
第十九條 検察官又は司法警察員は、合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、協力の要請を受けたときは、参考人を取り調べ、実況見分をし、又は書類その他の物の所有者、所持者、若しくは保管者にその物の提出を求めることができる。
2 検察官又は司法警察員は、検察事務官又は司法警察職員に前項の処分をさせることができる。
3 前二項の処分に際しては、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、その処分を受ける者に対して合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊の要請による旨を明らかにしなければならない。
4 正当な理由がないのに、第一項又は第二項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の処分を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の過料に処する。
(刑事補償)
第二十條 刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)の適用については、合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊による抑留又は拘禁は、刑事訴訟法による抑留又は拘禁とみなす。