日本証券取引所法
法令番号: 法律第四十四號
公布年月日: 昭和18年3月11日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル日本證券取引所法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十八年三月十日
內閣總理大臣 東條英機
大藏大臣 賀屋興宣
法律第四十四號
日本證券取引所法
第一章 總則
第一條 日本證券取引所ハ國家經濟ノ適切ナル運營ニ資スル爲有價證券ノ公正ナル價格ノ形成及價格ノ安定ニ任ジ且有價證券ノ流通ヲ圓滑ナラシムルコトヲ以テ目的トス
日本證券取引所ハ法人トス
第二條 日本證券取引所ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
日本證券取引所ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ從タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
第三條 日本證券取引所ノ資本金ハ二億圓トシ之ヲ四百萬口ニ分チ一口ノ出資金額ヲ五十圓トス但シ資本金ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第四條 日本證券取引所ハ出資ニ對シ出資證券ヲ發行ス
出資證券ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 政府ハ五千萬圓ヲ限リ日本證券取引所ニ出資スルコトヲ得
前項ノ出資ハ國債證券ヲ交付シテ之ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之ヲ定ム
第六條 日本證券取引所ノ出資者ノ責任ハ其ノ出資額ヲ限度トス
出資者ハ日本證券取引所ニ拂込ムベキ出資額ニ付相殺ヲ以テ之ニ對抗スルコトヲ得ズ
第七條 出資者ハ定款ノ定ムル所ニ依リ其ノ持分ヲ讓渡スコトヲ得
第八條 拂込ヲ怠リタル出資者ニ對シ日本證券取引所ガ一月以上ノ相當ノ期間ヲ定メ拂込ノ請求ヲ爲シタルニ拘ラズ出資者ガ拂込ヲ爲サザルトキハ日本證券取引所ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ出資者ノ持分ヲ處分スルコトヲ得
日本證券取引所ハ持分ノ處分ニ依リテ得タル金額ヨリ滯納金額及定款ヲ以テ定ムル違約金ノ額ヲ控除シタル全額ヲ從前ノ出資者ニ拂戾スベシ
持分ノ處分ニ依リテ得タル金額ガ滯納金額ニ滿タザル場合ニ於テハ日本證券取引所ハ從前ノ出資者ニ對シ不足額ノ辨濟ヲ請求スルコトヲ得
前三項ノ規定ハ日本證券取引所ガ損害賠償及定款ヲ以テ定ムル違約金ノ請求ヲ爲スコトヲ妨ゲズ
出資者ガ第一項ノ期間內ニ拂込ヲ爲サザルトキハ日本證券取引所ハ其ノ出資者ニ對シ二週間以內ニ出資證券ヲ日本證券取引所ニ提出スベキ旨ヲ通知スベシ此ノ場合ニ於テ提出ナキ出資證券ハ其ノ效力ヲ失フ
前項ノ場合ニ於テハ日本證券取引所ハ遲滯ナク失效シタル出資證券ノ番號竝ニ其ノ出資者ノ氏名及住所ヲ公吿スベシ
第九條 日本證券取引所ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名稱
三 事務所ノ所在地
四 資本金額、出資及資產ニ關スル事項
五 役員ニ關スル事項
六 業務及其ノ執行ニ關スル事項
七 會計ニ關スル事項
八 公吿ノ方法
定款ノ變更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第十條 日本證券取引所ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ爲スベシ
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第十一條 日本證券取引所ニ付解散ヲ必要トスル事由發生シタル場合ニ於テ其ノ處置ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 日本證券取引所ニ非ザル者ハ日本證券取引所又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フルコトヲ得ズ
第十三條 民法第四十四條、第五十條、第五十四條及第五十七條竝ニ非訟事件手續法第三十五條第一項ノ規定ハ日本證券取引所ニ之ヲ準用ス
第二章 職員
第十四條 日本證券取引所ニ役員トシテ總裁一人、副總裁二人、理事五人以上、監事二人以上及評議員若干人ヲ置ク
第十五條 總裁ハ日本證券取引所ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副總裁ハ定款ノ定ムル所ニ依リ日本證券取引所ヲ代表シ總裁ヲ輔佐シテ日本證券取引所ノ業務ヲ掌理シ總裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ日本證券取引所ヲ代表シ總裁及副總裁ヲ輔佐シテ日本證券取引所ノ業務ヲ掌理シ總裁及副總裁共ニ事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ總裁及副總裁共ニ缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ日本證券取引所ノ業務ヲ監査ス
評議員ハ日本證券取引所ノ業務ニ關スル重要事項ニ付總裁ノ諮問ニ應ジ又ハ總裁ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
總裁ハ主務大臣ノ定ムル事項ニ付テハ評議員ニ諮問スベシ
第十六條 總裁、副總裁、理事、監事及評議員ハ政府之ヲ命ズ
總裁、副總裁及理事ノ任期ハ四年、監事及評議員ノ任期ハ二年トス
第十七條 總裁ハ從タル事務所ノ業務ニ關シ一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十八條 總裁、副總裁及理事ハ他ノ職業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十九條 日本證券取引所ノ總裁、副總裁、理事、監事及使用人竝ニ命令ヲ以テ定ムル者ハ何人ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ有價證券ヲ賣買取引スル市場(以下有價證券市場ト稱ス)ニ於ケル賣買取引ノ委託ヲ爲シ又ハ取引員トノ間ニ資金ノ供與、損益ノ分配其ノ他取引員ノ營業ニ付特別ノ利害關係ヲ有スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ取引員ノ株式ヲ所有スルハ此ノ限ニ在ラズ
第二十條 日本證券取引所ノ職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト看做ス
前項ノ職員ノ範圍ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三章 業務
第二十一條 日本證券取引所ハ左ノ業務ヲ行フ
一 有價證券市場ノ開設
二 賣出ノ爲ニスル有價證券ノ引受又ハ買入、引受ケ又ハ買入レタル有價證券ノ賣出及有價證券ノ募集又ハ賣出ノ取扱
三 前二號ノ業務ニ附帶スル業務
日本證券取引所ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ業務ノ外日本證券取引所ノ目的達成上必要ナル業務ヲ行フコトヲ得
第二十二條 主務大臣ハ有價證券ノ價格ノ安定ノ爲必要アリト認ムルトキハ日本證券取引所ヲシテ第二十七條第一項ノ規定ニ拘ラズ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ヲ爲サシメ又ハ賣買取引ノ委託ヲ爲サシムルコトヲ得
日本證券取引所ヲシテ前項ノ規定ニ依リ有價證券市場ニ於ケル賣買取引又ハ其ノ委託ヲ爲サシムルニ付必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四章 有價證券市場
第二十三條 有價證券市場ハ日本證券取引所ニ限リ之ヲ開設スルコトヲ得
何人ト雖モ有價證券市場ニ類似ノ施設ヲ爲シ又ハ其ノ施設ニ依リ取引ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十四條 日本證券取引所ハ有價證券市場ヲ開設シ又ハ之ヲ閉鎖セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ市場每ニ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ日本證券取引所ニ對シ有價證券市場ヲ開設シ又ハ之ヲ閉鎖スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第二十五條 日本證券取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ有價證券市場ニ於ケル立會ノ全部又ハ一部ノ停止ヲ爲スコトヲ得
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ日本證券取引所ニ對シ有價證券市場ニ於ケル立會ノ全部又ハ一部ヲ停止スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第二十六條 日本證券取引所ハ有價證券市場ニ於ケル取引物件トシテ上場セントスル有價證券ノ銘柄ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ上場ヲ廢止セントスル有價證券ノ銘柄ニ付亦同ジ
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ日本證券取引所ニ對シ有價證券ノ銘柄ヲ指定シ有價證券市場ニ於ケル取引物件トシテ之ヲ上場シ又ハ之ガ上場ヲ廢止スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第五章 取引員
第二十七條 有價證券市場ニ於ケル賣買取引ハ取引員ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得
取引員タラントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ免許ヲ受クベシ
第二十八條 取引員タル資格ヲ有スル者ハ資本金額ガ勅令ヲ以テ定ムル額以上ノ株式會社ニシテ其ノ資本ノ半額以上及議決權ノ過半數ガ帝國臣民又ハ帝國法人ニ屬スルモノニ限ル
本法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ取消ノ後五年ヲ經過セザル株式會社又ハ株式會社ニシテ其ノ取締役若ハ監査役中左ノ各號ノ一ニ該當スル者アルモノハ取引員タル資格ヲ有セズ
一 帝國臣民ニ非ザル者
二 破產者ニシテ復權ヲ得ザルモノ
三 本法ニ依リ罰金以上ノ刑ニ處セラレ又ハ他ノ法令ニ依リ禁錮以上ノ刑ニ處セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル後五年ヲ經過セザル者
第二十九條 取引員ノ資本ノ半額以上又ハ議決權ノ過半數ガ帝國臣民又ハ帝國法人ニ屬セザルニ至リタルトキハ主務大臣ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
取引員ノ取締役又ハ監査役中前條第二項各號ノ一ニ該當スル者アルニ至リタルトキハ取引員ハ其ノ取締役又ハ監査役ヲ解任スベシ
前項ノ場合ニ於テ取引員ガ一月以內ニ其ノ取締役又ハ監査役ヲ解任セザルトキハ主務大臣ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第三十條 取引員ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ日本證券取引所ニ營業保證金ヲ納付スベシ
第三十一條 取引員ハ左ノ場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
一 商號ヲ變更セントスルトキ
二 資本金額ヲ變更セントスルトキ
三 支店其ノ他ノ本店以外ノ營業所ニ於テ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ取扱ヲ爲シ又ハ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ取扱ヲ爲ス代理店ヲ設置セントスルトキ
四 本店其ノ他有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ取扱ヲ爲ス營業所ノ位置ヲ變更セントスルトキ
第三十二條 取引員ハ有價證券引受業法ニ依リ有價證券引受業ヲ營ミ又ハ有價證券業取締法ニ依リ有價證券業ヲ營ム場合ヲ除クノ外他ノ業務ヲ營マントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十三條 取引員ハ其ノ資本ノ總額ニ達スル迄ハ每決算期ノ利益ノ十分ノ一以上ヲ準備金トシテ積立ツベシ
第三十四條 取引員ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ每營業年度ニ業務報吿書ヲ作成シ每營業年度經過後二月以內ニ之ヲ主務大臣ニ提出スベシ
第三十五條 取引員ハ每營業年度ニ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ貸借對照表ヲ公吿スベシ
第三十六條 主務大臣ハ有價證券ノ公正ナル價格ノ形成若ハ價格ノ安定ノ爲又ハ有價證券ノ流通ヲ圓滑ナラシムル爲必要アリト認ムルトキハ取引員ニ對シ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ニ關シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第三十七條 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ取引員ヨリ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシテ其ノ營業所其ノ他必要ナル場所ニ臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ當該官吏ヲシテ臨檢檢査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
第三十八條 取引員ガ法令若ハ法令ニ基キテ爲ス主務大臣ノ命令若ハ處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害スベキ行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ其ノ營業ノ停止若ハ取締役監査役ノ解任ヲ命ジ又ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第三十九條 主務大臣ハ取引員ノ業務又ハ財產ノ狀況ニ依リ必要アリト認ムルトキハ其ノ營業ノ停止其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
主務大臣ハ前項ノ規定ニ依リ營業ノ停止ヲ命ゼラレタル取引員ニ對シ必要アリト認ムルトキハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第四十條 日本證券取引所ハ有價證券ノ公正ナル價格ノ形成若ハ價格ノ安定ノ爲又ハ有價證券ノ流通ヲ圓滑ナラシムル爲必要アリト認ムルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ取引員ニ對シ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ニ關シ必要ナル指示ヲ爲スコトヲ得
第四十一條 日本證券取引所ハ有價證券市場ノ秩序ヲ保持スル爲必要アリト認ムルトキハ業務規程ノ定ムル所ニ依リ取引員ニ對シ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ差止ヲ爲シ、其ノ營業ノ停止ヲ命ジ又ハ過怠金ヲ課スルコトヲ得
第四十二條 日本證券取引所ハ必要アリト認ムルトキハ取引員ヨリ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ徵スルコトヲ得
第四十三條 取引員營業ヲ廢止シタル後ト雖モ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ結了ノ目的ノ範圍內ニ於テハ其ノ結了ニ至ル迄、監督ノ目的ノ範圍內ニ於テハ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ結了後一月ヲ經過スル迄仍其ノ營業ヲ廢止セザルモノト看做ス取引員解散シ又ハ其ノ免許ガ取消サレタル後亦同ジ
前項ノ場合ニ於テ取引員ノ業務ヲ行フ者ナキトキハ日本證券取引所ハ業務規程ノ定ムル所ニ依リ他ノ取引員ヲシテ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ結了ノ爲必要ナル業務ヲ行ハシムルコトヲ得
第四十四條 取引員ハ第二十八條第二項各號ノ一ニ該當スル者ヲ其ノ支配人其ノ他命令ヲ以テ定ムル使用人ト爲スコトヲ得ズ
第四十五條 何人ト雖モ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ委託ノ代理、媒介又ハ取次ヲ營業ト爲スコトヲ得ズ但シ取引員ガ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ爲シ又ハ取引員ノ代理店主ガ當該取引員ニ對スル有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ委託ノ媒介ヲ爲スハ此ノ限ニ在ラズ
第六章 賣買取引
第四十六條 有價證券市場ニ於ケル賣買取引ハ實物取引及淸算取引ノ二種トス
實物取引ニ在リテハ差金ノ授受ニ依リ其ノ決濟ヲ爲スコトヲ得ズ
有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ期限ハ勅令ヲ以テ定ムル期間ヲ超ユルコトヲ得ズ
第四十七條 日本證券取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ有價證券市場ニ於テ行フ賣買取引ノ種類ニ付主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ日本證券取引所ニ對シ有價證券市場ニ於テ行フ賣買取引ノ種類ニ付必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第四十八條 日本證券取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ニ付取引員ヲシテ賣買證據金及賣買手數料ヲ納付セシムルコトヲ得
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ日本證券取引所ニ對シ賣買證據金又ハ賣買手數料ニ關シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第四十九條 取引員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ受託ニ付委託證據金及委託手數料ヲ徵スルコトヲ得
取引員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ受託ニ關シ受託契約準則ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ取引員ニ對シ委託證據金、委託手數料又ハ受託契約準則ニ關シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第五十條 有價證券市場ニ於ケル賣買取引ニ關スル受渡其ノ他ノ決濟ハ日本證券取引所之ヲ管理ス
前項ノ受渡其ノ他ノ決濟ハ業務規程ノ定ムル所ニ依リ日本證券取引所ヲ經テ之ヲ爲スベシ
第五十一條 日本證券取引所ハ取引員ニシテ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ニ關シ其ノ責任ヲ履行セザルモノアルトキハ業務規程ノ定ムル所ニ依リ其ノ取引員ノ有價證券市場ニ於ケル一切ノ賣買取引ヲ處理スベシ
第五十二條 前條ノ場合ニ於テ同條ノ取引員以外ノ取引員ニ付生ズル損害ハ命令ノ定ムル所ニ依リ日本證券取引所之ガ賠償ノ責ニ任ズ
日本證券取引所ハ前項ノ規定ニ依リ損害ヲ賠償シタルトキハ前條ノ取引員ニ對シ其ノ賠償シタル金額及之ニ要シタル費用ニ付求償權ヲ有ス
第五十三條 日本證券取引所ハ前條第二項ノ求償權其ノ他有價證券市場ニ於ケル賣買取引ニ關シ取引員ニ對シ有スル債權ニ關シ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ取引員ノ賣買證據金及營業保證金ニ付他ノ債權者ニ先チ辨濟ヲ受クルノ權利ヲ有ス
取引員ニ對シ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ委託ヲ爲シタル者ハ當該委託契約ニ基キテ生ズル債權ニ關シ其ノ取引員ノ賣買證據金及營業保證金ニ付他ノ債權者ニ先チ辨濟ヲ受クルノ權利ヲ有ス
第一項ノ規定ニ依ル優先權ハ前項ノ規定ニ依ル優先權ニ對シ優先ノ效力ヲ有ス
第五十四條 取引員ハ委託ヲ受ケタル有價證券市場ニ於ケル賣買取引ニ付有價證券市場ニ於テ其ノ賣付、買付又ハ受渡ヲ爲サズシテ之ヲ爲シタルト同一又ハ類似ノ計算ヲ以テ委託者ニ對シ其ノ決濟ヲ爲スコトヲ得ズ
第五十五條 日本證券取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ有價證券市場ニ於ケル公定相場ヲ決定シ之ヲ公示スベシ
日本證券取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ有價證券市場ニ於ケル各取引員ノ賣買高ヲ公示スベシ
第七章 會計及補助
第五十六條 日本證券取引所ノ事業年度ハ四月ヨリ翌年三月迄トス
第五十七條 日本證券取引所ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ設立ノ時及每事業年度ニ財產目錄、貸借對照表及損益計算書ヲ作成シ設立後及每事業年度經過後二月以內ニ之ヲ主務大臣ニ提出シ承認ヲ受クベシ
第五十八條 日本證券取引所ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ餘裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 國債、地方債其ノ他主務大臣ノ認可ヲ受ケタル有價證券ノ取得
二 大藏省預金部若ハ銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金
第五十九條 日本證券取引所借入金ヲ爲サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六十條 日本證券取引所剩餘金ノ處分ヲ爲サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六十一條 日本證券取引所ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ每事業年度ニ剩餘金ノ十分ノ一以內ヲ準備金トシテ積立ツベシ
第六十二條 日本證券取引所ノ每事業年度ニ於ケル配當シ得ベキ剩餘金額ガ政府以外ノ出資者ノ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ五ノ割合ニ達セザルトキ(剩餘金額ナキトキ及損失ヲ生ジタルトキヲ含ム)ハ政府ハ之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ
每事業年度ニ於ケル配當シ得ベキ剩餘金額ガ政府以外ノ出資者ノ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
前條ノ準備金中損失ノ塡補又ハ配當準備ノ爲積立テタル金額及第六十六條ノ規定ニ依リ積立テタル金額ハ後事業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配當シ得ベキ剩餘金ト看做ス
第六十三條 日本證券取引所ハ每事業年度ニ於ケル配當シ得ベキ剩餘金額(前條第二項ノ規定ニ依リ償還ニ充ツベキ金額アルトキハ之ヲ控除シタル殘額トス以下同ジ)ガ政府以外ノ出資者ノ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過セザルトキハ政府ノ出資ニ對シ剩餘金ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
日本證券取引所ハ每事業年度ニ於ケル配當シ得ベキ剩餘金額ガ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ五ノ割合ニ達セザル場合ニ於テ政府以外ノ出資者ノ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ政府ニ配當スベシ
第六十四條 日本證券取引所ノ每事業年度ニ於ケル剩餘金ノ配當ハ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルコトヲ得ズ
第六十五條 日本證券取引所ハ每事業年度ニ於ケル配當シ得ベキ剩餘金額ガ拂込出資金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ノ四分ノ三ヲ每事業年度經過後二月以內ニ政府ニ納付スベシ
第六十六條 日本證券取引所ハ每事業年度ニ於テ前五條ノ規定ニ依リ剩餘金ノ處分ヲ爲シタル後仍殘餘アルトキハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ準備金トシテ積立ツベシ
第六十七條 日本證券取引所ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ每事業年度ノ事業ノ槪況ヲ公吿スベシ
第六十八條 日本證券取引所ガ第二十一條第一項第二號ノ規定ニ依リ有價證券ヲ買入ルル場合ニ於ケル有價證券ノ移轉ニ付テハ有價證券移轉稅ヲ課セズ
第六十九條 日本證券取引所ガ第六十二條第一項ノ規定ニ依リ受クル補給金ハ命令ノ定ムル所ニ依リ法人稅法ニ依ル所得、營業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依ル利益ノ計算上之ヲ益金ニ算入セズ
第八章 監督
第七十條 日本證券取引所ハ主務大臣之ヲ監督ス
第七十一條 主務大臣ハ日本證券取引所ノ目的達成上特ニ必要アリト認ムルトキハ日本證券取引所ニ對シ必要ナル業務ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ變更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第七十二條 日本證券取引所ハ業務開始ノ際業務規程ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第七十三條 主務大臣ハ日本證券取引所ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第七十四條 主務大臣ハ日本證券取引所監理官ヲ置キ日本證券取引所ノ業務ヲ監視セシム
第七十五條 日本證券取引所監理官ハ何時ニテモ日本證券取引所ノ業務及財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
日本證券取引所監理官ハ何時ニテモ日本證券取引所ニ命ジ業務及財產ノ狀況ヲ報吿セシムルコトヲ得
日本證券取引所監理官ハ日本證券取引所ノ諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ述ブルコトヲ得
第七十六條 日本證券取引所ノ役員ガ法令、定款若ハ法令ニ基キテ爲ス主務大臣ノ命令若ハ處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害スベキ行爲ヲ爲シタルトキハ政府ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第九章 雜則
第七十七條 本法ニ依リ主務大臣ノ行フベキ職權ノ一部ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ日本證券取引所ヲシテ行ハシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ必要ナル經費ハ日本證券取引所ノ負擔トス
第七十八條 日本證券取引所ハ必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ有價證券市場ニ於ケル取引物件トシテ上場セラルル有價證券ヲ發行シタル會社ヨリ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ徵スルコトヲ得
第七十九條 有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ方法其ノ他本法ノ施行ニ關スル重要事項ニ付主務大臣ノ諮問ニ應ズル爲有價證券取引委員會ヲ置ク
有價證券取引委員會ノ組織及權限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十條 本法ニ規定スルモノノ外有價證券市場、取引員、取引員ノ代理店及使用人竝ニ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十章 罰則
第八十一條 有價證券市場ニ於ケル相場ノ變動ヲ圖ル目的ヲ以テ虛僞ノ風說ヲ流布シ、僞計ヲ用ヒ又ハ暴行若ハ脅迫ヲ爲シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十二條 有價證券市場ニ類似ノ施設ヲ爲シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
有價證券市場ニ類似ノ施設ニ依リ取引ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 有價證券市場ニ於ケル相場ヲ僞リテ公示シタル者
二 公示若ハ頒布ノ目的ヲ以テ虛僞ノ相場ヲ記載シタル文書ヲ作成シ又ハ之ヲ頒布シタル者
第八十四條 有價證券市場ニ依ラズシテ有價證券市場ニ於ケル相場ニ依リ差金ノ授受ヲ目的トスル行爲ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
但シ刑法第百八十六條ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
第八十五條 第十九條ノ規定ニ違反シ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ委託ヲ爲シ又ハ取引員トノ間ニ其ノ營業ニ付特別ノ利害關係ヲ生ズルコトヲ目的トスル行爲ヲ爲シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十六條 第三十一條第三號ノ規定ニ違反シ認可ヲ受ケズシテ支店其ノ他ノ本店以外ノ營業所ニ於テ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ取扱ヲ爲シ若ハ有價證券市場ニ於ケル賣買取引ノ取扱ヲ爲ス代理店ヲ設置シタル者又ハ第四十五條ノ規定ニ違反シタル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十七條 當該官吏、有價證券取引委員會ノ會長委員幹事若ハ第二十條ニ規定スル日本證券取引所ノ職員又ハ其ノ職ニ在リタル者本法ニ依ル職務執行ニ關シ知得タル法人又ハ人ノ業務上ノ祕密ヲ漏洩シ又ハ竊用シタルトキハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第三十一條第一號、第二號又ハ第四號ノ規定ニ依リ認可ヲ受クベキ事項ヲ認可ヲ受ケズシテ爲シタル者
二 第三十二條ノ規定ニ違反シ認可ヲ受ケズシテ他ノ業務ヲ營ミタル者
三 第三十三條ノ規定ニ違反シ準備金ヲ積立テザル者
四 第三十四條ノ規定ニ依ル業務報吿書ノ提出ヲ爲サズ又ハ之ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ爲シタル者
五 第三十五條ノ規定ニ違反シ公吿ヲ爲サズ又ハ不正ノ公吿ヲ爲シタル者
六 第三十六條又ハ第三十九條第一項ノ規定ニ依ル主務大臣ノ命令ニ違反シタル者
七 第三十七條第一項又ハ第四十二條ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者
八 第三十七條第一項ノ規定ニ依ル臨檢檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
第八十九條 法人又ハ人ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第八十二條乃至第八十四條、第八十六條又ハ前條第一號乃至第七號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第九十條 第八十二條乃至第八十四條、第八十六條及第八十八條第一號乃至第七號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第九十一條 前二條ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
第九十二條 左ノ場合ニ於テハ日本證券取引所ノ總裁、副總裁、理事、監事又ハ第十七條ノ規定ニ依ル代理人ヲ千圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ行ヒタルトキ
三 第五十八條ノ規定ニ違反シ業務上ノ餘裕金ヲ運用シタルトキ
四 主務大臣ノ命令又ハ處分ニ違反シタルトキ
五 第七十五條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル日本證券取引所監理官ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ命ズル報吿ヲ爲サザルトキ
第九十三條 左ノ場合ニ於テハ前條ニ揭グル者ヲ五百圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ基キテ發スル勅令ニ違反シ登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
二 第五十七條ノ規定ニ依ル書類ヲ作成セザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ又ハ其ノ書類ニ付主務大臣ノ承認ヲ受ケザルトキ
第九十四條 第十二條ノ規定ニ違反シ日本證券取引所又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
附 則
第九十五條 本法施行ノ期日ハ各條ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九十六條 取引所法ニ依ル取引所ニシテ本條ノ規定施行ノ際現ニ存スルモノ(以下舊取引所ト稱ス)ハ第九十七條乃至第百六條ノ規定ニ依リ日本證券取引所ト爲ルモノトス
第九十七條 主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ日本證券取引所ノ設立ニ關スル事務ヲ處理セシム
第九十八條 前條ノ規定ニ依ル設立委員ノ任命アリタル後ハ舊取引所ノ業務ヲ執行スル役員ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ舊取引所ノ常務ニ屬セザル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
舊取引所ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ株券ノ名義書換ヲ停止スベシ
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ舊取引所ニ對シ賣買取引ノ制限其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第九十九條 設立委員ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ舊取引所ノ株式ニ對シ日本證券取引所ノ出資ノ引當ヲ爲シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
主務大臣前項ノ認可ヲ爲サントスルトキハ取引所資產評價委員會ノ議ヲ經ベシ
取引所資產評價委員會ノ組織及權限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百條 前條第一項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第百一條 前條ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ總出資ヨリ政府ノ引受ケタル出資及舊取引所ノ株式ニ引當テタル出資ヲ控除シタル殘餘ノ出資ニ付出資者ヲ募集スベシ
第百二條 設立委員ハ前條ノ募集ヲ終リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ提出シ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク舊取引所ノ株式ニ引當テタル出資以外ノ出資ニ付拂込ヲ爲サシムベシ
第百三條 前條第二項ノ拂込完了シタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク其ノ事務ヲ日本證券取引所總裁ニ引渡スベシ
日本證券取引所總裁ハ前項ノ事務ノ引渡ヲ受ケタルトキハ主タル事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スベシ
日本證券取引所ハ前項ノ登記ヲ爲スニ因リテ成立ス
第百四條 日本證券取引所ノ成立ニ因リ舊取引所ハ之ニ吸收セラルルモノトシ舊取引所ノ權利義務ハ日本證券取引所ニ於テ之ヲ承繼ス
第百五條 舊取引所ノ株式ヲ目的トスル質權ハ第九十九條第一項ノ規定ニ依リ其ノ株式ニ對シ引當テラレタル出資ノ持分又ハ同項ノ規定ニ基キテ發スル勅令ニ依リ交付セラレタル金錢アルトキハ其ノ金錢ノ上ニ存在ス
第百六條 本法ニ規定スルモノノ外日本證券取引所ノ設立ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百七條 日本證券取引所ガ第百四條ノ規定ニ依リ承繼シタル不動產ニ關スル權利ノ取得ニ付登記ヲ受クル場合ニ於テハ其ノ登錄稅ノ額ハ不動產ノ價格ノ千分ノ三トス但シ登錄稅法ニ依リ算出シタル登錄稅ノ額ガ本條ノ規定ニ依リ算出シタル稅額ヨリ少キトキハ其ノ額ニ依ル
第百四條ノ規定ニ依ル舊取引所ヨリ日本證券取引所ヘノ有價證券ノ移轉ニ付テハ有價證券移轉稅ヲ課セズ
第百八條 取引所法ハ有價證券ニ關シテハ之ヲ適用セズ
前項ノ規定施行前ニ爲シタル舊取引所ニ於ケル有價證券ノ賣買取引ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ規定施行前有價證券ニ關スル行爲ニシテ取引所法ノ罰則ヲ適用スベカリシモノニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
第百九條 日本證券取引所成立ノ際現ニ舊取引所ノ有價證券ヲ賣買取引スル取引員タル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ日本證券取引所成立ノ日ヨリ三年ヲ限リ第二十七條第二項ノ規定ニ依リ免許ヲ受ケタル取引員ト看做ス
前項ノ場合ニ於テ同項ノ取引員ガ取引所法第十四條ノ規定ニ依リ舊取引所ニ納付シタル身元保證金ノ處置ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ取引員ニシテ會社ニ非ザルモノガ第二十八條第二項各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキハ主務大臣ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第一項ノ取引員ガ第三十二條ノ規定施行ノ際現ニ有價證券引受業法ニ依リ有價證券引受業ヲ營ミ又ハ有價證券業取締法ニ依リ有價證券業ヲ營ム場合ヲ除クノ外他ノ業務ヲ營ム者ナルトキハ其ノ業務ニ關シテハ同條ノ規定施行ノ日ヨリ六月ヲ限リ同條ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタルモノト看做ス
第四十三條ノ規定ハ第一項ノ取引員ガ死亡シタル場合ニ之ヲ準用ス
第百十條 取引所法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ又ハ除名セラレタル會社ハ第二十八條第二項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ本法ニ依リ免許ヲ取消サレタル者ト看做ス
取引所法ニ依リ罰金以上ノ刑ニ處セラレタル者ハ第二十八條第二項、第二十九條第二項及前條第三項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ本法ニ依リ罰金以上ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
第二十八條第二項及第二十九條第二項ノ規定ハ株式會社ニシテ其ノ取締役又ハ監査役中本法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ又ハ取引所法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ若ハ除名セラレ取消又ハ除名ノ後五年ヲ經過セザル者アルモノニ之ヲ準用ス
取引員ハ取引所法ニ依リ罰金以上ノ刑ニ處セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル後五年ヲ經過セザル者及本法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ又ハ取引所法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ若ハ除名セラレ取消又ハ除名ノ後五年ヲ經過セザル者ヲ其ノ支配人其ノ他命令ヲ以テ定ムル使用人ト爲スコトヲ得ズ
第百十一條 第十二條ノ規定施行ノ際現ニ日本證券取引所又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フル者ハ同條ノ規定施行ノ日ヨリ六月以內ニ其ノ名稱ヲ變更スベシ
第九十四條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ同項ニ揭グル者ニ適用セズ
第百十二條 登錄稅法中左ノ通改正ス
第十九條第七號中「日本銀行、」ノ下ニ「日本證券取引所、」ヲ、「日本銀行法、」ノ下ニ「日本證券取引所法、」ヲ加フ
第百十三條 印紙稅法中左ノ通改正ス
第五條第四號ノ三ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
四ノ四 日本證券取引所ノ發スル出資證券
第百十四條 有價證券業取締法中左ノ通改正ス
第一條第一項中「及戰時金融金庫」ヲ「、戰時金融金庫及日本證券取引所」ニ改ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル日本証券取引所法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十八年三月十日
内閣総理大臣 東条英機
大蔵大臣 賀屋興宣
法律第四十四号
日本証券取引所法
第一章 総則
第一条 日本証券取引所ハ国家経済ノ適切ナル運営ニ資スル為有価証券ノ公正ナル価格ノ形成及価格ノ安定ニ任ジ且有価証券ノ流通ヲ円滑ナラシムルコトヲ以テ目的トス
日本証券取引所ハ法人トス
第二条 日本証券取引所ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
日本証券取引所ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ従タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
第三条 日本証券取引所ノ資本金ハ二億円トシ之ヲ四百万口ニ分チ一口ノ出資金額ヲ五十円トス但シ資本金ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第四条 日本証券取引所ハ出資ニ対シ出資証券ヲ発行ス
出資証券ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 政府ハ五千万円ヲ限リ日本証券取引所ニ出資スルコトヲ得
前項ノ出資ハ国債証券ヲ交付シテ之ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル国債証券ノ交付価格ハ時価ヲ参酌シテ大蔵大臣之ヲ定ム
第六条 日本証券取引所ノ出資者ノ責任ハ其ノ出資額ヲ限度トス
出資者ハ日本証券取引所ニ払込ムベキ出資額ニ付相殺ヲ以テ之ニ対抗スルコトヲ得ズ
第七条 出資者ハ定款ノ定ムル所ニ依リ其ノ持分ヲ譲渡スコトヲ得
第八条 払込ヲ怠リタル出資者ニ対シ日本証券取引所ガ一月以上ノ相当ノ期間ヲ定メ払込ノ請求ヲ為シタルニ拘ラズ出資者ガ払込ヲ為サザルトキハ日本証券取引所ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ出資者ノ持分ヲ処分スルコトヲ得
日本証券取引所ハ持分ノ処分ニ依リテ得タル金額ヨリ滞納金額及定款ヲ以テ定ムル違約金ノ額ヲ控除シタル全額ヲ従前ノ出資者ニ払戻スベシ
持分ノ処分ニ依リテ得タル金額ガ滞納金額ニ満タザル場合ニ於テハ日本証券取引所ハ従前ノ出資者ニ対シ不足額ノ弁済ヲ請求スルコトヲ得
前三項ノ規定ハ日本証券取引所ガ損害賠償及定款ヲ以テ定ムル違約金ノ請求ヲ為スコトヲ妨ゲズ
出資者ガ第一項ノ期間内ニ払込ヲ為サザルトキハ日本証券取引所ハ其ノ出資者ニ対シ二週間以内ニ出資証券ヲ日本証券取引所ニ提出スベキ旨ヲ通知スベシ此ノ場合ニ於テ提出ナキ出資証券ハ其ノ効力ヲ失フ
前項ノ場合ニ於テハ日本証券取引所ハ遅滞ナク失効シタル出資証券ノ番号並ニ其ノ出資者ノ氏名及住所ヲ公告スベシ
第九条 日本証券取引所ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 資本金額、出資及資産ニ関スル事項
五 役員ニ関スル事項
六 業務及其ノ執行ニ関スル事項
七 会計ニ関スル事項
八 公告ノ方法
定款ノ変更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第十条 日本証券取引所ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ為スベシ
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第十一条 日本証券取引所ニ付解散ヲ必要トスル事由発生シタル場合ニ於テ其ノ処置ニ関シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十二条 日本証券取引所ニ非ザル者ハ日本証券取引所又ハ之ニ類似スル名称ヲ用フルコトヲ得ズ
第十三条 民法第四十四条、第五十条、第五十四条及第五十七条並ニ非訟事件手続法第三十五条第一項ノ規定ハ日本証券取引所ニ之ヲ準用ス
第二章 職員
第十四条 日本証券取引所ニ役員トシテ総裁一人、副総裁二人、理事五人以上、監事二人以上及評議員若干人ヲ置ク
第十五条 総裁ハ日本証券取引所ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副総裁ハ定款ノ定ムル所ニ依リ日本証券取引所ヲ代表シ総裁ヲ輔佐シテ日本証券取引所ノ業務ヲ掌理シ総裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ日本証券取引所ヲ代表シ総裁及副総裁ヲ輔佐シテ日本証券取引所ノ業務ヲ掌理シ総裁及副総裁共ニ事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁及副総裁共ニ欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ日本証券取引所ノ業務ヲ監査ス
評議員ハ日本証券取引所ノ業務ニ関スル重要事項ニ付総裁ノ諮問ニ応ジ又ハ総裁ニ対シ意見ヲ述ブルコトヲ得
総裁ハ主務大臣ノ定ムル事項ニ付テハ評議員ニ諮問スベシ
第十六条 総裁、副総裁、理事、監事及評議員ハ政府之ヲ命ズ
総裁、副総裁及理事ノ任期ハ四年、監事及評議員ノ任期ハ二年トス
第十七条 総裁ハ従タル事務所ノ業務ニ関シ一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十八条 総裁、副総裁及理事ハ他ノ職業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十九条 日本証券取引所ノ総裁、副総裁、理事、監事及使用人並ニ命令ヲ以テ定ムル者ハ何人ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ有価証券ヲ売買取引スル市場(以下有価証券市場ト称ス)ニ於ケル売買取引ノ委託ヲ為シ又ハ取引員トノ間ニ資金ノ供与、損益ノ分配其ノ他取引員ノ営業ニ付特別ノ利害関係ヲ有スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ取引員ノ株式ヲ所有スルハ此ノ限ニ在ラズ
第二十条 日本証券取引所ノ職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス
前項ノ職員ノ範囲ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三章 業務
第二十一条 日本証券取引所ハ左ノ業務ヲ行フ
一 有価証券市場ノ開設
二 売出ノ為ニスル有価証券ノ引受又ハ買入、引受ケ又ハ買入レタル有価証券ノ売出及有価証券ノ募集又ハ売出ノ取扱
三 前二号ノ業務ニ附帯スル業務
日本証券取引所ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ業務ノ外日本証券取引所ノ目的達成上必要ナル業務ヲ行フコトヲ得
第二十二条 主務大臣ハ有価証券ノ価格ノ安定ノ為必要アリト認ムルトキハ日本証券取引所ヲシテ第二十七条第一項ノ規定ニ拘ラズ有価証券市場ニ於ケル売買取引ヲ為サシメ又ハ売買取引ノ委託ヲ為サシムルコトヲ得
日本証券取引所ヲシテ前項ノ規定ニ依リ有価証券市場ニ於ケル売買取引又ハ其ノ委託ヲ為サシムルニ付必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四章 有価証券市場
第二十三条 有価証券市場ハ日本証券取引所ニ限リ之ヲ開設スルコトヲ得
何人ト雖モ有価証券市場ニ類似ノ施設ヲ為シ又ハ其ノ施設ニ依リ取引ヲ為スコトヲ得ズ
第二十四条 日本証券取引所ハ有価証券市場ヲ開設シ又ハ之ヲ閉鎖セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ市場毎ニ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ日本証券取引所ニ対シ有価証券市場ヲ開設シ又ハ之ヲ閉鎖スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第二十五条 日本証券取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ有価証券市場ニ於ケル立会ノ全部又ハ一部ノ停止ヲ為スコトヲ得
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ日本証券取引所ニ対シ有価証券市場ニ於ケル立会ノ全部又ハ一部ヲ停止スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第二十六条 日本証券取引所ハ有価証券市場ニ於ケル取引物件トシテ上場セントスル有価証券ノ銘柄ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ上場ヲ廃止セントスル有価証券ノ銘柄ニ付亦同ジ
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ日本証券取引所ニ対シ有価証券ノ銘柄ヲ指定シ有価証券市場ニ於ケル取引物件トシテ之ヲ上場シ又ハ之ガ上場ヲ廃止スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第五章 取引員
第二十七条 有価証券市場ニ於ケル売買取引ハ取引員ニ限リ之ヲ為スコトヲ得
取引員タラントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ免許ヲ受クベシ
第二十八条 取引員タル資格ヲ有スル者ハ資本金額ガ勅令ヲ以テ定ムル額以上ノ株式会社ニシテ其ノ資本ノ半額以上及議決権ノ過半数ガ帝国臣民又ハ帝国法人ニ属スルモノニ限ル
本法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ取消ノ後五年ヲ経過セザル株式会社又ハ株式会社ニシテ其ノ取締役若ハ監査役中左ノ各号ノ一ニ該当スル者アルモノハ取引員タル資格ヲ有セズ
一 帝国臣民ニ非ザル者
二 破産者ニシテ復権ヲ得ザルモノ
三 本法ニ依リ罰金以上ノ刑ニ処セラレ又ハ他ノ法令ニ依リ禁錮以上ノ刑ニ処セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル後五年ヲ経過セザル者
第二十九条 取引員ノ資本ノ半額以上又ハ議決権ノ過半数ガ帝国臣民又ハ帝国法人ニ属セザルニ至リタルトキハ主務大臣ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
取引員ノ取締役又ハ監査役中前条第二項各号ノ一ニ該当スル者アルニ至リタルトキハ取引員ハ其ノ取締役又ハ監査役ヲ解任スベシ
前項ノ場合ニ於テ取引員ガ一月以内ニ其ノ取締役又ハ監査役ヲ解任セザルトキハ主務大臣ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第三十条 取引員ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ日本証券取引所ニ営業保証金ヲ納付スベシ
第三十一条 取引員ハ左ノ場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
一 商号ヲ変更セントスルトキ
二 資本金額ヲ変更セントスルトキ
三 支店其ノ他ノ本店以外ノ営業所ニ於テ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ取扱ヲ為シ又ハ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ取扱ヲ為ス代理店ヲ設置セントスルトキ
四 本店其ノ他有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ取扱ヲ為ス営業所ノ位置ヲ変更セントスルトキ
第三十二条 取引員ハ有価証券引受業法ニ依リ有価証券引受業ヲ営ミ又ハ有価証券業取締法ニ依リ有価証券業ヲ営ム場合ヲ除クノ外他ノ業務ヲ営マントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第三十三条 取引員ハ其ノ資本ノ総額ニ達スル迄ハ毎決算期ノ利益ノ十分ノ一以上ヲ準備金トシテ積立ツベシ
第三十四条 取引員ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ毎営業年度ニ業務報告書ヲ作成シ毎営業年度経過後二月以内ニ之ヲ主務大臣ニ提出スベシ
第三十五条 取引員ハ毎営業年度ニ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ貸借対照表ヲ公告スベシ
第三十六条 主務大臣ハ有価証券ノ公正ナル価格ノ形成若ハ価格ノ安定ノ為又ハ有価証券ノ流通ヲ円滑ナラシムル為必要アリト認ムルトキハ取引員ニ対シ有価証券市場ニ於ケル売買取引ニ関シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第三十七条 主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ取引員ヨリ其ノ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ其ノ営業所其ノ他必要ナル場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第三十八条 取引員ガ法令若ハ法令ニ基キテ為ス主務大臣ノ命令若ハ処分ニ違反シ又ハ公益ヲ害スベキ行為ヲ為シタルトキハ主務大臣ハ其ノ営業ノ停止若ハ取締役監査役ノ解任ヲ命ジ又ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第三十九条 主務大臣ハ取引員ノ業務又ハ財産ノ状況ニ依リ必要アリト認ムルトキハ其ノ営業ノ停止其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
主務大臣ハ前項ノ規定ニ依リ営業ノ停止ヲ命ゼラレタル取引員ニ対シ必要アリト認ムルトキハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第四十条 日本証券取引所ハ有価証券ノ公正ナル価格ノ形成若ハ価格ノ安定ノ為又ハ有価証券ノ流通ヲ円滑ナラシムル為必要アリト認ムルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ取引員ニ対シ有価証券市場ニ於ケル売買取引ニ関シ必要ナル指示ヲ為スコトヲ得
第四十一条 日本証券取引所ハ有価証券市場ノ秩序ヲ保持スル為必要アリト認ムルトキハ業務規程ノ定ムル所ニ依リ取引員ニ対シ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ差止ヲ為シ、其ノ営業ノ停止ヲ命ジ又ハ過怠金ヲ課スルコトヲ得
第四十二条 日本証券取引所ハ必要アリト認ムルトキハ取引員ヨリ其ノ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ徴スルコトヲ得
第四十三条 取引員営業ヲ廃止シタル後ト雖モ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ結了ノ目的ノ範囲内ニ於テハ其ノ結了ニ至ル迄、監督ノ目的ノ範囲内ニ於テハ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ結了後一月ヲ経過スル迄仍其ノ営業ヲ廃止セザルモノト看做ス取引員解散シ又ハ其ノ免許ガ取消サレタル後亦同ジ
前項ノ場合ニ於テ取引員ノ業務ヲ行フ者ナキトキハ日本証券取引所ハ業務規程ノ定ムル所ニ依リ他ノ取引員ヲシテ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ結了ノ為必要ナル業務ヲ行ハシムルコトヲ得
第四十四条 取引員ハ第二十八条第二項各号ノ一ニ該当スル者ヲ其ノ支配人其ノ他命令ヲ以テ定ムル使用人ト為スコトヲ得ズ
第四十五条 何人ト雖モ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ委託ノ代理、媒介又ハ取次ヲ営業ト為スコトヲ得ズ但シ取引員ガ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ為シ又ハ取引員ノ代理店主ガ当該取引員ニ対スル有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ委託ノ媒介ヲ為スハ此ノ限ニ在ラズ
第六章 売買取引
第四十六条 有価証券市場ニ於ケル売買取引ハ実物取引及清算取引ノ二種トス
実物取引ニ在リテハ差金ノ授受ニ依リ其ノ決済ヲ為スコトヲ得ズ
有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ期限ハ勅令ヲ以テ定ムル期間ヲ超ユルコトヲ得ズ
第四十七条 日本証券取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ有価証券市場ニ於テ行フ売買取引ノ種類ニ付主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ日本証券取引所ニ対シ有価証券市場ニ於テ行フ売買取引ノ種類ニ付必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第四十八条 日本証券取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケ有価証券市場ニ於ケル売買取引ニ付取引員ヲシテ売買証拠金及売買手数料ヲ納付セシムルコトヲ得
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ日本証券取引所ニ対シ売買証拠金又ハ売買手数料ニ関シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第四十九条 取引員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ受託ニ付委託証拠金及委託手数料ヲ徴スルコトヲ得
取引員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ受託ニ関シ受託契約準則ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ取引員ニ対シ委託証拠金、委託手数料又ハ受託契約準則ニ関シ必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第五十条 有価証券市場ニ於ケル売買取引ニ関スル受渡其ノ他ノ決済ハ日本証券取引所之ヲ管理ス
前項ノ受渡其ノ他ノ決済ハ業務規程ノ定ムル所ニ依リ日本証券取引所ヲ経テ之ヲ為スベシ
第五十一条 日本証券取引所ハ取引員ニシテ有価証券市場ニ於ケル売買取引ニ関シ其ノ責任ヲ履行セザルモノアルトキハ業務規程ノ定ムル所ニ依リ其ノ取引員ノ有価証券市場ニ於ケル一切ノ売買取引ヲ処理スベシ
第五十二条 前条ノ場合ニ於テ同条ノ取引員以外ノ取引員ニ付生ズル損害ハ命令ノ定ムル所ニ依リ日本証券取引所之ガ賠償ノ責ニ任ズ
日本証券取引所ハ前項ノ規定ニ依リ損害ヲ賠償シタルトキハ前条ノ取引員ニ対シ其ノ賠償シタル金額及之ニ要シタル費用ニ付求償権ヲ有ス
第五十三条 日本証券取引所ハ前条第二項ノ求償権其ノ他有価証券市場ニ於ケル売買取引ニ関シ取引員ニ対シ有スル債権ニ関シ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ取引員ノ売買証拠金及営業保証金ニ付他ノ債権者ニ先チ弁済ヲ受クルノ権利ヲ有ス
取引員ニ対シ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ委託ヲ為シタル者ハ当該委託契約ニ基キテ生ズル債権ニ関シ其ノ取引員ノ売買証拠金及営業保証金ニ付他ノ債権者ニ先チ弁済ヲ受クルノ権利ヲ有ス
第一項ノ規定ニ依ル優先権ハ前項ノ規定ニ依ル優先権ニ対シ優先ノ効力ヲ有ス
第五十四条 取引員ハ委託ヲ受ケタル有価証券市場ニ於ケル売買取引ニ付有価証券市場ニ於テ其ノ売付、買付又ハ受渡ヲ為サズシテ之ヲ為シタルト同一又ハ類似ノ計算ヲ以テ委託者ニ対シ其ノ決済ヲ為スコトヲ得ズ
第五十五条 日本証券取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ有価証券市場ニ於ケル公定相場ヲ決定シ之ヲ公示スベシ
日本証券取引所ハ命令ノ定ムル所ニ依リ有価証券市場ニ於ケル各取引員ノ売買高ヲ公示スベシ
第七章 会計及補助
第五十六条 日本証券取引所ノ事業年度ハ四月ヨリ翌年三月迄トス
第五十七条 日本証券取引所ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ設立ノ時及毎事業年度ニ財産目録、貸借対照表及損益計算書ヲ作成シ設立後及毎事業年度経過後二月以内ニ之ヲ主務大臣ニ提出シ承認ヲ受クベシ
第五十八条 日本証券取引所ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ余裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 国債、地方債其ノ他主務大臣ノ認可ヲ受ケタル有価証券ノ取得
二 大蔵省預金部若ハ銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金
第五十九条 日本証券取引所借入金ヲ為サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六十条 日本証券取引所剰余金ノ処分ヲ為サントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第六十一条 日本証券取引所ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ毎事業年度ニ剰余金ノ十分ノ一以内ヲ準備金トシテ積立ツベシ
第六十二条 日本証券取引所ノ毎事業年度ニ於ケル配当シ得ベキ剰余金額ガ政府以外ノ出資者ノ払込出資金額ニ対シ年百分ノ五ノ割合ニ達セザルトキ(剰余金額ナキトキ及損失ヲ生ジタルトキヲ含ム)ハ政府ハ之ニ達セシムベキ金額ヲ補給スベシ
毎事業年度ニ於ケル配当シ得ベキ剰余金額ガ政府以外ノ出資者ノ払込出資金額ニ対シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ先ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還ニ充ツベシ
前条ノ準備金中損失ノ填補又ハ配当準備ノ為積立テタル金額及第六十六条ノ規定ニ依リ積立テタル金額ハ後事業年度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金ノ計算ニ付テハ之ヲ配当シ得ベキ剰余金ト看做ス
第六十三条 日本証券取引所ハ毎事業年度ニ於ケル配当シ得ベキ剰余金額(前条第二項ノ規定ニ依リ償還ニ充ツベキ金額アルトキハ之ヲ控除シタル残額トス以下同ジ)ガ政府以外ノ出資者ノ払込出資金額ニ対シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過セザルトキハ政府ノ出資ニ対シ剰余金ノ配当ヲ為スコトヲ要セズ
日本証券取引所ハ毎事業年度ニ於ケル配当シ得ベキ剰余金額ガ払込出資金額ニ対シ年百分ノ五ノ割合ニ達セザル場合ニ於テ政府以外ノ出資者ノ払込出資金額ニ対シ年百分ノ五ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ政府ニ配当スベシ
第六十四条 日本証券取引所ノ毎事業年度ニ於ケル剰余金ノ配当ハ払込出資金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルコトヲ得ズ
第六十五条 日本証券取引所ハ毎事業年度ニ於ケル配当シ得ベキ剰余金額ガ払込出資金額ニ対シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ノ四分ノ三ヲ毎事業年度経過後二月以内ニ政府ニ納付スベシ
第六十六条 日本証券取引所ハ毎事業年度ニ於テ前五条ノ規定ニ依リ剰余金ノ処分ヲ為シタル後仍残余アルトキハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ準備金トシテ積立ツベシ
第六十七条 日本証券取引所ハ主務大臣ノ定ムル所ニ依リ毎事業年度ノ事業ノ概況ヲ公告スベシ
第六十八条 日本証券取引所ガ第二十一条第一項第二号ノ規定ニ依リ有価証券ヲ買入ルル場合ニ於ケル有価証券ノ移転ニ付テハ有価証券移転税ヲ課セズ
第六十九条 日本証券取引所ガ第六十二条第一項ノ規定ニ依リ受クル補給金ハ命令ノ定ムル所ニ依リ法人税法ニ依ル所得、営業税法ニ依ル純益及臨時利得税法ニ依ル利益ノ計算上之ヲ益金ニ算入セズ
第八章 監督
第七十条 日本証券取引所ハ主務大臣之ヲ監督ス
第七十一条 主務大臣ハ日本証券取引所ノ目的達成上特ニ必要アリト認ムルトキハ日本証券取引所ニ対シ必要ナル業務ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ変更其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第七十二条 日本証券取引所ハ業務開始ノ際業務規程ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第七十三条 主務大臣ハ日本証券取引所ニ対シ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ、検査ヲ為シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第七十四条 主務大臣ハ日本証券取引所監理官ヲ置キ日本証券取引所ノ業務ヲ監視セシム
第七十五条 日本証券取引所監理官ハ何時ニテモ日本証券取引所ノ業務及財産ノ状況ヲ検査スルコトヲ得
日本証券取引所監理官ハ何時ニテモ日本証券取引所ニ命ジ業務及財産ノ状況ヲ報告セシムルコトヲ得
日本証券取引所監理官ハ日本証券取引所ノ諸般ノ会議ニ出席シ意見ヲ述ブルコトヲ得
第七十六条 日本証券取引所ノ役員ガ法令、定款若ハ法令ニ基キテ為ス主務大臣ノ命令若ハ処分ニ違反シ又ハ公益ヲ害スベキ行為ヲ為シタルトキハ政府ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第九章 雑則
第七十七条 本法ニ依リ主務大臣ノ行フベキ職権ノ一部ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ日本証券取引所ヲシテ行ハシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ必要ナル経費ハ日本証券取引所ノ負担トス
第七十八条 日本証券取引所ハ必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ有価証券市場ニ於ケル取引物件トシテ上場セラルル有価証券ヲ発行シタル会社ヨリ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ徴スルコトヲ得
第七十九条 有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ方法其ノ他本法ノ施行ニ関スル重要事項ニ付主務大臣ノ諮問ニ応ズル為有価証券取引委員会ヲ置ク
有価証券取引委員会ノ組織及権限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十条 本法ニ規定スルモノノ外有価証券市場、取引員、取引員ノ代理店及使用人並ニ有価証券市場ニ於ケル売買取引ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十章 罰則
第八十一条 有価証券市場ニ於ケル相場ノ変動ヲ図ル目的ヲ以テ虚偽ノ風説ヲ流布シ、偽計ヲ用ヒ又ハ暴行若ハ脅迫ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第八十二条 有価証券市場ニ類似ノ施設ヲ為シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
有価証券市場ニ類似ノ施設ニ依リ取引ヲ為シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
第八十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
一 有価証券市場ニ於ケル相場ヲ偽リテ公示シタル者
二 公示若ハ頒布ノ目的ヲ以テ虚偽ノ相場ヲ記載シタル文書ヲ作成シ又ハ之ヲ頒布シタル者
第八十四条 有価証券市場ニ依ラズシテ有価証券市場ニ於ケル相場ニ依リ差金ノ授受ヲ目的トスル行為ヲ為シタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
但シ刑法第百八十六条ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
第八十五条 第十九条ノ規定ニ違反シ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ委託ヲ為シ又ハ取引員トノ間ニ其ノ営業ニ付特別ノ利害関係ヲ生ズルコトヲ目的トスル行為ヲ為シタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第八十六条 第三十一条第三号ノ規定ニ違反シ認可ヲ受ケズシテ支店其ノ他ノ本店以外ノ営業所ニ於テ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ取扱ヲ為シ若ハ有価証券市場ニ於ケル売買取引ノ取扱ヲ為ス代理店ヲ設置シタル者又ハ第四十五条ノ規定ニ違反シタル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
第八十七条 当該官吏、有価証券取引委員会ノ会長委員幹事若ハ第二十条ニ規定スル日本証券取引所ノ職員又ハ其ノ職ニ在リタル者本法ニ依ル職務執行ニ関シ知得タル法人又ハ人ノ業務上ノ秘密ヲ漏洩シ又ハ窃用シタルトキハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
第八十八条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第三十一条第一号、第二号又ハ第四号ノ規定ニ依リ認可ヲ受クベキ事項ヲ認可ヲ受ケズシテ為シタル者
二 第三十二条ノ規定ニ違反シ認可ヲ受ケズシテ他ノ業務ヲ営ミタル者
三 第三十三条ノ規定ニ違反シ準備金ヲ積立テザル者
四 第三十四条ノ規定ニ依ル業務報告書ノ提出ヲ為サズ又ハ之ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ為シタル者
五 第三十五条ノ規定ニ違反シ公告ヲ為サズ又ハ不正ノ公告ヲ為シタル者
六 第三十六条又ハ第三十九条第一項ノ規定ニ依ル主務大臣ノ命令ニ違反シタル者
七 第三十七条第一項又ハ第四十二条ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者
八 第三十七条第一項ノ規定ニ依ル臨検検査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
第八十九条 法人又ハ人ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ第八十二条乃至第八十四条、第八十六条又ハ前条第一号乃至第七号ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第九十条 第八十二条乃至第八十四条、第八十六条及第八十八条第一号乃至第七号ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第九十一条 前二条ノ場合ニ於テハ懲役ノ刑ニ処スルコトヲ得ズ
第九十二条 左ノ場合ニ於テハ日本証券取引所ノ総裁、副総裁、理事、監事又ハ第十七条ノ規定ニ依ル代理人ヲ千円以下ノ過料ニ処ス
一 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ行ヒタルトキ
三 第五十八条ノ規定ニ違反シ業務上ノ余裕金ヲ運用シタルトキ
四 主務大臣ノ命令又ハ処分ニ違反シタルトキ
五 第七十五条第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル日本証券取引所監理官ノ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ命ズル報告ヲ為サザルトキ
第九十三条 左ノ場合ニ於テハ前条ニ掲グル者ヲ五百円以下ノ過料ニ処ス
一 本法ニ基キテ発スル勅令ニ違反シ登記ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ為シタルトキ
二 第五十七条ノ規定ニ依ル書類ヲ作成セザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ又ハ其ノ書類ニ付主務大臣ノ承認ヲ受ケザルトキ
第九十四条 第十二条ノ規定ニ違反シ日本証券取引所又ハ之ニ類似スル名称ヲ用ヒタル者ハ千円以下ノ過料ニ処ス
附 則
第九十五条 本法施行ノ期日ハ各条ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九十六条 取引所法ニ依ル取引所ニシテ本条ノ規定施行ノ際現ニ存スルモノ(以下旧取引所ト称ス)ハ第九十七条乃至第百六条ノ規定ニ依リ日本証券取引所ト為ルモノトス
第九十七条 主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ日本証券取引所ノ設立ニ関スル事務ヲ処理セシム
第九十八条 前条ノ規定ニ依ル設立委員ノ任命アリタル後ハ旧取引所ノ業務ヲ執行スル役員ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ旧取引所ノ常務ニ属セザル行為ヲ為スコトヲ得ズ
旧取引所ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ株券ノ名義書換ヲ停止スベシ
主務大臣ハ必要アリト認ムルトキハ旧取引所ニ対シ売買取引ノ制限其ノ他必要ナル事項ヲ命ズルコトヲ得
第九十九条 設立委員ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ旧取引所ノ株式ニ対シ日本証券取引所ノ出資ノ引当ヲ為シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
主務大臣前項ノ認可ヲ為サントスルトキハ取引所資産評価委員会ノ議ヲ経ベシ
取引所資産評価委員会ノ組織及権限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百条 前条第一項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第百一条 前条ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ総出資ヨリ政府ノ引受ケタル出資及旧取引所ノ株式ニ引当テタル出資ヲ控除シタル残余ノ出資ニ付出資者ヲ募集スベシ
第百二条 設立委員ハ前条ノ募集ヲ終リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ提出シ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク旧取引所ノ株式ニ引当テタル出資以外ノ出資ニ付払込ヲ為サシムベシ
第百三条 前条第二項ノ払込完了シタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク其ノ事務ヲ日本証券取引所総裁ニ引渡スベシ
日本証券取引所総裁ハ前項ノ事務ノ引渡ヲ受ケタルトキハ主タル事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ為スベシ
日本証券取引所ハ前項ノ登記ヲ為スニ因リテ成立ス
第百四条 日本証券取引所ノ成立ニ因リ旧取引所ハ之ニ吸収セラルルモノトシ旧取引所ノ権利義務ハ日本証券取引所ニ於テ之ヲ承継ス
第百五条 旧取引所ノ株式ヲ目的トスル質権ハ第九十九条第一項ノ規定ニ依リ其ノ株式ニ対シ引当テラレタル出資ノ持分又ハ同項ノ規定ニ基キテ発スル勅令ニ依リ交付セラレタル金銭アルトキハ其ノ金銭ノ上ニ存在ス
第百六条 本法ニ規定スルモノノ外日本証券取引所ノ設立ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第百七条 日本証券取引所ガ第百四条ノ規定ニ依リ承継シタル不動産ニ関スル権利ノ取得ニ付登記ヲ受クル場合ニ於テハ其ノ登録税ノ額ハ不動産ノ価格ノ千分ノ三トス但シ登録税法ニ依リ算出シタル登録税ノ額ガ本条ノ規定ニ依リ算出シタル税額ヨリ少キトキハ其ノ額ニ依ル
第百四条ノ規定ニ依ル旧取引所ヨリ日本証券取引所ヘノ有価証券ノ移転ニ付テハ有価証券移転税ヲ課セズ
第百八条 取引所法ハ有価証券ニ関シテハ之ヲ適用セズ
前項ノ規定施行前ニ為シタル旧取引所ニ於ケル有価証券ノ売買取引ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ規定施行前有価証券ニ関スル行為ニシテ取引所法ノ罰則ヲ適用スベカリシモノニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル
第百九条 日本証券取引所成立ノ際現ニ旧取引所ノ有価証券ヲ売買取引スル取引員タル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ日本証券取引所成立ノ日ヨリ三年ヲ限リ第二十七条第二項ノ規定ニ依リ免許ヲ受ケタル取引員ト看做ス
前項ノ場合ニ於テ同項ノ取引員ガ取引所法第十四条ノ規定ニ依リ旧取引所ニ納付シタル身元保証金ノ処置ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ取引員ニシテ会社ニ非ザルモノガ第二十八条第二項各号ノ一ニ該当スルニ至リタルトキハ主務大臣ハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第一項ノ取引員ガ第三十二条ノ規定施行ノ際現ニ有価証券引受業法ニ依リ有価証券引受業ヲ営ミ又ハ有価証券業取締法ニ依リ有価証券業ヲ営ム場合ヲ除クノ外他ノ業務ヲ営ム者ナルトキハ其ノ業務ニ関シテハ同条ノ規定施行ノ日ヨリ六月ヲ限リ同条ノ規定ニ依リ認可ヲ受ケタルモノト看做ス
第四十三条ノ規定ハ第一項ノ取引員ガ死亡シタル場合ニ之ヲ準用ス
第百十条 取引所法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ又ハ除名セラレタル会社ハ第二十八条第二項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ本法ニ依リ免許ヲ取消サレタル者ト看做ス
取引所法ニ依リ罰金以上ノ刑ニ処セラレタル者ハ第二十八条第二項、第二十九条第二項及前条第三項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ本法ニ依リ罰金以上ノ刑ニ処セラレタル者ト看做ス
第二十八条第二項及第二十九条第二項ノ規定ハ株式会社ニシテ其ノ取締役又ハ監査役中本法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ又ハ取引所法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ若ハ除名セラレ取消又ハ除名ノ後五年ヲ経過セザル者アルモノニ之ヲ準用ス
取引員ハ取引所法ニ依リ罰金以上ノ刑ニ処セラレ其ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至リタル後五年ヲ経過セザル者及本法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ又ハ取引所法ニ依リ取引員ノ免許ヲ取消サレ若ハ除名セラレ取消又ハ除名ノ後五年ヲ経過セザル者ヲ其ノ支配人其ノ他命令ヲ以テ定ムル使用人ト為スコトヲ得ズ
第百十一条 第十二条ノ規定施行ノ際現ニ日本証券取引所又ハ之ニ類似スル名称ヲ用フル者ハ同条ノ規定施行ノ日ヨリ六月以内ニ其ノ名称ヲ変更スベシ
第九十四条ノ規定ハ前項ノ期間内之ヲ同項ニ掲グル者ニ適用セズ
第百十二条 登録税法中左ノ通改正ス
第十九条第七号中「日本銀行、」ノ下ニ「日本証券取引所、」ヲ、「日本銀行法、」ノ下ニ「日本証券取引所法、」ヲ加フ
第百十三条 印紙税法中左ノ通改正ス
第五条第四号ノ三ノ次ニ左ノ一号ヲ加フ
四ノ四 日本証券取引所ノ発スル出資証券
第百十四条 有価証券業取締法中左ノ通改正ス
第一条第一項中「及戦時金融金庫」ヲ「、戦時金融金庫及日本証券取引所」ニ改ム