裁判所構成法戦時特例
法令番号: 法律第六十二號
公布年月日: 昭和17年2月24日
法令の形式: 法律
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝國議會ノ協贊ヲ經タル裁判所構成法戰時特例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年二月二十三日
內閣總理大臣 東條英機
司法大臣 岩村通世
法律第六十二號
裁判所構成法戰時特例
第一條 戰時ニ於ケル裁判所構成法ノ特例ハ本法ノ定ムル所ニ依ル
第二條 戰時刑事特別法第五條第一項竝ニ昭和五年法律第九號第二條及第三條ノ竊盜ノ罪ニ付テハ區裁判所其ノ裁判權ヲ有ス但シ豫審ヲ經ザルモノニ限ル
第三條 左ニ揭グル訴訟ノ第一審ノ判決ニ對シテハ控訴ヲ爲スコトヲ得ズ
一 裁判所構成法第十四條第二ノ訴訟
二 民事訴訟法第六編ニ定ムル訴訟但シ同法第五百九十一條第三項(第六百二十條第一項ノ規定ニ依リ適用スル場合ヲ含ム)、第六百二十三條第一項及第六百四十七條第三項ノ訴訟ヲ除ク
前項ノ判決ニ對シテハ直接上吿ヲ爲スコトヲ得
第一項ノ訴訟ノ請求ニ附帶シテ果實、損害賠償、違約金又ハ費用ノ請求ヲ爲シタル場合ニ於テハ前二項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ第一項ノ訴訟ト看做ス
第四條 左ニ揭グル罪ニ付言渡シタル第一審ノ判決ニ對シテハ控訴ヲ爲スコトヲ得ズ
一 刑法第二編第七章ノ二、第三十六章及第三十九章、昭和五年法律第九號、戰時刑事特別法第一章、陸軍刑法第二條ニ揭グル各條(第七十九條乃至第八十五條及第九十九條ヲ除ク)、海軍刑法第二條ニ揭グル各條(第七十八條乃至第八十五條及第百條ヲ除ク)、防空法、食糧管理法竝ニ言論、出版、集會、結社等臨時取締法第十七條及第十八條ノ罪
二 刑法第七十四條及第七十六條、國家總動員法(第四十四條ヲ除ク)、昭和十二年法律第九十二號、外國爲替管理法、軍機保護法(第二條乃至第七條及此等ニ關スル第十五條乃至第十七條ヲ除ク)、軍用資源祕密保護法(第十一條乃至第十五條及第十九條ヲ除ク)、要塞地帶法、國境取締法、陸軍輸送港域軍事取締法、軍用電氣通信法、陸軍刑法第七十九條乃至第八十五條及第九十九條、海軍刑法第七十八條乃至第八十五條及第百條、大正十五年法律第六十號竝ニ不穩文書臨時取締法ノ罪但シ此等ノ罪ニシテ外國ト通謀シ又ハ外國ニ利益ヲ與フル目的ヲ以テ犯シタルモノヲ除ク
前項ノ判決ニ對シテハ直接上吿ヲ爲スコトヲ得
前項ノ上吿ハ第二審ノ判決ニ對シ上吿ヲ爲スコトヲ得ル理由アル場合ニ於テ之ヲ爲スコトヲ得
上吿裁判所ハ第二審ノ判決ニ對スル上吿事件ニ關スル手續ニ依リ裁判ヲ爲スベシ
第五條 前二條ノ第一審ノ判決ニシテ區裁判所ノ爲シタルモノニ對スル上吿ニ付テハ控訴院其ノ裁判權ヲ有ス
前項ノ判決ニ付區裁判所ノ爲シタル上吿棄却ノ決定ニ對スル抗吿ニ付亦前項ニ同ジ
控訴院ノ上吿審トシテ爲シタル決定ニ對シテハ抗吿ヲ爲スコトヲ得ズ
裁判所構成法第四十八條ノ規定ハ第一項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六條 控訴院ガ上吿裁判所タル場合ニ於テ法律ノ同一ノ點ニ付曾テ大審院又ハ上吿裁判所タル控訴院ノ爲シタル判決ト相反スル意見アルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ大審院ニ移送スルコトヲ要ス
前項ノ決定アリタルトキハ訴訟ハ上吿ヲ爲シタル時ヨリ大審院ニ繫屬シタルモノト看做ス
第七條 民事ニ付抗吿裁判所ノ爲シタル決定ニ對シテハ更ニ抗吿ヲ爲スコトヲ得ズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ本法施行前裁判所ノ受理シタル訴訟ニ付テハ之ヲ適用セズ
第二條ノ規定ハ本法施行前犯シタル昭和十六年法律第九十八號第二條第一項ノ竊盜ノ罪ニ關スル事件ニシテ本法施行後公訴ヲ提起スルモノニ付、第四條乃至第六條ノ規定ハ本法施行前犯シタル昭和十六年法律第九十八號ノ罪ニ關スル事件ニシテ本法施行後公訴ヲ提起スルモノニ付亦之ヲ適用ス
戰時終了ノ際ニ於テ必要ナル經過規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ帝国議会ノ協賛ヲ経タル裁判所構成法戦時特例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年二月二十三日
内閣総理大臣 東条英機
司法大臣 岩村通世
法律第六十二号
裁判所構成法戦時特例
第一条 戦時ニ於ケル裁判所構成法ノ特例ハ本法ノ定ムル所ニ依ル
第二条 戦時刑事特別法第五条第一項並ニ昭和五年法律第九号第二条及第三条ノ窃盗ノ罪ニ付テハ区裁判所其ノ裁判権ヲ有ス但シ予審ヲ経ザルモノニ限ル
第三条 左ニ掲グル訴訟ノ第一審ノ判決ニ対シテハ控訴ヲ為スコトヲ得ズ
一 裁判所構成法第十四条第二ノ訴訟
二 民事訴訟法第六編ニ定ムル訴訟但シ同法第五百九十一条第三項(第六百二十条第一項ノ規定ニ依リ適用スル場合ヲ含ム)、第六百二十三条第一項及第六百四十七条第三項ノ訴訟ヲ除ク
前項ノ判決ニ対シテハ直接上告ヲ為スコトヲ得
第一項ノ訴訟ノ請求ニ附帯シテ果実、損害賠償、違約金又ハ費用ノ請求ヲ為シタル場合ニ於テハ前二項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ第一項ノ訴訟ト看做ス
第四条 左ニ掲グル罪ニ付言渡シタル第一審ノ判決ニ対シテハ控訴ヲ為スコトヲ得ズ
一 刑法第二編第七章ノ二、第三十六章及第三十九章、昭和五年法律第九号、戦時刑事特別法第一章、陸軍刑法第二条ニ掲グル各条(第七十九条乃至第八十五条及第九十九条ヲ除ク)、海軍刑法第二条ニ掲グル各条(第七十八条乃至第八十五条及第百条ヲ除ク)、防空法、食糧管理法並ニ言論、出版、集会、結社等臨時取締法第十七条及第十八条ノ罪
二 刑法第七十四条及第七十六条、国家総動員法(第四十四条ヲ除ク)、昭和十二年法律第九十二号、外国為替管理法、軍機保護法(第二条乃至第七条及此等ニ関スル第十五条乃至第十七条ヲ除ク)、軍用資源秘密保護法(第十一条乃至第十五条及第十九条ヲ除ク)、要塞地帯法、国境取締法、陸軍輸送港域軍事取締法、軍用電気通信法、陸軍刑法第七十九条乃至第八十五条及第九十九条、海軍刑法第七十八条乃至第八十五条及第百条、大正十五年法律第六十号並ニ不穏文書臨時取締法ノ罪但シ此等ノ罪ニシテ外国ト通謀シ又ハ外国ニ利益ヲ与フル目的ヲ以テ犯シタルモノヲ除ク
前項ノ判決ニ対シテハ直接上告ヲ為スコトヲ得
前項ノ上告ハ第二審ノ判決ニ対シ上告ヲ為スコトヲ得ル理由アル場合ニ於テ之ヲ為スコトヲ得
上告裁判所ハ第二審ノ判決ニ対スル上告事件ニ関スル手続ニ依リ裁判ヲ為スベシ
第五条 前二条ノ第一審ノ判決ニシテ区裁判所ノ為シタルモノニ対スル上告ニ付テハ控訴院其ノ裁判権ヲ有ス
前項ノ判決ニ付区裁判所ノ為シタル上告棄却ノ決定ニ対スル抗告ニ付亦前項ニ同ジ
控訴院ノ上告審トシテ為シタル決定ニ対シテハ抗告ヲ為スコトヲ得ズ
裁判所構成法第四十八条ノ規定ハ第一項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六条 控訴院ガ上告裁判所タル場合ニ於テ法律ノ同一ノ点ニ付曽テ大審院又ハ上告裁判所タル控訴院ノ為シタル判決ト相反スル意見アルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ大審院ニ移送スルコトヲ要ス
前項ノ決定アリタルトキハ訴訟ハ上告ヲ為シタル時ヨリ大審院ニ繋属シタルモノト看做ス
第七条 民事ニ付抗告裁判所ノ為シタル決定ニ対シテハ更ニ抗告ヲ為スコトヲ得ズ
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ本法施行前裁判所ノ受理シタル訴訟ニ付テハ之ヲ適用セズ
第二条ノ規定ハ本法施行前犯シタル昭和十六年法律第九十八号第二条第一項ノ窃盗ノ罪ニ関スル事件ニシテ本法施行後公訴ヲ提起スルモノニ付、第四条乃至第六条ノ規定ハ本法施行前犯シタル昭和十六年法律第九十八号ノ罪ニ関スル事件ニシテ本法施行後公訴ヲ提起スルモノニ付亦之ヲ適用ス
戦時終了ノ際ニ於テ必要ナル経過規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム