糸価安定施設法施行令
法令番号: 勅令第四百七十二號
公布年月日: 昭和16年4月21日
法令の形式: 勅令
朕絲價安定施設法施行令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年四月十九日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
大藏大臣 河田烈
農林大臣 石黑忠篤
勅令第四百七十二號
絲價安定施設法施行令
第一條 農林大臣ハ絲價安定施設法第十條ノ規定ニ依リ政府ガ賣渡又ハ買入ヲ爲ス生絲ノ種類及品位ヲ定ム
絲價安定施設法第十一條ノ賣渡價格及買入價格ハ前項ノ生絲ニ付之ヲ定ム
第二條 農林大臣ハ每年三月三十一日迄ニ翌生絲年度產ノ生絲ニシテ命令ヲ以テ定ムル種類及品位ノモノニ付翌生絲年度ニ於ケル賣渡價格及買入價格(標準賣渡價格及標準買入價格)ヲ定ム
物價其ノ他ノ經濟事情又ハ生絲ノ需給狀況ニ著シキ變動ヲ生ズルノ虞アル場合其ノ他特別ノ事情アル場合ニ於テ農林大臣特ニ必要アリト認ムルトキハ蠶絲委員會ニ諮問シテ標準賣渡價格若ハ標準買入價格決定ノ時期ニ關シ前項ノ規定ニ依ラズ又ハ標準買入價格ヲ定メザルコトヲ得
第一項ノ生絲以外ノ生絲ノ賣渡價格及買入價格ハ命令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ格差ヲ標準賣渡價格及標準買入價格ニ加減シタルモノトス
第三條 標準賣渡價格ハ命令ノ定ムル所ニ依リ農林大臣ノ指定スル競爭纖維ノ價格ノ一定倍數ニ相當スル價格ニ基キ爲替相場及生絲運送費等ヲ參酌シテ定ムル價格ト絲價指數ト物價指數トノ關係ヨリ算出シタル價格ニ基キ農林大臣ノ定ムル價格トノ範圍內ニ於テ之ヲ定ム
前項ノ一定倍數ハ蠶絲委員會ニ諮問シテ農林大臣之ヲ定ム
第一項ノ農林大臣ノ定ムル價格ハ絲價指數ト物價指數トノ關係ヨリ算出シタル價格ノ上値三割ニ相當スル價格ト上値四割ニ相當スル價格トノ範圍內ニ於テ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム
第四條 標準買入價格ハ繭生產費中ニ於ケル現金支出額ニ自給費ノ一定割合ニ相當スル金額ヲ加ヘタルモノ及生絲ノ製造販賣ニ要スル費用ニ基キ定ムル價格ヲ基準トシ物價其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ農林大臣之ヲ定ム
前項ノ一定割合ハ蠶絲委員會ニ諮問シテ農林大臣之ヲ定ム
第五條 標準買入價格ハ命令ノ定ムル所ニ依リ繭生產費及生絲ノ製造販賣ニ要スル費用ニ基キ定ムル價格ノ八割五分ニ相當スル金額ヲ超ユルコトヲ得ズ
第六條 絲價安定施設法第十一條ノ繭生產費中ニ於ケル現金支出額及自給費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ每年調査シタル各養蠶業者ノ上繭一貫當生產費中ニ於ケル現金支出額及自給費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ヲ夫々平均シテ之ヲ算出ス
前項ノ上繭一貫當生產費中ニ於ケル現金支出額及自給費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各號ニ揭グル費用ノ合計額ヨリ副收入ノ金額ヲ控除シ上繭收量ヲ以テ除シタルモノヲ當該費用ノ合計額中ニ於ケル現金支出額及自給費ノ割合ニ依リ按分シテ之ヲ算出ス
一 桑園土地資本利子
二 小作料
三 肥料代
四 勞賃
五 蠶室及農舍費
六 蠶具及農具費
七 桑園設置費
八 蠶種代
九 消耗品代
十 諸稅諸掛
十一 雜費
第七條 絲價安定施設法第十一條ノ生絲ノ製造販賣ニ要スル費用ハ命令ノ定ムル所ニ依リ每年調査シタル各製絲業者ノ生絲百斤當製造販賣費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ヲ平均シテ之ヲ算出ス
前項ノ生絲百斤當製造販賣費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各號ニ揭グル費用ノ合計額ヨリ副收入ノ金額ヲ控除シタルモノヲ生絲製造數量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
一 給料、賃金、手當又ハ之ニ準ズベキモノ及旅費
二 燃料、電力及電燈費
三 賄材料費
四 購繭、乾繭又ハ生絲販賣ニ關スル手數料
五 利子
六 保管料
七 保險料
八 通信運搬費
九 建物及設備費
十 諸稅諸掛
十一 雜費
第八條 標準賣渡價格又ハ標準買入價格ハ物價其ノ他ノ經濟事情ノ變動著シキ場合又ハ生絲ノ需給狀況ニ著シキ變動ヲ生ジ若ハ生ズルノ虞アル場合ニ於テ農林大臣特ニ必要アリト認ムルトキハ第三條乃至第五條ノ規定ニ準ジテ之ヲ改定スルコトヲ得
第九條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ政府ハ絲價安定施設法第十條ノ規定ニ依ル買入又ハ賣渡ノ申込ニ應ゼザルコトヲ得
一 申込數量ガ命令ノ定ムル數量ニ達セザルトキ
二 買占其ノ他不當ノ利得ヲ圖ル目的ヲ以テ申込ヲ爲シタルモノト認メタルトキ
三 當該生絲年度產以外ノ生絲ニ付賣渡ノ申込アリタルトキ
第十條 賣渡價格ニ依ル買入ノ申込アリタル場合ニ於テ買入ノ申込アリタル種類及品位ノ生絲ヲ所有セザルトキハ政府ハ買入申込者ニ於テ申込ノ際反對ノ意思ヲ表示シタル場合ヲ除クノ外他ノ種類及品位ノ生絲ヲ賣渡スコトヲ得
第十一條 農林大臣ハ生絲ノ新規ノ用途又ハ販路ノ開拓ノ爲政府ノ所有生絲ヲ利用セントスル者ニ對シ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ限リ之ヲ讓與スルコトヲ得
一 利用者ガ加工シ又ハ加工セズシテ博覽會、展覽會等ヘノ出品ノ用ニ供セントスルトキ
二 利用者ガ加工シ又ハ加工セズシテ標本又ハ見本ノ用ニ供セントスルトキ
三 利用者ガ試驗硏究ノ用ニ供セントスルトキ
四 公共團體其ノ他農林大臣ノ適當ト認ムル者ガ新規絹製品ノ普及ヲ圖ル爲利用セントスルトキ
農林大臣前項第一號乃至第三號ノ規定ニ依リ讓與ヲ爲スニ付テハ利用者其ノ讓與ヲ受ケタル生絲又ハ其ノ加工品ヲ其ノ用ニ供シタル後之ヲ處分シ又ハ他ノ用ニ供セントスル場合ハ農林大臣ノ認可ヲ受クベキコトノ條件ヲ附スベシ
農林大臣第一項第四號ノ規定ニ依リ讓與ヲ爲サントスルトキハ大藏大臣ニ協議スベシ
第十二條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ政府ハ生絲ノ新規ノ用途又ハ販路ノ開拓ノ爲所有生絲ヲ其ノ用ニ供スルコトヲ得
一 加工シ又ハ加工セズシテ博覽會、展覽會等ヘノ出品ノ用ニ供スルトキ
二 加工シ又ハ加工セズシテ標本又ハ見本ノ用ニ供スルトキ
三 試驗硏究ノ用ニ供スルトキ
四 前各號ノ外生絲ノ新規ノ用途又ハ販路ノ開拓ノ爲特ニ必要ト認ムル用ニ供スルトキ
第十三條 政府ガ絲價安定施設法第三十條ノ規定ニ依リ生絲ノ買入ヲ爲スコトヲ得ルハ第二條第一項ノ規定ニ基ク命令ヲ以テ定ムル種類及品位ノ生絲ノ市價ガ標準賣渡價格ノ九割ニ相當スル價格以下ナル場合ニ限ル
第十四條 農林大臣ハ繭及生絲ノ生產費、生產高、現在高、消費高及價格ノ調査ノ爲道府縣、市町村及市町村長ニ對シ調査上必要ナル事務ヲ行フベキコトヲ命ジ竝ニ適當ト認ムル者ニ對シ記帳及報吿ヲ命ズルコトヲ得
第十五條 本令中生絲年度ト稱スルハ其ノ年ノ六月一日ヨリ翌年五月三十一日迄トス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和十四年勅令第十二號ハ之ヲ廢止ス
絲價安定施設特別會計規則中左ノ通改正ス
第二條第一項中「第二十八條」ヲ「第十條」ニ改ム
朕糸価安定施設法施行令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年四月十九日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
大蔵大臣 河田烈
農林大臣 石黒忠篤
勅令第四百七十二号
糸価安定施設法施行令
第一条 農林大臣ハ糸価安定施設法第十条ノ規定ニ依リ政府ガ売渡又ハ買入ヲ為ス生糸ノ種類及品位ヲ定ム
糸価安定施設法第十一条ノ売渡価格及買入価格ハ前項ノ生糸ニ付之ヲ定ム
第二条 農林大臣ハ毎年三月三十一日迄ニ翌生糸年度産ノ生糸ニシテ命令ヲ以テ定ムル種類及品位ノモノニ付翌生糸年度ニ於ケル売渡価格及買入価格(標準売渡価格及標準買入価格)ヲ定ム
物価其ノ他ノ経済事情又ハ生糸ノ需給状況ニ著シキ変動ヲ生ズルノ虞アル場合其ノ他特別ノ事情アル場合ニ於テ農林大臣特ニ必要アリト認ムルトキハ蚕糸委員会ニ諮問シテ標準売渡価格若ハ標準買入価格決定ノ時期ニ関シ前項ノ規定ニ依ラズ又ハ標準買入価格ヲ定メザルコトヲ得
第一項ノ生糸以外ノ生糸ノ売渡価格及買入価格ハ命令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ格差ヲ標準売渡価格及標準買入価格ニ加減シタルモノトス
第三条 標準売渡価格ハ命令ノ定ムル所ニ依リ農林大臣ノ指定スル競争繊維ノ価格ノ一定倍数ニ相当スル価格ニ基キ為替相場及生糸運送費等ヲ参酌シテ定ムル価格ト糸価指数ト物価指数トノ関係ヨリ算出シタル価格ニ基キ農林大臣ノ定ムル価格トノ範囲内ニ於テ之ヲ定ム
前項ノ一定倍数ハ蚕糸委員会ニ諮問シテ農林大臣之ヲ定ム
第一項ノ農林大臣ノ定ムル価格ハ糸価指数ト物価指数トノ関係ヨリ算出シタル価格ノ上値三割ニ相当スル価格ト上値四割ニ相当スル価格トノ範囲内ニ於テ経済事情ヲ参酌シテ之ヲ定ム
第四条 標準買入価格ハ繭生産費中ニ於ケル現金支出額ニ自給費ノ一定割合ニ相当スル金額ヲ加ヘタルモノ及生糸ノ製造販売ニ要スル費用ニ基キ定ムル価格ヲ基準トシ物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シテ農林大臣之ヲ定ム
前項ノ一定割合ハ蚕糸委員会ニ諮問シテ農林大臣之ヲ定ム
第五条 標準買入価格ハ命令ノ定ムル所ニ依リ繭生産費及生糸ノ製造販売ニ要スル費用ニ基キ定ムル価格ノ八割五分ニ相当スル金額ヲ超ユルコトヲ得ズ
第六条 糸価安定施設法第十一条ノ繭生産費中ニ於ケル現金支出額及自給費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ毎年調査シタル各養蚕業者ノ上繭一貫当生産費中ニ於ケル現金支出額及自給費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ヲ夫々平均シテ之ヲ算出ス
前項ノ上繭一貫当生産費中ニ於ケル現金支出額及自給費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各号ニ掲グル費用ノ合計額ヨリ副収入ノ金額ヲ控除シ上繭収量ヲ以テ除シタルモノヲ当該費用ノ合計額中ニ於ケル現金支出額及自給費ノ割合ニ依リ按分シテ之ヲ算出ス
一 桑園土地資本利子
二 小作料
三 肥料代
四 労賃
五 蚕室及農舎費
六 蚕具及農具費
七 桑園設置費
八 蚕種代
九 消耗品代
十 諸税諸掛
十一 雑費
第七条 糸価安定施設法第十一条ノ生糸ノ製造販売ニ要スル費用ハ命令ノ定ムル所ニ依リ毎年調査シタル各製糸業者ノ生糸百斤当製造販売費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ヲ平均シテ之ヲ算出ス
前項ノ生糸百斤当製造販売費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各号ニ掲グル費用ノ合計額ヨリ副収入ノ金額ヲ控除シタルモノヲ生糸製造数量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
一 給料、賃金、手当又ハ之ニ準ズベキモノ及旅費
二 燃料、電力及電灯費
三 賄材料費
四 購繭、乾繭又ハ生糸販売ニ関スル手数料
五 利子
六 保管料
七 保険料
八 通信運搬費
九 建物及設備費
十 諸税諸掛
十一 雑費
第八条 標準売渡価格又ハ標準買入価格ハ物価其ノ他ノ経済事情ノ変動著シキ場合又ハ生糸ノ需給状況ニ著シキ変動ヲ生ジ若ハ生ズルノ虞アル場合ニ於テ農林大臣特ニ必要アリト認ムルトキハ第三条乃至第五条ノ規定ニ準ジテ之ヲ改定スルコトヲ得
第九条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ政府ハ糸価安定施設法第十条ノ規定ニ依ル買入又ハ売渡ノ申込ニ応ゼザルコトヲ得
一 申込数量ガ命令ノ定ムル数量ニ達セザルトキ
二 買占其ノ他不当ノ利得ヲ図ル目的ヲ以テ申込ヲ為シタルモノト認メタルトキ
三 当該生糸年度産以外ノ生糸ニ付売渡ノ申込アリタルトキ
第十条 売渡価格ニ依ル買入ノ申込アリタル場合ニ於テ買入ノ申込アリタル種類及品位ノ生糸ヲ所有セザルトキハ政府ハ買入申込者ニ於テ申込ノ際反対ノ意思ヲ表示シタル場合ヲ除クノ外他ノ種類及品位ノ生糸ヲ売渡スコトヲ得
第十一条 農林大臣ハ生糸ノ新規ノ用途又ハ販路ノ開拓ノ為政府ノ所有生糸ヲ利用セントスル者ニ対シ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ限リ之ヲ譲与スルコトヲ得
一 利用者ガ加工シ又ハ加工セズシテ博覧会、展覧会等ヘノ出品ノ用ニ供セントスルトキ
二 利用者ガ加工シ又ハ加工セズシテ標本又ハ見本ノ用ニ供セントスルトキ
三 利用者ガ試験研究ノ用ニ供セントスルトキ
四 公共団体其ノ他農林大臣ノ適当ト認ムル者ガ新規絹製品ノ普及ヲ図ル為利用セントスルトキ
農林大臣前項第一号乃至第三号ノ規定ニ依リ譲与ヲ為スニ付テハ利用者其ノ譲与ヲ受ケタル生糸又ハ其ノ加工品ヲ其ノ用ニ供シタル後之ヲ処分シ又ハ他ノ用ニ供セントスル場合ハ農林大臣ノ認可ヲ受クベキコトノ条件ヲ附スベシ
農林大臣第一項第四号ノ規定ニ依リ譲与ヲ為サントスルトキハ大蔵大臣ニ協議スベシ
第十二条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ政府ハ生糸ノ新規ノ用途又ハ販路ノ開拓ノ為所有生糸ヲ其ノ用ニ供スルコトヲ得
一 加工シ又ハ加工セズシテ博覧会、展覧会等ヘノ出品ノ用ニ供スルトキ
二 加工シ又ハ加工セズシテ標本又ハ見本ノ用ニ供スルトキ
三 試験研究ノ用ニ供スルトキ
四 前各号ノ外生糸ノ新規ノ用途又ハ販路ノ開拓ノ為特ニ必要ト認ムル用ニ供スルトキ
第十三条 政府ガ糸価安定施設法第三十条ノ規定ニ依リ生糸ノ買入ヲ為スコトヲ得ルハ第二条第一項ノ規定ニ基ク命令ヲ以テ定ムル種類及品位ノ生糸ノ市価ガ標準売渡価格ノ九割ニ相当スル価格以下ナル場合ニ限ル
第十四条 農林大臣ハ繭及生糸ノ生産費、生産高、現在高、消費高及価格ノ調査ノ為道府県、市町村及市町村長ニ対シ調査上必要ナル事務ヲ行フベキコトヲ命ジ並ニ適当ト認ムル者ニ対シ記帳及報告ヲ命ズルコトヲ得
第十五条 本令中生糸年度ト称スルハ其ノ年ノ六月一日ヨリ翌年五月三十一日迄トス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和十四年勅令第十二号ハ之ヲ廃止ス
糸価安定施設特別会計規則中左ノ通改正ス
第二条第一項中「第二十八条」ヲ「第十条」ニ改ム