船員保険法施行令
法令番号: 勅令第六十六號
公布年月日: 昭和15年2月23日
法令の形式: 勅令
朕船員保險法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年二月二十二日
內閣總理大臣 米內光政
大藏大臣 櫻內幸雄
拓務大臣 小磯國昭
厚生大臣 吉田茂
遞信大臣 勝正憲
勅令第六十六號
船員保險法施行令
第一章 總則
第一條 船員保險法第三條第一項ノ給料ニ準ズベキモノノ範圍ハ左ニ揭グルモノトス
一 職長手當
二 勤續手當
三 機關部手當
四 其ノ他厚生大臣ノ指定スルモノ
第二條 給料ニ準ズベキモノノ全部又ハ一部ガ金錢以外ノ給與其ノ他ノ利益ナル場合ニ於テハ其ノ價額ハ保險院長官ノ定ムル標準價格ニ依リ之ヲ算定ス
第三條 船員保險法第四條第一項ノ標準報酬ハ被保險者ノ報酬月額ニ基キ左ノ區別ニ依リ之ヲ定ム
【表】
第四條 標準報酬ハ被保險者ノ資格ヲ取得シタル日ノ現在ニ依リ之ヲ定ム
被保險者ノ報酬ガ其ノ增減アリタルニ因リ從前ノ報酬月額ニ基キ定メラレタル標準報酬ニ該當セザルニ至リタル場合ニ於テハ其ノ報酬ニ增減アリタル月ノ翌月(報酬ニ增減アリタル日ガ月ノ初日ナルトキハ其ノ月)ヨリ其ノ標準報酬ヲ變更ス
船員保險法第二十條ノ規定ニ依ル被保險者ニ付テハ引續キ從前ノ標準報酬ニ依ル但シ其ノ者ノ申請ニ依リ標準報酬ヲ減額スルコトヲ得
第二項ノ規定ハ前項但書ノ規定ニ依リ標準報酬ヲ減額スル場合ニ之ヲ準用ス
第五條 第三條ニ規定スル被保險者ノ報酬月額ハ左ノ各號ノ規定ニ依リ之ヲ之ヲ算定ス
一 年ニ依リ報酬ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬決定ノ日ノ現在ニ於ケル年額ノ十二分ノ一
二 月ニ依リ報酬ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬決定ノ日ノ現在ニ於ケル月額
三 日ニ依リ報酬ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬決定ノ日ノ現在ニ於ケル日額ノ三十倍
四 前三號ノ外一定ノ期間ニ依リ報酬ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬決定ノ日ノ現在ニ於ケル其ノ報酬ノ額ヲ其ノ期間ノ日數ヲ以テ除シテ得タル額ノ三十倍
五 步合ニ依リ報酬ヲ定ムル場合ニ於テハ同樣ノ船舶ニ於テ同樣ノ勞務ニ從事スル者ガ通常ノ場合ニ於テ受クベキ額ヲ標準トシテ算定シタル額
六 前各號ノ二以上ニ該當スル報酬ヲ受クル場合ニ於テハ其ノ各ニ付前各號ノ規定ニ依リ算定シタル額ノ合算額
被保險者ノ報酬月額ガ前項ノ規定ニ依リ算定シ難キトキ又ハ前項ノ規定ニ依リテ算定シタル額ガ著シク不當ナルトキハ前項ノ規定ニ拘ラズ保險院長官ノ定ムル方法ニ依リ之ヲ算定ス
第六條 船員保險法第十二條第一項ノ規定ニ依リ保險料納付ノ督促ヲ爲サントスルトキハ保險院長官ハ納付義務者ニ對シ督促狀ヲ發スベシ
督促狀ヲ發シタルトキハ督促手數料トシテ二十錢ヲ徵收ス
船員保險法第十二條第三項及第四項ノ規定中行政官廳トアルハ保險料滯納者ノ住所地又ハ其ノ者ノ財產ノ在ル地ヲ管轄スル地方長官(東京府ニ在リテハ警視總監以下之ニ同ジ)トス
第七條 前條ノ規定ニ依リ督促ヲ爲シタル場合ニ於テハ徵收金額百圓ニ付一日三錢ノ割合ヲ以テ納期限ノ翌日ヨリ徵收金完納又ハ財產差押ノ日ノ前日迄ノ日數ニ依リ計算シタル延滯金ヲ徵收ス但シ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合又ハ滯納ニ付酌量スベキ情狀アリト認ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
一 納入ノ吿知書一通ノ徵收金額十圓未滿ナルトキ
二 納期ヲ繰上ゲ徵收ヲ爲ストキ
三 納付義務者ノ住所及居所ガ帝國內ニ在ラザル爲又ハ其ノ住所及居所共ニ不明ナル爲公示送達ノ方法ニ依リ納入ノ吿知又ハ督促ヲ爲シタルトキ
督促狀ニ指定シタル期限迄ニ徵收金及督促手數料ヲ完納シタルトキハ延滯金ヲ徵收セズ
第八條 國ガ船舶所有者タル船舶ニ乘組ム被保險者ガ厚生大臣ノ指定シタル共濟組合ヨリ保險給付ニ相當スル給付ヲ受クルトキハ其ノ者ニ對シテハ保險給付ヲ爲サズ
前項ノ規定ニ依リ厚生大臣ノ指定スル共濟組合ハ左ノ要件ヲ具フルモノニ限ル
一 被保險者タル組合員ニ對スル給付ノ種類ガ保險給付ノ種類ヲ包含シ且其ノ給付ガ同種ノ保險給付ト同程度ナルコト
二 被保險者タル組合員ニ對スル給付ノ中保險給付ニ相當スル給付ニ要スル費用ニ付國ガ船員保險法ニ依リ國庫及船舶所有者トシテ爲ス負擔ト同一ノ割合ヲ下ラザル負擔ヲ爲スコト
第九條 前條ノ規定ニ依リ保險給付ヲ受ケザル者ニ付テハ保險料ハ之ヲ徵收セズ
第十條 第八條ノ規定ニ依リ指定シタル共濟組合ノ組合員タル被保險者若ハ被保險者タリシ者ガ第八條ノ規定ニ依リ指定シタル共濟組合ノ組合員タラザル被保險者ト爲リタル場合又ハ第八條ノ規定ニ依リ指定シタル共濟組合ノ組合員タラザル被保險者若ハ被保險者タリシ者ガ第八條ノ規定ニ依リ指定シタル共濟組合ノ組合員タル被保險者ト爲リタル場合ニ於テ必要ナル規定ハ厚生大臣之ヲ定ム
第十一條 管海官廳及船員法第四十五條ノ規定ニ依リ管海官廳ノ事務ヲ行フ市町村長又ハ之ニ準ズル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ船員保險ニ關スル事務ノ一部ヲ行フ
第二章 被保險者
第十二條 漁船ニ乘組ム船員ニシテ左ニ揭グル者以外ノ者ハ船員保險法第十七條第三號ノ規定ニ依リ被保險者タラザルモノトス
一 汽船「トロール」漁業、母船式漁業、汽船捕鯨業又ハ機船底曳網漁業(東經百三十度以東ノ海面ヲ操業區域トスルモノヲ除ク)ニ從事スル漁船ニ乘組ム船員但シ母船式蟹漁業又ハ母船式鮭鱒漁業ニ從事スル附屬漁船ニ乘組ム船員ヲ除ク
二 專ラ漁獵場ヨリ漁獲物又ハ其ノ化製品ヲ運搬スル業務ニ從事スル漁船ニ乘組ム船員
三 漁業ニ關スル試驗、調査、指導、練習又ハ取締業務ニ從事スル漁船ニ乘組ム船員但シ臨時ニ雇傭セラルル船員ヲ除ク
第十三條 十年以上十五年未滿被保險者タリシ者ガ被保險者タラザルニ至リタル場合ニ於テ其ノ資格ヲ喪失シタル日ヨリ三月以內ニ船員保險法第二十條ノ規定ニ依ル被保險者タラントスル申請ヲ爲ストキハ繼續シテ被保險者ト爲ルコトヲ得
前項ニ規定スル期限ヲ經過シタル申請ト雖モ保險院長官ニ於テ正當ノ事由アリト認ムルトキハ之ヲ受理スルコトヲ得
第一項ノ申請ヲ爲シタル者ガ初テ納付スベキ保險料ニ付第十四條第一號ニ揭グル事實アリタルトキハ繼續シテ其ノ被保險者ト爲ラザリシモノト看做ス
第十四條 船員保險法第二十一條第一項ニ規定スル事由ハ左ノ如シ
一 保險料ヲ滯納シ船員保險法第十二條第一項ノ規定ニ依ル指定ノ期限迄ニ其ノ保險料ヲ納付セザルトキ
二 船員保險法第十七條ノ規定ニ依ル被保險者ト爲リタルトキ
三 船員保險法第二十條ノ規定ニ依ル被保險者ノ資格ヲ喪失セントスル申請ヲ爲シタルトキ
第三章 保險給付
第十五條 船員保險法第三十六條、第三十七條若ハ第四十二條ノ規定ニ依ル一時金又ハ死亡手當金ヲ受クベキ者ハ被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ配偶者(屆出ヲ爲サザルモ事實上婚姻關係ト同樣ノ事情ニ在ル者ヲ含ム以下之ニ同ジ)トシ配偶者ナキ場合ニ於テハ被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ死亡當時之ト同一ノ家ニ在リタル被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ直系卑屬又ハ直系尊屬トシ其ノ順位ハ親等ノ近キ者ヲ先ニシ卑屬ト尊屬ト親等相同ジキトキハ卑屬ヲ先ニス
第十六條 前條ニ定メタル同順位者ノ間ニ在リテハ其ノ順位ハ左ノ規定ニ依ル
一 被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ家督相續人(之ニ準ズベキ者ヲ含ム以下之ニ同ジ)又ハ戶主ハ之ヲ他ノ者ヨリ先ニス
二 男ハ之ヲ女ヨリ先ニス
三 直系卑屬ニ付テハ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニシ嫡出子、庶子及私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子及庶子ハ女ト雖モ之ヲ私生子ヨリ先ニス
四 前二號ニ揭グル事項ニ付相同ジキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス
第十七條 第十五條ノ規定ニ該當スル者ナキ場合ニ於テハ左ニ揭グル順位ニ依リ船員保險法第三十六條、第三十七條若ハ第四十二條ノ規定ニ依ル一時金又ハ死亡手當金ヲ支給ス但シ被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ遺言又ハ保險院長官ニ對シテ爲シタル豫吿ニ依リ左ニ揭グル者ノ中一人ヲ特ニ指定シタルトキハ之ニ從フ
一 被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ家督相續人又ハ戶主
二 被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ兄弟姉妹ニシテ被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ死亡當時之ト同一ノ家ニ在リタルモノ
三 被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ死亡當時其ノ者ニ依リ生計ヲ維持シタル者
第十八條 船員保險法第二十八條第一項ノ療養ノ給付ノ範圍ハ左ノ如シ
一 診察
二 藥劑又ハ治療材料ノ支給
三 處置、手術其ノ他ノ治療
四 看護
五 移送
前項第三號ノ給付ハ緊急ノ場合其ノ他地方長官ガ必要アリト認ムル場合ヲ除クノ外之ニ要スル費用一囘二十圓以下ノモノニ限ル
第一項第四號及第五號ノ給付ハ地方長官ガ必要アリト認ムルモノニ限ル
第十九條 前條第一項第一號乃至第三號ノ給付ニ付テハ被保險者又ハ被保險者タリシ者ハ地方長官ノ指定シタル醫師又ハ齒科醫師中自己ノ選定シタル者ニ就キ之ヲ受クルコトヲ得但シ船員保險法第二十八條第三項ノ規定ニ依リ診療所ニ收容セラレタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
被保險者タリシ者ガ前項ノ規定ニ依リ醫師又ハ齒科醫師ヲ選定シタルトキハ地方長官ノ承認アリタル場合ヲ除クノ外之ヲ變更スルコトヲ得ズ
第二十條 前條ニ規定スル醫師又ハ齒科醫師ガ處方箋ヲ交付シタルトキハ被保險者又ハ被保險者タリシ者ハ地方長官ノ指定シタル藥劑師中自己ノ選定シタル者ニ就キ藥劑ヲ受クルコトヲ得
第二十一條 被保險者タリシ者ハ左ノ各號ニ規定スル期間內ニ療養ノ給付ヲ受ケザルトキハ爾後之ヲ受クルコトヲ得ズ但シ船員法第十七條又ハ第三十條ノ規定ニ依リ送還セラルル場合其ノ他特別ノ事由アル場合ニ於テ已ムコトヲ得ザルモノト認メラルルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 船員法第十七條又ハ第二十九條ノ規定ニ依ル扶助ヲ受クベキ場合ニ於テハ之ヲ受クルコトヲ得ベキ期間ヲ經過シタル日後十日以內
二 船員法第十七條又ハ第二十九條ノ規定ニ依ル扶助ヲ受クルコトヲ得ザル者ガ被保險者タリシ期間中療養ノ給付ヲ受ケザリシ場合ニ於テハ被保險者タル資格ヲ喪失シタル日後十日以內
第二十二條 報酬年額千八百圓ヲ超ユル被保險者ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當スルモノ又ハ被保險者ノ資格喪失當時報酬年額千八百圓ヲ超ユル被保險者タリシ者ニシテ左ノ各號ノ一ニ該當シタルモノニハ船員保險法第二十八條第二項ノ規定ニ依リ療養ノ給付ヲ爲サズ
一 事務長
二 醫師
三 無線通信士
四 通譯
五 船舶職員以外ノ運轉士又ハ機關士ニシテ海技免狀ヲ有スルモノ
六 其ノ他厚生大臣ニ於テ前各號ノ者ニ準ズト認ムル者
第二十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ船員保險法第二十九條ノ規定ニ依リ療養ノ給付ニ代ヘテ療養費ヲ支給スルコトヲ得
一 地方長官ニ於テ療養ノ給付ヲ爲スコト困難ナリト認メタルトキ
二 被保險者又ハ被保險者タリシ者ガ地方長官ノ承認ヲ受ケ其ノ指定セザル醫師又ハ齒科醫師ノ診療ヲ受ケタル場合ニ於テ其ノ被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ申請アリタルトキ
三 被保險者又ハ被保險者タリシ者ガ緊急ノ場合ニ於テ地方長官ノ指定セザル醫師、齒科醫師其ノ他ノ者ノ手當ヲ受ケタル場合ニ於テ其ノ被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ申請アリタルトキ
第二十四條 前條ノ規定ニ依リ支給スル療養費ノ額ハ療養ノ給付ヲ爲ス場合ニ要スル額ヲ標準トシテ地方長官之ヲ定ム
第二十五條 第二十二條ノ規定ハ船員保險法第三十條第二項ノ規定ニ依リ傷病手當金ヲ支給セザル場合ニ之ヲ準用ス
第二十六條 船員保險法第二十八條第三項ノ規定ニ依リ診療所ニ收容シタル被保險者タリシ者ニ對シ支給スベキ傷病手當金ハ專ラ其ノ者ニ依リ生計ヲ維持スル者ナキ場合ニ於テハ標準報酬日額ノ百分ノ二十ニ相當スル金額トス
第二十七條 船員保險法第四十條ノ規定ニ依ル期間ハ船員保險法第二十八條第二項ニ規定スル者ニ付テハ被保險者ノ資格喪失ノ日ヨリ九月トシ其ノ他ノ者ニ付テハ療養ノ給付ヲ受クルコトヲ得ベキ期間トス
第二十八條 船員保險法第四十條ノ規定ニ依リ癈疾年金ヲ支給スベキ程度ノ癈疾ノ狀態ハ別表第一ニ該當スルコトヲ要シ癈疾手當金ヲ支給スベキ程度ノ癈疾ノ狀態ハ別表第二ニ該當スルコトヲ要ス
第二十九條 第二十六條ノ規定ハ船員保險法第五十三條第二項ニ揭グル者ニ對シ支給スベキ傷病手當金ニ之ヲ準用ス
第三十條 詐欺其ノ他不正ノ行爲ニ依リ保險給付ヲ受ケ又ハ受ケントシタル者ニ對シテハ保險院長官ハ六月以內ノ期間ヲ定メ其ノ者ニ支給スベキ傷病手當金ノ全部又ハ一部ヲ支給セザル旨ノ決定ヲ爲スコトヲ得但シ詐欺其ノ他不正ノ行爲アリタル日ヨリ一年ヲ經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ決定ハ保險院長官ニ於テ其ノ事實ヲ知リタルトキ遲滯ナク之ヲ爲シ本人ニ通知スベシ
第三十一條 被保險者又ハ被保險者タリシ者ニ對シ內地以外ノ地ニ於テ療養ノ給付ヲ爲ス場合ニ於テハ第十八條第二項第三項、第十九條、第二十條、第二十三條及第二十四條中地方長官トアルハ保險院長官トス但シ事務ノ共助ヲ爲ス場合其ノ他特別ノ事由アル場合ニ於テ必要アルトキハ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第四章 費用ノ負擔
第三十二條 保險料額ハ每月ニ付船員保險法第二十二條第一項及第二項ノ規定ニ依リ計算シタル被保險者タリシ期間ガ一月ナルトキハ被保險者ノ標準報酬月額ニ保險料率ヲ乘ジテ得タル額トシ半月ナルトキハ被保險者ノ標準報酬月額ニ保險料率ヲ乘ジテ得タル額ノ半額トス
被保險者ノ資格ヲ取得シタル月ニ於テ其ノ資格ヲ喪失シタル場合ニ於ケル其ノ月分ノ保險料額ハ被保險者ノ標準報酬月額ニ保險料率ヲ乘ジテ得タル額ノ半額トス
保險料率ハ厚生大臣之ヲ定ム
第三十三條 船員保險法第二十條ノ規定ニ依ル被保險者ノ其ノ被保險者ト爲リタル月ノ保險料額ハ前條ノ例ニ依リ之ヲ算定ス
第三十四條 船舶所有者ハ被保險者ニ對シ金錢ヲ以テ報酬ヲ支拂フ場合ニ於テハ船員保險法第六十二條ノ規定ニ依リ被保險者ノ負擔スベキ前月分ノ保險料(支拂フ報酬ガ二月以上ノ期間ニ對スルモノナルトキハ其ノ期間ニ係ル保險料)ヲ其ノ報酬ヨリ控除スルコトヲ得被保險者ヲ雇傭セザルニ至リタル場合ニ於テハ其ノ月分ノ保險料ヲモ控除スルコトヲ得
第三十五條 船舶所有者ハ保險料ノ控除ニ關スル計算書ヲ作製シ被保險者ノ請求ニ應ジテ閱覽セシムベシ
第三十六條 每月ノ保險料ハ翌月末日迄ニ之ヲ納付スベシ但シ船員保險法第二十條ノ規定ニ依ル被保險者ノ納付スベキ保險料ニ付テハ厚生大臣ニ於テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
保險院長官ハ保險料納入ノ吿知ヲ爲シタル後ニ於テ吿知シタル保險料額ガ當該納付義務者ノ納付スベキ保險料額ヲ超過スルコトヲ知リタルトキハ其ノ超過部分ニ對スル納入ノ吿知ハ其ノ吿知ヲ爲シタル後六月以內ノ期日ニ於テ納付セラルベキ保險料ニ對シ納期ヲ繰上ゲ之ヲ爲シタルモノト看做スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ納期ヲ繰上ゲ納入ノ吿知ヲ爲シタルモノト看做シタルトキハ保險院長官ハ其ノ旨ヲ當該納付義務者ニ通知スベシ
第三十七條 保險料納付義務者ガ左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ納期前ト雖モ保險料ハ總テ之ヲ徵收スルコトヲ得
一 國稅、府縣稅其ノ他ノ公課ノ滯納ニ因リ滯納處分ヲ受クルトキ
二 强制執行ヲ受クルトキ
三 破產ノ宣吿ヲ受ケタルトキ
四 競賣ノ開始アリタルトキ
五 法人ガ解散ヲ爲シタルトキ
前項ノ規定ハ被保險者ノ乘組ム船舶ニ付船舶所有者ノ變更アリタル場合及被保險者ノ乘組ム船舶ガ滅失シ、沈沒シ又ハ全ク運航ニ堪ヘザルニ至リタル場合ニ之ヲ準用ス
第五章 船員保險審査會
第一節 組織
第三十八條 船員保險審査會ハ厚生大臣ノ監督ニ屬シ船員保險法第六十三條及第六十五條ノ審査ヲ爲ス
第三十九條 船員保險審査會ハ第一次船員保險審査會及第二次船員保險審査會トス
第一次船員保險審査會ノ管轄區域ハ厚生大臣之ヲ定メ第二次船員保險審査會ノ管轄區域ハ內地ノ區域トス
船員保險審査會ノ名稱及位置ハ厚生大臣之ヲ定ム
第四十條 船員保險審査會ハ會長及委員ヲ以テ之ヲ組織ス
第四十一條 第一次船員保險審査會ノ會長ハ其ノ審査會ノ所在地ヲ管轄スル地方長官ヲ以テ、第二次船員保險審査會ノ會長ハ保險院長官ヲ以テ之ニ充ツ
第四十二條 第一次船員保險審査會ノ委員ハ左ニ揭グル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 官吏、公吏又ハ學識經驗アル者 三人
二 被保險者ヲ雇傭スル船舶所有者 三人
三 被保險者側ヲ代表シ得ル者 三人
第二次船員保險審査會ノ委員ハ左ニ揭グル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 官吏、公吏又ハ學識經驗アル者 五人
二 被保險者ヲ雇傭スル船舶所有者 五人
三 被保險者側ヲ代表シ得ル者 五人
第一項第一號ノ規定ニ依ル委員中一人ハ其ノ審査會ノ所在地ヲ管轄スル地方長官トス
第一項及第二項ニ於テ被保險者ヲ雇傭スル船舶所有者トアルハ船舶所有者ガ國ナル場合ニ於テハ關係官吏トシ公共團體ナル場合ニ於テハ關係官公吏、其ノ他ノ法人ナル場合ニ於テハ業務ヲ執行スル社員若ハ役員又ハ支配人トス
第四十三條 主トシテ船員保險ノ事務ニ從事スル官吏ハ船員保險審査會ノ委員タルコトヲ得ズ
船員保險審査會ノ委員ハ他ノ船員保險審査會ノ委員ヲ兼ヌルコトヲ得ズ
第四十四條 第一次船員保險審査會ノ委員ハ第四十二條第三項ノ規定ニ依ル地方長官タル委員ヲ除クノ外厚生大臣之ヲ命ジ第二次船員保險審査會ノ委員ハ厚生大臣ノ奏請ニ依リ內閣ニ於テ之ヲ命ズ
第四十五條 委員ノ任期ハ官吏又ハ公吏トシテ委員タル者ヲ除クノ外三年トス但シ特別ノ事由アル場合ニ於テハ任期中之ヲ解任スルコトヲ妨ゲズ
第四十六條 會長ハ會務ヲ總理シ會議ノ議長ト爲ル
會長事故アルトキハ第一次船員保險審査會ニ在リテハ其ノ審査會ノ所在地ヲ管轄スル地方長官ノ、第二次船員保險審査會ニ在リテハ厚生大臣ノ指名シタル委員其ノ職務ヲ代理ス
第四十七條 船員保險審査會ニ幹事ヲ置ク
第一次船員保險審査會ノ幹事ハ其ノ審査會ノ所在地ヲ管轄スル廳府縣(東京府ヲ除ク以下之ニ同ジ)ノ官吏中ヨリ厚生大臣之ヲ命ジ第二次船員保險審査會ノ幹事ハ厚生大臣ノ奏請ニ依リ厚生部內ノ高等官中ヨリ內閣ニ於テ之ヲ命ズ
幹事ハ會長ノ指揮ヲ承ケ庶務ヲ整理ス
第四十八條 船員保險審査會ニ書記ヲ置ク
第一次船員保險審査會ノ書記ハ其ノ審査會ノ所在地ヲ管轄スル地方長官ニ於テ當該廳府縣ノ判任官中ヨリ之ヲ命ジ第二次船員保險審査會ノ書記ハ保險院ノ判任官中ヨリ厚生大臣之ヲ命ズ
書記ハ會長及幹事ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ從事ス
第二節 審査ノ手續
第四十九條 保險給付ニ關スル決定ニ不服アル者ハ第一次船員保險審査會ニ審査ノ請求ヲ爲ス場合ニ於テハ其ノ保險給付ニ關スル申請又ハ請求ヲ地方長官ガ受取リタルモノニ付テハ其ノ地方長官ノ管轄區域ヲ管轄スル第一次船員保險審査會ニ、其ノ保險給付ニ關スル申請又ハ請求ヲ地方長官以外ノモノガ受取リタルモノニ付テハ厚生大臣ノ指定スル第一次船員保險審査會ニ之ヲ爲スベシ
第五十條 審査ハ委員定數ノ半數以上出席シ且第四十二條第一項又ハ第二項各號ノ委員各一人以上出席スルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ但シ同一ノ事件ニ付招集再囘ニ及ブ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第五十一條 審査ハ出席委員ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第五十二條 審査ハ文書ニ就キ之ヲ爲ス但シ必要アリト認ムルトキハ口頭審問ヲ爲スコトヲ妨ゲズ
前項但書ノ規定ニ依リ口頭審問ヲ爲ス爲出頭ヲ命ゼラレタル場合ニ於テ已ムコトヲ得ザル事故ノ爲出頭スルコトヲ得ザルトキハ當事者ハ其ノ法定代理人、親族又ハ同居者ヲシテ代リテ出頭セシムルコトヲ得
口頭審問ノ爲出頭シタル當事者及之ニ代リテ出頭シタル者ニ對シテハ命令ノ定ムル所ニ依リ旅費ヲ給スルコトヲ得
第五十三條 審査ノ請求アリタル場合ニ於テ其ノ事件ガ審査ノ請求ヲ爲スベカラザルモノナルトキ又ハ審査ノ請求ガ適法ノ手續ニ違反シタルモノナルトキハ船員保險審査會ハ決定ヲ以テ之ヲ却下スベシ
審査ノ請求アリタル場合ニ於テ其ノ事件ガ管轄違ナルトキハ之ヲ所轄船員保險審査會ニ移送スベシ
審査ノ請求ニシテ手續ノ方式ニ欠缺アルモノハ船員保險審査會之ヲ補正セシムベシ
第五十四條 審査ハ之ヲ公開セズ但シ口頭審問ハ之ヲ公開ス
口頭審問ヲ爲ス場合ニ於テ議長必要アリト認ムルトキハ前項但書ノ規定ニ拘ラズ傍聽ヲ制限又ハ禁止スルコトヲ得
第五十五條 關係官吏ハ船員保險審査會ノ請求ニ依リ又ハ其ノ承認ヲ受ケ會議ニ出席シ意見ヲ述ブルコトヲ得
第五十六條 事件ノ一部ガ審査ノ決定ヲ爲スニ熟スルトキハ其ノ部分ニ付先ヅ決定ヲ爲スコトヲ得
第五十七條 審査ノ決定ハ理由ヲ附シ文書ヲ以テ之ヲ爲スベシ
第五十八條 審査請求人ガ審査ノ決定前ニ死亡シタルトキハ其ノ承繼人ニ於テ審査請求手續ヲ受繼グモノトス
第五十九條 本節ニ規定スルモノノ外審査ニ關シ必要ナル事項ハ厚生大臣之ヲ定ム
第六章 朝鮮及臺灣ニ關スル特例
第六十條 朝鮮及臺灣ニ於ケル船員保險法ノ施行ニ關シテハ本章ノ規定竝ニ本章ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外第一章乃至第四章及第七章ノ規定ニ依ル
第六十一條 船員保險法中國稅徵收法トアルハ朝鮮ニ在リテハ國稅徵收令ニ於テ依ルコトヲ定メタル國稅徵收法、臺灣ニ在リテハ臺灣國稅徵收規則ニ於テ依ルコトヲ定メタル國稅徵收法トス
同法中主務大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督トシ北海道、府縣トアルハ朝鮮ニ在リテハ道、臺灣ニ在リテハ州又ハ廳トシ市町村トアルハ朝鮮ニ在リテハ府邑面、臺灣ニ在リテハ市街庄トシ市町村稅トアルハ朝鮮ニ在リテハ府邑面稅、臺灣ニ在リテハ市街庄稅トス
同法中民法又ハ船員法トアルハ朝鮮ニ在リテハ各朝鮮民事令ニ於テ依ルコトヲ定メタル民法又ハ朝鮮船員令ニ於テ依ルコトヲ定メタル船員法トス
第六十二條 本令中厚生大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督トシ保險院長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督府遞信局長、臺灣ニ在リテハ臺灣總督府交通局總長トシ府縣稅トアルハ朝鮮ニ在リテハ道稅、臺灣ニ在リテハ州廳稅トス
本令中地方長官トアルハ第六條第三項ノ場合ハ朝鮮ニ在リテハ道知事、臺灣ニ在リテハ州知事又ハ廳長トシ其ノ他ノ場合ハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督府遞信局長、臺灣ニ在リテハ臺灣總督府交通局總長トス
第十一條中及船員法第四十五條ノ規定ニ依リ管海官廳ノ事務ヲ行フ市町村長又ハ之ニ準ズル者トアルハ朝鮮ニ在リテハ竝ニ郵便局長及郵便所長トシ同條中市町村長又ハ之ニ準ズル者トアルハ臺灣ニ在リテハ市尹又ハ街庄長トス
第三十一條中內地トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮、臺灣ニ在リテハ臺灣トス
本令中船員法又ハ第十二條第一號中機船底曳網漁業(東經百三十度以東ノ海面ヲ操業區域トスルモノヲ除ク)トアルハ朝鮮ニ在リテハ各朝鮮船員令ニ於テ依ルコトヲ定メタル船員法又ハ朝鮮總督ノ指定スル機船底曳網漁業トス
第六十三條 保險給付ニ關スル決定ニ不服アル者ハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮船員保險審査會ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アルトキハ朝鮮總督府裁判所ニ訴ヲ提起シ臺灣ニ在リテハ臺灣船員保險審査會ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アルトキハ臺灣總督府法院ニ訴ヲ提起スルコトヲ得
前項ノ審査ノ請求ハ時效ノ中斷ニ關シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
第六十四條 保險料其ノ他船員保險法ニ依ル徵收金ノ賦課若ハ徵收ノ處分又ハ同法第十二條ノ規定ニ依ル處分ニ不服アル者ハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督ニ裁決ノ申請ヲ爲シ臺灣ニ在リテハ臺灣總督ニ訴願スルコトヲ得
第六十五條 保險料其ノ他船員保險法ニ依ル徵收金ノ賦課又ハ徵收ノ處分ニ關シ裁決ノ申請アリタルトキハ朝鮮總督ハ朝鮮船員保險審査會ノ審査ヲ經テ裁決ヲ爲シ訴願ノ提起アリタルトキハ臺灣總督ハ臺灣船員保險審査會ノ審査ヲ經テ裁決ヲ爲スベシ
第六十六條 第六十三條第一項ノ審査ノ請求若ハ訴ノ提起又ハ第六十四條ノ裁決ノ申請若ハ訴願ノ提起ハ處分ノ通知又ハ決定書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ之ヲ爲スベシ
前項ノ場合ニ於テ朝鮮ニ在リテハ審査ノ請求ニ付宥恕スベキ事由アリト認ムルトキハ期限經過後ニ於テモ仍之ヲ受理スルコトヲ得ルモノトシ訴ノ提起ニ付テハ朝鮮民事令ニ於テ依ルコトヲ定メタル民事訴訟法第百五十八條第二項及第百五十九條ノ規定ヲ準用ス
第一項ノ場合ニ於テ臺灣ニ在リテハ審査ノ請求ニ付テハ訴願法第八條第三項ノ規定ヲ、訴ノ提起ニ付テハ民事訴訟法第百五十八條第二項及第百五十九條ノ規定ヲ準用ス
第六十七條 朝鮮船員保險審査會ハ朝鮮總督ノ、臺灣船員保險審査會ハ臺灣總督ノ監督ニ屬シ第六十三條及第六十五條ノ審査ヲ爲ス
第六十八條 朝鮮船員保險審査會及臺灣船員保險審査會ハ各會長及委員ヲ以テ之ヲ組織ス
第六十九條 朝鮮船員保險審査會ノ會長ハ朝鮮總督府遞信局長ヲ以テ、臺灣船員保險審査會ノ會長ハ臺灣總督府交通局總長ヲ以テ之ニ充ツ
第七十條 朝鮮船員保險審査會及臺灣船員保險審査會ノ委員ハ各左ニ揭グル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 官吏、公吏又ハ學識經驗アル者 三人
二 被保險者ヲ雇傭スル船舶所有者 三人
三 被保險者側ヲ代表シ得ル者 三人
前項ニ於テ被保險者ヲ雇傭スル船舶所有者トアルハ船舶所有者ガ國ナル場合ニ於テハ關係官吏トシ公共團體ナル場合ニ於テハ關係官公吏、其ノ他ノ法人ナル場合ニ於テハ業務ヲ執行スル社員若ハ役員又ハ支配人トス
第七十一條 朝鮮船員保險審査會ノ委員ハ朝鮮總督ノ、臺灣船員保險審査會ノ委員ハ臺灣總督ノ奏請ニ依リ內閣ニ於テ之ヲ命ズ
第七十二條 朝鮮船員保險審査會及臺灣船員保險審査會ノ會長ハ會務ヲ總理シ會議ノ議長ト爲ル
會長事故アルトキハ朝鮮船員保險審査會ニ在リテハ朝鮮總督ノ、臺灣船員保險審査會ニ在リテハ臺灣總督ノ指名シタル委員其ノ職務ヲ代理ス
第七十三條 朝鮮船員保險審査會及臺灣船員保險審査會ニ幹事ヲ置ク朝鮮船員保險審査會ニ在リテハ朝鮮總督ノ奏請ニ依リ朝鮮總督府遞信官署ノ高等官中ヨリ、臺灣船員保險審査會ニ在リテハ臺灣總督ノ奏請ニ依リ臺灣總督府交通局ノ高等官中ヨリ內閣ニ於テ之ヲ命ズ
幹事ハ會長ノ指揮ヲ承ケ庶務ヲ整理ス
第七十四條 朝鮮船員保險審査會及臺灣船員保險審査會ニ書記ヲ置ク朝鮮船員保險審査會ニ在リテハ朝鮮總督府遞信官署ノ判任官中ヨリ朝鮮總督之ヲ命ジ臺灣船員保險審査會ニ在リテハ臺灣總督府交通局ノ判任官中ヨリ臺灣總督之ヲ命ズ
書記ハ會長及幹事ノ指揮ヲ受ケ庶務ニ從事ス
第七十五條 朝鮮船員保險審査會及臺灣船員保險審査會ノ審査ハ委員定數ノ半數以上出席シ且第七十條第一項各號ノ委員各一人以上出席スルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ但シ同一ノ事件ニ付招集再囘ニ及ブ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七十六條 第四十三條第一項、第四十五條、第五十一條、第五十二條、第五十三條第一項第三項及第五十四條乃至第五十八條ノ規定ハ朝鮮船員保險審査會及臺灣船員保險審査會ニ之ヲ準用ス
第七十七條 本章ニ規定スルモノノ外審査ニ關シ必要ナル事項ハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督之ヲ定ム
第七章 雜則
第七十八條 一ノ地域(內地、朝鮮又ハ臺灣トス以下之ニ同ジ)ニ於テ船員保險ノ被保險者タリシ期間ヲ計算スル場合ニ於テ其ノ者ガ他ノ地域(內地、朝鮮若ハ臺灣ノ中當該地域以外ノモノ又ハ關東州トス以下之ニ同ジ)ノ船員保險ノ被保險者タリシ者ナルトキハ其ノ被保險者タリシ期間ハ之ヲ當該地域ニ於テ船員保險ノ被保險者タリシ期間ト看做ス
第七十九條 一ノ地域ノ船員保險ノ被保險者ガ其ノ資格ヲ喪失スベキ原因タル事實ノ發生シタル日ニ於テ更ニ他ノ地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲リタルトキハ其ノ日ヨリ當該地域ノ船員保險ノ被保險者ノ資格ヲ喪失ス
第八十條 船員保險法第二十條ノ規定ニ依ル一ノ地域ノ船員保險ノ被保險者ガ他ノ地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲リタルトキハ當該地域ニ於テハ其ノ資格ヲ喪失ス
第八十一條 一ノ地域ニ於テ疾病又ハ負傷ニ關シ療養ノ給付又ハ船員法第十七條若ハ第二十九條ノ規定ニ依ル船舶所有者ノ扶助ヲ受クル者ガ他ノ地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲リタルトキハ當該地域ニ於テハ當該疾病又ハ負傷ニ關シ療養ノ給付ヲ爲サズ
第八十二條 疾病又ハ負傷ニ關シ他ノ地域ニ於テ療養ノ給付ヲ受クル者ガ一ノ地域ニ於テ當該地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲リタル場合ニ於テ當該疾病又ハ負傷ニ關シ療養ノ給付ヲ爲ストキハ他ノ地域ノ船員保險ニ於テ當該疾病又ハ負傷ニ關シ療養ノ給付ヲ始メタル日ヲ當該地域ノ船員保險ニ於テ當該疾病又ハ負傷ニ關シ療養ノ給付ヲ始メタル日ト看做ス
第八十三條 疾病又ハ負傷ニ關シ他ノ地域ニ船籍港ヲ定ムル船舶ノ所有者ヨリ船員法(關東州船員令ニ於テ依ルコトヲ定メタル場合ヲ含ム)第十七條又ハ第二十九條ノ規定ニ依ル扶助ヲ受クル者ガ一ノ地域ニ於テ當該地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲リタルトキハ當該疾病又ハ負傷ニ關シテハ船員保險法第三十三條ノ規定ヲ準用ス
第八十四條 一ノ地域ニ於テ養老年金ノ支給ヲ受クル者ガ他ノ地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲リタルトキハ當該地域ニ於テハ其ノ月ヨリ養老年金ノ支給ヲ爲サズ
第八十五條 船員保險法第三十九條第二項及第三項ノ規定ハ一ノ地域ニ於テ當該地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲リタル爲前條ノ規定(關東州ニ在リテハ之ニ相當スル法令ノ規定)ニ依リ他ノ地域ノ船員保險ノ養老年金ノ支給ヲ爲サレザルニ至リタル者ガ其ノ資格ヲ喪失シタル場合ニ之ヲ準用ス
第八十六條 一ノ地域ノ船員保險ノ被保險者タリシ者ガ其ノ資格喪失後一年六月以內ニ他ノ地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲リタルトキハ當該地域ニ於テハ脫退手當金ノ支給ヲ爲サズ但シ其ノ者ガ癈疾手當金ヲ受クル權利ヲ有スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第八十七條 一ノ地域ノ船員保險ノ被保險者タリシ者ガ他ノ地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲リタル後死亡シタルトキハ當該地域ニ於テハ死亡手當金ノ支給ヲ爲サズ
第八十八條 他ノ地域ニ於ケル第八條ノ規定(關東州ニ在リテハ之ニ相當スル法令ノ規定)ニ依リ指定シタル共濟組合ノ組合員タル被保險者又ハ被保險者タリシ者ガ一ノ地域ニ於ケル第八條ノ規定ニ依リ指定シタル共濟組合ノ組合員タラザル被保險者ト爲リタル場合ニ於テ必要ナル規定ハ一ノ地域ガ內地ナルトキハ厚生大臣、朝鮮ナルトキハ朝鮮總督、臺灣ナルトキハ臺灣總督之ヲ定メ、一ノ地域ニ於ケル第八條ノ規定ニ依リ指定シタル共濟組合ノ組合員タラザル被保險者又ハ被保險者タリシ者ガ他ノ地域ニ於ケル第八條ノ規定(關東州ニ在リテハ之ニ相當スル法令ノ規定)ニ依リ指定シタル共濟組合ノ組合員タル被保險者ト爲リタル場合ニ於テ必要ナル規定ハ一ノ地域ガ內地ナルトキハ厚生大臣、朝鮮ナルトキハ朝鮮總督、臺灣ナルトキハ臺灣總督之ヲ定ム
附 則
本令ハ昭和十五年三月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ保險給付及費用ノ負擔ニ關スル規定ハ船員保險法中保險給付及費用ノ負擔ニ關スル規定施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和十五年五月一日ニ於テ現ニ被保險者ノ資格ヲ有スル者ニ對スル標準報酬ハ第四條第一項ノ規定ニ拘ラズ同日ノ現在ニ依リ之ヲ定ム但シ其ノ者ガ昭和十五年五月二日以後ニ於テ被保險者ノ資格ヲ喪失シタル後更ニ被保險者ノ資格ヲ取得シタル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
船員保險法附則第二項中勅令ヲ以テ指定スル日トハ船員保險法中保險給付及費用ノ負擔ニ關スル規定施行ノ日トス
船員保險法附則第二項ノ規定ニ依リ支給スベキ脫退手當金ハ被保險者タリシ全期間ノ平均報酬月額ニ別表第三ニ定ムル月數ヲ乘ジテ得タル金額トス但シ癈疾手當金ノ支給ヲ受クル者ニ支給スベキ額ハ癈疾手當金ノ額ト合算シテ被保險者タリシ全期間ノ平均報酬月額ノ十五月分ニ相當スル金額ヲ超ユルコトヲ得ズ
船員保險法中保險給付及費用ノ負擔ニ關スル規定施行ノ日前十五年間ニ於テ他ノ地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲ルベキ資格ヲ有スル船員トシテ船舶ニ乘組ミタル者ノ其ノ乘組ミタル期間ハ其ノ者ガ一ノ地域ニ於テ當該地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲リタルトキハ之ヲ當該地域ノ船員保險ニ於テハ同日前十五年間ニ於テ當該地域ノ船員保險ノ被保險者ト爲ルベキ資格ヲ有スル船員トシテ船舶ニ乘組ミタル期間ト看做シ同法附則第二項ノ規定ヲ適用ス
別表第一
【表】
備考
一 視力ノ測定ハ萬國式視力表ニ依ル屈折異狀アルモノニ付テハ矯正視力ニ付測定ス
二 指ヲ失ヒタルモノトハ拇指ハ指關節、其ノ他ノ指ハ第一指關節以上ヲ失ヒタルモノヲ謂フ
三 指ノ用ヲ癈シタルモノトハ指ノ末節ノ半以上ヲ失ヒ又ハ掌指關節若ハ第一指關節(拇指ニ在リテハ指關節)ニ著シキ運動障害ヲ殘スモノヲ謂フ
四 趾ヲ失ヒタルモノトハ其ノ全部ヲ失ヒタルモノヲ謂フ
五 趾ノ用ヲ癈シタルモノトハ第一趾ハ末節ノ半以上、其ノ他ノ趾ハ末關節以上ヲ失ヒタルモノ又ハ蹠趾關節若ハ第一趾關節(第一趾ニ在リテハ趾關節)ニ著シキ運動障害ヲ殘スモノヲ謂フ
別表第二
【表】
備考 別表第一ノ備考ニ同ジ
別表第三
【表】
朕船員保険法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年二月二十二日
内閣総理大臣 米内光政
大蔵大臣 桜内幸雄
拓務大臣 小磯国昭
厚生大臣 吉田茂
逓信大臣 勝正憲
勅令第六十六号
船員保険法施行令
第一章 総則
第一条 船員保険法第三条第一項ノ給料ニ準ズベキモノノ範囲ハ左ニ掲グルモノトス
一 職長手当
二 勤続手当
三 機関部手当
四 其ノ他厚生大臣ノ指定スルモノ
第二条 給料ニ準ズベキモノノ全部又ハ一部ガ金銭以外ノ給与其ノ他ノ利益ナル場合ニ於テハ其ノ価額ハ保険院長官ノ定ムル標準価格ニ依リ之ヲ算定ス
第三条 船員保険法第四条第一項ノ標準報酬ハ被保険者ノ報酬月額ニ基キ左ノ区別ニ依リ之ヲ定ム
【表】
第四条 標準報酬ハ被保険者ノ資格ヲ取得シタル日ノ現在ニ依リ之ヲ定ム
被保険者ノ報酬ガ其ノ増減アリタルニ因リ従前ノ報酬月額ニ基キ定メラレタル標準報酬ニ該当セザルニ至リタル場合ニ於テハ其ノ報酬ニ増減アリタル月ノ翌月(報酬ニ増減アリタル日ガ月ノ初日ナルトキハ其ノ月)ヨリ其ノ標準報酬ヲ変更ス
船員保険法第二十条ノ規定ニ依ル被保険者ニ付テハ引続キ従前ノ標準報酬ニ依ル但シ其ノ者ノ申請ニ依リ標準報酬ヲ減額スルコトヲ得
第二項ノ規定ハ前項但書ノ規定ニ依リ標準報酬ヲ減額スル場合ニ之ヲ準用ス
第五条 第三条ニ規定スル被保険者ノ報酬月額ハ左ノ各号ノ規定ニ依リ之ヲ之ヲ算定ス
一 年ニ依リ報酬ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬決定ノ日ノ現在ニ於ケル年額ノ十二分ノ一
二 月ニ依リ報酬ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬決定ノ日ノ現在ニ於ケル月額
三 日ニ依リ報酬ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬決定ノ日ノ現在ニ於ケル日額ノ三十倍
四 前三号ノ外一定ノ期間ニ依リ報酬ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報酬決定ノ日ノ現在ニ於ケル其ノ報酬ノ額ヲ其ノ期間ノ日数ヲ以テ除シテ得タル額ノ三十倍
五 歩合ニ依リ報酬ヲ定ムル場合ニ於テハ同様ノ船舶ニ於テ同様ノ労務ニ従事スル者ガ通常ノ場合ニ於テ受クベキ額ヲ標準トシテ算定シタル額
六 前各号ノ二以上ニ該当スル報酬ヲ受クル場合ニ於テハ其ノ各ニ付前各号ノ規定ニ依リ算定シタル額ノ合算額
被保険者ノ報酬月額ガ前項ノ規定ニ依リ算定シ難キトキ又ハ前項ノ規定ニ依リテ算定シタル額ガ著シク不当ナルトキハ前項ノ規定ニ拘ラズ保険院長官ノ定ムル方法ニ依リ之ヲ算定ス
第六条 船員保険法第十二条第一項ノ規定ニ依リ保険料納付ノ督促ヲ為サントスルトキハ保険院長官ハ納付義務者ニ対シ督促状ヲ発スベシ
督促状ヲ発シタルトキハ督促手数料トシテ二十銭ヲ徴収ス
船員保険法第十二条第三項及第四項ノ規定中行政官庁トアルハ保険料滞納者ノ住所地又ハ其ノ者ノ財産ノ在ル地ヲ管轄スル地方長官(東京府ニ在リテハ警視総監以下之ニ同ジ)トス
第七条 前条ノ規定ニ依リ督促ヲ為シタル場合ニ於テハ徴収金額百円ニ付一日三銭ノ割合ヲ以テ納期限ノ翌日ヨリ徴収金完納又ハ財産差押ノ日ノ前日迄ノ日数ニ依リ計算シタル延滞金ヲ徴収ス但シ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合又ハ滞納ニ付酌量スベキ情状アリト認ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
一 納入ノ告知書一通ノ徴収金額十円未満ナルトキ
二 納期ヲ繰上ゲ徴収ヲ為ストキ
三 納付義務者ノ住所及居所ガ帝国内ニ在ラザル為又ハ其ノ住所及居所共ニ不明ナル為公示送達ノ方法ニ依リ納入ノ告知又ハ督促ヲ為シタルトキ
督促状ニ指定シタル期限迄ニ徴収金及督促手数料ヲ完納シタルトキハ延滞金ヲ徴収セズ
第八条 国ガ船舶所有者タル船舶ニ乗組ム被保険者ガ厚生大臣ノ指定シタル共済組合ヨリ保険給付ニ相当スル給付ヲ受クルトキハ其ノ者ニ対シテハ保険給付ヲ為サズ
前項ノ規定ニ依リ厚生大臣ノ指定スル共済組合ハ左ノ要件ヲ具フルモノニ限ル
一 被保険者タル組合員ニ対スル給付ノ種類ガ保険給付ノ種類ヲ包含シ且其ノ給付ガ同種ノ保険給付ト同程度ナルコト
二 被保険者タル組合員ニ対スル給付ノ中保険給付ニ相当スル給付ニ要スル費用ニ付国ガ船員保険法ニ依リ国庫及船舶所有者トシテ為ス負担ト同一ノ割合ヲ下ラザル負担ヲ為スコト
第九条 前条ノ規定ニ依リ保険給付ヲ受ケザル者ニ付テハ保険料ハ之ヲ徴収セズ
第十条 第八条ノ規定ニ依リ指定シタル共済組合ノ組合員タル被保険者若ハ被保険者タリシ者ガ第八条ノ規定ニ依リ指定シタル共済組合ノ組合員タラザル被保険者ト為リタル場合又ハ第八条ノ規定ニ依リ指定シタル共済組合ノ組合員タラザル被保険者若ハ被保険者タリシ者ガ第八条ノ規定ニ依リ指定シタル共済組合ノ組合員タル被保険者ト為リタル場合ニ於テ必要ナル規定ハ厚生大臣之ヲ定ム
第十一条 管海官庁及船員法第四十五条ノ規定ニ依リ管海官庁ノ事務ヲ行フ市町村長又ハ之ニ準ズル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ船員保険ニ関スル事務ノ一部ヲ行フ
第二章 被保険者
第十二条 漁船ニ乗組ム船員ニシテ左ニ掲グル者以外ノ者ハ船員保険法第十七条第三号ノ規定ニ依リ被保険者タラザルモノトス
一 汽船「トロール」漁業、母船式漁業、汽船捕鯨業又ハ機船底曳網漁業(東経百三十度以東ノ海面ヲ操業区域トスルモノヲ除ク)ニ従事スル漁船ニ乗組ム船員但シ母船式蟹漁業又ハ母船式鮭鱒漁業ニ従事スル附属漁船ニ乗組ム船員ヲ除ク
二 専ラ漁猟場ヨリ漁獲物又ハ其ノ化製品ヲ運搬スル業務ニ従事スル漁船ニ乗組ム船員
三 漁業ニ関スル試験、調査、指導、練習又ハ取締業務ニ従事スル漁船ニ乗組ム船員但シ臨時ニ雇傭セラルル船員ヲ除ク
第十三条 十年以上十五年未満被保険者タリシ者ガ被保険者タラザルニ至リタル場合ニ於テ其ノ資格ヲ喪失シタル日ヨリ三月以内ニ船員保険法第二十条ノ規定ニ依ル被保険者タラントスル申請ヲ為ストキハ継続シテ被保険者ト為ルコトヲ得
前項ニ規定スル期限ヲ経過シタル申請ト雖モ保険院長官ニ於テ正当ノ事由アリト認ムルトキハ之ヲ受理スルコトヲ得
第一項ノ申請ヲ為シタル者ガ初テ納付スベキ保険料ニ付第十四条第一号ニ掲グル事実アリタルトキハ継続シテ其ノ被保険者ト為ラザリシモノト看做ス
第十四条 船員保険法第二十一条第一項ニ規定スル事由ハ左ノ如シ
一 保険料ヲ滞納シ船員保険法第十二条第一項ノ規定ニ依ル指定ノ期限迄ニ其ノ保険料ヲ納付セザルトキ
二 船員保険法第十七条ノ規定ニ依ル被保険者ト為リタルトキ
三 船員保険法第二十条ノ規定ニ依ル被保険者ノ資格ヲ喪失セントスル申請ヲ為シタルトキ
第三章 保険給付
第十五条 船員保険法第三十六条、第三十七条若ハ第四十二条ノ規定ニ依ル一時金又ハ死亡手当金ヲ受クベキ者ハ被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ配偶者(届出ヲ為サザルモ事実上婚姻関係ト同様ノ事情ニ在ル者ヲ含ム以下之ニ同ジ)トシ配偶者ナキ場合ニ於テハ被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ死亡当時之ト同一ノ家ニ在リタル被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ直系卑属又ハ直系尊属トシ其ノ順位ハ親等ノ近キ者ヲ先ニシ卑属ト尊属ト親等相同ジキトキハ卑属ヲ先ニス
第十六条 前条ニ定メタル同順位者ノ間ニ在リテハ其ノ順位ハ左ノ規定ニ依ル
一 被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ家督相続人(之ニ準ズベキ者ヲ含ム以下之ニ同ジ)又ハ戸主ハ之ヲ他ノ者ヨリ先ニス
二 男ハ之ヲ女ヨリ先ニス
三 直系卑属ニ付テハ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニシ嫡出子、庶子及私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子及庶子ハ女ト雖モ之ヲ私生子ヨリ先ニス
四 前二号ニ掲グル事項ニ付相同ジキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス
第十七条 第十五条ノ規定ニ該当スル者ナキ場合ニ於テハ左ニ掲グル順位ニ依リ船員保険法第三十六条、第三十七条若ハ第四十二条ノ規定ニ依ル一時金又ハ死亡手当金ヲ支給ス但シ被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ遺言又ハ保険院長官ニ対シテ為シタル予告ニ依リ左ニ掲グル者ノ中一人ヲ特ニ指定シタルトキハ之ニ従フ
一 被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ家督相続人又ハ戸主
二 被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ兄弟姉妹ニシテ被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ死亡当時之ト同一ノ家ニ在リタルモノ
三 被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ死亡当時其ノ者ニ依リ生計ヲ維持シタル者
第十八条 船員保険法第二十八条第一項ノ療養ノ給付ノ範囲ハ左ノ如シ
一 診察
二 薬剤又ハ治療材料ノ支給
三 処置、手術其ノ他ノ治療
四 看護
五 移送
前項第三号ノ給付ハ緊急ノ場合其ノ他地方長官ガ必要アリト認ムル場合ヲ除クノ外之ニ要スル費用一回二十円以下ノモノニ限ル
第一項第四号及第五号ノ給付ハ地方長官ガ必要アリト認ムルモノニ限ル
第十九条 前条第一項第一号乃至第三号ノ給付ニ付テハ被保険者又ハ被保険者タリシ者ハ地方長官ノ指定シタル医師又ハ歯科医師中自己ノ選定シタル者ニ就キ之ヲ受クルコトヲ得但シ船員保険法第二十八条第三項ノ規定ニ依リ診療所ニ収容セラレタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
被保険者タリシ者ガ前項ノ規定ニ依リ医師又ハ歯科医師ヲ選定シタルトキハ地方長官ノ承認アリタル場合ヲ除クノ外之ヲ変更スルコトヲ得ズ
第二十条 前条ニ規定スル医師又ハ歯科医師ガ処方箋ヲ交付シタルトキハ被保険者又ハ被保険者タリシ者ハ地方長官ノ指定シタル薬剤師中自己ノ選定シタル者ニ就キ薬剤ヲ受クルコトヲ得
第二十一条 被保険者タリシ者ハ左ノ各号ニ規定スル期間内ニ療養ノ給付ヲ受ケザルトキハ爾後之ヲ受クルコトヲ得ズ但シ船員法第十七条又ハ第三十条ノ規定ニ依リ送還セラルル場合其ノ他特別ノ事由アル場合ニ於テ已ムコトヲ得ザルモノト認メラルルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 船員法第十七条又ハ第二十九条ノ規定ニ依ル扶助ヲ受クベキ場合ニ於テハ之ヲ受クルコトヲ得ベキ期間ヲ経過シタル日後十日以内
二 船員法第十七条又ハ第二十九条ノ規定ニ依ル扶助ヲ受クルコトヲ得ザル者ガ被保険者タリシ期間中療養ノ給付ヲ受ケザリシ場合ニ於テハ被保険者タル資格ヲ喪失シタル日後十日以内
第二十二条 報酬年額千八百円ヲ超ユル被保険者ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノ又ハ被保険者ノ資格喪失当時報酬年額千八百円ヲ超ユル被保険者タリシ者ニシテ左ノ各号ノ一ニ該当シタルモノニハ船員保険法第二十八条第二項ノ規定ニ依リ療養ノ給付ヲ為サズ
一 事務長
二 医師
三 無線通信士
四 通訳
五 船舶職員以外ノ運転士又ハ機関士ニシテ海技免状ヲ有スルモノ
六 其ノ他厚生大臣ニ於テ前各号ノ者ニ準ズト認ムル者
第二十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ船員保険法第二十九条ノ規定ニ依リ療養ノ給付ニ代ヘテ療養費ヲ支給スルコトヲ得
一 地方長官ニ於テ療養ノ給付ヲ為スコト困難ナリト認メタルトキ
二 被保険者又ハ被保険者タリシ者ガ地方長官ノ承認ヲ受ケ其ノ指定セザル医師又ハ歯科医師ノ診療ヲ受ケタル場合ニ於テ其ノ被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ申請アリタルトキ
三 被保険者又ハ被保険者タリシ者ガ緊急ノ場合ニ於テ地方長官ノ指定セザル医師、歯科医師其ノ他ノ者ノ手当ヲ受ケタル場合ニ於テ其ノ被保険者又ハ被保険者タリシ者ノ申請アリタルトキ
第二十四条 前条ノ規定ニ依リ支給スル療養費ノ額ハ療養ノ給付ヲ為ス場合ニ要スル額ヲ標準トシテ地方長官之ヲ定ム
第二十五条 第二十二条ノ規定ハ船員保険法第三十条第二項ノ規定ニ依リ傷病手当金ヲ支給セザル場合ニ之ヲ準用ス
第二十六条 船員保険法第二十八条第三項ノ規定ニ依リ診療所ニ収容シタル被保険者タリシ者ニ対シ支給スベキ傷病手当金ハ専ラ其ノ者ニ依リ生計ヲ維持スル者ナキ場合ニ於テハ標準報酬日額ノ百分ノ二十ニ相当スル金額トス
第二十七条 船員保険法第四十条ノ規定ニ依ル期間ハ船員保険法第二十八条第二項ニ規定スル者ニ付テハ被保険者ノ資格喪失ノ日ヨリ九月トシ其ノ他ノ者ニ付テハ療養ノ給付ヲ受クルコトヲ得ベキ期間トス
第二十八条 船員保険法第四十条ノ規定ニ依リ廃疾年金ヲ支給スベキ程度ノ廃疾ノ状態ハ別表第一ニ該当スルコトヲ要シ廃疾手当金ヲ支給スベキ程度ノ廃疾ノ状態ハ別表第二ニ該当スルコトヲ要ス
第二十九条 第二十六条ノ規定ハ船員保険法第五十三条第二項ニ掲グル者ニ対シ支給スベキ傷病手当金ニ之ヲ準用ス
第三十条 詐欺其ノ他不正ノ行為ニ依リ保険給付ヲ受ケ又ハ受ケントシタル者ニ対シテハ保険院長官ハ六月以内ノ期間ヲ定メ其ノ者ニ支給スベキ傷病手当金ノ全部又ハ一部ヲ支給セザル旨ノ決定ヲ為スコトヲ得但シ詐欺其ノ他不正ノ行為アリタル日ヨリ一年ヲ経過シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ決定ハ保険院長官ニ於テ其ノ事実ヲ知リタルトキ遅滞ナク之ヲ為シ本人ニ通知スベシ
第三十一条 被保険者又ハ被保険者タリシ者ニ対シ内地以外ノ地ニ於テ療養ノ給付ヲ為ス場合ニ於テハ第十八条第二項第三項、第十九条、第二十条、第二十三条及第二十四条中地方長官トアルハ保険院長官トス但シ事務ノ共助ヲ為ス場合其ノ他特別ノ事由アル場合ニ於テ必要アルトキハ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為スコトヲ得
第四章 費用ノ負担
第三十二条 保険料額ハ毎月ニ付船員保険法第二十二条第一項及第二項ノ規定ニ依リ計算シタル被保険者タリシ期間ガ一月ナルトキハ被保険者ノ標準報酬月額ニ保険料率ヲ乗ジテ得タル額トシ半月ナルトキハ被保険者ノ標準報酬月額ニ保険料率ヲ乗ジテ得タル額ノ半額トス
被保険者ノ資格ヲ取得シタル月ニ於テ其ノ資格ヲ喪失シタル場合ニ於ケル其ノ月分ノ保険料額ハ被保険者ノ標準報酬月額ニ保険料率ヲ乗ジテ得タル額ノ半額トス
保険料率ハ厚生大臣之ヲ定ム
第三十三条 船員保険法第二十条ノ規定ニ依ル被保険者ノ其ノ被保険者ト為リタル月ノ保険料額ハ前条ノ例ニ依リ之ヲ算定ス
第三十四条 船舶所有者ハ被保険者ニ対シ金銭ヲ以テ報酬ヲ支払フ場合ニ於テハ船員保険法第六十二条ノ規定ニ依リ被保険者ノ負担スベキ前月分ノ保険料(支払フ報酬ガ二月以上ノ期間ニ対スルモノナルトキハ其ノ期間ニ係ル保険料)ヲ其ノ報酬ヨリ控除スルコトヲ得被保険者ヲ雇傭セザルニ至リタル場合ニ於テハ其ノ月分ノ保険料ヲモ控除スルコトヲ得
第三十五条 船舶所有者ハ保険料ノ控除ニ関スル計算書ヲ作製シ被保険者ノ請求ニ応ジテ閲覧セシムベシ
第三十六条 毎月ノ保険料ハ翌月末日迄ニ之ヲ納付スベシ但シ船員保険法第二十条ノ規定ニ依ル被保険者ノ納付スベキ保険料ニ付テハ厚生大臣ニ於テ別段ノ定ヲ為スコトヲ得
保険院長官ハ保険料納入ノ告知ヲ為シタル後ニ於テ告知シタル保険料額ガ当該納付義務者ノ納付スベキ保険料額ヲ超過スルコトヲ知リタルトキハ其ノ超過部分ニ対スル納入ノ告知ハ其ノ告知ヲ為シタル後六月以内ノ期日ニ於テ納付セラルベキ保険料ニ対シ納期ヲ繰上ゲ之ヲ為シタルモノト看做スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ納期ヲ繰上ゲ納入ノ告知ヲ為シタルモノト看做シタルトキハ保険院長官ハ其ノ旨ヲ当該納付義務者ニ通知スベシ
第三十七条 保険料納付義務者ガ左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ納期前ト雖モ保険料ハ総テ之ヲ徴収スルコトヲ得
一 国税、府県税其ノ他ノ公課ノ滞納ニ因リ滞納処分ヲ受クルトキ
二 強制執行ヲ受クルトキ
三 破産ノ宣告ヲ受ケタルトキ
四 競売ノ開始アリタルトキ
五 法人ガ解散ヲ為シタルトキ
前項ノ規定ハ被保険者ノ乗組ム船舶ニ付船舶所有者ノ変更アリタル場合及被保険者ノ乗組ム船舶ガ滅失シ、沈没シ又ハ全ク運航ニ堪ヘザルニ至リタル場合ニ之ヲ準用ス
第五章 船員保険審査会
第一節 組織
第三十八条 船員保険審査会ハ厚生大臣ノ監督ニ属シ船員保険法第六十三条及第六十五条ノ審査ヲ為ス
第三十九条 船員保険審査会ハ第一次船員保険審査会及第二次船員保険審査会トス
第一次船員保険審査会ノ管轄区域ハ厚生大臣之ヲ定メ第二次船員保険審査会ノ管轄区域ハ内地ノ区域トス
船員保険審査会ノ名称及位置ハ厚生大臣之ヲ定ム
第四十条 船員保険審査会ハ会長及委員ヲ以テ之ヲ組織ス
第四十一条 第一次船員保険審査会ノ会長ハ其ノ審査会ノ所在地ヲ管轄スル地方長官ヲ以テ、第二次船員保険審査会ノ会長ハ保険院長官ヲ以テ之ニ充ツ
第四十二条 第一次船員保険審査会ノ委員ハ左ニ掲グル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 官吏、公吏又ハ学識経験アル者 三人
二 被保険者ヲ雇傭スル船舶所有者 三人
三 被保険者側ヲ代表シ得ル者 三人
第二次船員保険審査会ノ委員ハ左ニ掲グル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 官吏、公吏又ハ学識経験アル者 五人
二 被保険者ヲ雇傭スル船舶所有者 五人
三 被保険者側ヲ代表シ得ル者 五人
第一項第一号ノ規定ニ依ル委員中一人ハ其ノ審査会ノ所在地ヲ管轄スル地方長官トス
第一項及第二項ニ於テ被保険者ヲ雇傭スル船舶所有者トアルハ船舶所有者ガ国ナル場合ニ於テハ関係官吏トシ公共団体ナル場合ニ於テハ関係官公吏、其ノ他ノ法人ナル場合ニ於テハ業務ヲ執行スル社員若ハ役員又ハ支配人トス
第四十三条 主トシテ船員保険ノ事務ニ従事スル官吏ハ船員保険審査会ノ委員タルコトヲ得ズ
船員保険審査会ノ委員ハ他ノ船員保険審査会ノ委員ヲ兼ヌルコトヲ得ズ
第四十四条 第一次船員保険審査会ノ委員ハ第四十二条第三項ノ規定ニ依ル地方長官タル委員ヲ除クノ外厚生大臣之ヲ命ジ第二次船員保険審査会ノ委員ハ厚生大臣ノ奏請ニ依リ内閣ニ於テ之ヲ命ズ
第四十五条 委員ノ任期ハ官吏又ハ公吏トシテ委員タル者ヲ除クノ外三年トス但シ特別ノ事由アル場合ニ於テハ任期中之ヲ解任スルコトヲ妨ゲズ
第四十六条 会長ハ会務ヲ総理シ会議ノ議長ト為ル
会長事故アルトキハ第一次船員保険審査会ニ在リテハ其ノ審査会ノ所在地ヲ管轄スル地方長官ノ、第二次船員保険審査会ニ在リテハ厚生大臣ノ指名シタル委員其ノ職務ヲ代理ス
第四十七条 船員保険審査会ニ幹事ヲ置ク
第一次船員保険審査会ノ幹事ハ其ノ審査会ノ所在地ヲ管轄スル庁府県(東京府ヲ除ク以下之ニ同ジ)ノ官吏中ヨリ厚生大臣之ヲ命ジ第二次船員保険審査会ノ幹事ハ厚生大臣ノ奏請ニ依リ厚生部内ノ高等官中ヨリ内閣ニ於テ之ヲ命ズ
幹事ハ会長ノ指揮ヲ承ケ庶務ヲ整理ス
第四十八条 船員保険審査会ニ書記ヲ置ク
第一次船員保険審査会ノ書記ハ其ノ審査会ノ所在地ヲ管轄スル地方長官ニ於テ当該庁府県ノ判任官中ヨリ之ヲ命ジ第二次船員保険審査会ノ書記ハ保険院ノ判任官中ヨリ厚生大臣之ヲ命ズ
書記ハ会長及幹事ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第二節 審査ノ手続
第四十九条 保険給付ニ関スル決定ニ不服アル者ハ第一次船員保険審査会ニ審査ノ請求ヲ為ス場合ニ於テハ其ノ保険給付ニ関スル申請又ハ請求ヲ地方長官ガ受取リタルモノニ付テハ其ノ地方長官ノ管轄区域ヲ管轄スル第一次船員保険審査会ニ、其ノ保険給付ニ関スル申請又ハ請求ヲ地方長官以外ノモノガ受取リタルモノニ付テハ厚生大臣ノ指定スル第一次船員保険審査会ニ之ヲ為スベシ
第五十条 審査ハ委員定数ノ半数以上出席シ且第四十二条第一項又ハ第二項各号ノ委員各一人以上出席スルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ但シ同一ノ事件ニ付招集再回ニ及ブ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第五十一条 審査ハ出席委員ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第五十二条 審査ハ文書ニ就キ之ヲ為ス但シ必要アリト認ムルトキハ口頭審問ヲ為スコトヲ妨ゲズ
前項但書ノ規定ニ依リ口頭審問ヲ為ス為出頭ヲ命ゼラレタル場合ニ於テ已ムコトヲ得ザル事故ノ為出頭スルコトヲ得ザルトキハ当事者ハ其ノ法定代理人、親族又ハ同居者ヲシテ代リテ出頭セシムルコトヲ得
口頭審問ノ為出頭シタル当事者及之ニ代リテ出頭シタル者ニ対シテハ命令ノ定ムル所ニ依リ旅費ヲ給スルコトヲ得
第五十三条 審査ノ請求アリタル場合ニ於テ其ノ事件ガ審査ノ請求ヲ為スベカラザルモノナルトキ又ハ審査ノ請求ガ適法ノ手続ニ違反シタルモノナルトキハ船員保険審査会ハ決定ヲ以テ之ヲ却下スベシ
審査ノ請求アリタル場合ニ於テ其ノ事件ガ管轄違ナルトキハ之ヲ所轄船員保険審査会ニ移送スベシ
審査ノ請求ニシテ手続ノ方式ニ欠欠アルモノハ船員保険審査会之ヲ補正セシムベシ
第五十四条 審査ハ之ヲ公開セズ但シ口頭審問ハ之ヲ公開ス
口頭審問ヲ為ス場合ニ於テ議長必要アリト認ムルトキハ前項但書ノ規定ニ拘ラズ傍聴ヲ制限又ハ禁止スルコトヲ得
第五十五条 関係官吏ハ船員保険審査会ノ請求ニ依リ又ハ其ノ承認ヲ受ケ会議ニ出席シ意見ヲ述ブルコトヲ得
第五十六条 事件ノ一部ガ審査ノ決定ヲ為スニ熟スルトキハ其ノ部分ニ付先ヅ決定ヲ為スコトヲ得
第五十七条 審査ノ決定ハ理由ヲ附シ文書ヲ以テ之ヲ為スベシ
第五十八条 審査請求人ガ審査ノ決定前ニ死亡シタルトキハ其ノ承継人ニ於テ審査請求手続ヲ受継グモノトス
第五十九条 本節ニ規定スルモノノ外審査ニ関シ必要ナル事項ハ厚生大臣之ヲ定ム
第六章 朝鮮及台湾ニ関スル特例
第六十条 朝鮮及台湾ニ於ケル船員保険法ノ施行ニ関シテハ本章ノ規定並ニ本章ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外第一章乃至第四章及第七章ノ規定ニ依ル
第六十一条 船員保険法中国税徴収法トアルハ朝鮮ニ在リテハ国税徴収令ニ於テ依ルコトヲ定メタル国税徴収法、台湾ニ在リテハ台湾国税徴収規則ニ於テ依ルコトヲ定メタル国税徴収法トス
同法中主務大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督、台湾ニ在リテハ台湾総督トシ北海道、府県トアルハ朝鮮ニ在リテハ道、台湾ニ在リテハ州又ハ庁トシ市町村トアルハ朝鮮ニ在リテハ府邑面、台湾ニ在リテハ市街庄トシ市町村税トアルハ朝鮮ニ在リテハ府邑面税、台湾ニ在リテハ市街庄税トス
同法中民法又ハ船員法トアルハ朝鮮ニ在リテハ各朝鮮民事令ニ於テ依ルコトヲ定メタル民法又ハ朝鮮船員令ニ於テ依ルコトヲ定メタル船員法トス
第六十二条 本令中厚生大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督、台湾ニ在リテハ台湾総督トシ保険院長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督府逓信局長、台湾ニ在リテハ台湾総督府交通局総長トシ府県税トアルハ朝鮮ニ在リテハ道税、台湾ニ在リテハ州庁税トス
本令中地方長官トアルハ第六条第三項ノ場合ハ朝鮮ニ在リテハ道知事、台湾ニ在リテハ州知事又ハ庁長トシ其ノ他ノ場合ハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督府逓信局長、台湾ニ在リテハ台湾総督府交通局総長トス
第十一条中及船員法第四十五条ノ規定ニ依リ管海官庁ノ事務ヲ行フ市町村長又ハ之ニ準ズル者トアルハ朝鮮ニ在リテハ並ニ郵便局長及郵便所長トシ同条中市町村長又ハ之ニ準ズル者トアルハ台湾ニ在リテハ市尹又ハ街庄長トス
第三十一条中内地トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮、台湾ニ在リテハ台湾トス
本令中船員法又ハ第十二条第一号中機船底曳網漁業(東経百三十度以東ノ海面ヲ操業区域トスルモノヲ除ク)トアルハ朝鮮ニ在リテハ各朝鮮船員令ニ於テ依ルコトヲ定メタル船員法又ハ朝鮮総督ノ指定スル機船底曳網漁業トス
第六十三条 保険給付ニ関スル決定ニ不服アル者ハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮船員保険審査会ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アルトキハ朝鮮総督府裁判所ニ訴ヲ提起シ台湾ニ在リテハ台湾船員保険審査会ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アルトキハ台湾総督府法院ニ訴ヲ提起スルコトヲ得
前項ノ審査ノ請求ハ時効ノ中断ニ関シテハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
第六十四条 保険料其ノ他船員保険法ニ依ル徴収金ノ賦課若ハ徴収ノ処分又ハ同法第十二条ノ規定ニ依ル処分ニ不服アル者ハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督ニ裁決ノ申請ヲ為シ台湾ニ在リテハ台湾総督ニ訴願スルコトヲ得
第六十五条 保険料其ノ他船員保険法ニ依ル徴収金ノ賦課又ハ徴収ノ処分ニ関シ裁決ノ申請アリタルトキハ朝鮮総督ハ朝鮮船員保険審査会ノ審査ヲ経テ裁決ヲ為シ訴願ノ提起アリタルトキハ台湾総督ハ台湾船員保険審査会ノ審査ヲ経テ裁決ヲ為スベシ
第六十六条 第六十三条第一項ノ審査ノ請求若ハ訴ノ提起又ハ第六十四条ノ裁決ノ申請若ハ訴願ノ提起ハ処分ノ通知又ハ決定書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ之ヲ為スベシ
前項ノ場合ニ於テ朝鮮ニ在リテハ審査ノ請求ニ付宥恕スベキ事由アリト認ムルトキハ期限経過後ニ於テモ仍之ヲ受理スルコトヲ得ルモノトシ訴ノ提起ニ付テハ朝鮮民事令ニ於テ依ルコトヲ定メタル民事訴訟法第百五十八条第二項及第百五十九条ノ規定ヲ準用ス
第一項ノ場合ニ於テ台湾ニ在リテハ審査ノ請求ニ付テハ訴願法第八条第三項ノ規定ヲ、訴ノ提起ニ付テハ民事訴訟法第百五十八条第二項及第百五十九条ノ規定ヲ準用ス
第六十七条 朝鮮船員保険審査会ハ朝鮮総督ノ、台湾船員保険審査会ハ台湾総督ノ監督ニ属シ第六十三条及第六十五条ノ審査ヲ為ス
第六十八条 朝鮮船員保険審査会及台湾船員保険審査会ハ各会長及委員ヲ以テ之ヲ組織ス
第六十九条 朝鮮船員保険審査会ノ会長ハ朝鮮総督府逓信局長ヲ以テ、台湾船員保険審査会ノ会長ハ台湾総督府交通局総長ヲ以テ之ニ充ツ
第七十条 朝鮮船員保険審査会及台湾船員保険審査会ノ委員ハ各左ニ掲グル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 官吏、公吏又ハ学識経験アル者 三人
二 被保険者ヲ雇傭スル船舶所有者 三人
三 被保険者側ヲ代表シ得ル者 三人
前項ニ於テ被保険者ヲ雇傭スル船舶所有者トアルハ船舶所有者ガ国ナル場合ニ於テハ関係官吏トシ公共団体ナル場合ニ於テハ関係官公吏、其ノ他ノ法人ナル場合ニ於テハ業務ヲ執行スル社員若ハ役員又ハ支配人トス
第七十一条 朝鮮船員保険審査会ノ委員ハ朝鮮総督ノ、台湾船員保険審査会ノ委員ハ台湾総督ノ奏請ニ依リ内閣ニ於テ之ヲ命ズ
第七十二条 朝鮮船員保険審査会及台湾船員保険審査会ノ会長ハ会務ヲ総理シ会議ノ議長ト為ル
会長事故アルトキハ朝鮮船員保険審査会ニ在リテハ朝鮮総督ノ、台湾船員保険審査会ニ在リテハ台湾総督ノ指名シタル委員其ノ職務ヲ代理ス
第七十三条 朝鮮船員保険審査会及台湾船員保険審査会ニ幹事ヲ置ク朝鮮船員保険審査会ニ在リテハ朝鮮総督ノ奏請ニ依リ朝鮮総督府逓信官署ノ高等官中ヨリ、台湾船員保険審査会ニ在リテハ台湾総督ノ奏請ニ依リ台湾総督府交通局ノ高等官中ヨリ内閣ニ於テ之ヲ命ズ
幹事ハ会長ノ指揮ヲ承ケ庶務ヲ整理ス
第七十四条 朝鮮船員保険審査会及台湾船員保険審査会ニ書記ヲ置ク朝鮮船員保険審査会ニ在リテハ朝鮮総督府逓信官署ノ判任官中ヨリ朝鮮総督之ヲ命ジ台湾船員保険審査会ニ在リテハ台湾総督府交通局ノ判任官中ヨリ台湾総督之ヲ命ズ
書記ハ会長及幹事ノ指揮ヲ受ケ庶務ニ従事ス
第七十五条 朝鮮船員保険審査会及台湾船員保険審査会ノ審査ハ委員定数ノ半数以上出席シ且第七十条第一項各号ノ委員各一人以上出席スルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ但シ同一ノ事件ニ付招集再回ニ及ブ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七十六条 第四十三条第一項、第四十五条、第五十一条、第五十二条、第五十三条第一項第三項及第五十四条乃至第五十八条ノ規定ハ朝鮮船員保険審査会及台湾船員保険審査会ニ之ヲ準用ス
第七十七条 本章ニ規定スルモノノ外審査ニ関シ必要ナル事項ハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督、台湾ニ在リテハ台湾総督之ヲ定ム
第七章 雑則
第七十八条 一ノ地域(内地、朝鮮又ハ台湾トス以下之ニ同ジ)ニ於テ船員保険ノ被保険者タリシ期間ヲ計算スル場合ニ於テ其ノ者ガ他ノ地域(内地、朝鮮若ハ台湾ノ中当該地域以外ノモノ又ハ関東州トス以下之ニ同ジ)ノ船員保険ノ被保険者タリシ者ナルトキハ其ノ被保険者タリシ期間ハ之ヲ当該地域ニ於テ船員保険ノ被保険者タリシ期間ト看做ス
第七十九条 一ノ地域ノ船員保険ノ被保険者ガ其ノ資格ヲ喪失スベキ原因タル事実ノ発生シタル日ニ於テ更ニ他ノ地域ノ船員保険ノ被保険者ト為リタルトキハ其ノ日ヨリ当該地域ノ船員保険ノ被保険者ノ資格ヲ喪失ス
第八十条 船員保険法第二十条ノ規定ニ依ル一ノ地域ノ船員保険ノ被保険者ガ他ノ地域ノ船員保険ノ被保険者ト為リタルトキハ当該地域ニ於テハ其ノ資格ヲ喪失ス
第八十一条 一ノ地域ニ於テ疾病又ハ負傷ニ関シ療養ノ給付又ハ船員法第十七条若ハ第二十九条ノ規定ニ依ル船舶所有者ノ扶助ヲ受クル者ガ他ノ地域ノ船員保険ノ被保険者ト為リタルトキハ当該地域ニ於テハ当該疾病又ハ負傷ニ関シ療養ノ給付ヲ為サズ
第八十二条 疾病又ハ負傷ニ関シ他ノ地域ニ於テ療養ノ給付ヲ受クル者ガ一ノ地域ニ於テ当該地域ノ船員保険ノ被保険者ト為リタル場合ニ於テ当該疾病又ハ負傷ニ関シ療養ノ給付ヲ為ストキハ他ノ地域ノ船員保険ニ於テ当該疾病又ハ負傷ニ関シ療養ノ給付ヲ始メタル日ヲ当該地域ノ船員保険ニ於テ当該疾病又ハ負傷ニ関シ療養ノ給付ヲ始メタル日ト看做ス
第八十三条 疾病又ハ負傷ニ関シ他ノ地域ニ船籍港ヲ定ムル船舶ノ所有者ヨリ船員法(関東州船員令ニ於テ依ルコトヲ定メタル場合ヲ含ム)第十七条又ハ第二十九条ノ規定ニ依ル扶助ヲ受クル者ガ一ノ地域ニ於テ当該地域ノ船員保険ノ被保険者ト為リタルトキハ当該疾病又ハ負傷ニ関シテハ船員保険法第三十三条ノ規定ヲ準用ス
第八十四条 一ノ地域ニ於テ養老年金ノ支給ヲ受クル者ガ他ノ地域ノ船員保険ノ被保険者ト為リタルトキハ当該地域ニ於テハ其ノ月ヨリ養老年金ノ支給ヲ為サズ
第八十五条 船員保険法第三十九条第二項及第三項ノ規定ハ一ノ地域ニ於テ当該地域ノ船員保険ノ被保険者ト為リタル為前条ノ規定(関東州ニ在リテハ之ニ相当スル法令ノ規定)ニ依リ他ノ地域ノ船員保険ノ養老年金ノ支給ヲ為サレザルニ至リタル者ガ其ノ資格ヲ喪失シタル場合ニ之ヲ準用ス
第八十六条 一ノ地域ノ船員保険ノ被保険者タリシ者ガ其ノ資格喪失後一年六月以内ニ他ノ地域ノ船員保険ノ被保険者ト為リタルトキハ当該地域ニ於テハ脱退手当金ノ支給ヲ為サズ但シ其ノ者ガ廃疾手当金ヲ受クル権利ヲ有スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第八十七条 一ノ地域ノ船員保険ノ被保険者タリシ者ガ他ノ地域ノ船員保険ノ被保険者ト為リタル後死亡シタルトキハ当該地域ニ於テハ死亡手当金ノ支給ヲ為サズ
第八十八条 他ノ地域ニ於ケル第八条ノ規定(関東州ニ在リテハ之ニ相当スル法令ノ規定)ニ依リ指定シタル共済組合ノ組合員タル被保険者又ハ被保険者タリシ者ガ一ノ地域ニ於ケル第八条ノ規定ニ依リ指定シタル共済組合ノ組合員タラザル被保険者ト為リタル場合ニ於テ必要ナル規定ハ一ノ地域ガ内地ナルトキハ厚生大臣、朝鮮ナルトキハ朝鮮総督、台湾ナルトキハ台湾総督之ヲ定メ、一ノ地域ニ於ケル第八条ノ規定ニ依リ指定シタル共済組合ノ組合員タラザル被保険者又ハ被保険者タリシ者ガ他ノ地域ニ於ケル第八条ノ規定(関東州ニ在リテハ之ニ相当スル法令ノ規定)ニ依リ指定シタル共済組合ノ組合員タル被保険者ト為リタル場合ニ於テ必要ナル規定ハ一ノ地域ガ内地ナルトキハ厚生大臣、朝鮮ナルトキハ朝鮮総督、台湾ナルトキハ台湾総督之ヲ定ム
附 則
本令ハ昭和十五年三月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ保険給付及費用ノ負担ニ関スル規定ハ船員保険法中保険給付及費用ノ負担ニ関スル規定施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和十五年五月一日ニ於テ現ニ被保険者ノ資格ヲ有スル者ニ対スル標準報酬ハ第四条第一項ノ規定ニ拘ラズ同日ノ現在ニ依リ之ヲ定ム但シ其ノ者ガ昭和十五年五月二日以後ニ於テ被保険者ノ資格ヲ喪失シタル後更ニ被保険者ノ資格ヲ取得シタル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
船員保険法附則第二項中勅令ヲ以テ指定スル日トハ船員保険法中保険給付及費用ノ負担ニ関スル規定施行ノ日トス
船員保険法附則第二項ノ規定ニ依リ支給スベキ脱退手当金ハ被保険者タリシ全期間ノ平均報酬月額ニ別表第三ニ定ムル月数ヲ乗ジテ得タル金額トス但シ廃疾手当金ノ支給ヲ受クル者ニ支給スベキ額ハ廃疾手当金ノ額ト合算シテ被保険者タリシ全期間ノ平均報酬月額ノ十五月分ニ相当スル金額ヲ超ユルコトヲ得ズ
船員保険法中保険給付及費用ノ負担ニ関スル規定施行ノ日前十五年間ニ於テ他ノ地域ノ船員保険ノ被保険者ト為ルベキ資格ヲ有スル船員トシテ船舶ニ乗組ミタル者ノ其ノ乗組ミタル期間ハ其ノ者ガ一ノ地域ニ於テ当該地域ノ船員保険ノ被保険者ト為リタルトキハ之ヲ当該地域ノ船員保険ニ於テハ同日前十五年間ニ於テ当該地域ノ船員保険ノ被保険者ト為ルベキ資格ヲ有スル船員トシテ船舶ニ乗組ミタル期間ト看做シ同法附則第二項ノ規定ヲ適用ス
別表第一
【表】
備考
一 視力ノ測定ハ万国式視力表ニ依ル屈折異状アルモノニ付テハ矯正視力ニ付測定ス
二 指ヲ失ヒタルモノトハ拇指ハ指関節、其ノ他ノ指ハ第一指関節以上ヲ失ヒタルモノヲ謂フ
三 指ノ用ヲ廃シタルモノトハ指ノ末節ノ半以上ヲ失ヒ又ハ掌指関節若ハ第一指関節(拇指ニ在リテハ指関節)ニ著シキ運動障害ヲ残スモノヲ謂フ
四 趾ヲ失ヒタルモノトハ其ノ全部ヲ失ヒタルモノヲ謂フ
五 趾ノ用ヲ廃シタルモノトハ第一趾ハ末節ノ半以上、其ノ他ノ趾ハ末関節以上ヲ失ヒタルモノ又ハ蹠趾関節若ハ第一趾関節(第一趾ニ在リテハ趾関節)ニ著シキ運動障害ヲ残スモノヲ謂フ
別表第二
【表】
備考 別表第一ノ備考ニ同ジ
別表第三
【表】