司法保護事業法
法令番号: 法律第四十二號
公布年月日: 昭和14年3月30日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル司法保護事業法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年三月二十九日
內閣總理大臣 男爵 平沼騏一郞
司法大臣 鹽野季彥
內務大臣 侯爵 木戶幸一
大藏大臣 石渡莊太郞
法律第四十二號
司法保護事業法
第一條 本法ニ於テ司法保護事業トハ左ニ揭グル者ノ保護ヲ爲ス事業及右事業ニ關シ指導、聯絡又ハ助成ヲ爲ス事業ヲ謂フ
一 訴追ヲ必要トセザル爲公訴ヲ提起セズトセラレタル者
二 刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタル者
三 刑ノ執行停止中ノ者
四 刑ノ執行ノ免除ヲ得タル者
五 假出獄中ノ者
六 刑ノ執行ヲ終リタル者
七 少年法ニ依リ保護處分ヲ受ケタル者
第二條 前條ノ保護ニ於テハ本人ガ更ニ罪ヲ犯スノ危險ヲ防止シ之ヲシテ進ンデ臣民ノ本分ヲ恪守セシムル爲性格ノ陶冶、生業ノ助成其ノ他適當ノ處置ヲ以テ本人ヲ輔導スルモノトス
保護ノ種類及方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條 司法保護事業ヲ經營セントスル者ハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ廢止セントスルトキ亦同ジ
第四條 主務大臣ハ司法保護事業ヲ經營スル者ニ對シ監督上必要アル場合ニ於テハ其ノ事業ニ關スル報吿ヲ徵シ、實況ヲ調査シ又ハ事業ノ經營ニ關シ指示ヲ爲スコトヲ得
第五條 主務大臣ハ司法保護事業ヲ經營スル者ニ對シ司法保護事業ニ關スル事項ノ調査ヲ委囑スルコトヲ得
第六條 司法保護事業ヲ經營スル者其ノ事業ノ經營ニ必要ナル資金ヲ得ル爲寄附金ヲ募集セントスルトキハ主務大臣又ハ地方長官ノ許可ヲ受クベシ
前項ノ規定ニ依リ寄附金ヲ募集シタル者(其ノ承繼者ヲ含ム)ハ其ノ收支ヲ寄附金募集ノ許可ヲ受ケタル官廳ニ報吿スベシ
前項ニ揭グル者其ノ寄附金又ハ之ニ依リテ得タル財產ヲ處分セントスルトキハ寄附金募集ノ許可ヲ受ケタル官廳ノ許可ヲ受クベシ
第七條 司法保護事業ヲ經營スル者本法ニ違反シ、公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリ又ハ著シク不當ノ行爲アリタルトキハ主務大臣ハ司法保護事業委員會ノ意見ヲ聽キ其ノ者ニ對シ第三條ノ認可ヲ取消シ又ハ事業ノ經營ヲ制限スルコトヲ得司法保護事業ヲ經營スル者ガ法人ナル場合ニ於テ理事其ノ他ノ業務ヲ執行スル役員ニ著シク不當ノ行爲アリタルトキ亦同ジ
司法保護事業委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條 政府ハ司法保護事業ヲ經營スル者ニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ奬勵金ヲ交付スルコトヲ得
第九條 道府縣、市町村其ノ他ノ公共團體ハ司法保護事業ノ用ニ供スル土地建物ニ對シテ租稅其ノ他ノ公課ヲ課スルコトヲ得ズ但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十條 第一條ニ揭グル者ノ保護ヲ爲サシムル爲別ニ司法保護委員ヲ置ク
司法保護委員ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條 司法保護事業ヲ經營スル者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第六條第一項ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケズシテ寄附金ヲ募集シタルトキ
二 第六條第二項ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタルトキ
三 第六條第三項ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケズ又ハ其ノ許可ニ反シテ寄附金又ハ之ニ依リ得タル財產ヲ處分シタルトキ
四 第七條ノ規定ニ依ル取消又ハ制限ニ違反シテ司法保護事業ヲ經營シタルトキ
第十二條 司法保護事業ヲ經營スル者ハ其ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十三條 司法保護事業ヲ經營スル者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ司法保護事業ヲ經營スル者ニシテ命令ノ定ムル所ニ依リ屆出ヲ爲シタルモノハ第三條ノ規定ニ依ル認可ヲ受ケタル者ト看做ス
第六條第一項ノ規定ハ司法保護事業ヲ經營スル者ニシテ本法施行前寄附金ノ募集ニ付行政官廳ノ許可ヲ受ケタルモノニ對シテハ其ノ許可ニ基キ本法施行ノ際現ニ募集中ノ寄附金ニ付之ヲ適用セズ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル司法保護事業法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十四年三月二十九日
内閣総理大臣 男爵 平沼騏一郎
司法大臣 塩野季彦
内務大臣 侯爵 木戸幸一
大蔵大臣 石渡荘太郎
法律第四十二号
司法保護事業法
第一条 本法ニ於テ司法保護事業トハ左ニ掲グル者ノ保護ヲ為ス事業及右事業ニ関シ指導、連絡又ハ助成ヲ為ス事業ヲ謂フ
一 訴追ヲ必要トセザル為公訴ヲ提起セズトセラレタル者
二 刑ノ執行猶予ノ言渡ヲ受ケタル者
三 刑ノ執行停止中ノ者
四 刑ノ執行ノ免除ヲ得タル者
五 仮出獄中ノ者
六 刑ノ執行ヲ終リタル者
七 少年法ニ依リ保護処分ヲ受ケタル者
第二条 前条ノ保護ニ於テハ本人ガ更ニ罪ヲ犯スノ危険ヲ防止シ之ヲシテ進ンデ臣民ノ本分ヲ恪守セシムル為性格ノ陶冶、生業ノ助成其ノ他適当ノ処置ヲ以テ本人ヲ輔導スルモノトス
保護ノ種類及方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三条 司法保護事業ヲ経営セントスル者ハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ廃止セントスルトキ亦同ジ
第四条 主務大臣ハ司法保護事業ヲ経営スル者ニ対シ監督上必要アル場合ニ於テハ其ノ事業ニ関スル報告ヲ徴シ、実況ヲ調査シ又ハ事業ノ経営ニ関シ指示ヲ為スコトヲ得
第五条 主務大臣ハ司法保護事業ヲ経営スル者ニ対シ司法保護事業ニ関スル事項ノ調査ヲ委嘱スルコトヲ得
第六条 司法保護事業ヲ経営スル者其ノ事業ノ経営ニ必要ナル資金ヲ得ル為寄附金ヲ募集セントスルトキハ主務大臣又ハ地方長官ノ許可ヲ受クベシ
前項ノ規定ニ依リ寄附金ヲ募集シタル者(其ノ承継者ヲ含ム)ハ其ノ収支ヲ寄附金募集ノ許可ヲ受ケタル官庁ニ報告スベシ
前項ニ掲グル者其ノ寄附金又ハ之ニ依リテ得タル財産ヲ処分セントスルトキハ寄附金募集ノ許可ヲ受ケタル官庁ノ許可ヲ受クベシ
第七条 司法保護事業ヲ経営スル者本法ニ違反シ、公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリ又ハ著シク不当ノ行為アリタルトキハ主務大臣ハ司法保護事業委員会ノ意見ヲ聴キ其ノ者ニ対シ第三条ノ認可ヲ取消シ又ハ事業ノ経営ヲ制限スルコトヲ得司法保護事業ヲ経営スル者ガ法人ナル場合ニ於テ理事其ノ他ノ業務ヲ執行スル役員ニ著シク不当ノ行為アリタルトキ亦同ジ
司法保護事業委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八条 政府ハ司法保護事業ヲ経営スル者ニ対シ予算ノ範囲内ニ於テ奨励金ヲ交付スルコトヲ得
第九条 道府県、市町村其ノ他ノ公共団体ハ司法保護事業ノ用ニ供スル土地建物ニ対シテ租税其ノ他ノ公課ヲ課スルコトヲ得ズ但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十条 第一条ニ掲グル者ノ保護ヲ為サシムル為別ニ司法保護委員ヲ置ク
司法保護委員ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一条 司法保護事業ヲ経営スル者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第六条第一項ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケズシテ寄附金ヲ募集シタルトキ
二 第六条第二項ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタルトキ
三 第六条第三項ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケズ又ハ其ノ許可ニ反シテ寄附金又ハ之ニ依リ得タル財産ヲ処分シタルトキ
四 第七条ノ規定ニ依ル取消又ハ制限ニ違反シテ司法保護事業ヲ経営シタルトキ
第十二条 司法保護事業ヲ経営スル者ハ其ノ代理人、戸主、家族、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ本法ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十三条 司法保護事業ヲ経営スル者ニ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ司法保護事業ヲ経営スル者ニシテ命令ノ定ムル所ニ依リ届出ヲ為シタルモノハ第三条ノ規定ニ依ル認可ヲ受ケタル者ト看做ス
第六条第一項ノ規定ハ司法保護事業ヲ経営スル者ニシテ本法施行前寄附金ノ募集ニ付行政官庁ノ許可ヲ受ケタルモノニ対シテハ其ノ許可ニ基キ本法施行ノ際現ニ募集中ノ寄附金ニ付之ヲ適用セズ