社会事業法
法令番号: 法律第五十九號
公布年月日: 昭和13年4月1日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル社會事業法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月三十一日
內閣總理大臣 公爵 近衞文麿
大藏大臣 賀屋興宣
厚生大臣 侯爵 木戶幸一
法律第五十九號
社會事業法
第一條 本法ハ左ニ揭グル社會事業ニ之ヲ適用ス但シ勅令ヲ以テ指定スルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
一 養老院、救護所其ノ他生活扶助ヲ爲ス事業
二 育兒院、託兒所其ノ他兒童保護ヲ爲ス事業
三 施療所、產院其ノ他施藥、救療又ハ助產保護ヲ爲ス事業
四 授產場、宿泊所其ノ他經濟保護ヲ爲ス事業
五 其ノ他勅令ヲ以テ指定スル事業
六 前各號ニ揭グル事業ニ關スル指導、聯絡又ハ助成ヲ爲ス事業
第二條 社會事業ヲ經營スル者其ノ事業ヲ開始シタルトキ又ハ之ヲ廢止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨事業經營地ノ地方長官ニ屆出ヅベシ
第三條 地方長官ハ社會事業ヲ經營スル者ニ對シ保護ヲ要スル者ノ收容ヲ委託スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル委託アリタル場合ニ於テ社會事業ヲ經營スル者ハ正當ノ事由アルニ非ザレバ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
第四條 地方長官ハ社會事業ノ施設ニ收容セラレタル者ノ處遇上必要アリト認ムルトキハ社會事業ヲ經營スル者ニ對シ其ノ施設ニ屬スル建物又ハ設備ノ改良ヲ命ズルコトヲ得
社會事業ヲ經營スル者前項ノ規定ニ依ル處分ニ從ハザルトキハ地方長官ハ當該建物又ハ設備ノ使用ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル處分ハ豫メ戒吿スルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ但シ急迫ノ事情アル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
第五條 社會事業ヲ經營シ又ハ經營セントスル者其ノ事業ノ經營ニ必要ナル資金ヲ得ル爲寄附金ヲ募集セントスルトキハ事業經營地ノ地方長官ノ許可ヲ受クベシ
前項ノ場合ニ於テ事業經營地ガ二以上ノ道府縣ノ區域ニ涉ルトキハ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
前二項ノ規定ニ依ル許可ニハ條件ヲ附スルコトヲ得
第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ寄附金ヲ募集シタル者(當該事業ノ承繼者ヲ含ム)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ收支ヲ寄附金募集ノ許可ヲ受ケタル官廳ニ報吿スベシ
第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ寄附金ヲ募集シタル者(當該事業ノ承繼者ヲ含ム)ハ其ノ寄附金又ハ之ニ依リ得タル財產ノ處分ニ付寄附金募集ノ許可ヲ受ケタル官廳ノ許可ヲ受クベシ
第六條 地方長官ハ監督上必要アリト認ムルトキハ社會事業ヲ經營スル者ニ對シ其ノ事業ニ關スル報吿ヲ爲サシメ、書類帳簿ノ提出ヲ命ジ、實地ニ就キ業務若ハ會計ノ狀況ヲ調査シ又ハ事業ノ經營ニ關シ指示ヲ爲スコトヲ得
第七條 社會事業ヲ經營スル者本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキ又ハ其ノ事業ノ經營ニ關シ著シク不當ノ行爲アリタルトキハ主務大臣ハ中央社會事業委員會ノ意見ヲ聞キ其ノ者ニ對シ本法ノ適用ヲ受クル社會事業ヲ經營スルコトヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第八條 中央社會事業委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九條 道府縣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地方社會事業ニ關スル重要事項ヲ調査審議セシムル爲地方社會事業委員會ヲ設置スルコトヲ得
第十條 社會事業ヲ經營スル者第二條ノ規定ニ依ル事業開始ノ屆出ヲ爲シタルトキハ道府縣、市町村其ノ他ノ公共團體ハ其ノ社會事業ノ用ニ供スル土地又ハ建物ニ對シテ租稅其ノ他ノ公課ヲ課スルコトヲ得ズ但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十一條 政府ハ社會事業ヲ經營スル者ニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ補助スルコトヲ得
第十二條 社會事業ヲ經營スル者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ前條ノ規定ニ依ル補助ヲ取消シ又ハ旣ニ交付シタル補助金ノ全部若ハ一部ノ返還ヲ命ズルコトヲ得
一 事業ノ全部又ハ一部ヲ廢止シタルトキ
二 補助ノ條件ニ違反シタルトキ
三 本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキ
第十三條 主務大臣地方ノ情況ニ依リ特別ノ必要アリト認ムルトキハ中央社會事業委員會ノ意見ヲ聞キ道府縣又ハ勅令ヲ以テ指定スル市ニ對シ社會事業ノ經營ヲ命ズルコトヲ得
第十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第五條第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケズシテ寄附金ヲ募集シタル者
二 第五條第三項ノ規定ニ依ル許可ノ條件ニ違反シテ寄附金ヲ募集シタル者
三 第五條第五項ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケズシテ寄附金又ハ之ニ依リ得タル財產ヲ處分シタル者
四 第七條ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違反シテ社會事業ヲ經營シタル者
第十五條 第五條第四項ノ規定ニ依ル報吿ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ報吿ヲ爲シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十六條 社會事業ヲ經營シ又ハ經營セントスル者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十七條 本法ノ罰則ハ社會事業ヲ經營シ又ハ經營セントスル者ガ法人ナルトキハ理事其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ社會事業ヲ經營スル者ハ本法施行ノ日ヨリ三月以內ニ第二條ノ規定ニ依ル屆出ヲ爲スベシ
第五條ノ規定ハ社會事業ヲ經營シ又ハ經營セントスル者ニシテ本法施行ノ際現ニ寄附金募集ニ付行政官廳ノ許可ヲ受ケ募集中ノモノニ對シテハ之ヲ適用セズ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル社会事業法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十三年三月三十一日
内閣総理大臣 公爵 近衛文麿
大蔵大臣 賀屋興宣
厚生大臣 侯爵 木戸幸一
法律第五十九号
社会事業法
第一条 本法ハ左ニ掲グル社会事業ニ之ヲ適用ス但シ勅令ヲ以テ指定スルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
一 養老院、救護所其ノ他生活扶助ヲ為ス事業
二 育児院、託児所其ノ他児童保護ヲ為ス事業
三 施療所、産院其ノ他施薬、救療又ハ助産保護ヲ為ス事業
四 授産場、宿泊所其ノ他経済保護ヲ為ス事業
五 其ノ他勅令ヲ以テ指定スル事業
六 前各号ニ掲グル事業ニ関スル指導、連絡又ハ助成ヲ為ス事業
第二条 社会事業ヲ経営スル者其ノ事業ヲ開始シタルトキ又ハ之ヲ廃止セントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨事業経営地ノ地方長官ニ届出ヅベシ
第三条 地方長官ハ社会事業ヲ経営スル者ニ対シ保護ヲ要スル者ノ収容ヲ委託スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル委託アリタル場合ニ於テ社会事業ヲ経営スル者ハ正当ノ事由アルニ非ザレバ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
第四条 地方長官ハ社会事業ノ施設ニ収容セラレタル者ノ処遇上必要アリト認ムルトキハ社会事業ヲ経営スル者ニ対シ其ノ施設ニ属スル建物又ハ設備ノ改良ヲ命ズルコトヲ得
社会事業ヲ経営スル者前項ノ規定ニ依ル処分ニ従ハザルトキハ地方長官ハ当該建物又ハ設備ノ使用ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル処分ハ予メ戒告スルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ但シ急迫ノ事情アル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
第五条 社会事業ヲ経営シ又ハ経営セントスル者其ノ事業ノ経営ニ必要ナル資金ヲ得ル為寄附金ヲ募集セントスルトキハ事業経営地ノ地方長官ノ許可ヲ受クベシ
前項ノ場合ニ於テ事業経営地ガ二以上ノ道府県ノ区域ニ渉ルトキハ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
前二項ノ規定ニ依ル許可ニハ条件ヲ附スルコトヲ得
第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ寄附金ヲ募集シタル者(当該事業ノ承継者ヲ含ム)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ収支ヲ寄附金募集ノ許可ヲ受ケタル官庁ニ報告スベシ
第一項又ハ第二項ノ規定ニ依リ寄附金ヲ募集シタル者(当該事業ノ承継者ヲ含ム)ハ其ノ寄附金又ハ之ニ依リ得タル財産ノ処分ニ付寄附金募集ノ許可ヲ受ケタル官庁ノ許可ヲ受クベシ
第六条 地方長官ハ監督上必要アリト認ムルトキハ社会事業ヲ経営スル者ニ対シ其ノ事業ニ関スル報告ヲ為サシメ、書類帳簿ノ提出ヲ命ジ、実地ニ就キ業務若ハ会計ノ状況ヲ調査シ又ハ事業ノ経営ニ関シ指示ヲ為スコトヲ得
第七条 社会事業ヲ経営スル者本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキ又ハ其ノ事業ノ経営ニ関シ著シク不当ノ行為アリタルトキハ主務大臣ハ中央社会事業委員会ノ意見ヲ聞キ其ノ者ニ対シ本法ノ適用ヲ受クル社会事業ヲ経営スルコトヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第八条 中央社会事業委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第九条 道府県ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地方社会事業ニ関スル重要事項ヲ調査審議セシムル為地方社会事業委員会ヲ設置スルコトヲ得
第十条 社会事業ヲ経営スル者第二条ノ規定ニ依ル事業開始ノ届出ヲ為シタルトキハ道府県、市町村其ノ他ノ公共団体ハ其ノ社会事業ノ用ニ供スル土地又ハ建物ニ対シテ租税其ノ他ノ公課ヲ課スルコトヲ得ズ但シ有料ニテ之ヲ使用セシムル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十一条 政府ハ社会事業ヲ経営スル者ニ対シ予算ノ範囲内ニ於テ補助スルコトヲ得
第十二条 社会事業ヲ経営スル者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ前条ノ規定ニ依ル補助ヲ取消シ又ハ既ニ交付シタル補助金ノ全部若ハ一部ノ返還ヲ命ズルコトヲ得
一 事業ノ全部又ハ一部ヲ廃止シタルトキ
二 補助ノ条件ニ違反シタルトキ
三 本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキ
第十三条 主務大臣地方ノ情況ニ依リ特別ノ必要アリト認ムルトキハ中央社会事業委員会ノ意見ヲ聞キ道府県又ハ勅令ヲ以テ指定スル市ニ対シ社会事業ノ経営ヲ命ズルコトヲ得
第十四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第五条第一項又ハ第二項ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケズシテ寄附金ヲ募集シタル者
二 第五条第三項ノ規定ニ依ル許可ノ条件ニ違反シテ寄附金ヲ募集シタル者
三 第五条第五項ノ規定ニ依ル許可ヲ受ケズシテ寄附金又ハ之ニ依リ得タル財産ヲ処分シタル者
四 第七条ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違反シテ社会事業ヲ経営シタル者
第十五条 第五条第四項ノ規定ニ依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者ハ三百円以下ノ罰金ニ処ス
第十六条 社会事業ヲ経営シ又ハ経営セントスル者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ本法ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十七条 本法ノ罰則ハ社会事業ヲ経営シ又ハ経営セントスル者ガ法人ナルトキハ理事其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ社会事業ヲ経営スル者ハ本法施行ノ日ヨリ三月以内ニ第二条ノ規定ニ依ル届出ヲ為スベシ
第五条ノ規定ハ社会事業ヲ経営シ又ハ経営セントスル者ニシテ本法施行ノ際現ニ寄附金募集ニ付行政官庁ノ許可ヲ受ケ募集中ノモノニ対シテハ之ヲ適用セズ